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グラウンド サイズ 目安は年代別でこう決まる

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グラウンド(ピッチ)の最適なサイズは、年代や人数、ゲームの意図によって変わります。走力や技術だけでなく、意思決定の難易度や安全性にも直結するので、ただ「広い=良い」でも「狭い=省スペースで便利」でもありません。本記事では、年代別の目安サイズと根拠、公式規格との整合、現場での現実的な運用までを一気通貫で解説します。最後にチェックリストとケーススタディ、Q&Aも載せているので、練習・試合の設計にすぐ使えます。

導入:年代で「最適な広さ」が変わる理由

体格・運動能力の発達差がもたらす適正スペース

小学生と高校生では、歩幅、加速、トップスピード、方向転換の能力が大きく異なります。ピッチが大きすぎると低学年ではボールに関与できず、逆に狭すぎると高校生ではプレッシャーが過度になり意思決定の質が落ちます。年齢・体格に見合った「1人あたりの有効面積」を確保することが、関与回数と学習効果を最大化し、同時に怪我の予防にもつながります。

プレーモデルと意思決定の複雑性

人数やピッチの広さは、縦横の距離感やパス本数、サポート角度を左右します。例えば、7人制や8人制の幅40〜50m付近は「幅を使う→絞る」のメリハリが学びやすく、11人制の68m前後ではサイドチェンジや3人目の関与など、より高度な原理が自然に要求されます。サイズは「何を学ばせたいか」によっても調整されるべきです。

安全性・疲労管理・ゲーム品質のバランス

ピッチが広がるほど総走行距離や高強度ランが増え、疲労や怪我のリスクも上がります。安全帯(タッチライン外の余白)の確保、路面状況(芝・土)の影響も無視できません。ゲームが破綻しない最低限の広さと、過度な負荷にならない上限の間で、質と安全のバランスを取ることが大切です。

先に結論:年代別コートサイズ目安とフォーマット一覧

以下は現場で広く用いられているレンジに基づく「目安」です。大会・リーグによって細部が異なるため、必ず要項やローカルルールを確認してください。

U6〜U8(キッズ):4〜5人制の基本レンジ

  • フォーマット:4v4〜5v5(GKなし/ありはローカルに準拠)
  • サイズ目安:長さ25〜35m × 幅15〜25m
  • 1人あたり面積の目安:70〜120㎡(全体を人数で割った参考値)
  • ゴール目安:ミニゴール(約1.8〜2.4m × 1.2〜1.6m)またはフットサルゴール(3×2m)
  • ねらい:ボール関与回数の最大化、ドリブルと方向転換の学習、密度の高い対人

U9〜U10(ジュニア前期):7人制の基本レンジ

  • フォーマット:7v7(地域により8v8の場合あり)
  • サイズ目安:長さ50〜60m × 幅30〜40m
  • 1人あたり面積の目安:110〜170㎡
  • ゴール目安:幅4〜5m × 高さ2m(地域運用あり)
  • ねらい:幅と奥行の使い分け、ビルドアップとカバーリングの基礎

U11〜U12(ジュニア後期):8人制の基本レンジ

  • フォーマット:8v8(国内で一般的)
  • サイズ目安:長さ56〜68m × 幅40〜50m
  • 1人あたり面積の目安:150〜210㎡
  • ゴール目安:幅5m × 高さ2m(ジュニア用が一般的)
  • 主なエリア寸法の目安(大会要項優先):PA奥行き12〜14m、PKマーク8〜10m付近
  • ねらい:ライン間の活用、サイドチェンジ入門、トランジション速度の向上

U13〜U15(中学生):11人制への移行と縮小フルサイズ

  • フォーマット:11v11(移行期は縮小フルサイズが現実的)
  • サイズ目安:長さ90〜100m × 幅55〜64m(フルサイズの下限〜中庸)
  • 1人あたり面積の目安:250〜290㎡
  • ゴール:フルサイズ 7.32m × 2.44m
  • ねらい:フルゲーム原理(幅68m級へのステップ)、セットプレーの整合

U16〜U18(高校生):標準フルサイズの目安

  • フォーマット:11v11
  • サイズ目安:長さ100〜110m × 幅64〜75m(よく用いられる標準帯)
  • 代表例:105m × 68m(国内外のスタジアムで一般的)
  • 1人あたり面積の目安:300〜350㎡(105×68の場合は約325㎡)

大学生・社会人:競技フルサイズの範囲

  • 一般試合の許容範囲(IFAB枠):長さ90〜120m × 幅45〜90m
  • 国際試合:長さ100〜110m × 幅64〜75m
  • 現実運用:多くは100〜110 × 64〜75mで設定

参考:フットサルは別規格(目安の把握)

  • 一般試合:長さ25〜42m × 幅15〜25m
  • 国際試合:長さ38〜42m × 幅20〜25m
  • ゴール:3m × 2m

公式規格の枠組みを押さえる(IFAB/FIFA・JFAの考え方)

Laws of the Gameにおける寸法の許容幅

  • 11人制(一般):長さ90〜120m、幅45〜90m
  • 11人制(国際):長さ100〜110m、幅64〜75m
  • ライン幅:最大12cmまで(ラインもフィールドの一部)
  • ユース年代:各国協会がローカルに合わせた小規格を設定可能

つまり「フルサイズ=固定値」ではなく、許容幅の中から大会規定に沿って選ぶのが原則です。

国際試合と一般試合のサイズの違い

国際試合は帯が狭く、実務上は105×68mなど中庸の設定が多いです。一般試合は90×45mのような最小値から、陸上トラック併設の広い設定まで幅があります。テレビで見るサイズがすべてではありません。

日本国内大会で用いられるローカルルールの例

  • 小学生年代:8人制採用、ジュニアゴール(5×2m)、PAやPKマークを縮尺
  • 中学年代:学校施設の制約に応じた縮小フルサイズ
  • 高校・大学:対外試合は105×68m近傍にそろえる傾向だが、会場により変動

必ず大会要項・リーグ規約を確認し、ライン・ゴール・エリア寸法を合わせます。

サイズ設計の基準:人数×プレースペース=適正面積

1人当たりの有効面積という指標

ピッチ面積を出場人数で割ると、密度の目安が得られます。例:105×68=7140㎡、7140÷22≈325㎡/人。8人制で62×45=2790㎡、2790÷16≈174㎡/人。年代が上がるほど、スピード・キックレンジ・視野が広がるため、1人あたり面積も増やすのが自然です。

縦横比(アスペクト比)の目安と理由

おすすめはおおむね1.5〜1.65。105×68は約1.54で、縦の推進力と横の展開が両立します。極端に縦長にするとビルドアップが直線的になり、極端に横長にするとライン間の距離感が崩れます。スペースが限られる場合も、この比率から大きく外れないよう調整すると、ゲームの質が保ちやすいです。

ゴールサイズ・エリア寸法との整合性

ゴールが大きいのにピッチが狭いと、シュートが過剰に有利になりゲームが単調に。逆にピッチが広くゴールが小さいと得点が極端に減ります。ペナルティエリア(PA)やゴールエリア(GA)、PKマークは、ゴールサイズと守備のリアリティに合わせて縮尺のバランスを取ることが重要です。

ライン・エリア・ゴール寸法の目安

ゴールサイズ(ジュニア用とフルサイズの違い)

  • フルサイズ:幅7.32m × 高さ2.44m
  • ジュニア用(8人制など):幅約5m × 高さ2mが一般的
  • キッズ・フットサル:3m × 2m、またはミニゴール

ペナルティエリア/ゴールエリア/PKマークの配置

  • 11人制(フル):PAはゴールラインから16.5m、幅はゴール幅7.32m+両側16.5m=約40.3m
  • ゴールエリア:ゴールラインから5.5m、幅は7.32m+両側5.5m=約18.3m
  • PKマーク:ゴールラインから11m
  • ジュニア縮尺の例:PA奥行き12〜14m、PKマーク8〜10m(大会規定に従う)

センターサークル・コーナーアーク・その他ライン

  • センターサークル半径:9.15m(11人制)
  • コーナーアーク半径:1m
  • ライン幅:最大12cmまで(視認性と安全面の両立)

学校・クラブ・自治体グラウンドでの現実的な運用法

既存校庭・多目的フィールドでのライン引きバリエーション

  • 基本ラインを白、ジュニア補助ラインを黄色などに色分けして混乱を避ける
  • 常設ゴールが大きい場合は、可動式ジュニアゴールを内側に設置して運用
  • 安全帯(外側の余白)を確保。目安として1〜3m以上を意識し、障害物は撤去

1面を2面に分割する配置パターン

  • 横割り(フルの幅方向に2面):11人制105×68を、約50×35前後の7〜8人制×2面に
  • 縦割り(フルの長手方向に2面):練習での小ゲームや年代混合で便利
  • 中央に安全ゾーン(3〜5m)を置き、ボール・人の衝突を防ぐ

天然芝・人工芝・土でのサイズ調整のコツ

  • 天然芝:摩耗を分散。サイズを微調整して同じ場所に負荷を集中させない
  • 人工芝:ラインの色分けとピン留め器具の安全管理を徹底
  • 土:石や段差の除去を優先。雨後は幅を少し狭めてスリップ事故を抑える

練習と試合でサイズを変えるべきか

戦術意図に応じた縮小/拡張の手順

  • ビルドアップ強化:幅は維持、長さをやや短く(縦のプレッシャー緩和)
  • トランジション強化:長さをやや長く、幅も中庸に(走る意識と間延びの制御)
  • 守備の連動:幅を狭めてコンパクト化、ライン間距離を可視化

フィジカル負荷と怪我予防の観点

  • 暑熱時はサイズ縮小+給水回数増で高強度スプリントを管理
  • 復帰期(けが明け)は幅から調整し、急な長距離走を避ける
  • 週内周期:試合−2日はフルに近く、試合前日は縮小+セットプレー確認

年代別トレーニングドリルの基準距離

  • U9〜U10:パスグリッド12〜18m、ゲート間6〜10m、スプリント10〜15m
  • U11〜U12:パスグリッド18〜25m、サイドチェンジ30m級の導入
  • U13〜U15:ライン間15〜20m、サイド幅55〜64mでの展開練習
  • U16〜U18:全幅64〜68m、スプリント20〜30m反復、105m想定の陣形幅

よくある勘違いと失敗例

フルサイズ=国際基準の固定値ではない

国際基準にも許容幅があり、105×68mは代表的な選択肢のひとつにすぎません。会場や大会規定で現実に即したサイズを選ぶのが正解です。

ゴールの大きさが最適サイズに及ぼす影響

ジュニア用ゴールでフル幅に近いピッチを使うと、クロスやミドルの価値が変わり、ゲーム性が歪むことがあります。サイズ設計は必ずゴールとセットで考えましょう。

タッチライン優先かゴールライン優先かの判断軸

スペースが足りないとき、縦長・横長のどちらに寄せるかでゲームの質が変わります。原則はアスペクト比1.5前後を保ちつつ、安全帯とゴール前スペース(PA周りの機能性)を優先して微調整します。

保護者・指導者のためのチェックリスト

大会要項・リーグ規約で確認すべき項目

  • ピッチ寸法の許容範囲(長さ・幅)
  • 使用ゴールの規格(サイズ・固定方法)
  • PA・GA・PKマーク、センターサークルの寸法
  • ライン幅・カラー、オフサイドの有無(少人数制ではローカル差あり)

安全面の確認ポイント(余白・路面・設備)

  • タッチライン外の余白、特にベンチ・フェンス・段差からの距離
  • 路面の凹凸・滑り・水たまり。石や器具の撤去
  • ゴールの転倒防止(重り・杭)とネットの破れ

発達段階に合うかを見極める質問

  • 全員がボールに関与できる密度か?(遠すぎて関与が薄くないか)
  • 想定したプレーモデル(幅の活用、ライン間の出入り)が機能するか?
  • 疲労・暑熱の状況に対して負荷が過度ではないか?

ケーススタディ:典型的なサイズ設定例

少人数制リーグ(7〜8人制)のレイアウト例

  • ピッチ:56〜62m × 40〜45m(8人制)、または55〜60m × 35〜40m(7人制)
  • ゴール:5×2m
  • 狙い:幅40m級でサイドの使い方を体得、PAは12〜14mでシュート局面の頻度を担保
  • 運用:フルコートを横割りにして2面作り、中央に3〜5mの安全ゾーン

中学校部活動の多目的グラウンド活用例

  • ピッチ:長さ92〜96m × 幅58〜60m(縮小フルサイズ)
  • ゴール:7.32×2.44m(固定+安全対策)
  • 運用:平日はやや狭めで密度を上げ、週末は対外試合サイズに拡張

高校・大学の公式戦を想定した設営例

  • ピッチ:105×68m
  • 安全帯:タッチライン外側2〜3m、ゴール背面3m以上を確保(会場条件に合わせて増やす)
  • 運用:強風日は幅を1〜2m絞り、ビルドアップの精度を担保するなど微調整

Q&A:現場でよくある疑問に回答

公式戦と練習でサイズが違っても問題ない?

問題ありません。むしろ練習では意図に応じて縮小・拡張し、週末の公式サイズに合わせて最終調整するのが合理的です。週のどこかで試合サイズに触れておくと、感覚が整います。

スペース不足のとき最優先で調整するのはどこ?

まず安全帯を確保。そのうえでアスペクト比1.5前後を守るように幅・長さを同率で縮めると、ゲーム品質を保ちやすいです。PAが機能する最低限の奥行きも死守します。

風・標高・気温はサイズ判断に影響する?

公式規格そのものは変わりませんが、運用上は配慮します。強風時は極端な横展開が困難なため幅を少し絞る、暑熱時は縮小して負荷を管理する、標高が高い会場ではボールが伸びることを前提に裏の距離感を確認する、といった微調整は有効です。

まとめ:サイズは「年代×意図×安全」で決める

年齢と競技形式に合わせた現実解を選ぶ

U6〜U8は25〜35×15〜25m、U9〜U10は50〜60×30〜40m、U11〜U12は56〜68×40〜50m、U13以上はフル規格へ段階的に。これはあくまで目安で、地域ルールが最優先です。

競技品質・学習効果・安全性の最適点を探る

1人あたり面積、アスペクト比、ゴール・エリアの整合を押さえれば、ゲームはクリアで学習効果が高まります。安全帯と路面チェックは毎回徹底しましょう。

次のステップ:自チームの基準表を作る

学年ごとに「試合サイズ」「練習サイズ(狙い別)」「ライン・エリア寸法」「安全帯」を一覧化すると、会場が変わっても迷いません。更新しやすいテンプレを用意しておくと便利です。

参考情報の探し方とアップデートの方法

IFAB Laws of the Game(該当セクション)の読み方

  • フィールドの大きさ、ライン、ゴール、エリア寸法、ライン幅などの許容範囲を確認
  • 国際試合の帯と一般試合の帯の違いを把握

JFAの年代別ガイドラインと通達の確認

  • 小学生年代の競技形式(8人制など)や使用ゴール、縮小エリアの目安
  • 大会ごとの特記事項(オフサイドの扱い、交代、再開方法など)

地域協会・大会規定のチェックポイント

  • 会場の制約に応じたサイズの許容幅
  • ラインカラー・マーキングの指示、測量・設営の締切
  • 安全基準(ゴール固定、余白、用具)と審判確認手順

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