「プロテイン、いつ飲む?どれくらい?」——結論はシンプルです。一日の総タンパク質量を体重から決め、合成が最大化する1回量を3〜4時間おきにそろえ、試合・練習・休養日は“配分”だけ変える。これが最短ルートです。ここではサッカー選手が現場で迷いがちなタイミングと最適量を、嘘なし・再現性重視で具体化します。胃腸トラブルを避けつつ回復とパフォーマンスを底上げするために、今日から使えるモデルまで載せました。
目次
先に結論:『一日の総量 × タイミング × 1回量』を揃えるのが最短ルート
総タンパク質量は体重あたりで設計する
まずは一日の総量。サッカーのように持久・スプリント・コンタクトが混在する競技では、体重1kgあたり1.6〜2.2g/日が現実的な目安です。例:70kgなら112〜154g/日。食事で届かなければプロテインで不足分を補います。
1回量は0.25–0.4 g/kg、間隔は3–4時間が基本
筋たんぱく合成が最も高まる範囲は、体重1kgあたり0.25〜0.4g/回。70kgなら18〜28g/回が基準。これを3〜4時間おきに摂ることで「オンの時間」を積み上げます。
試合・練習・休養日で“配分”だけ変える
合計量は大きく変えず、強度や開始時刻に合わせて配分を調整します。試合日は起床後・試合前・直後・就寝前を厚め、休養日は均等配分が基本です。
プロテインの役割と『いつ飲む?』を決める3つの軸
軸1:一日の総タンパク質量(g/kg/日)
「足りているか」が土台。足りなければタイミングを整えても効果は限定的です。まずは日々の合計を安定させます。
軸2:1回あたりの最適量(ロイシン閾値)
筋合成は、必須アミノ酸とくにロイシン量がスイッチになります。目安はロイシン2〜3g/回。ホエイはロイシン比率が高く、20〜30gで多くの人が閾値に到達します。
軸3:運動前後と就寝前のタイミング
運動前は「備え」、直後は「回復スイッチ」、就寝前は「夜間維持」。この3点にひも付けると、迷いが消えます。
一日の総タンパク質量の目安
サッカー選手の推奨1.6–2.2 g/kg/日の考え方
持久+スプリント+筋ダメージが重なるため、一般成人より高いレンジが推奨されます。練習量が少ない週は1.6〜1.8、連戦や強度が高い週は2.0〜2.2を目安に。
成長期・増量/減量・体脂肪調整中の調整幅
- 成長期:1.8〜2.2 g/kg/日(身長・体重の伸びと回復を優先)
- 筋量アップ期:2.0前後を中心に
- 減量期:2.0〜2.4(食事エネルギーを絞る分、筋量維持を狙う)
極端な制限はパフォーマンス低下の原因になるため、総エネルギー摂取(炭水化物・脂質)も同時に管理します。
食事とプロテインの役割分担(不足分を補う)
基本は食事(肉・魚・卵・乳・大豆)。練習直後や外出時など届きにくい場面をプロテインで補うのが実用的です。
1回の最適量と摂取間隔
0.25–0.4 g/kg/回を3–4時間間隔で
摂取頻度を上げすぎても合成は頭打ちになりやすい一方、間隔が空き過ぎると合成の波が落ちます。学校・仕事のスケジュールに合わせて3〜4回でも十分機能します。
ロイシン2–3gを満たす“20–40g”目安
ホエイなら20〜30g、カゼインや植物性はやや多めの25〜40gを目安に。体重が大きい選手は上限側に寄せます。
液体と固形の消化速度の違いを使い分ける
- 液体(ホエイ+水):吸収が速く、運動前後向き
- 牛乳割り・食事併用:吸収が緩やか(腹持ちUP)
- カゼイン・固形食:ゆっくり型。就寝前・長時間の空腹対策
試合日のタイミングと最適量
起床後:前日の分解を止める“スターター”
起床後すぐに0.25〜0.3 g/kg(例:70kgなら18〜21g)。バナナやパンなどの炭水化物を軽く添えると血糖の安定に役立ちます。
試合2–3時間前:0.3 g/kg+炭水化物で備える
0.3 g/kgのたんぱく質を、消化の軽い炭水化物(おにぎり・パン・パスタなど)と一緒に。脂質・食物繊維は控えめにして胃の負担を減らします。
ハーフタイム:少量+炭水化物の可否判断
基本は炭水化物と電解質が優先。胃腸に強い選手ならホエイ10〜15gを薄めて摂る選択はありますが、違和感が出るなら無理に摂らないほうがパフォーマンスは安定します。
試合直後30分:0.3 g/kgで回復スイッチON
0.3 g/kgのたんぱく質+体重1.0〜1.2 g/kgの炭水化物を目安に。足つり対策や発汗が多い日は電解質(ナトリウム)を含むドリンクを。
試合後2–3時間&就寝前:再合成を途切れさせない
試合直後から2〜3時間後にもう一度0.25〜0.3 g/kg。就寝前はカゼイン系または牛乳割りで0.3〜0.4 g/kgをゆっくり吸収させます。
昼/ナイトゲーム・延長のときの微調整
- 昼試合:朝と試合後を厚め、就寝前もしっかり
- ナイトゲーム:昼に均等に配分し、試合後と就寝前を厚めに
- 延長の可能性:ハーフタイム〜試合後に備え、薄めのプロテインとジェル・ドリンクを準備
電解質・炭水化物との併用(リカバリー飲料の考え方)
発汗が多い環境では、ナトリウムを0.5〜0.7g/L程度含むスポーツドリンクに、ホエイ20〜25gを溶かしてリカバリー飲料化する手も有効です。
練習日のタイミングと最適量
朝練のある日:起床後と練習後を優先
起床直後に0.25〜0.3 g/kgを水で。消化の余裕がなければ半量でもOK。練習直後は0.3 g/kg+炭水化物で回復へ。
放課後/夜練のみの日:昼〜夜の配分を厚く
昼食でしっかりたんぱく質、練習60〜90分前に軽食+10〜20gのプロテイン、終了後0.3 g/kg、就寝前にゆっくり型で締めます.
二部練・ウエイト併用日の設計
各セッション後に0.3 g/kgをセット。間が短いときは液体で速吸収、間が長いときは食事+プロテインで整えます。
技術練中心の日 vs 強度高めの日の飲み分け
- 技術練中心:合計量は同じ、1回量はやや控えめで均等配分
- 強度高め:練習前後と就寝前を厚めにし、炭水化物も十分に
休養日のタイミングと最適量
起床後に少量でスタート
0.2〜0.25 g/kgを目安に。食事までのつなぎとして有効です。
1日4–6回の均等摂取で合成を維持
合計量は1.6〜2.0 g/kg/日をキープ。間隔は3〜4時間。空腹を作りすぎないことがポイントです。
就寝前はゆっくり型(カゼイン系)を活用
0.3〜0.4 g/kgを就寝30〜60分前に。夜間の分解を抑え、翌日のコンディションが安定します。
体重別のざっくり目安(合計量と1回量の例)
60kg選手:合計量と配分モデル
- 合計:96〜132g/日
- 1回量:15〜24g/回
- 例:起床18g/昼食後20g/練習直後18g/就寝前20g
70kg選手:合計量と配分モデル
- 合計:112〜154g/日
- 1回量:18〜28g/回
- 例:起床20g/練習前10〜15g/直後20g/夕食後10〜15g/就寝前25g
80kg選手:合計量と配分モデル
- 合計:128〜176g/日
- 1回量:20〜32g/回
- 例:起床25g/昼25g/練習直後25g/就寝前30g
プロテインの種類と使い分け
ホエイ(WPC/WPI):速吸収・運動前後向き
WPCはコスパ良好、WPIは乳糖・脂質が少なく消化が軽いのが特徴。練習前後はWPIが無難な場面もあります。
カゼイン:ゆっくり型・就寝前向き
胃内でゲル化し、ゆっくり吸収。夜間の分解抑制や長時間移動中に適します。
ソイ/植物性:代替選択とブレンドの考え方
ベジタリアンや乳製品が合わない人に有効。ロイシンがやや少なめなので1回量を増やす、もしくはブレンド製品を選びます。
乳糖不耐・アレルギー時の選択肢
WPIや乳糖除去品、ライス/ピー/ソイを検討。重篤なアレルギーがある場合は医師に相談を。
吸収速度と組み合わせのテクニック
水/牛乳/豆乳で吸収をコントロール
- 水割り:速い。運動前後に
- 牛乳割り:ゆっくり。就寝前・間食向き
- 豆乳割り:中間。味と消化のバランスが良い
炭水化物併用でグリコーゲン回復を最適化
高強度後は体重1.0〜1.2 g/kg/時の炭水化物を最初の数時間で。たんぱく質と一緒に摂ると摂りやすく、回復の土台が整います。
脂質・食物繊維が吸収に与える影響
脂質・繊維は吸収をゆっくりにします。試合・高強度前は控えめ、休養日や就寝前はむしろメリットになります。
よくある失敗と対策
『飲むだけで筋肉がつく』という誤解
筋合成は「トレーニング刺激 × 十分なたんぱく質 × エネルギー」で成立します。練習量・睡眠も同じくらい重要です。
摂り過ぎ・胃腸トラブルの回避策
一気飲みや多量摂取は下痢や腹部不快感の原因。体重×0.4 g/kg/回を上限の目安にして、回数で調整を。
食事の置き換えでエネルギー不足になる問題
プロテインはあくまで「たんぱく質」。主食・主菜・副菜を削ると総エネルギー不足になり、パフォーマンスが落ちます。
試合直前の多量摂取がパフォーマンスに与える影響
消化に血流を取られ、重さ・胃もたれ・集中力低下につながることがあります。直前は少量・薄め・炭水化物優先が基本。
サッカー特有のシーン別Tip
遠征・宿泊・弁当時の持ち運びと衛生管理
- 個包装や小分けボトルで1回量を事前計量
- シェイカーは使用後すぐ洗浄。夏場は特に衛生管理を徹底
- 水が確保できない場合に備え、常温で飲める紙パック牛乳/豆乳も選択肢
夏場の暑熱対策:水分・電解質・冷却と併用
発汗が多い日はプロテインを濃くしすぎない。まずは水分・電解質を優先し、たんぱく質は小分けで。
連戦・トーナメントでの回復リズムの作り方
毎試合後30分以内の0.3 g/kg+炭水化物をルーティン化。就寝前のゆっくり型を欠かさないだけで、翌日の差が出ます。
コストを抑えつつ品質を担保する選び方
1食あたりのタンパク質コストの見方
「1回で何gのたんぱく質が取れて、いくらか」を算出。20g基準での円/g比較がわかりやすいです。
原材料表示・たんぱく含有率・アミノ酸スコア
原材料の最初に「ホエイたんぱく(濃縮/分離)」などが来ているか、たんぱく質含有率が高いかを確認。目的に合うかで選びます。
甘味料・味の好みと継続性のバランス
続けられる味が最強。甘さ控えめや無香料を選び、ココアやコーヒーでアレンジするのも手です。
安全性とエチケット
腎機能・既往歴がある場合の注意点
腎疾患など既往歴がある場合は、たんぱく質量を自己判断で増やさず、医師・栄養の専門家に相談を。
ドーピングリスクへの配慮(認証の確認)
サプリは製造過程で混入リスクがゼロではありません。第三者認証(例:Informed Choice、NSF Certified for Sportなど)の有無を確認しましょう。
未成年の利用で保護者が確認したいこと
アレルギー表示、1回量、飲むタイミングを共有。食事を置き換えず、部活動のスケジュールに合わせて安全に使うことを徹底します。
Q&A:現場でよくある疑問
朝食抜きでプロテインだけでも大丈夫?
練習や授業がある日は、プロテイン+バナナ+パンなど簡単でも炭水化物を添えるのがおすすめ。たんぱく質だけだとエネルギー不足になりやすいです。
クレアチンやBCAAと一緒に飲むべき?
クレアチンは3〜5g/日を継続摂取するとスプリント・反復走に役立つ可能性があります。BCAAは、十分なたんぱく質を摂れていれば優先度は下がります。
牛乳で割るべき?水のほうがいい?
運動前後は水で素早く、就寝前や間食は牛乳・豆乳でゆっくり。目的で使い分けが最適です。
飲み忘れたときは次回に倍量でOK?
倍量は消化負担が増えやすいので非推奨。次のタイミングで通常量に戻し、全体の配分で整えましょう。
実践テンプレート
試合日前日〜当日〜翌日のモデルプラン
- 前日:朝0.25 g/kg/昼食後0.25 g/kg/夕食時は食事中心/就寝前0.3 g/kg(カゼイン)
- 当日:起床0.25〜0.3 g/kg/試合2〜3時間前0.3 g/kg+炭水化物/直後0.3 g/kg+炭水化物/2〜3時間後0.25 g/kg/就寝前0.3〜0.4 g/kg
- 翌日:起床0.25 g/kgからスタートし、3〜4時間おきに均等配分。下半身の張りが強い日は合計を上限寄りに
平日1週間(部活/クラブ)の配分モデル
月:技術練中心(均等配分)/火:高強度(前後+就寝前厚め)/水:ウエイト(ウエイト後0.3 g/kg追加)/木:軽め(合計は維持)/金:戦術(均等)/土:試合(当日テンプレート)/日:リカバリー(就寝前カゼイン)
オフ日の回復モデルとチート対策
合計1.6〜2.0 g/kg/日を守りつつ、好きなものを食べる日は就寝前カゼインで帳尻を合わせる。間食はプロテイン+果物+ヨーグルトなど“軽い三点セット”が便利です。
まとめ:『計画8割・習慣化2割』で差がつく
最初の2週間で“自分の最適”を見つける手順
- ステップ1:体重から一日の合計を決め、3〜4回に分ける
- ステップ2:練習前後・就寝前を固定し、胃腸の反応をメモ
- ステップ3:起床時間・試合時刻に合わせて1回量を微調整
継続のための準備物・タイムテーブル化
- 持ち運び用の小分け、予備のシェイカー、常温でも飲める割材
- 学校/仕事/移動時間に合わせてアラーム設定
- 週の強度に応じて1.6〜2.2 g/kg/日のレンジを使い分け
プロテインは魔法ではありませんが、使い方がハマると“当たり前の良い日”が増えます。まずは合計量・タイミング・1回量をそろえる。そこから、あなたの生活と試合スケジュールに合わせて微調整していきましょう。
