2026年W杯でパラグアイに注目する理由

南米予選のダイナミクスと出場枠拡大が与える影響

2026年大会は48か国制となり、南米（CONMEBOL）からの出場枠は拡大。直接出場枠が増え、さらに大陸間プレーオフの可能性も広がります。パラグアイのように守備強度が高く、接戦で粘れるチームには有利な環境です。南米予選は消耗戦になりがちですが、勝点1を積み上げやすい守備型の国が、ラストで跳ねるケースは珍しくありません。

世代交代の進展と欧州主要リーグでの存在感

経験豊富なコアに、欧州・米州でプレーする20代前半のアタッカーが増え、スピードと決定力の上積みが見込めます。10代後半〜20代前半の台頭も続いており、攻守の移行（トランジション）に強いアスリートタイプが増えたことは、現代サッカーの流れにマッチします。

守備強度とトランジションの強みを活かす土台

パラグアイの伝統は「組織的なブロック守備」と「少ないチャンスを点に変える効率の良さ」。最終ラインの空中戦とカバーリング、中盤の走力、前線の速攻。これらがひとつのストーリーとして噛み合い始めると、格上相手にも怖いチームになります。

注目の攻撃陣：試合を決めるタレントは誰か

ミゲル・アルミロン：プレスとカウンターの旗手

前線からのハイプレス、背後への抜け出し、切り返しからのシュート。アルミロンは守備から攻撃へ一気に切り替える場面で力を発揮します。縦へ速く、しかも連続スプリントが効くタイプなので、チーム全体の守備スイッチにもなります。カウンターの最初の一歩目と、ファー詰めの質は要チェックです。

フリオ・エンシソ：最終局面の決定力と創造性

エンシソはゴール前での「狭い局面の解決力」が魅力。カットインからのミドル、ワンタッチでの壁パス、ボックス内の細かなタッチでズラすシュート。大舞台で必要な“瞬間最大火力”を持つタイプで、セットプレー後のセカンドボールからでも一発を狙えます。

ラモン・ソサ：縦への推進力と1対1の仕掛け

ソサはスプリントで相手の背後を取り、逆足への持ち替えからクロスやシュートまで持ち込めます。左サイドで幅を取りながら、インナーラップの味方を使う柔軟性もあり、トランジション時の出口として機能しやすいウイングです。

ディエゴ・ゴメス：ボックス・トゥ・ボックスの新機軸

ゴメスは推進力のあるセントラル。相手の嫌がる背後ラン、ボックス侵入、リカバリーの速さが魅力です。中盤の強度を落とさずに攻撃へ厚みを出せるため、終盤の押し込みやセカンドボール回収で価値が上がります。

アンヘル・ロメロ／オスカル・ロメロ：経験が生む局面打開

ツインズの存在はチームに落ち着きをもたらします。アンヘルはゴール前の嗅覚と運動量、オスカルはラストパスとキック精度。拮抗した試合での「ワンプレーの質」に期待がかかります。

キーとなる中盤：バランスと前進の両立

マティアス・ビジャサンティ：運動量と対人守備

広い範囲をカバーし、球際に強いボランチ。前向きで奪ってからのシンプルな前進パス、相手のカウンターを遅らせるファウルマネジメントなど、「勝点を拾う」プレーができる選手です。

アンドレス・クバス：守備的MFのバランサー

守備判断とポジショニングの巧さが持ち味。最終ラインの前で迎撃し、味方CBの背後をケア。ボール保持時は安全な角度での受け直しができ、試合を落ち着かせる役割を担えます。

アレハンドロ・ロメロ・ガマラ（カク）：ラストパスとプレースキック

密集地帯に通すスルーパス、セットプレーの配球で違いを作れるアタッカー系MF。引いた相手に対し、スピードだけに頼らない崩しの選択肢を与えます。交代投入でも効くタイプです。

守備の屋台骨：堅守速攻を支える面々

グスタボ・ゴメス：空中戦とリーダーシップ

対人と空中戦の強さに加え、ライン統率の声掛けが光るCB。セットプレーでは得点源としても脅威です。守備ブロックの高さを決める“基準”になれる存在です。

オマル・アルデレテ：左利きCBの配球と対人対応

左からの前進パス、縦パスの刺し込み、スライドの速さが武器。右利き中心のDFラインにおいて、ビルドアップのバランスを整えます。長い対角の配球でサイドチェンジも可能です。

ロベルト・ロハス：右サイドの機動力とオーバーラップ

スプリント回数と出入りのタイミングがよく、幅取りとクロスの質でチャンスを増やします。守備ではアプローチの速さでボールを外側へ追い込みやすいSBです。

GK カルロス・コロネル：ショットストップと繋ぐ力

至近距離の反応、1対1の間合い作りが安定。足元のビルドアップにも参加でき、相手のプレスを外す安全弁として機能します。試合終盤のハイボール処理も頼りになります。

次に来る若手・ダークホース

エンソ・ゴンサレス：スピードスターの伸びしろ

縦への突破力とカウンター適性が高い若手ウイング。内外のレーンを使い分け、シンプルに加速してチャンスを作れます。守備での戻りも早く、代表のコンセプトにハマりやすいタイプです。

イバン・フランコ：セカンドトップの嗅覚

ゴール前での「こぼれ球の予測」と、狭いスペースでのワンタッチが持ち味。途中出場での流れ変換、セットプレー後の二次攻撃で効きます。

国内リーグ（セロ・ポルテーニョ／オリンピア／リベルタ）からの抜擢候補

国内3強からは、年齢に関わらず「守備に走れて、縦の推進力がある」選手が台頭しやすい傾向。CBでは対人の強さとリカバリー速度、サイドでは1対1とクロスの再現性が注目ポイントです。

予想布陣と起用プラン（テキストでイメージ）

4-2-3-1の強みと弱み：二重の盾と速攻の連結

［4-2-3-1］GK-4DF-2ボランチ-3シャドー-1CF。

• 強み：ダブルボランチで中央を締め、奪ってからアルミロンやソサへ素早く展開。トップ下にエンシソ（もしくはカク）を置くとカウンターと遅攻の両立が可能。
• 弱み：サイドバックの背後が狙われやすい。トップが孤立すると前進が詰まりやすい。
• 解決策：CFのポスト精度と、逆サイドウイングのファー詰めを徹底。SBの出所に合わせてボランチが外カバー。

4-3-3での配置と役割：内外のレーン活用

［4-3-3］でインサイドハーフにゴメスとビジャサンティ、アンカーにクバス。ウイングにアルミロンとソサ、CFに決定力のあるストライカー。

• 狙い：中央に3枚を置き、奪ってから縦へ最短ルート。ウイングは幅と裏抜けで相手SBを固定。
• ポイント：アンカー前のスペース管理。インサイドハーフの背後ランでボックス侵入回数を増やす。

終盤の交代カードとゲームシナリオの想定

• リード時：ウイング→守備的な選手、ボランチを一枚増やし5-4-1でブロック化。ロメロ兄弟のキープ力で時間を使う。
• ビハインド時：カク投入でプレースキック強化、CFをターゲット型へ。サイドは1対1勝負ができる選手を重ねて波状攻撃。
• 拮抗時：インサイドハーフの推進力を強め、サイドチェンジの頻度を上げて相手の体力を削る。

データで読む「光る」選手の条件

攻撃指標：G+A/90、xG・xA、プログレッシブキャリー

• G+A/90（90分あたりの得点＋アシスト）：効率の目安。短時間でも結果を出しているか。
• xG・xA：チャンスの質を測る指標。偶然ではなく“再現性”があるかを確認。
• プログレッシブキャリー：前進ドリブルの量と質。カウンター適性の評価に有効。

守備指標：デュエル勝率、PPDA関連、被シュート抑制

• デュエル勝率：CBとボランチは50％を大きく超えるかが目安。
• PPDA関連：前線の守備強度を示す参考値。個人のプレス回数・回収位置と合わせて見る。
• 被シュート抑制：ブロック内で何本打たれているか。ゴメスらの統率が効いているかの目印。

コンディション指標：出場時間、連戦耐性、怪我歴

• 直近の出場時間：連続先発か、途中出場中心か。
• 連戦耐性：3〜4日周期の試合でパフォーマンスが落ちないか。
• 怪我歴：筋損傷の再発リスクと復帰後のスプリント数に注意。

試合ごとのチェックポイント（観戦ガイド）

キックオフゾーンのプレス強度とライン設定

開始5分は“今日の守備ラインの高さ”を測る時間。前から行くのか、中盤で待つのか。アルミロンの出足、ボランチの押し上げで判断しやすくなります。

サイドでの数的優位の作り方とスイッチング

右で作って左で仕留める、またはその逆。SB＋IH＋ウイングの3人目の動きが出ているか、逆サイドはフリーか。ソサの対面で1対1を作れていれば、ゴールの匂いが強まります。

セットプレーの狙い所：ニア・ファー・セカンド局面

• ニア：ゴメスのニアアタックで触らせ、ファーで仕留める配置に注目。
• ファー：セカンドボールでエンシソやカクが構えているか。
• CK守備：ニアの人選とマーク受け渡しの声が出ているか。

2026年までのロードマップ：評価のタイムライン

代表戦日程とテストマッチでの評価機会

予選や親善試合は「組み合わせの確認」と「オプションの試運転」。強豪相手への耐久力、同格以下への主導権の握り方の両面をチェックしたいところです。

クラブでの役割変化と適応力の確認

クラブでのポジション変更（ウイング→トップ下、IH→アンカーなど）は代表起用のヒント。新しい役割でのデータ（タッチ位置、前進回数、奪取位置）を追いましょう。

怪我・復帰のリスク管理とフォーム曲線

大会直前の「仕上がり期」にピークを持ってこられるか。復帰後に出場時間を段階的に伸ばせているかが重要です。

高校・大学・社会人プレーヤーが学べるエッセンス

トランジションの走力と復帰速度

奪った瞬間の一歩目、失った瞬間の3秒ダッシュ。練習では「奪ったら縦、失ったら即撤退」を合言葉に、短時間の高強度反復を取り入れると効果的です。

ポジショニングとスキャンの習慣化

受ける前の首振り（スキャン）と、味方・相手・スペースの同時把握。2回以上の首振りを意識し、体の向きを半身で作るだけで前進率が上がります。

セットプレーの事前準備と役割理解

ニア役、ブロック役、キッカー、セカンド回収。自分の役目を言語化し、合図（コール）を決めておくと再現性が高まります。

保護者向け：育成年代で伸ばしたい能力

走力とスプリント技術の基礎づくり

フォームづくりは短い距離の反復から。腕振りと接地の位置、前傾姿勢の角度を丁寧に。長距離走より「短距離×休息」の質を重視しましょう。

1対1の守備・攻撃スキルの反復

守備は「寄せる角度」と「遅らせる」から。攻撃は「最初のタッチで前を向く」習慣を。小さな勝ち体験を積むと自信が伸びます。

負荷管理・睡眠・栄養による怪我予防

成長期は無理が禁物。週ごとの練習量を見える化し、睡眠リズムを整える。たんぱく質と炭水化物、発育に必要な微量栄養素も意識しましょう。

よくある質問：評価の不確実性と見極め方

代表入り未確定の選手をどう評価すべきか

「現在のクラブでの役割」と「代表の戦術適性」を分けて考えるのがコツ。プレー強度・連続スプリント・セットプレー貢献など、役割別の指標で見れば過大評価を避けられます。

リーグ水準の違いをどう読み替えるか

単純な得点数ではなく、xGやプレッシャー下のパス成功率、強度の高い相手との対戦成績を参照。国やリーグが変わっても通用する「再現性」を探しましょう。

予選と本大会でのパフォーマンスの差

大会は短期決戦で相手分析が深く、時間帯マネジメントやセットプレーの重みが増します。予選での「強度×再現性」に加え、「修正力」と「交代後の即効性」を評価軸に加えるのが有効です。

最新情報・スタッツの追い方

代表公式発表と記者会見のチェックポイント

招集リスト（convocados）でコンディションと序列を確認。監督会見では、負傷者の復帰予定やシステム変更の示唆がヒントになります。

クラブでの出場状況・ローテーションの把握

連戦のローテーションに入っているか、途中交代の時間帯が早まっていないかをチェック。プレー位置の変化は代表での起用にも直結します。

スカウティングレポートと指標の読み方

攻撃ではG+A/90とxG/xA、守備ではデュエル勝率と回収位置ヒートマップ。相手強度（対戦相手の順位や守備指標）を掛け合わせて解釈するのがポイントです。

まとめ：2026年W杯で光るのは誰か？

現時点の有力候補と複数シナリオ

• 筆頭候補：フリオ・エンシソ（決定力と勝負強さ）、ミゲル・アルミロン（プレスとカウンター）。
• 押さえ：ラモン・ソサ（縦推進）、ディエゴ・ゴメス（中盤の前進力）。
• 守備の核：グスタボ・ゴメス（統率と空中戦）、クバス（バランス）、GKコロネル（安定感）。

リスク要因とブレイク候補の整理

• リスク：主力のコンディション、サイド背後のスペース管理、得点源の固定化。
• ブレイク候補：エンソ・ゴンサレス（速攻の切り札）、イバン・フランコ（途中出場の一撃）。

本大会直前に確認すべき最終チェックリスト

• 主力の連戦出場とスプリント数は落ちていないか。
• セットプレーの得点率・被得点率は改善しているか。
• 4-2-3-1と4-3-3の使い分け基準が明確か。
• 交代1枚目で流れを変えられる人材がベンチにいるか。

総じて、パラグアイは「守備の堅さ×トランジション×個の一撃」で勝ち筋を描けるチームです。エンシソとアルミロンのどちらかが“波に乗る”大会になれば、上位食いは十分にあり得ます。

おわりに

大切なのは、名前だけでなく「役割」と「再現性」を見ること。観戦時は、守備から攻撃へ切り替わる瞬間の走力、セットプレーの設計、終盤の交代策に注目してみてください。パラグアイの強みが噛み合うとき、2026年の舞台で必ず光る選手が現れます。