「サッカーオフシーズンのフィジカル作り方、科学的に90日で差がつく鍛錬術」。この90日間は、来季の自分を作り替えるための最短距離です。この記事では、科学的な原則に基づいた12週間のロードマップと、週ごとに迷わない具体メニュー、テストと回復の仕組みまで、現場で即使える形に落とし込みました。時間や設備が限られていても大丈夫。必要十分な刺激を、効率よく積み重ねていきましょう。
目次
- 序章:オフシーズンが勝敗を分ける科学的理由
- 90日設計の全体像:12週間ロードマップ
- ベースライン評価と目標設定
- フェーズ1(週1-3):再構築と可動性の再獲得
- フェーズ2(週4-6):最大筋力の獲得
- フェーズ3(週7-9):スピードとパワー転換
- フェーズ4(週10-12):ゲーム統合とプレシーズン移行
- 主要コンポーネント別の鍛錬術
- 体幹と姿勢制御
- けが予防とリスク管理
- リカバリーの科学
- 栄養戦略と体組成
- 時間と設備が限られる場合の代替プラン
- ポジション別の重点ポイント
- 年代・レベル別の注意点
- よくある失敗と回避法
- 進捗の見える化とモチベーション設計
- FAQ:現場でよくある疑問に回答
- 90日後の次の一手
- 用語集と測定指標の基礎
- まとめ:90日で「走れる強さ」を標準装備に
序章:オフシーズンが勝敗を分ける科学的理由
この記事のゴールと読み方
ゴールは明確です。90日で「走れる強さ」を作り、ケガ少なくプレー強度を一段引き上げること。そのために、(1)計測→(2)計画→(3)実行→(4)再計測の流れで進みます。まずは全体像を把握し、ベースライン評価を行い、各フェーズの週メニューをそのまま使ってOK。時間がない人は「ミニマムプロトコル」の章だけでも実践できます。
オフシーズンとインシーズンの負荷の違い
インシーズンは試合とチーム練習が中心で、疲労管理が優先。高強度刺激は「維持」が精一杯になりがち。一方オフシーズンは、競技負荷が下がるため「能力の底上げ」に使える稀少な期間です。ここで筋力とスプリント基盤を作ると、シーズン中にパフォーマンスが安定しやすく、ケガの予防にもつながります。
パフォーマンスを決める5要素(筋力・パワー・スピード・持久・アジリティ)
- 筋力:すべての出力の土台。接触プレーや減速で効く。
- パワー:短時間で力を出す能力。ジャンプ、ファーストステップに直結。
- スピード:加速と最高速。サッカーでは10〜30mの質がカギ。
- 持久:高強度の反復を支える燃費。終盤の失速を防ぐ。
- アジリティ:減速→方向転換→再加速+状況判断。ゲームの再現性が重要。
トレーニング原則(過負荷・特異性・漸進性・回復・個別性)
- 過負荷:現状より少しだけ難しい刺激を継続。
- 特異性:サッカーの動き・速度・姿勢に近い練習を増やす。
- 漸進性:週単位でボリュームや強度を小さく上げる。
- 回復:睡眠・栄養・オフ日で適応を最大化。
- 個別性:年齢、ケガ歴、設備に合わせて微修正。
90日設計の全体像:12週間ロードマップ
4フェーズ概要(再構築/筋力/出力・スピード/統合)
- 週1-3 再構築:可動性、基礎筋力、有酸素の土台。
- 週4-6 最大筋力:ビッグリフトで出力の器を大きく。
- 週7-9 スピード・パワー転換:速さと反発力へ変換。
- 週10-12 統合:ゲーム負荷に馴染ませてピークへ。
週あたりのテーマ配分(S&C/スプリント/アジリティ/持久)
- S&C(筋力・パワー):2〜3回/週
- スプリント:1〜2回/週(短時間・高品質)
- アジリティ:1回/週(反応課題を付与)
- 持久:1〜2回/週(テンポ走やインターバル)
ボリュームと強度の波(マイクロ/メゾサイクル)
基本は「2週上げて1週やや下げる」リズム。例:Week1中、Week2中〜高、Week3中。メゾサイクル終盤は疲労を抜き、次フェーズの立ち上がりをスムーズにします。
テーパリングの考え方と再テスト時期
Week9終わりとWeek12に再テスト。最後の2週間はボリュームを20〜40%落とし、強度は維持。神経系のキレを残します。
ベースライン評価と目標設定
現状評価テスト(CMJ、30m、Yo-Yo IR1、Tテスト、片脚バランス)
- CMJ(垂直跳び):連続3回の最高値。
- 30mスプリント:10m/20m/30mのスプリットが取れれば尚良。
- Yo-Yo IR1:中強度反復の指標。
- Tテスト:方向転換の指標。フォームの安定も観察。
- 片脚バランス:左右差と足首の安定感を確認。
ケガリスクの簡易チェック(ハム/股関節/足首)
- ハム:ヒップヒンジでの腰丸まり有無、違和感。
- 股関節:スクワットでの膝の内倒、可動域。
- 足首:しゃがみ込みで踵が浮かないか、片脚カーフレイズの左右差。
KPIとSMART目標の立て方
例:30mを0.15秒短縮、CMJ+3cm、Yo-Yo IR1+200m。具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限を満たす設定にします。
データ管理(RPE、HRV、セッション時間、主観回復度)
- RPE:セッションのキツさ(1〜10)。
- HRV:朝の変動で疲労傾向を把握(対応アプリでOK)。
- 時間:1回の合計分数を記録。
- 主観回復度:睡眠/筋肉痛/ストレスを10点満点で。
フェーズ1(週1-3):再構築と可動性の再獲得
目的:動作の質と基礎耐性の底上げ
まずは「痛みなく、綺麗に動ける」体へ。テンポ動作と片脚系でコントロールを取り戻します。
モビリティ&スタビリティ(足/股関節/胸椎/肩)
- 足:足指グリップ、カーフレイズ、足裏リリース。
- 股関節:90/90、ヒップエアプレーン。
- 胸椎:スレッド・ニードル、胸椎回旋。
- 肩:バンドプルアパート、Y-T-W。
筋持久〜基礎筋力(テンポ・ユニラテラル・アイソメトリック)
- スプリットスクワット 3秒下ろす×8〜10回×3セット
- RDL(軽負荷)×8回×3セット
- プランク/サイドプランク 30〜45秒
- カーフレイズ 12〜15回×3セット
有酸素のベース(ゾーン2、テンポ走)
会話できる強度で20〜40分、週2回。フォームを崩さないテンポ走(10〜20分)を1回。
週サンプルメニューとボリュームの目安
- Day1:S&C(下半身基礎)+コア+モビリティ
- Day2:ゾーン2ラン/バイク 30分
- Day3:S&C(上半身・背面)+アイソメ
- Day4:テンポ走 15分+ドリル(Aスキップ等)
- Day5:アジリティ基礎(減速フォーム)
進捗判定と次フェーズへの基準
痛みなく全メニュー実施、片脚動作の左右差が小さく、RPEが過剰に高くない(7以下目安)。
フェーズ2(週4-6):最大筋力の獲得
目的:出力の土台となる最大筋力を上げる
低回数・高強度で「押せる・引ける・持ち上げる」能力を伸ばします。休息長めで質を優先。
ビッグリフトの導入(スクワット/ヒンジ/プッシュ/プル)
- フロントスクワット or バックスクワット 5×5(RPE7-8)
- RDL 4×6
- ベンチプレス or プッシュアップ加重 4×5
- 懸垂 or ラットプル 4×6〜8
ハムストリング保護(ノルディック、RDL、コペンハーゲンプランク)
- ノルディックハム 2〜3×3〜5(補助OK)
- コペンハーゲンPL サイド 20〜30秒×左右×2
- ヒップスラスト 3×6〜8
無酸素持久(インターバル、シャトル)
15〜30秒高強度+45〜90秒レストを8〜12本。シャトル(20m往復)で方向転換も追加。
週サンプルメニューと安全管理
- Day1:下半身ビッグリフト+ノルディック+短距離加速3〜5本
- Day2:上半身+コア(アンチローテーション)
- Day3:インターバル走(20秒×10本)
- Day4:全身補強+モビリティ
ウォームアップは8〜12分。バー速度が落ちたらセットを打ち切る判断も。
進捗判定(挙上速度・RPE・フォーム)
RPE9に近づきすぎない。フォーム崩壊前で止める。可能なら同重量の挙上速度が向上しているかを確認。
フェーズ3(週7-9):スピードとパワー転換
目的:筋力を競技スピードへ変換
「軽く・速く・正確に」。負荷は中程度、速度は最大。レストを十分に取り、質で勝負。
プライオメトリクス(連続反発、ドロップジャンプ、バウンディング)
- ドロップジャンプ(20–40cm)3×5
- 連続リバウンドジャンプ 3×6〜8
- バウンディング 2×20m
スプリント(加速・最高速・メカニクス)
- 加速:10–20m×4〜6本(完全回復)
- 最高速:30–40m×3〜5本
- メカニクス:Aドリル、壁ドリル、フライング20m
アジリティと方向転換(反応・認知負荷の付与)
コーチのコールや色コーンで反応条件を与える。減速→切返し→再加速を短時間で。
週サンプルメニューと回復設計
- Day1:パワーリフト(軽中負荷)+プライオ
- Day2:スプリント(加速+最高速)
- Day3:アジリティ(反応付き)+短インターバル
- Day4:有酸素ベース or 低強度回復走 20分
睡眠を最優先。脚の張りが強い日はジャンプ量を30%カット。
進捗判定(接地時間、飛距離、タイムの安定度)
動画で接地の短さを確認、ジャンプの反発感、スプリントのタイムが安定しているか。疲労でバラつく日は量を抑える。
フェーズ4(週10-12):ゲーム統合とプレシーズン移行
目的:試合様式への統合とピーキング
個別で高めた能力を、ゲームの流れに馴染ませる段階。過剰なボリュームは避け、強度を選び抜く。
小規模ゲーム(SSG)と外部負荷の設計
3v3〜5v5で高強度間欠を再現。時間は短く、休息を確保(例:4分×4セット、レスト2分)。
エネルギーシステムのブレンディング(スプリント反復×持久)
RSA(反復スプリント能力)を狙い、20–30mスプリント×6〜10本、間30–40秒歩き。セット間は長めに。
テーパリングと疲労管理
Week11〜12はボリューム20〜40%減。スプリントは本数を絞り質をキープ。可動域と睡眠を整える。
週サンプルメニューと最終テスト
- Day1:スプリント短本数+プライオ少量
- Day2:SSG+技術練習
- Day3:回復セッション(モビリティ・ゾーン2 20分)
- Day4:最終テスト(30m、CMJ、Yo-Yo、Tテスト)
次シーズン開始へのブリッジ
最終週は「軽く速く」。強度の高い対人は過密にしない。翌週からのチーム合流に向け、足首・ハムのケアを入念に。
主要コンポーネント別の鍛錬術
最大筋力:レップスキーム(5×5、3×5、3×3)と漸進
週ごとに同一セット法で2.5–5kgずつ上げる、または同重量でレップを+1。フォームが崩れたら据え置き。
パワー:軽中負荷×高速度(MBスロー、ジャンプ、オリンピックリフトバリエーション)
- メディシンボールスロー(胸前/オーバーヘッド)3×5
- ハングパワークリーン or ハイプル 3×3(軽中負荷で速く)
- ジャンプスクワット 3×5
スプリント:週2回の最小限プロトコル(加速/最高速)
- DayA:10–20m×6、完全回復
- DayB:フライング20m×4、ビルドアップ充分
アジリティ:減速→再加速→認知の三層設計
まず減速技術(低い重心・胸の向き・足の位置)→切返し→反応条件を追加。疲労時はボリュームを削って質を守る。
持久:Yo-Yo向上のための遠近ミックス(テンポ+インターバル)
テンポ走(10〜20分)+短インターバル(15–30秒高強度)を同週で組合せ、回復日は完全休養かゾーン2へ。
体幹と姿勢制御
アンチエクステンション/アンチローテーション中心の設計
- デッドバグ、パロフプレス、ロールアウト 20〜30秒/8〜10回
片脚支持と骨盤制御(ランジ系、スプリットスタンス)
フロント/リアフットエレベーテッドスプリットスクワットで骨盤の傾きをコントロール。鏡や動画で確認。
呼吸と内圧(ブレーシングとリブケージの整合)
鼻吸気で側腹部に広がりを感じ、吐きながら肋骨を下げて腹圧を保つ。重い挙上前に2呼吸。
ピッチ上の姿勢に繋げるドリル
加速ドリル中に「骨盤前傾過多」を避け、胸と骨盤の向きを一致させる意識を反復。
けが予防とリスク管理
ハムストリング、足首、鼠径部の予防ルーティン
- ノルディック、コペンハーゲン、アンクルホップ、アーチ作りドリルを週2〜3回少量。
量と強度のモニタリング(RPE、ACWRの活用イメージ)
急なボリューム増を避ける。直近1週間の負荷が直前1ヶ月平均から大きく跳ねないよう意識する程度でOK。
痛みが出たときの対応(休止・修正・専門家相談の目安)
鋭い痛みや腫れは中止。48時間で改善しない場合は専門家へ。フォーム修正とボリューム調整で再開を。
シューズ/スパイク選びと地面状況の考慮
ピッチ硬度に合うスタッド長を選択。新品は短時間から慣らす。踵カップの安定性もチェック。
リカバリーの科学
睡眠の優先順位と具体策(就寝ルーティン、光・温度)
就寝前60分は強い光とスクリーンを避け、室温18〜20℃目安。起床/就寝時刻を固定し、昼寝は20分以内。
栄養による回復支援(タンパク質/炭水化物/鉄/ビタミンD)
体重×1.6〜2.2g/日のタンパク質、トレ後は炭水化物も併せて。鉄やビタミンDは不足しやすい人は医療的評価の上で補う。
クールダウン、ストレッチ、コンプレッションの位置づけ
低強度のクールダウン5〜10分で循環促進。ストレッチは「張りが強い部位」を中心に。圧着ウェアは主観回復の助けになることがある。
暑熱・寒冷環境への適応と水分戦略
暑熱ではこまめな水分+電解質、練習時間の前倒し。寒冷ではウォームアップを長めにし、露出部を減らす。
栄養戦略と体組成
エネルギーバランスと体重管理(増量・減量の設計)
増量は+200〜300kcal/日、減量は−300〜500kcal/日を目安にゆっくり。急激な変化はパフォーマンスを落としやすい。
炭水化物周期化(高強度日/低強度日)
高強度日は炭水化物を多め、低強度日は控えめに。トレ前後に重点配置。
水分・電解質とパフォーマンス
体重の2%の脱水でパフォーマンス低下が起こりやすい。トレ前後で体重を測り、減少分を目安に補給。
サプリメントのエビデンス概観(クレアチン、βアラニンなど)
- クレアチン:パワー・スプリント反復の改善が示されることがある。
- βアラニン:短〜中時間の高強度で有効な場合あり。
- カフェイン:注意力と出力向上に寄与することがある。耐性と就寝への影響に配慮。
時間と設備が限られる場合の代替プラン
器具なし/自重トレの置き換えアイデア
- ブルガリアンスクワット、片脚RDL(ダンベルなし)
- プッシュアップ各種、テーブルロウ
- ジャンプスクワット、小さな連続ホップ
30分ミニマムプロトコル(全身×スプリント)
ウォームアップ5分 → スプリント10m×6(完全回復)→ サーキット(スクワット15、プッシュアップ12、ランジ10/脚、プランク30秒)×3 → クールダウン。
学校・公園・自宅での工夫
階段でヒルスプリント、ベンチでステップアップ、タオルでアイソメトリック。ボールを使った反応ドリルも可。
移動日/テスト週の省エネ設計
移動日はモビリティ+コア10〜15分。テスト週はメインセットを半分に。
ポジション別の重点ポイント
FW:短時間高出力と加速の最大化
10〜20m加速、ジャンプ系、対人で押し負けない下肢・体幹。
MF:反復スプリント能力と方向転換の持続
RSA、テンポ走+シャトル。接触後の再加速に強い。
DF/サイドバック:後退→前進の切替と長距離スプリント
バックペダル→ターン→ロングスプリントのドリル。ハムと股関節のケアを厚めに。
GK:反応速度、ジャンプ、投擲のパワー
短距離の横移動、メディシンボールスロー、ドロップジャンプの接地質。
年代・レベル別の注意点
高校生:成長期への配慮と動作学習の優先
フォーム最優先。負荷は段階的に。睡眠と栄養を疎かにしない。
大学生/社会人:疲労管理と仕事・学業との両立
週2高強度+週1回復で十分効果あり。移動や残業日に合わせて柔軟に。
復帰期の個別調整(ケガ明けの進行目安)
痛み0/10で動けるメニューから。跳躍・スプリントは段階的に再開。
保護者が支える生活習慣と安全配慮
睡眠環境づくり、食材の準備、練習後の補食サポートが戦力。
よくある失敗と回避法
走り込み偏重によるスピード低下
ロング走のやり過ぎで出力が落ちる。短距離スプリントの質を優先。
重量至上主義でのフォーム破綻
重さよりも速度と安定。崩れたら即ストップ。
回復軽視と慢性疲労
睡眠不足は伸びを相殺。週1の軽減日を固定。
計画の一貫性不足と測定の欠如
最低限のKPIを週1で記録。小さな上達を見逃さない。
SNS情報の鵜呑みを避ける判断基準
個別性と再現性をチェック。目的・負荷・頻度が明確な情報を採用。
進捗の見える化とモチベーション設計
毎週のKPIダッシュボード(簡易テンプレート例)
項目:体重、睡眠時間、RPE平均、CMJ、10m、30m、走行時間、主観回復度。色分けで増減を可視化。
トレーニング習慣化の工夫(実行意図・トリガー)
「月水金の起床後30分にコア」など行動の紐付けで自動化。
小さな勝利の設計と報酬サイクル
週の達成でご褒美を用意。仲間と共有し合うと継続率が上がる。
チームメイト/家族を巻き込む仕組み
共同トレの日を作る、記録を見せ合う、役割分担で支え合う。
FAQ:現場でよくある疑問に回答
体を大きくしたいが重くなりたくない時の指針
筋力・パワー重視で低〜中レップ、スプリントは継続。摂取カロリーは微増に。
スプリント前の最適なウォームアップ
ジョグ→動的ストレッチ→ドリル(Aスキップ等)→流し2〜3本→全力本番。
インソール・スパイク選びの考え方
足型に合うこと、踵の安定、ピッチに適したスタッド。違和感があるなら無理に使わない。
暑熱下のトレーニング戦略
時間帯の工夫、水・電解質の事前補給、強度の段階的適応。体重減少をチェック。
オーバートレーニングのサインと対処
睡眠質低下、安静時心拍上昇、やる気の低下、パフォーマンス停滞が続くときは即ボリュームを下げる。
90日後の次の一手
インシーズン維持プラン(最少刺激の原則)
週1〜2回、合計40〜60分でOK。重さは維持、ボリュームは最小。
再テストと計画のリビルド
30m、CMJ、Yo-Yo、Tテストを再計測。伸びた項目・停滞項目から次の重点を決める。
年次計画への接続(メゾ→マクロ)
オフ→プレ→インの波を俯瞰し、試合日程から逆算。ピークの時期を明確に。
個人課題のフォーカス化
ポジション要求と自分のKPIギャップに的を絞り、8〜12週間の次プランへ。
用語集と測定指標の基礎
トレーニング用語の整理(RPE・HRV・ACWRなど)
- RPE:主観的運動強度。セッション全体のキツさ。
- HRV:心拍変動。回復傾向の参考。
- ACWR:短期/中期の負荷比。急上昇回避の目安。
主要テストの測定方法と注意点
- 30m:同じ場所・同じシューズ・同条件で。
- CMJ:手の振りを一定に。連続3回で最高値。
- Yo-Yo IR1:体調良好日に実施、途中離脱も可。
単位・指標の意味と読み解き方
kg(重量)、m/s(速度)、cm(跳躍)、秒(タイム)。増減は週単位で滑らかに見るのがコツです。
まとめ:90日で「走れる強さ」を標準装備に
オフシーズンは、最短で自分を変えられる時間です。測る→計画する→実行する→また測る。この当たり前のサイクルを、12週間のフェーズ設計に落とし込めば、筋力・スピード・持久・アジリティが噛み合い、プレーの質は確実に上がります。完璧を求めるより、続ける工夫を。今日の1セット、1本のスプリントが、90日後の差になります。あなたの次のシーズンは、きっと違って見えるはずです。
