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用語集・初心者向け50選:今さら聞けない基礎を完全整理
サッカーの上達は、「言葉」を正しく理解するところから始まります。同じプレーでも、意味や意図を言語化できれば、練習の質もチームでの連携も一段とスムーズに。ここでは、試合観戦にもトレーニングにも役立つ基礎用語50個を、ルール・技術・戦術・データまで一気に整理しました。事実(ルールや定義)と、現場で役立つポイント(主観的アドバイス)を分けて、シンプルにまとめています。
はじめに:この用語集の使い方
各項目は「定義」→「プレーのコツ/よくある誤解」の順で読めるようにしています。迷ったら、まず定義で意味を押さえ、実戦で試すときはコツに目を通す、の流れがおすすめです。チームの共通言語としても活用してください。
ルール・競技規則の基礎
オフサイド
味方からボールが出た瞬間、相手陣内で「ボールおよび相手競技者2人目(通常はGKとDF)より前」に関与すると反則。関与とはプレーへの干渉、相手への妨害、こぼれ球からの利益獲得などです。スローイン・ゴールキック・コーナーキックからはオフサイドになりません。
- コツ:出し手のモーションで「一歩遅らせて斜めに抜ける」だけでラインぎりぎりを攻略しやすい。
- 誤解:自陣ではオフサイドは適用されません。
アドバンテージ
ファウルがあっても、反則された側に有利が継続するなら審判がプレーを流す判断。後で警告や注意が与えられる場合もあります。安全性が脅かされる場面では中断されます。
- コツ:倒れても即アピールより、1タッチ先を見て続ける姿勢が得点につながる。
- 誤解:アドバンテージは「必ず」適用されるわけではありません。判断は主審に委ねられます。
ハンド(意図的な手・腕の使用)
手・腕で意図的にボールに触れる、または腕の位置や動きで体を不当に大きくしてボールを止めると反則。肩は手・腕に含まれません。距離、反応時間、腕の位置、意図などを総合的に判断します。
- コツ:守備時は肘を体側に畳み、シュートブロックも「面」でなく「線」で当てる意識を。
- 補足:攻撃側の偶発的ハンドが直後の得点に直結する場合、反則とされることがあります。
直接/間接フリーキック
直接FKはそのままゴールを狙えます(例:キック・チャージ・ホールディング・ハンドなど)。間接FKは味方または相手が触れてから得点が認められます(例:オフサイド、危険なプレー、GKの6秒超過、バックパス手でキャッチなど)。
- コツ:間接FKは素早いリスタートで混乱を突くのが定番。
- 誤解:審判は腕を上げたまま(間接)/下ろす(直接)で区別を示します。
ペナルティキック(PK)
守備側の直接FKに相当する反則が自陣ペナルティエリア内で起きたときに与えられます。キッカーはボールを前方へ蹴り、GKはキックの瞬間に少なくとも片足がゴールライン上(もしくはその上方の線上)にある必要があります。
- コツ:助走は「軸足の置き所」を固定できる長さで十分。狙いはGKの癖(先動き)に合わせる。
- 補足:過度なフェイントは警告対象になり得ます。
スローイン
両手で頭の後ろからボールを投げ、両足はタッチライン上または外側の地面に接地。直接得点はできません(相手ゴールへ直接入った場合はゴールキック)。スローインからはオフサイドになりません。
- コツ:味方の足元だけでなく、背後のスペースへ投げる「第2の選択肢」を常に用意。
- 誤解:ジャンプしながらは不可。片足でも離れれば反則です。
ゴールキック
攻撃側が最後に触れてゴールラインを割った場合に守備側に与えられます。ボールはペナルティエリア内のゴールエリアから蹴られ、蹴られて明確に動いた瞬間にインプレー。相手はボールがインプレーになるまでPA外にとどまります。
- コツ:合図を待たずに素早く再開できると、前進の角度が作りやすい。
- 誤解:味方はPA内で受けられますが、相手は入れません(ボールインプレーまで)。
コーナーキック
守備側が最後に触れてゴールラインを割った場合に攻撃側に与えられます。直接ゴールを狙えます。相手は9.15m離れる必要があり、キッカーは二度続けて触れられません。
- コツ:ニアへ速いボール→フリックでファー、が最も再現性の高いパターン。
- 誤解:ボールはコーナーエリア内にかかっていればOK(線上含む)。
警告・退場(イエローカード/レッドカード)
イエローは非紳士的行為、度重なる反則、異議、遅延行為など。レッドは著しく不正なプレー、暴力行為、得点機会の阻止(DOGSO)など。二枚目のイエローは退場です。
- コツ:抗議より「次の一手」。ファウルの基準は試合ごとに違うため、前半10分までに傾向を観察。
- 補足:主将であっても判定の変更は求められません。冷静さが武器です。
キックオフ
試合開始・後半開始・得点後の再開。自陣/敵陣いずれにも蹴れます。直接ゴールは認められます(自軍ゴールは不可でコーナー扱い)。
- コツ:合図直後の素早いバックパス→ロング対角で一気に敵陣へ。
- 誤解:必ず二人目が触れる必要はありません。
ポジションと役割の基本
ゴールキーパー(GK)
最後方から守備とビルドアップを統率。シュートストップ、クロス対応、背後のカバー、配球が主な役割。手が使えるのは自陣PA内のみです。
- コツ:一歩目の準備姿勢(膝軽く曲げ、前傾)で対応範囲が激変。
- 補足:現代型は足元の技術と背後のスイーパー能力が重視されます。
センターバック(CB)
中央の守備要。対人、空中戦、ライン統率、縦パスの圧縮と配球。ビルドアップの起点にもなります。
- コツ:「見る→寄せる→奪う」を分け、無理な前進はカバーとセットで。
- 補足:縦パスを刺す技術はチームの攻撃レベルを底上げします。
サイドバック(SB)
サイドの守備+攻撃参加。1対1対応、オーバーラップ、クロス、インナーラップで中盤化する動きも求められます。
- コツ:相手WGの利き足に応じて立ち位置を半身で調整。
- 補足:内側で数的優位を作る「偽SB」役割も一般的です。
ウイングバック(WB)
3バック時のサイド担当。縦の往復が多く、守備強度と運動量、クロス精度が鍵。最終ラインまでの戻りも仕事です。
- コツ:縦突破と内側受けを交互に出して相手SBを迷わせる。
ボランチ(DMF)
中盤底。守備の遮断、配球、ゲームコントロール。相手の縦パスを「予測で刈る」力が要。
- コツ:常に半身で受け、前向きの次アクションを確保。
インサイドハーフ(CMF)
攻守のつなぎ役。ライン間での受け、前進の角度作り、二列目からの飛び出しも担当します。
- コツ:受ける前の首振り2回で周囲360度を確保。
ウイング(WG)
サイドで幅を取り、突破・カットイン・ラストパス・シュートで違いを作る選手。1対1の勝負が多いポジションです。
- コツ:最初の3mの加速を鍛えると縦も中も通りやすくなる。
センターフォワード(CF)
最前線。得点、ポストプレー、裏抜け、プレスのスイッチ役。背負いと裏の両立が理想です。
- コツ:受ける前に相手CBの肩を軽く押さえ「基準点」を作ると収まりやすい。
基本技術・スキル
ボールコントロール(トラップ)
ボールを意図した場所と速さで止める/運ぶ技術。面を柔らかく作り、次の動作に有利な位置へ置くのが基本です。
- コツ:「止める」より「落とす・運ぶ」の発想でファーストタッチを前進方向へ。
ドリブル
ボールを保持しながら前進・突破・時間を作る技術。歩幅とタッチのリズムで相手の重心をずらします。
- コツ:同じ足で2連続タッチ→逆の一歩で抜く「リズム差」を武器に。
キック(インサイド/インステップ)
インサイドは正確性、インステップは強さと伸び。支点(軸足)・当てる面・振り抜きで質が決まります。
- コツ:軸足はボール横20〜30cm、つま先進行方向、体重は前。
シュート
ゴールを狙うキック。コース/コントロール/パワーの選択が重要。GKの位置とブロッカーの脚の間(ニアレッグ)を狙う選択肢も有効です。
- コツ:振り小さく、落ち着いてグラウンダーから。強さより枠。
パス(ショート/ロング)
ショートはテンポ作り、ロングは一気の展開。ボールのスピードと足元/前スペースの使い分けが肝です。
- コツ:味方の前足に置く意識で前進を加速。
ヘディング
額の中心で当て、体幹とタイミングで飛距離と方向を出す。守備は高く遠く、攻撃は叩きつけが基本。
- コツ:踏み切りの「胸を張る→腹で固める」連動を覚える。
ターン(クライフターン等)
方向転換で相手を外す技術。クライフターンはインサイドで切り返して背後へ運ぶ代表的ターンです。
- コツ:相手に「蹴る」と思わせてから足首だけで面を返す。
フェイント(シザース/ステップ)
重心移動や足の通しで相手を騙す。シザースはボールの前で足をまたぎ、相手の重心をずらして逆へ。
- コツ:顔と肩もセットで振ると効く。足だけのフェイントはバレやすい。
ワンタッチプレー
ボールを止めずに次へ流す。テンポアップとプレス回避に有効。常に受ける前に情報を得ておく必要があります。
- コツ:「受ける前に観る」を習慣化。味方の利き足へ流すと成功率が上がる。
ボールプロテクション(キープ)
体でボールを守り、時間やファウルを引き出す。半身で相手をブロックし、支点の足でボールを隠します。
- コツ:相手とボールを一直線に置かない。軸足の外側にボールを確保。
戦術・フォーメーションの基礎理解
ポゼッション
ボールを保持しながら前進・崩しを図る考え方。保持=目的ではなく、相手の守備を動かす手段です。
- コツ:縦→横→縦の順に相手をずらすと前進角が開く。
カウンター(速攻)
奪ってから少ない手数で一気にゴールへ。前向きで受けられる選手へ最短で通すのが鍵です。
- コツ:最初の1本は「前を向いた選手」に。サイドに逃げるより中央突破が点に近い。
ビルドアップ
後方からパスで前進する過程。相手のプレスラインを剥がし、前向きの選手に届けます。
- コツ:3人目(受け手のさらに先)を常に想定して角度を作る。
サイドチェンジ
ボールを逆サイドへ素早く移し、守備の重心を剥がす。ロングボールだけでなく、斜めの短い連続パスも有効です。
- コツ:中央を経由して相手を一度内側へ寄せてから外へ。
ハーフスペース
サイドと中央の間の縦レーン。守備の基準が曖昧になりやすく、受けると前を向きやすい場所です。
- コツ:ライン間×ハーフスペースの重なりに顔を出すとフリーを得やすい。
ライン間(インターバル)
相手の最終ラインと中盤ラインの間のゾーン。ここで前を向けると一気にチャンスが広がります。
- コツ:受ける直前に相手の背中側へ抜ける「視野外スタート」が効く。
オーバーラップ
ボール保持者の外側を追い越してサポートする動き。相手の注意を分散し、クロス/カットインの選択肢を増やします。
- コツ:走るタイミングは味方のタッチと同時。早すぎると捕まります。
フォーメーション表記(4-4-2/4-3-3など)
後方からの人数配置を示す表記。数字は形であり、役割は流動的。守備と攻撃で形が変わるのが一般的です。
- コツ:数字より「どこで数的優位を作るか」をチームで共有。
守備の原則と守備戦術
プレス
ボール保持者とその近辺に素早く圧力をかける守備。背後のカバーやパスコース遮断とセットで機能します。
- コツ:「合図」は最初のスイッチ役が決める。全員で同じ方向へ追い込む。
リトリート
自陣に戻ってブロックを形成し、スペースを消して守る方法。無理に奪わず、弾き返して陣形を保ちます。
- コツ:戻るスピードより「ラインの揃え」を優先。
マンマーク
相手の特定選手に対して密着して守る。個の対応力が問われ、相手の動きに引き出されやすい面も。
- コツ:ボールウォッチャーにならない。視野は「相手7:ボール3」。
ゾーンディフェンス
エリア(ゾーン)を優先して守る方法。ボール移動に合わせて全体でスライドし、ギャップを消します。
- コツ:ボールサイドは詰め、逆サイドは絞る。横スライドの幅をチームで統一。
カバーリング
味方が前に出た背後や内側を他の選手が補う動き。1st(アタック)と2nd(カバー)の役割分担が基本です。
- コツ:前が出た瞬間、半歩下がって斜め後ろにずれる「く」の字で。
コンパクトネス
縦横の隊形を詰め、ライン間の距離を短く保つ守備原則。相手の前進とターンを難しくします。
- コツ:ボールが横に動いたら全員が3〜5mスライド。基準を声で共有。
セットプレーの基礎用語
セットプレー(SP)
FK、CK、PK、スローインなど再開プレーの総称。再現性が高く、練習の成果が出やすい局面です。
- コツ:蹴る前の合図・動き出し・ブロック役を明確に。
ニアサイド/ファーサイド
ボールの位置に近い側がニア、遠い側がファー。CKやクロスで狙いを分ける際の基準になります。
- コツ:ニアで触る→ファーで仕留める、が王道の連携。
セカンドボール
競り合いやブロック後にこぼれるボール。最初の競り合いより、回収位置の予測と準備が勝敗を分けます。
- コツ:落下点の「逆サイド前」に一人余らせると回収率が上がる。
ウォール(壁)
FK時に守備側が並ぶ壁。コース切りとGKの視野確保が目的。ジャンプ/伏せ役の使い分けで下・上を同時にケア。
- コツ:枚数は距離と角度で調整。GKの初動ラインを優先。
データ・スタッツで見るサッカー
期待ゴール(xG)
シュート位置・角度・体勢などから「得点になる確率」を数値化。内容を客観視する指標で、スコア以上に再現性を測れます。
- 活用:個人は「どこで撃てば点になりやすいか」の学習に◎。
キーパス
シュートにつながったパス。得点に直結する前段の貢献度を可視化します。
- 活用:崩しの役割分担を評価。WGやCMFの価値が見えやすい。
パス成功率
成功パスの割合。数値は相手のプレス強度やリスク選択に左右されます。高ければよいとは限りません。
- 活用:前進率や縦パス本数とセットで解釈すると実態に近づく。
ヒートマップ
選手やチームの活動エリアを色で示した図。役割の実行度や配置の意図を把握できます。
- 活用:意図した「幅・深さ」を出せているかの振り返りに。
最後に:今日から上達が加速する使い方
言葉の意味を知ると、練習は「目的付き」になり、判断は「根拠」を持ちます。まずは自分のポジションと直結する用語を3つ選び、次のトレーニングで「口に出して」使ってみてください。チームで同じ言葉を共有すれば、プレーのズレは減り、スピードは上がります。用語は道具。正しく使えば、あなたのサッカーはもっとクリアに、もっと速く進みます。
