ライン名称と役割を正しく理解できると、判断が一段速くなり、味方との共有も一気にスムーズになります。本稿は「ピッチ ライン名称 図解で迷いゼロの要点整理」をテーマに、実戦で迷いがちな線の名前・意味・再開位置・距離感を、テキストだけで即イメージできるよう整理しました。公式ルール(IFAB競技規則)をベースに、年代や会場で起きやすい例外・ローカルルールの注意点も補足します。今日のトレーニングや次の試合前チェックに、そのまま使ってください。
目次
- はじめに:ピッチの「線」を理解するとプレーが変わる
- ピッチ全体の寸法とラインの基本ルール
- サイドとエンド:タッチラインとゴールライン
- 中央線とセンターサークル/センターマーク
- ペナルティーエリアとその周辺
- コーナー付近:コーナーアークとフラッグポスト
- テクニカルエリアとベンチ周辺の表示
- よくある誤解TOP5:ライン名称とルールの勘違い
- ラインを武器にする戦術感覚
- 練習ドリル:ラインを使って判断を磨く
- 世代・会場によるバリエーションと注意
- 迅速な判定理解に役立つ観戦・コーチングの視点
- 用語対照ミニ辞典(日本語/英語/通称)
- 公式情報へのアクセスとアップデート確認
- 数値早見:主要寸法・距離の要点
- まとめ:ラインを読める選手が速くなる
はじめに:ピッチの「線」を理解するとプレーが変わる
この記事で得られる効果と活用法
・用語の迷いがゼロになる:タッチライン/ゴールライン/ハーフウェーライン/ペナルティーエリア(PA)/ゴールエリア/センターサークル/D(ペナルティーアーク)など、名称と意味が一対一で整理されます。
・判定の根拠が即答できる:インプレー/アウトオブプレー、再開位置、9.15mの取り方が言葉で描けるようになります。
・戦術に直結:ラインを「境界」「距離の物差し」「優位のトリガー」として使う具体例を提示します。
競技規則(IFAB)とローカルルールの位置づけ
基本はIFAB「サッカー競技規則」に従います。大会要項や施設条件により、一部の寸法や運用(例:テクニカルエリアのサイズ、少年用の追加ライン)が調整されることがあります。迷ったら大会要項と審判の説明を最優先に確認しましょう。
図解なしでも迷わない“テキスト図解”の読み方
本稿では「線の名前→何の境界か→再開時の基準→距離の取り方」の順に、短い箇条書きと数値でイメージできるように説明します。ラインは“その内側のエリアに含まれる”ことを常に念頭に置いて読むと、理解が安定します。
ピッチ全体の寸法とラインの基本ルール
長方形・標準寸法の範囲と例
・ピッチは長方形。長辺がタッチライン、短辺がゴールライン。
・一般試合の目安:長さ90〜120m、幅45〜90m。
・国際試合の目安:長さ100〜110m、幅64〜75m。
・8人制や少年用は大会要項で別設定があります。
ラインの色・幅(最大12cm)・一貫性の原則
・全てのラインは同一幅で描く(最大12cm)。
・ラインはそれが囲むエリアの一部(PAの線はPAに含まれる等)。
・ゴールポストとクロスバーの幅も最大12cm、色は一般的に白。ラインの色は大会規定に従います(多くは白)。
・競技規則にない追加マーキングは不可(大会要項で許可されたものを除く)。
国際試合と一般試合、年代別の寸法差
・国際試合は上記の狭い範囲に収まるよう設営されるのが基本。
・少年・女子・狭小会場では安全と競技性の両立のために寸法が調整されます。
・同じ会場でも大会ごとに寸法・追加マーキングが変わることがあるため、試合前に現地確認が必須です。
ゴールの寸法(7.32m×2.44m)と設置の基本
・内々寸で幅7.32m、高さ2.44m。
・しっかり固定(転倒防止)。ネットに破れがないか、地面とのすき間がないかもチェック。
・ゴールライン上に正しく設置されていることが前提です。
サイドとエンド:タッチラインとゴールライン
正しい名称と俗称の違い(サイド/エンドの呼び方)
・長辺=タッチライン(通称:サイドライン)。
・短辺=ゴールライン(通称:エンドライン)。公式表記は「ゴールライン」が正。
・呼称は揺れても意味の取り違えを防ぐため、チーム内では正式名称で統一しましょう。
インプレー/アウトオブプレーの判定基準
・ボールがラインに触れている間はインプレー。全周(全面)が完全に越えて初めてアウト。
・ゴールも同じ考え方で、ボールの全体がゴールラインを完全に越えて中へ入ったときに得点。
スローイン・ゴールキック・コーナーキックの再開位置
・スローイン:ボールがタッチラインを越えた地点から。両足の一部がライン上または外側の地面に接地していれば可。
・ゴールキック:守備側のゴールエリア内の任意の地点から。ボールがけられて明確に動いた瞬間にインプレー。
・コーナーキック:ボールが最後に触れたのが守備側で、ゴールラインを越えた場合。該当するコーナーアーク内から。
中央線とセンターサークル/センターマーク
キックオフの配置と手順
・センターマーク上にボール。攻撃側1人がキック。
・全員が自陣に入り、相手はボールから9.15m(センターサークルの外)に位置。
・ホイッスル後、ボールがけられて明確に動いたらインプレー。前後どちらへけってもOK。直接得点も可能(自陣ゴールへ直接入った場合は相手のコーナーキック)。
9.15mの意味:距離確保の基本
・フリーキック、コーナー、キックオフなどで相手が下がるべき最小距離。センターサークルの半径は9.15m。
・審判の合図がなくても、原則としてこの距離は守る必要があります。
ハーフウェーラインとオフサイドの関係(自陣での適用)
・オフサイドは相手陣内でのみ成立。ボールが味方に触れた/プレーされた瞬間、身体の一部が相手陣内にあるかが基準。
・自陣(ハーフウェーラインを含む)にいれば、オフサイドポジションにはなりません。
ペナルティーエリアとその周辺
ペナルティーエリアの寸法と範囲(16.5m)
・各ゴールポストの内側からタッチライン方向へ16.5m、同じ距離で線を引き、その外端をゴールラインと平行に結ぶとPA。
・ラインはPAに含まれます(境界上のファウルはPA内として扱われる)。
ペナルティーマーク(11m)とペナルティーアーク(D)の役割
・ペナルティーマークはゴールラインから11m。PKはこの点から実施。
・ペナルティーアーク(D)は、マークを中心とした半径9.15mの外側半円。PK時、キッカーとGK以外が入れない待機エリアの境界として機能。DはPAの外です。
ゴールエリア(5.5m)の意味と再開での使い方
・各ポスト内側から5.5m先の点を結んだ長方形。
・守備側のゴールキックはこのエリア内ならどこからでも実施可。
・守備側の間接/直接FKが自陣ゴールエリア内に与えられた場合、キック地点の扱いが特例になります(例:守備側のIFKはゴールエリア内の任意地点からではなく、近いゴールエリア線上に移される状況があるなど。大会要項・最新規則の記述を確認)。
PK/DFK/IFKに関わる境界の理解
・PA内の守備側の直接FKファウル=PK(境界線上もPA内扱い)。
・守備側の自陣PA内で与えられるゴールキック/守備側FKは、ボールがけられて明確に動いた瞬間にインプレーとなり、PA外に出る必要はありません。相手はボールがインプレーになるまでPA外にいる義務があります(早い再開で相手が出る時間がなかった場合の扱いは審判判断)。
コーナー付近:コーナーアークとフラッグポスト
コーナーアーク(半径1m)の扱い
・各コーナーに半径1mの四分円。ラインはアークに含まれます。
・フラッグポストは高さ1.5m以上、先端は尖っていないもの。
コーナーキックのボール設置許容範囲
・ボールの一部がアークの線上に触れていればOK。アーク外へ完全に出るのは不可。
・小さな角度でも置き方次第で助走やアウトスイング/インスイングが変わるため、ミリ単位でこだわりましょう。
守備側の距離(9.15m)と配置の工夫
・相手はボールから9.15m下がる義務。
・ニアポスト前のブロック係やキッカーへのプレッシャー役の立ち位置は、アークとタッチラインの交点を“物差し”に。
テクニカルエリアとベンチ周辺の表示
テクニカルエリアの基本と行動範囲
・ベンチ前に矩形で示され、指示はこの範囲内から。人数・行動の制限は大会要項に従います。
・不必要にタッチラインへ近づかない、抗議で越境しないのが原則。
交代・連絡の導線と表示
・交代はハーフウェーライン付近で。第4の審判や記録係との連携表示が設けられることがあります。
・交代ゾーンの有無は試合前に確認し、選手には動線を周知。
運営表示のバリエーションと留意点
・一部会場にはチームベンチ番号、メディカル通路、ウォームアップエリアが明示されます。
・公式ライン以外の表示は競技の妨げにならないよう運用されます。
よくある誤解TOP5:ライン名称とルールの勘違い
「エンドライン」ではなく「ゴールライン」
俗称として使われることはありますが、公式は「ゴールライン」。チーム内の言語を合わせるとミスが減ります。
「D(ペナルティーアーク)はPA内」ではない
DはPAの外。PK時の待機距離(9.15m)を確保するための半円です。
「ラインに触れた=アウト」ではない(全周越えが条件)
ボールの一部でもライン上に残っていればインプレー/得点では未成立。完全に越えたかを基準に判断します。
「ゴールキックはPA外に出す必要がある」は現行では不要
ボールがけられて明確に動いた時点でインプレー。相手はその瞬間までPA外にいる義務があります。
「半円は装飾」ではない(マークからの9.15m確保)
Dは戦術的にも重要。PKのリバウンドを狙う配置や、守備の間合い管理に直結します。
ラインを武器にする戦術感覚
タッチラインを“第三の守備者”として使う
・守備はタッチラインに追い込み、選択肢を二択まで圧縮。
・攻撃は逆にライン際で身体を開き、外足トラップで内外両方を見せる。ラインと相手の間に体を差し込むのがコツ。
DとPA角を起点にした攻守の優位性
・攻撃:右利きが左のPA角(コーナー・オブ・ボックス)で受け、Dの外周を使ってカットイン→ブラインドショット。
・守備:PA角に“見えない柱”を立て、内切りを封じて外へ誘導。二人目はDの弧に沿ってスライド。
センターサークル外周を使うビルドアップの型
・キックオフや自陣FKで、サークルの外周を基準に三角形を形成。9.15mの距離感でプレスの届かない角度を作ると前進が安定。
・ボールホルダーの視野に“サークル接線上のサポート”を走らせると前向きで受けやすい。
コーナーアークを起点にしたショートコーナー設計
・アーク内ギリギリの設置→アウトステップで外へ一旦ずらす→ワンツーでペナ角侵入。
・リリース役はアークとPA角を結ぶ短いラインを踏まない工夫で、相手の9.15mを最大化。
練習ドリル:ラインを使って判断を磨く
9.15m感覚トレーニング(歩測・ステップ)
・自分の走歩で9.15mが何歩かを覚える。
・コーチがコール→即座に距離確保の位置取り。審判の介入前に自動化するのが目的。
タッチライン際の圧縮脱出2対2
・縦15m×横8m、片側がタッチライン。
・攻撃は外足トラップ→内→縦→リターンの3手先まで共有。守備はラインを背に身体の向きでコース制限。
ペナルティーアーク基点のシュート&カットイン
・Dの外周にマーカーを置き、利き足側へボールを運びながら角度を作る。
・「D外→PA角→ファーポスト」を一直線で狙う反復。
ゴールエリア起点のGK–CBビルドアップ連携
・ゴールエリアの角と中央を基準点に。
・相手の1stラインに対して、CBはPAライン上で“縦奥行き”と“角度”を同時に作る。
・ゴールキックのインプレー化が早い点を活かし、相手の撤退前に背後 or 内部へ差し込む。
世代・会場によるバリエーションと注意
少年用・女子・狭小会場での寸法調整
・ゴールサイズ、PA/ゴールエリア、ピッチ寸法が縮小される場合あり。
・8人制ではオフサイドラインがハーフウェーライン等に簡略化されるケースも(大会要項要確認)。
学校グラウンド等の暫定ラインと確認事項
・石灰ラインやマットの継ぎ目で誤差が出やすい。
・試合前にPA角、ペナルティーマーク、センターサークルの半径を歩測で点検。
・ゴールの固定、コーナーフラッグの高さ・安全性も必ず確認。
一部大会の追加マーキング(例:ビルドアウト/アップライン等)
・年代育成目的で追加ラインが採用されることがあります(例:GK再開時、相手は指定ラインまで下がる等)。
・採用の有無と運用は事前周知で。ラインの色や太さが公式線と混ざらないかも要チェック。
迅速な判定理解に役立つ観戦・コーチングの視点
現地観戦で注視すべき基準線
・オフサイド:ハーフウェーラインと最終ラインの位置関係。
・PA境界:ファウルが内/外どちらか。
・ゴールライン:ボールが全周越えたかを副審の立ち位置と合わせて見る。
動画分析での擬似基準線の引き方
・フリーアプリでも静止画スクリーンショット上に水平/垂直補助線を引くと、オフサイドや再開位置の検証がクリアに。
・センターサークルの円弧を“半径9.15mの定規”として距離感の目安に使う。
試合前チェックリスト(ライン・ゴール・旗の確認)
・ライン幅の一貫性(最大12cm)と欠損なし。
・ペナルティーマーク11m、ゴールサイズ7.32×2.44m、コーナーアーク半径1m。
・ゴール固定、ネット破れなし、フラッグ1.5m以上。
・大会要項のローカルルール(交代、テクニカルエリア、追加ライン)を最終確認。
用語対照ミニ辞典(日本語/英語/通称)
タッチライン / Touch line / サイドライン
ピッチ長辺の境界。スローインの基準線。
ゴールライン / Goal line / エンドライン
ピッチ短辺の境界。得点・GK/CK判定の基準線。
ハーフウェーライン / Halfway line
ピッチを二分する中央線。キックオフの配置基準。
ペナルティーエリア / Penalty area / ボックス
PA。ファウルでPKが与えられる範囲。ゴールキックや守備側FKの特則がある。
ペナルティーアーク / Penalty arc / D
PK時の9.15m距離確保のための半円。PA外。
公式情報へのアクセスとアップデート確認
IFAB競技規則最新版の入手先
・The IFAB公式サイトで最新の「Laws of the Game」を閲覧・ダウンロード可能。日本語版は国内協会の公開資料を参照。
協会・大会要項の読み解きポイント
・寸法・交代・追加ライン・テクニカルエリア・用具・懲戒の特則を要確認。
・キックのインプレー条件や間接/直接FKの扱いは毎年の改定要チェック。
ルール更新がプレーに与える影響の確認手順
・変更点を「再開タイミング」「距離」「位置」の3観点でメモ化→チーム共有→練習で再現。
・主審のプレゼンや競技運営の通達は保存しておくと便利です。
数値早見:主要寸法・距離の要点
ピッチ寸法の主な範囲(長さ・幅)
・一般:長さ90〜120m、幅45〜90m。
・国際:長さ100〜110m、幅64〜75m。
重要距離:9.15m、11m、5.5m、16.5m、1m
・9.15m=キック時に相手が下がるべき最小距離、センターサークル半径、Dの半径基準。
・11m=ペナルティーマーク。
・5.5m=ゴールエリアの奥行き。
・16.5m=ペナルティーエリアの奥行き。
・1m=コーナーアークの半径。
ゴール寸法7.32m×2.44mとライン幅最大12cm
・ゴール内々寸7.32×2.44m。
・全ラインは同一幅・最大12cm。ポスト/バーの太さも最大12cm。
まとめ:ラインを読める選手が速くなる
要点の総復習と実戦への落とし込み
・線は「名称=役割=再開基準」の三位一体。
・“ラインはエリアに含まれる”“9.15mは万能の物差し”“全周越えたらアウト”の3原則で迷いをなくす。
・PA、D、ゴールエリア、コーナーアークは特にプレー選択を左右します。境界を味方にできると判断が一段速くなります。
練習計画への反映と次の一歩
・今日のトレーニングに「距離感の鬼ごっこ(9.15m)」「PA角起点の2局面」「タッチライン脱出」を一つずつ入れる。
・次の試合前には、寸法・ライン・ゴール・フラッグを3分で点検。
・公式情報の更新を月1でチェックし、チームの用語と運用を常に同期させましょう。ラインが読めると、判断のキレが変わります。
