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ハンド 肩と腕の境目はどこ?誰でもわかる基準解説

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「ハンド、肩と腕の境目ってどこ?」──そんな素朴な疑問に、迷わず答えられる人は案外多くありません。結論はシンプルですが、試合の熱中度が上がるほど判断はブレがち。この記事では、誰でも1秒で使える見分け方から、IFAB(国際サッカー評議会)の競技規則に基づく根拠、実戦で役立つチェックリストや練習法まで、わかりやすく整理します。選手・指導者・保護者のどの立場でも同じ基準で見られるよう、難しい言葉は避け、プレーに直結する考え方をまとめました。

先に結論:肩と腕の境目は「わきの下の線」

1秒で判別する方法:腕を下ろしたときの「わきの下の底」

肩と腕の境目は、腕を自然に下ろしたときの「わきの下の底(わきの下のいちばん低い位置)」を横に結んだラインです。このラインより上は肩、より下は腕と考えます。試合中の瞬間判断では、肩の丸みよりも「わきの下の底」を基準にするとブレが減ります。

ここは肩=ハンドにならない、ここは腕=ハンドになり得る

  • 肩=反則にならない可能性が高い部位:わきの下ラインより上(ショルダー付近、鎖骨側に近い外側)
  • 腕=反則対象になり得る部位:わきの下ラインより下(上腕〜肘〜前腕〜手)

もちろん、肩であっても別の反則が成立することは通常ありませんが、腕側(ラインより下)に当たり、かつ故意性や「体を不自然に大きくした」などの要素が重なると、ハンドの反則になります。

半袖の縫い目は目安にならない理由

「半袖のラインより上ならセーフ」という話を耳にしますが、ユニフォームの形状やサイズ、個人の体格で縫い目は大きく変わります。公式な基準はあくまで「わきの下ライン」。見た目の服のラインに引っ張られないのがコツです。

競技規則の根拠と最新トレンド

IFAB競技規則の定義「腕の上限=わきの下ライン」

IFAB競技規則(ロー12:ファウルと不正行為)では、手/腕の扱いに関して「腕の上限はわきの下のライン」と定義されています。つまり、そのラインより上は肩として扱われ、手/腕の反則の対象外です。この線引きは世界共通の基準で、国や大会が変わっても基本は同じです。

2021-22以降の手/腕の反則の考え方の整理

  • 偶発的な手/腕の接触があっても、それだけでは反則ではありません。
  • 攻撃側については、「その選手自身が手/腕に偶発的に触れて直後に得点する、または明白な得点機会を作る」場合は反則です。
  • 味方の偶発的ハンドを経由して得点になったケースは、直後であっても自動的に反則とは限らない(近年の修正点)。
  • 故意に手/腕でボールに触れる、あるいは腕で体を不自然に大きくしてシュートやパスを止めた場合は、反則になる可能性が高いです。

国内大会での基本的な適用と理解のポイント

国内の多くの大会はIFAB競技規則に準拠して運用されています(大会要項で特別な定めがある場合を除く)。主審は「接触部位(わきの下ラインとの関係)」「腕の位置とシルエット」「距離・反応時間」「腕がボールに向かったのか」を総合して判断します。テレビやスタンドからの見え方と、主審の見え方が違うこともあるため、この基準で落ち着いて整理しましょう。

どんなときがハンド?判断の三本柱

意図的に手/腕で触れたか(故意性)

  • 手/腕が明らかにボールの進路へ動いている。
  • 手/腕を使ってコントロールしようとした痕跡がある。
  • 相手やボールの動きに合わせて、腕が「当てにいっている」。

これらは反則の可能性が高い要素です。逆に、ボールが予期せぬ方向から当たっただけ、反応の余地がなかった場合は故意といえません。

体を不自然に大きくしたか(シルエット)

守備者が腕を広げる、肩より高く上げる、体の幅から大きく離してブロックするなど、プレーに必要以上の姿勢でシルエットを広げた場合、ハンドの判定に傾きます。特にシュートブロックでの「両腕大の字」「横への張り出し」はリスクが高いです。

攻撃側の偶発的な手/腕→直後の得点は反則

攻撃側の選手が偶発的に手/腕に当ててしまい、その選手自身が直後に得点、または明確な決定機を作った場合は反則です。いったん別の選手を経由する、プレーが切り替わるなど、時間やプレーが挟まれれば必ずしも反則ではありません。

どんなときはハンドではない?

肩(わきの下より上)への接触

わきの下ラインより上(肩・ショルダー部)への接触は、原則としてハンドではありません。ボールが肩に当たって方向が変わっても、それ自体は反則ではないという理解でOKです。

至近距離の回避不能(反応時間と距離の関係)

至近距離でのシュートやクロスに対して、避ける時間がなかった場合は、故意性や不自然な拡大がない限り、反則とされないことが多いです。主審は「距離」「スピード」「視野に入っていたか」を合わせて判断します。

転倒時の「支え手」は原則OK(例外の注意点)

スライディングや転倒で地面についた「支え手」にボールが当たった場合、体重を支える自然な手であれば反則ではないのが原則です。ただし、支え手の名目でも、体から大きく離してボールを止める形や、腕がボールへ動いていれば反則になり得ます。

よくある誤解を解く

「ボールに当たった=全部ハンド」ではない

手/腕に当たった事実だけで自動的に反則にはなりません。接触部位が腕でも、故意性や不自然な拡大がなければプレー続行のこともあります。逆に肩なら常にセーフという単純化も禁物で、全体の状況で判断されます。

「腕が広がっていれば全部ハンド」でもない

守備姿勢として自然にバランスを取る範囲、転倒の支え、ジャンプの助走での腕の振りなど、サッカーの動作として必要な腕の位置は考慮されます。ポイントは「プレーに見合う自然さ」かどうかです。

半袖ライン・見た目だけで判定しない

ユニフォームの袖やプリントの位置は、人やチームでバラバラ。境目はあくまで「わきの下ライン」。見た目の印象に頼らず、基準の一本化が大切です。

実戦で役立つ即席チェックリスト

守備者向け:手の置き方・体の向き・ブロック姿勢

  • 肘はお腹〜腰の前で軽く曲げ、親指はやや下向きに。
  • シュートブロックは「肘は45度、肩より上に上げない」。
  • 体の正面で受ける角度に回る。腕でコースを消さない。
  • 至近距離のクロスは胸・太腿・すねで当てる意識。

攻撃者向け:トラップと突破でのリスク管理

  • 胸トラップは肩にずれやすい。わきの下ラインより上でコントロール。
  • 相手の密着時は腕の振りで押さない。体幹でキープ。
  • リバウンド直後のシュートは、自分の腕接触がなかったか一瞬確認。

保護者・観戦者向け:落ち着いて見る3ポイント

  • どこに当たった?(わきの下ラインより上か下か)
  • 腕はボールに向かった?それとも体を支える/自然な位置?
  • 攻撃側なら、その選手が直後に決めた/決定機を作ったか?

ポジション別の注意点

DF:シュートブロックとチャージ時の腕

ミドル対応は「肘45度・肩より下」。クロスブロックの足出しは、逆サイドの腕が開きがちなので脇を締める意識を。チャージ時は相手の胸や顔に腕が入ると別のファウルのリスクも上がります。

MF:プレス・寄せでの手の高さ管理

プレス時のストライドで腕が上がりやすいので、肘は体側に。寄せの最後に手で押さない。体の向きでパスコースを切り、腕は「触れない位置」に置く習慣を。

FW:トラップ・ターン時の偶発ハンド回避

背負った相手を腕で払いのけるとハンドや押さえの反則に繋がりやすい。胸・肩(ラインより上)でのコントロールを磨き、ターンは腰と膝の回旋で作ると安全です。

GK:ペナルティーエリア内外での手の扱い

GKは自陣PA内では手が使えますが、PA外は当然反則。クリアや前進時はライン管理を確実に。ブロッキングでの味方DFの腕位置も声かけで調整しましょう。

スライディングとクロス対応のハンド対策ドリル

壁当てでの腕固定と反応時間トレーニング

  • 距離5〜7mで壁当てシュートを連続受け。肘45度、親指下向きで腕固定。
  • 左右1mステップで位置調整。腕位置は変えず、脚と体の向きで対応。
  • コーチ役はランダムに高さを変える。反応時間を短くする意識。

クロスブロックの「45度肘」「親指下向き」

  • サイドからの高速クロスを模擬。ニアに入るDFは肘45度、親指下向き。
  • 胸・腿でのクリアを優先。腕で支えないフォーム作り。
  • 3本1セットで映像確認し、腕の開き癖を修正。

転倒時の支え手とリカバリーの反復練習

  • 片膝スライドから片手で地面を支える→即座に引き戻して立ち上がる。
  • 支え手は体の真横〜やや前。体から離れ過ぎない位置に限定。
  • ボールが支え手付近を通る設定を入れ、目線と体の向きで避ける。

VAR・主審が見るポイントを知る

接触部位(わきの下ライン)とシルエットの確認

  • 最優先は「どこに当たったか」。わきの下ラインの上下が起点。
  • 次に「腕の動き・位置」。ボールへ行ったか、体を不自然に大きくしたか。
  • 距離・速度・視野の有無。回避可能性の評価。

リスタート(FK/PK/ドロップボール)の基本と流れ

  • ハンドの反則があれば、原則は直接フリーキック。自陣PA内の守備側の反則はPK。
  • VARによるレビューでプレーが止まり、反則無しとなった場合はドロップボールで再開されることがあります(競技規則に基づく再開方法)。
  • 攻撃側の偶発的手/腕接触で直後に得点し反則となった場合は、守備側の直接FKで再開。

年代・カテゴリーの違いと配慮

中高生で起こりがちなケースと伝え方

  • 至近距離のクロスで腕が開く:肘45度・親指下向きの合言葉を徹底。
  • 胸トラップのずれ:わきの下ラインを言葉で共有し、肩でのコントロール練習を。
  • 「当たったからハンド」の思い込み:三本柱(故意性・シルエット・攻撃側直後ゴール)で整理して声かけ。

ルールは同じ、指導と声かけの工夫

競技規則は基本的に同じでも、体格や反応速度は年代で違います。指導では「腕を閉じる」で終わらせず、「なぜその位置だと安全か」を説明し、練習で具体的に落とし込みましょう。

具体例を言葉でイメージする

肩に当たったOKのケース(ショルダー付近)

クロスに対してDFが体をひねり、ショルダーの外側(わきの下ラインより上)に当たってコーナーへ逃げた。腕は体側に収まり、肩の自然な接触。これは原則プレーオンです。

腕に当たってNGのケース(肘下・前腕)

PA内でのシュートブロックで、肘下の前腕部に当たり、腕は体から張り出していた。至近距離でも腕で体を大きくした形となり、反則の可能性が高いシーンです。

グレーゾーンの考え方(状況証拠の総合判断)

至近距離でのリフレクションが前腕をかすめたが、腕は体の前に自然に収まり、ボールへ動いた形跡なし。こうしたケースは「当たった事実」より「自然な位置か」を重視して総合判断します。

よくある質問(FAQ)

半袖シャツの上端ならセーフ?

ユニフォームの縫い目は基準ではありません。公式の境目は「わきの下の底を結ぶライン」。そこより上なら肩扱い、下なら腕扱いです。

胸と脇の間に挟んだらどうなる?

胸トラップで脇側にボールが挟まるのは起こり得ます。挟んだ位置がわきの下ラインより上で、手/腕でコントロールしていなければ反則ではありません。腕で抱え込む動作になると反則の可能性があります。

自分の体に当たってから腕に触れた場合

胸や足からの跳ね返りで腕に偶発的に触れた場合でも、腕の位置が不自然に大きい、または腕がボールに向かって動いていれば反則になり得ます。逆に自然な位置で回避不可能なら、反則ではないことも多いです。

守備の壁で腕を組むのはOK?

腕を組むこと自体は反則ではありませんが、手/腕がボールに向かって動く、または不自然に体を大きくする形になるとリスクです。安全なのは「手を下げ、肘は体側、親指は下向き」。

まとめ:誰でも迷わないための合言葉

「わきの下より上は肩」

肩と腕の境目は、世界共通で「わきの下の底のライン」。ここを起点に迷いを減らしましょう。

「不自然に大きくしない」

腕の位置はシルエット重視。必要以上に広げない、上げない、出さない。

「攻撃側の直後ゴールはNG」

偶発的でも、自分の手/腕→直後に得点(または決定機)なら反則。

あとがき

ハンドの議論は感情的になりやすいテーマですが、基準は実はとても明快です。「わきの下ライン」「シルエット」「直後得点」という3つの柱をチーム全員で共有すれば、ピッチでもスタンドでも判断は落ち着きます。今日から練習に「肘45度・親指下向き」を取り入れて、反則リスクを減らしながら守備の安定感を高めていきましょう。試合で迷わないための準備は、日々の小さな習慣から始まります。

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