トップ » 体調管理 » サッカー花粉症シーズンの練習工夫:走力を奪われない実践術

サッカー花粉症シーズンの練習工夫:走力を奪われない実践術

カテゴリ:

サッカー花粉症シーズンの練習工夫:走力を奪われない実践術

花粉の季節は、鼻づまりや目のかゆみだけでなく、走っても走っても体が前に進まない感覚につながりがちです。でも、準備と工夫しだいで「走力の落ち」を最小限にすることは十分に可能です。本記事では、仕組みを理解し、練習計画を組み替え、屋外・屋内の使い分け、装備や栄養、薬とアンチドーピングの注意、そして7日間のアクションプランまでを一気通貫でまとめました。今日からできる改善で、シーズンのパフォーマンスを守りましょう。

花粉症が走力を奪うメカニズムを理解する

鼻閉・目のかゆみがVO2とランニングエコノミーに与える影響

鼻が詰まると、自然と口呼吸に頼る時間が増え、呼吸リズムが乱れやすくなります。これがランニングエコノミー(同じ速度を維持するための酸素コスト)の悪化につながる場合があります。涙目やかゆみは瞬目の増加や集中の分散を招き、細かなポジショニングやファーストタッチにも影響しがちです。

  • 鼻閉=吸気抵抗↑ → 呼吸筋の余分な疲労 → 中盤以降の失速を引き起こしやすい
  • くしゃみ・咳=体幹の瞬間的ブレ → ストライドの乱れ → 無駄な上下動
  • 目の刺激=視線の定まりにくさ → 認知・判断の遅れ

つまり「同じ心拍でも前に進まない」状態が起きやすい。だからこそ、花粉期はフォームと呼吸リズムの維持をいつも以上に意識する価値があります。

抗ヒスタミン薬の鎮静作用と反応速度への影響(第二世代中心)

抗ヒスタミン薬は症状を抑える一方で、製品や個人差によっては眠気や注意力低下が出ることがあります。一般に第二世代(例:フェキソフェナジン、ロラタジン、ビラスチン、デスロラタジン、レボセチリジンなど)は第一世代より眠気が少ないとされますが、完全にゼロではありません。

  • 試合・高強度日の前は、自分に合う薬を「事前に練習日で」試す
  • 朝型投与か就寝前投与かで、日中の眠気が変わることがある
  • 花粉が軽い日は薬量・タイミングを主治医と相談し最適化

薬はパフォーマンスの味方にも、敵にもなりえます。自分の反応を把握し、医師・薬剤師に相談して最適化しましょう。

運動誘発性気道収縮(EIB)とのオーバーラップ

花粉症の人は、運動時に気道が狭くなる「運動誘発性気道収縮(EIB)」が重なることがあります。咳、ゼーゼー、胸のつかえ、息切れが強い場合は、医療的な評価が有効です。吸入治療や点鼻・点眼の組み合わせで、走れる環境が大きく改善するケースがあります。

花粉飛散に合わせた練習計画(マイクロ周期の組み方)

花粉予報×週間トレーニングの当て込み方

天気アプリの花粉予報を、練習強度の配分に直結させます。基本は「低飛散=高負荷、重い花粉=技術・戦術や屋内へ」。

  • 高負荷日(スピード・VO2max系):低飛散日を狙って設定
  • 中負荷日(テンポ・ビルドアップ):中飛散日に実施
  • 低負荷日(回復走・可動域・補強):高飛散日や強風日へ回す

高強度は「雨上がり・夜」、ボリュームは「低飛散日に」

花粉は雨で地面に落ち、夜は飛散が比較的落ち着く傾向があります(地域差あり)。高強度は夕〜夜や雨上がり直後を狙い、長めのボリュームは低飛散日にまとめます。

月〜週でのスイッチング例(ピーク週/回復週)

花粉ピーク月は「質主導・量は控えめ」。ピークを過ぎたら「量を戻す」。

  • ピーク週:高強度×2(夜/雨上がり)+戦術2+回復2
  • 回復週:高強度×1+テンポ1+屋内補強2+戦術軽め
  • 試験や仕事繁忙期は「強度の山」を1回に絞る

屋外での実践テクニック:走力を保つための即効策

ウォームアップの修正(鼻腔拡張・段階的換気)

ウォームアップで「鼻から通気を確保する」ことが、その日の走力を左右します。

手順

  1. 鼻腔拡張テープ+保湿バーム(鼻孔入口)
  2. 段階的換気:鼻呼吸で5分→鼻口ミックスで5分→ドリル(Aスキップ、股関節、体幹)
  3. 軽いスプリント前に30〜60秒の呼吸ドリル(4秒吸気・2秒息止め・4秒吐気)×3

インターバル設計の見直し(短めレップ×長めレスト)

鼻閉でガス交換効率が落ちる日は、レップを短くして質を担保します。

  • 例:400m×8(R=90秒)→200m×12(R=75〜90秒)へ変更
  • 加速走:30m×6+50m×4、レップ間は立ち休息+鼻呼吸を意識
  • 方向転換系はセット間レストを20〜30%長めに取る

呼吸法の工夫(鼻呼吸比率と口鼻ミックス)

完全鼻呼吸に固執せず、鼻口ミックスで「吸いすぎない・吐き切る」を心がけます。吐き切ると次の吸気が入りやすく、過呼吸を防ぎやすいです。直線は鼻口ミックス、コーナーの進入や減速局面は鼻優位で落ち着かせる、といった使い分けも有効です。

RPE・心拍ドリフトで負荷を制御する

花粉期は心拍がじわじわ上がる「心拍ドリフト」が起きやすいです。RPE(主観的運動強度)を併用し、設定より1段階きついと感じたら早めに調整します。

  • ドリフトが顕著:予定距離の80〜90%で切り上げ、技術ドリルへ切替
  • RPE7以上が続く:休息を長めに、または屋内メニューへスイッチ

室内・代替トレーニングで走力を落とさない

有酸素の代替(バイク・ローイング・階段)

屋内カーディオは、呼吸刺激を確保しつつ花粉曝露を避けられます。

  • バイク:テンポ20〜30分(ケイデンス90前後)+30秒ハード×10
  • ローイング:2分ハード/2分イージー×6〜8(フォーム重視)
  • 階段:30〜60秒上り×12(歩いて降りる)

サッカー特異的アジリティを屋内で補う

狭いスペースでも、フットワークや減速・方向転換の基礎は維持できます。

  • ラダードリル(イン・アウト、Ickyシャッフル、前後ミックス)
  • 3コーンTドリル(距離短縮版):2〜3m間隔で敏捷性を維持
  • ミニボールの壁パス+ターン(狭い空間でのファーストタッチ質UP)

スプリント基礎はプライオと筋力で維持

最大速度は筋力・腱の弾性もカギ。屋内で支えます。

  • プライオ:スキップ、ポゴ、ボックスジャンプ(低〜中台)
  • 筋力:ヒンジ(デッドリフト系)、スクワット、ランジ、Nordicハム
  • コア:アンチローテーション、デッドバグ、Pallofプレス

装備・環境設定の最適化

花粉対策マスクとサングラスの使い分け

  • ジョグ・アップ:通気性の高いスポーツマスクで鼻眼への侵入を軽減
  • 高強度:息苦しさが出る場合はマスクを外し、代わりにアイウェア+鼻腔拡張で対処
  • サングラス:ラップ形状で側面からの花粉侵入を減らす

ワセリン・生食鼻洗浄・洗眼のタイミング

  • 出発前:鼻孔入口に薄くワセリン→付着抑制
  • 終了後すぐ:生理食塩水での鼻洗浄+人工涙液で洗眼
  • 帰宅動線:玄関で上着を脱ぐ→洗顔→うがい→シャワーが最速

ウェアとスパイクの花粉リセット動線

  • 玄関前でパンパンと叩かない(舞う)→ビニール袋に入れて洗濯機へ直行
  • スパイクは屋外でブラッシング→湿らせたタオルで拭き取り
  • バッグは週1で内側を拭き掃除

栄養・水分・睡眠でコンディションを底上げ

抗炎症を意識した食事(魚・色の濃い野菜)

魚に多いオメガ3脂肪酸、色の濃い野菜や果物に含まれるポリフェノールは、体の炎症反応を整えることが示唆されています(効果には個人差があります)。

  • 魚(サバ、サーモン、イワシ)を週2〜3回
  • 緑・赤・紫の野菜と果物を毎食少量ずつ
  • 発酵食品(ヨーグルト、味噌など)で腸内環境をケア

カフェインの活用と取りすぎ回避

カフェインは集中と知覚的なきつさの軽減に役立つことがありますが、摂りすぎは動悸や睡眠の妨げに。練習60分前に少量(コーヒー1杯相当)から試し、反応を確認しましょう。未成年は保護者や指導者と相談のうえ、過剰摂取を避けてください。

就寝環境の花粉ブロックと睡眠最適化

  • 寝室は日中も窓を閉め、空気清浄機を活用(フィルター定期交換)
  • 就寝前シャワー→鼻洗浄→保湿で症状を鎮める
  • 枕カバーはこまめに交換、洗濯は部屋干しor乾燥機

医薬品・アンチドーピングの注意点

第二世代抗ヒスタミンの選択とタイミング

眠気が出にくいとされる第二世代を基本に、個人差と練習時間帯に合わせて調整します。初めての薬は試合前ではなく、通常練習日にテストしましょう。どの薬も相性があるため、医師・薬剤師に相談が安心です。

点鼻ステロイド・去痰薬の位置づけ

点鼻ステロイドは局所で炎症を抑える代表的治療で、継続使用で効果を発揮するタイプが多いです。去痰薬は気道内の粘性を下げて楽にします。いずれも使用法を守り、自己判断での増量は避けてください。

ドーピング規則の確認手順(Global DRO/JADA)

  • 競技会に出る可能性がある場合、使用前に成分を確認
  • 鼻づまり改善薬の一部(プソイドエフェドリン等)は競技会時に制限がある場合あり
  • 吸入β2作動薬や全身性ステロイドは使用条件が定められていることがある
  • 最新情報はGlobal DROやJADAの情報で都度チェック。必要ならTUE(治療目的使用)を検討

規則は更新されます。必ず最新の公的情報で確認し、迷ったら医療者やチームスタッフに相談しましょう。

練習メニュー例(花粉量別・ポジション別)

低飛散日:高強度走×ポジション別ドリル

  • 共通:200m×10(R=90秒)+30m加速×6、技術はトランジションドリル
  • SB/WMF:5〜20mの連続スプリント+クロス→リカバリー歩き
  • CB:後退→前進→ジャンプの複合(2〜4m区間)
  • CM:方向転換+受け直し→縦パス→サードマンランの繰り返し
  • FW:裏抜け30m×6+ポスト受け→ターン5m×6

中飛散日:テンポ走+小規模戦術

  • テンポ走:15〜20分(会話がギリギリの強度)
  • 4対2や5対3の保持、3対2の遷移など、人数を絞った戦術ドリル
  • 終了後はすぐに屋内へ移動し、補強とストレッチ

高飛散日:屋内中心の持久+コア・モビリティ

  • バイク:3分ハード/2分イージー×6
  • コア:プランク各種、アンチエクステンション
  • モビリティ:胸椎回旋、股関節内外旋、足関節ドーシフレクション

リカバリーと翌日に残さないケア

トレ後のシャワー・うがい・鼻洗浄のルーティン

  1. フィールド→5分以内に屋内へ移動
  2. うがい→鼻洗浄→洗顔→シャワーの順で花粉をリセット
  3. 保湿(鼻・目の周り・頬)で刺激を鎮める

目と皮膚の鎮静ケア(冷却・保湿)

  • 冷却アイマスクや冷タオルで数分冷やす
  • 肌は低刺激の保湿剤でバリア機能を補う

HRV/自覚症状ログで翌日の負荷調整

HRV(心拍変動)や睡眠時間、鼻づまり/目のかゆみスコアを簡単に記録。3日平均で悪化しているときは、負荷を1段階下げます。監督・コーチに共有すると、チーム全体で計画が立てやすくなります。

学生・社会人・保護者への実装アドバイス

学校・部活スケジュールでの現実解

  • 放課後が高飛散なら、朝練に質を移す(テクニックは放課後)
  • 教室換気のタイミングと鼻洗浄を合わせ、授業間にリセット

仕事後ナイトセッションの組み方

  • 平日は20〜45分の高品質セッション(スプリント+補強)
  • 週末にボリューム確保(低飛散を狙う)

子どもの安全と薬の管理(保護者のチェックポイント)

  • 服薬は必ず保護者管理、コーチへの共有を徹底
  • 症状が強い日は無理をさせず屋内メニューに切替
  • 目・鼻をこする癖はタオルでタッチに置き換える

よくある誤解と避けたいNG行動

「根性で屋外ロング」より賢い代替

重い症状の日に無理して長時間走ると、翌日の質がごっそり落ちます。屋内で代替し、質の高いセッションを確保するほうが結果的にパフォーマンスを守れます。

点鼻の即効性と使い過ぎの落とし穴

血管収縮薬の点鼻は一時的に楽になりますが、連用で効きが悪くなったり、リバウンドが起きることがあります。用法・用量を守り、長期は医師に相談しましょう。点鼻ステロイドは「即効」ではなく「積み上げ型」です。

眠気のある薬での試合出場

少しの眠気でも、ワンテンポの遅れは致命的。新しい薬は必ず練習で試し、相性が悪ければ変更を。安全第一です。

今日から始める7日間アクションプラン

チェックリストと初週スケジュール

  • チェックリスト
    • 花粉予報アプリを入れて通知ON
    • 鼻腔拡張テープ・アイウェア・生食を用意
    • 屋内代替(バイク/階段等)アクセスを確保
    • 医薬品とアンチドーピングの確認ルートを決める

例・初週(花粉:高→中→低の想定)

  • Day1(高):屋内バイク3分ハード/2分イージー×6+コア
  • Day2(中):テンポ走15分+3対2トランジション
  • Day3(低):200m×10(R=90秒)+30m×6スプリント
  • Day4(高):回復ジョグ20分(マスク)+モビリティ
  • Day5(中):方向転換ドリル+技術(保持/ビルドアップ)
  • Day6(低・雨上がり夜):VO2系(600m×5 R=2〜3分)+FW/CM/DF別ドリル
  • Day7(高):完全休養または軽いストレッチと鼻洗浄

個人差に合わせた微調整のポイント

  • 鼻閉が強い:レップ短縮・レスト延長、呼吸ドリルを増やす
  • 目の症状が強い:アイウェア必須、屋内比率を上げる
  • 薬で眠気:時間帯を就寝前へ、または別製品を医師と検討

まとめ

花粉症シーズンでも、走力は守れます。鍵は「予報に合わせた強度配置」「屋外・屋内の柔軟なスイッチ」「呼吸・装備・ルーティンの徹底」「栄養・睡眠・医薬品の最適化」。今日から1つでも実行すれば、体感は変わります。自分の反応を観察し、微調整を続けながら、賢く走り切りましょう。

RSS