ゴールキックの「新ルール」は、2019/20シーズンに競技規則が改訂されて以降の考え方がベースです。最大のポイントは、ボールが「蹴られて明確に動いた瞬間」にインプレーになること、そして守備側(自陣側)の味方はペナルティーエリア内でも受けられること。この記事では、その要点から実戦の使い方までを、親子で3分で理解できるテンポでまとめました。難しい専門用語は控えめに、現場で役立つ言い回しを多めにしています。
目次
導入:3分でわかるゴールキック新ルール
この記事でわかることと読み方
・何がどう変わったのか(要点)
・相手の位置・やり直し(リテイク)の典型例
・実戦での配置・パスの出口の作り方
・年代・レベル別の現実的な使い分け
・練習メニューと試合前チェックリスト
順番に読んでも、気になる章だけ拾い読みしてもOKです。
まず押さえる1行まとめ
ゴールキックは、ボールが「蹴られて明確に動いた瞬間」にインプレー、守備側はペナルティーエリア内で受けられ、相手はインプレーになるまでエリア外にいなければならない——この3点が土台です。
新ルールの核心:何が変わったのか(要点)
ボールがインプレーになる瞬間の定義
・旧来は「ペナルティーエリアの外に出た瞬間」でしたが、現在は「蹴られて明確に動いた瞬間」にインプレーです。
・ボールはゴールエリア(いわゆる“6ヤード”)内の任意の位置に静止させて置き、味方またはGKが蹴れば再開できます。
・キッカーはGKでなくてもOK(守備側のいずれかの選手が蹴れます)。
ペナルティーエリア内で味方が受けられる条件
・守備側の味方は、ペナルティーエリア(PA)内で受けても有効です。
・受ける際の基本は「ボールが動いた瞬間にインプレー」という前提。つまり、受け手はボールが動き出した後にプレーへ移ればOKです。
相手チームの位置制限と注意点
・相手はインプレーになるまでPA内に入ってはいけません。早く入ってプレーに関与すれば、通常はやり直し対象です。
・守備側が非常に素早く再開し、相手がPA外へ出る時間がなかったと主審が判断するケースではプレー続行が許容されることがありますが、相手は不当な干渉をしてはいけません。
・競技会ごとに運用の細部が異なる場合があるため、所属リーグの通達も確認しましょう。
やり直し(リテイク)になる代表的ケース
・相手がPA内に早く入り、プレーに関与した(ボールに触れる・妨害する など)。
・ボールが静止していないのに蹴った。
・所定の場所(ゴールエリア内)から行っていない。
・キッカーが二度触り(ほかの選手に触れる前にもう一度触る)は反則で、やり直しではなく相手の間接FKになります。
ルール変更の背景:意図と狙いを短く理解
試合再開スピードの向上
・「エリア外に出るまで待つ」時間が不要になり、ゲームが流れやすくなりました。
・選手・観客双方にとって、停滞が減りテンポが良くなる効果が狙われています。
ビルドアップの多様化とプレッシングの活性化
・PA内での受けが認められたことで、後方から細かくつなぐ形が現実的に。
・一方で、相手のプレスもPAのすぐ外から強くかかるようになり、駆け引きが増えました。
実戦で効くポイント(選手向け)
GKの合図・視野・キック選択(グラウンダー/チップ/ドライブ)
・合図:手のジェスチャーと声で「ショート/ミドル/ロング」を事前共有。
・視野:最初に逆サイドと相手2列目の位置関係を確認。相手の“狙いどころ”が空いている側を選ぶ。
・キック選択:
-グラウンダー(速い低弾道):ショートや縦パスの基本。足元狙いはズレが命取りなので「受け手の前足→外側」へ置く。
-チップ(浮き球の軽打):前進スペースの頭上越え。サイドバック~ウイングの裏へ。
-ドライブ(強いロング):前線のターゲットへ。サイドに落としてセカンド回収の設計とセットで使う。
CBの立ち位置と体の向き:内外と縦横の優先順位
・立ち位置:ゴールラインに近づき過ぎない。GKとの距離は「ワンタッチ→前向き」できる余裕を。
・体の向き:半身(ゴールを背にし過ぎない)。トラップで前向きになれる足を前に。
・優先順位:内→外→縦の順に「安全→前進」を選び、無理な縦差しでの即時ロストを避ける。
中盤のサポート角度:2人目・3人目の関わり方
・2人目(最初の受け手の次):ボールサイド斜めに顔を出し、前向きで受けられる角度を作る。
・3人目:相手の背後または逆サイドで「次の出口」。受け手が前を向いた瞬間に同時アクションで空間を開ける。
相手のプレッシング別の出口設計(前進/保持/回避)
・マンツーマン系:1対1が増える。GK→CB→アンカーの“縦三角”でひし形を作り、ワンタッチの壁で外す。
・ゾーン系:縦は閉じて横が空く。逆サイドへのスイッチ(チップ)を混ぜ、相手の横スライドを遅らせる。
・ハイプレス極強:無理は禁物。ロングでサイドに誘導し、セカンド回収で前進。保持より回避を優先。
具体的なプレーオプション(短・中・長の使い分け)
ショート:PA内での二者・三者関係の作り方
・GK-CB:初手は「足元ではなく前足の外」。CBはワンタッチでMFへ。
・GK-CB-SB:CBが受けて相手FWを引き付け、SBへ外し、すぐ内側にリターンのサポート。
・中央封鎖時:CBは背中で相手をブロックしつつ、GKへリターン→逆CBへ展開。
ミドル:縦パスで背後を狙うトリガー
・アンカーの足元へ強い縦:落としで前向きのMFへ。サイドのウイングが同時に背後へ走る。
・相手2列目が前がかり:CBからインサイドハーフの脇へ。受けた瞬間の斜めスルーでライン間を破る。
ロング:サイド誘導とセカンドボール回収の仕組み
・狙いは「サイドの高い位置」。中央より競り合いのリスクが低い。
・回収設計:ターゲットの落下点の内側・前方・後方に3枚配置。落としの方向を共有し、予備動作で先に動く。
失敗あるあると回避法
同一ラインで重なって詰まる問題
・原因:CBとMFが縦一直線、受けても前を向けない。
・回避:一人はライン間、もう一人は外側へ。高さ違いと内外のズレを必ず作る。
キック強度不足・方向ズレによる即時ロスト
・原因:弱いグラウンダーで相手の狙い目に。
・回避:「受け手の前足外側へ」「相手の届かない速度」で。迷ったら一度GKへ戻し、面を作り直す。
相手がPA内に残っていた時の混乱対応
・ポイント:主審が続行を許容しても、相手は不当な干渉は不可。混乱時は無理に足元を通さず、タッチに逃げてスローインで整えるのも選択肢。
観戦のコツ:保護者がチェックできる3点
リスタート前の配置と合図の明確さ
・GKの合図がチームに通っているか。CBと中盤の高さ違いができているか。
最初のパス後のサポート角度の質
・受け手が前を向けるサポートがあるか。2人目・3人目が同時に動けているか。
ミス直後の修正スピードと声かけ
・失敗の後、配置を素早く修正し、次の一手を共有できているか。声のトーンも含めてチェック。
よくある誤解Q&A
相手がPA内に入っていたら必ずやり直し?
・原則、相手はインプレーまでPA外。早く入ってプレーに関与したら通常はやり直しです。
・ただし守備側が素早く再開し、相手が退去する時間がなかったと判断されるケースでは続行が許容されることがあります(相手は干渉不可)。
GKは味方からのリターンをどう扱える?(手/足の使い分け)
・味方が意図的に足で蹴ったボールをGKが手で扱うのは反則(いわゆるバックパス)。相手の間接FK。
・ゴールキック直後に、キッカー(GK含む)が他の選手に触れる前に再度触ると二度触りで間接FK。
・手は使えなくても、足でのプレーはOK。判断に迷ったら足で逃がすのが安全です。
オフサイドは関係ある?ない?
・ゴールキックからはオフサイドになりません(直接プレー再開からの例外の一つ)。ただし、その後のパスからは通常どおりオフサイドが適用されます。
素早い再開はいつ有効で、いつ危険?
・有効:相手の整列前に外側の大きなスペースが見えた時。
・危険:味方の配置が未整理、GKとCBの距離が近すぎる、相手の最前線がスプリント待機している時。
審判が介入する主なケース
やり直し(リテイク)になる場面
・相手がPA内に早く侵入してプレーに関与。
・ボールが静止していない/所定の位置でない。
・外的要因(ホイッスル前に再開した等、主審が指示した段取りと違う)。
間接FKが与えられる可能性がある違反
・二度触り(他の選手が触れる前に、キッカーがもう一度触れる)。
・GKが味方の意図的なキックを手で扱う(いわゆるバックパス)。
・不当な妨害(再開を妨げる行為)など。
故意な規則回避とその扱い
・意図的にトリックを用いてGKが手で扱えるようにする行為(足でボールを浮かせて頭で返す等)は、警告の対象になり得ます。再開は間接FK。
年代・レベル別の使い分け
中学・高校での現実解(リスク管理と配球比率)
・ショート:自陣深くでのミスは失点直結。GK/CB/MFの3人が迷いなく動ける型を2つ持つ。
・ミドル:アンカーの足元→落とし→前向きの流れをチームで練習。
・ロング:相手がハイプレスなら比率を上げ、セカンド回収の配置を固定化しておく。
大学・社会人での高度化(形の“固定化”を避ける)
・ビルドアップの“型”を複数。初手の立ち位置は同じに見せ、出口だけ変える。
・GKのキックレンジ(グラウンダー/チップ/ドライブ)を混ぜ、相手を読ませない。
ジュニアでの最優先課題(技術の土台と判断の簡素化)
・正確に止める・運ぶ・蹴るが最優先。
・合図は一つに絞り、「安全に外→ラインを上げる」を徹底。
・所属大会に特有のローカルルールがある場合は必ず事前確認。
短時間で伸ばす練習メニュー
親子でできる:狙った場所に止める/運ぶキック精度ドリル
・距離10~20mにマーカーを2つ置き、「前足外側1m」を狙うパスを左右10本ずつ。
・次に、受け手はダイレクトで外へ流し、2本目を前へ運ぶ。時間計測でゲーム性を加える。
2対1ビルドアップ:角度とタイミングの基礎
・GK役-CB役 vs プレス1人。
・ルール:プレスはボールが動いたらアタック。守備側は2タッチ以内で逆サイドのゲートを通す。
・狙い:受ける角度(半身)とワンタッチの質。
6対4のハーフコート:プレッシング抵抗での出口確認
・守備側6(GK含む) vs 攻撃側4(プレス役)。
・条件:10本連続で前進成功ならロングに切り替え、次はセカンド回収勝負へ。
・評価:最初の3本でのミス率と、ミス直後のリカバリー速度。
試合前チェックリスト
GK:ルーティン・合図・第一選択肢
・合図は手と声で統一。第一選択肢(ショート/ミドル/ロング)を相手の並びで事前に決める。
DF/MF:立ち位置と最初の関わり方
・高さ違い(同一ライン禁止)と内外のズレ。ワンタッチで前向きにする役割分担を確認。
チーム全体:相手プレス別の最初の一手
・マンツーマン→壁役を誰がやるか、ゾーン→スイッチの合図は何か、ハイプレス→ロング落としの方向はどこか。
正確な情報を追うために
IFAB/日本サッカー協会の公式資料の見方
・IFABの「Laws of the Game(競技規則)」が原典。日本国内はJFAの競技規則・通達を確認。
・該当箇所は「第16条(ゴールキック)」。関連して「第12条(ファウルと不正行為)」の間接FKや警告事項も参照。
最新更新の確認頻度とチーム内共有法
・シーズン前に必ずチェック、追加通達が出たら都度更新。
・共有は「1枚スライド+30秒読み上げ」で。要点の3行(インプレーの瞬間/PA内受け/相手の位置)を固定化。
まとめ:3分の要点リマインド
新ルールの本質と最低限の約束事
・インプレーは「蹴られて明確に動いた瞬間」。
・守備側はPA内で受けられる。
・相手はインプレーまでPA外。早入りして関与すれば基本はやり直し。
・二度触りやバックパスの手扱いは間接FK。
・迷ったら安全第一:外へ、サイドへ、距離をとる。
今日からできる一歩(選手/保護者)
・選手:自分の“第一選択肢”を決め、合図と言葉をチームで統一。グラウンダーの強度と置き所を10分だけでも毎日練習。
・保護者:配置とサポート角度、ミス後の修正スピードを観る。良い声かけ(合図)が出ていたら、そこを褒める。
あとがき
ゴールキックの新ルールは「難しくなった」ではなく、「選べる幅が増えた」と捉えるのがコツです。試合の温度、相手の並び、味方の得意を見ながら、ショート・ミドル・ロングを丁寧に使い分けるだけで、チームの失点リスクは下がり、前進の成功率は上がります。ルールの土台を押さえ、合図と言葉をそろえる。まずはここから一歩ずつ積み上げていきましょう。
