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サッカーチーム練習メニュー例で勝点を生む90分

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リード|90分で「試合の当たり前」をチームにインストールする

サッカーチーム練習メニュー例で勝点を生む90分。それは、単に疲れるだけの練習ではなく、「試合で繰り返し起きる局面」を濃縮して、攻守の優先順位をチームに染み込ませる時間です。技術・判断・戦術・フィジカルをバラバラに扱うのではなく、90分という枠の中でつなぎ直すことが、勝点思考の第一歩。ここでは、人数やカテゴリ(高校・大学・社会人・親子参加)に応じて調整しやすい、実用的なメニューを時系列でまとめます。今日からの現場にそのまま持ち込めるよう、制約、コーチングポイント、KPI(評価指標)まで具体化しています。

導入|なぜ“サッカーチーム練習メニュー例で勝点を生む90分”なのか

勝点思考への切り替え:技術練習を試合の価値に接続する

同じパス練習でも、「何のために」を明確にすると効果が変わります。例えばショートパスは、前進を促す角度作りや相手の脆弱部位(センターバック間、ボランチ背後)を突く準備のために存在します。勝点思考では、すべてのドリルを試合の価値(前進・奪回・フィニッシュ・失点回避)に結びつけて設計します。意味の見える練習は、集中・再現性・習得スピードを上げます。

90分設計の原則(集中・負荷・学習・回復のバランス)

90分は長いようで短い。序盤は神経系を起動し、中盤にメイン課題を詰め、終盤は試合に近い判断負荷とゲームマネジメントへ。無秩序に強度を上げるのではなく、緩急で集中力の波を作り、要点にエネルギーを残します。回復は休憩だけでなく、低強度の技術ドリルや口頭レビューも含みます。

評価軸の明確化(フィニッシュ回数・ボール回収率・前進成功率など)

練習の良し悪しは「盛り上がったか」ではなく「数値で再現できるか」。例えば、15分ゲームでの枠内シュート数、敵陣での奪回回数、縦パス成功率、前進3本以内達成率など、シンプルなKPIを毎回1~3個に絞って記録します。これが翌週の改善へ直結します。

全体像|サッカーチーム練習メニュー例(90分のタイムテーブル)

90分のフレーム(0-10/10-25/25-45/45-60/60-75/75-88/88-90)

0-10分:アクティベーション&動的ウォームアップ
10-25分:Rondo強度化(技術×判断)
25-45分:ポジショナル攻撃の得点直結ドリル
45-60分:ネガトラ(即時奪回)ドリル
60-75分:守備ブロック&セット守備
75-88分:状況再現ゲーム(勝点を取り切る)
88-90分:クールダウン&マイクロレビュー

必要な用具・スペース・コーチ役割の割り当て

用具:マーカー30枚、スモールゴール2基、フルゴール2基、ボール1人1個、ビブス2色、ミニハードル6台、ストップウォッチ、ホイッスル。
スペース:フルコートの1/2面を基本。人数が少ない場合は1/4面で密度を確保。
役割:ヘッドコーチ(設計・KPI提示)、アシスタント(時間管理・サーバー役)、GKコーチ(GKの局面連動)、データ係(簡易カウント)。

人数別・カテゴリー別の基本バリエーション

・少人数(8-12名):Rondoと局面ドリルを中心に、フリーマンを活用。
・中人数(13-18名):2グリッド並行で回転を良くする。
・多人数(19名以上):3チーム制のローテーションで待ち時間を削減。
・カテゴリー差:中高生は反復回数重視、社会人は意思決定の質と負荷の波を重視。親子参加は接触強度を下げ、判断の共有にフォーカス。

0-10分|アクティベーション&動的ウォームアップ

モビリティ・股関節活性・アキレス腱の負担リスク低減

・内容:ヒップエアプレーン、ランジツイスト、足関節モビリティ(ドリル各30秒×2周)、ミニハードル往復(前→横→クロス)。
・狙い:可動域を広げ、方向転換と加速の“入り”を滑らかにする。
・ポイント:反動ではなくコントロール、呼吸はゆっくり、痛みがあれば即中止。

ボールフィーリング(タッチの温度を上げる短ドリル)

・内容:1人1球の足裏ロール、インサイド・アウトサイド連続タッチ、トーリフト、空間認知タッチ(視線を上げたまま指定数タッチ)。各20秒×3セット。
・KPI:ミスゼロ→速度アップ→視線固定時間5秒以上。

リアクション&方向転換(声・手信号で判断負荷)

・内容:コーチが番号や色をコール、選手は対応するマーカーへダッシュ→90度/180度ターン→ボール受け→2タッチでサーバーへ返す。
・コーチング:最初の一歩、重心低さ、スキャン(合図前に顔を上げる)。
・安全:スパイクと地面のグリップを確認、滑りやすい日は角度を浅く。

10-25分|技術×判断を同時に磨くRondo強度化

4v2/5v2の制約付き(方向性を与えて前進価値を作る)

・設定:12×12mグリッド。外側に保持チーム、中央に奪う2名。2本目の縦パスで対辺へ通すと1点。逆サイドへ運べたら3点。
・狙い:ただ回すのではなく、前進の「意味」を定着。
・バリエ:サイドにフリーマン1名、またはGKを背面に置きバックパスOK。

タッチ数・スキャン頻度・体の向きのコーチングポイント

・タッチ制限:基本2タッチ。前進の気配があれば1タッチ解禁。
・スキャン:受ける前に最低2回(味方/相手/スペース)。
・体の向き:半身で内外どちらへも出せる姿勢をデフォルトに。ファーストタッチは前進方向へ。

成功指標(連続10本/縦パス本数/インターセプト回避率)

・連続パス10本達成回数。
・縦パス本数/分(目安:1分に1本以上)。
・インターセプト回避率=(回避成功回数)/(狙われた回数)。

25-45分|ポジショナル攻撃の“得点直結”局面練習

3ライン突破 6v4+GK(縦パス→落とし→裏抜けの連動)

・設定:3ゾーン(ビルド15m/中盤20m/最終20m)。攻撃6(2-2-2)対守備4+GK。縦パス→落とし→3人目の動きでDF間を貫通しシュート。
・制約:縦パスが通ったら3タッチ以内でフィニッシュ。
・コーチング:縦パスのタイミング、レシーバーの身体の向き、3人目の角度(背後と斜め)。

ワイドオーバーロードとカットバックの反復

・設定:サイドゾーンにマン2+サポ1で3対2を作る。エンドライン際まで侵入→マイナスのカットバック→PA内2レーンのフィニッシャーが入り直す。
・KPI:カットバックからの枠内率60%以上、PA内ワンタッチフィニッシュ比率を上げる。

背後を取るタイミングとファーストタッチの質を可視化

・方法:裏抜け開始の合図(パサーの目線/支持の手)を統一。成功時は「パスが出た瞬間に同時」か「DFの視線がボールへ寄った瞬間」。
・評価:裏抜けのタイミング一致率(同時/早すぎ/遅すぎの割合)、ファーストタッチで前へ運べた割合。

45-60分|ネガトラ(即時奪回)を勝点に換える奪回ドリル

5秒ルールの再現と複数人のアングル形成

・設定:20×25m。6v6+2フリーマン。ボールロスト後5秒は全員プレス義務。奪回成功で+1点。抜けられたら自陣に素早く撤退。
・コーチング:最短距離のアタッカー、カバーシャドウ、後方のスイーパーが背中を塞ぐ三角形。

奪回後8秒以内のフィニッシュ制約でゴール期待値を上げる

・制約:奪い返して8秒以内にシュートで2点、遅れたら1点。
・狙い:トランジションの攻撃を自動化。
・KPI:奪回→シュートまでの平均秒数、枠内率、決定機創出回数。

カウンタープレス時の“背中を守る”立ち位置設計

・要点:ボールサイドは奪いに行き、逆サイドは中を締めて背後の起点を消す。CB/アンカーはライン間を管理し、ロングボールへのカバー角度を確保。

60-75分|守備ブロック構築とセット守備の連結

4-4-2/4-1-4-1のミドルブロックでの圧縮トリガー

・設定:ハーフコートで攻撃7対守備8。サイドへの横パス/背中向きのレシーバー/タッチが大きい瞬間をトリガーに全体で圧縮。
・コーチング:ライン間距離10-12m、縦の分断、ボールサイド2対1の優位を作る。

サイド圧縮→外切り→奪い所の共有

・手順:外切りで内側のパスコースを刈り、サイドラインを味方にして追い込む→2人目が奪取→3人目が前向きの出口を準備。
・KPI:サイドでの奪回回数、奪回後の前進成功率。

CK/間接FKの役割分担(ゾーン+マンのハイブリッド)

・役割:ニアのゾーン1、中央のゾーン2、ファーのゾーン1、キーマンへのマンマーク2、カウンター要員1。
・チェック:セット前の合図、相手キッカーの利き足による立ち位置微調整。

75-88分|“勝点を取り切る”ゲーム形式(状況再現)

スコア情勢別(リード時/ビハインド時)の意思決定ゲーム

・設定:8分×2本。前半は1-0でリード、後半は0-1でビハインドの想定。
・ルール:リード時は無理な縦パス減点、相手陣でのファウル誘導を推奨。ビハインド時はリスク許容、クロス本数に加点。
・KPI:時間帯別の被シュート数、陣地回復率、クロス→シュート連鎖回数。

時間帯別マネジメント(残り5分のクラッチタイム練習)

・内容:残り5分の設定で、スローイン/ゴールキック/CKからの再開に「8秒ルール」(8秒以内にボールインプレー)。
・狙い:テンポコントロールと相手のリズム断ち切り。
・コーチング:落ち着く場面は「長く持つ」、仕掛ける場面は「即再開」。合図と役割を共有。

交代想定・疲労下の精度維持とリスタート8秒ルール

・交代:交代直後の選手に最初の関与を作る(ワンタッチ受け、簡単なリターン)。
・精度:疲労下はシンプルに。トラップ方向と体の向きを徹底。
・再開:スロー/フリーキックはキッカー固定で迷いをゼロに。

88-90分|クールダウン&マイクロレビュー

怪我予防の静的ストレッチと呼吸調整

・順序:ハム→ふくらはぎ→股関節→背部。各20-30秒。
・呼吸:4秒吸って6秒吐く、心拍を落とす。

KPIの口頭フィードバック(今日の良かった点/改善点)

・形式:1分で全体共有。良かった指標を1つ、改善したい指標を1つだけ。
・例:「サイドでの奪回7回は◎。縦パス成功率32%→次回40%へ。」

次回アクションの個別提示(1人1行アサイン)

・方法:選手ごとに「次回やること」を1行でメモ。例:「前向きでもらうために肩越しのスキャン2回。」
・効果:目標が短く具体的だと行動に移りやすい。

調整術|人数・スペース・天候で変えるメニュー設計

人数不足/過多への代替案(フリーマン/GK活用)

・不足:フリーマンを1-2人置き数的同数を作る。GKをビルドアップの頂点に組み込む。
・過多:3チーム制(攻撃/守備/レスト)でローテ、レストはコーチング役とデータ係。

ピッチサイズ×負荷(心拍・走行・反復)の相関理解

・小さく狭く:判断負荷↑、接触↑、心拍はインターバル型。
・広く長く:スプリント回数↑、長い移動↑、ポジショニングの質が問われる。
・目的に合わせてサイズを先に決めると、意図がぶれません。

雨天・ナイター時の安全配慮と視覚情報の補完

・雨:スパイク選択、ボール交換頻度増、ターン角度を浅く。
・夜間:照度の死角を確認、声と合図(手/番号)で情報を補う。

GKを核にした連動メニューの組み込み方

ビルドアップの三角形をGKで完成させる

・設定:CB-アンカー-GKの三角で1stライン突破。GKは逆サイドへ展開または縦パス。
・コーチング:GKの身体の向きとファーストタッチ、CBの幅と角度。
・KPI:GKの前進パス成功率、相手1stライン突破回数。

速攻の起点(スロー/キック)の狙いと合図

・スロー:サイドライン外へ流した瞬間に素早い再開。
・キック:逆サイドのフリーマンへ対角、または大外の走力勝負。
・合図:手の向きと声で統一、味方は走り出しを前倒し。

ショットストッピングを局面に埋め込む設計

・方法:得点直結ドリルの最後に必ずGKが1対1/至近距離を受ける形で終了。
・KPI:1対1のストップ率、こぼれ球の処理距離と方向。

周期化|週内・年間プランにおける90分の位置づけ

試合2日前(MD-2)の調整版:負荷軽減と鋭さ確保

・内容:グリッドを小さめ、時間短め、反復は質重視。シュートとセットプレー確認を多めに。
・目的:神経系のキレを残し、筋疲労をためない。

試合翌日(MD+1)のリカバリー連動(群分け)

・出場多:ジョグ/モビリティ/軽いボールタッチ。
・出場少:小さなゲームで心拍を上げ、技術反復。
・共通:評価とふり返りを短く実施して切り替え。

学業・仕事期の負荷管理(睡眠・栄養とセット)

・提案:夜練は終業90分以内に高強度を終える、炭水化物とたんぱく質の補給、睡眠7時間目標。
・理由:回復の質が翌日のパフォーマンスを左右。

記録・評価|上達を“見える化”するシンプルな枠組み

簡易スタッツシート(前進/奪回/フィニッシュ)

・前進:縦パス成功、前向き受け回数。
・奪回:敵陣/中盤/自陣での回数。
・フィニッシュ:枠内、決定機、セットからのシュート。

映像のタグ付けと短フィードバックのコツ

・タグは3つまで(例:奪回→前進→フィニッシュ)。
・良い例2本/改善例1本を翌練習の冒頭に共有。
・長い講義は不要、実行可能な一言に絞る。

個人面談用の評価観点と目標設定テンプレート

・観点:技術(受け方/出し方)、戦術理解(ポジショニング)、メンタル(切替)、フィジカル(強度維持)。
・テンプレ:「次節までに“裏抜けの開始タイミングを合図と同時”を3回成功」。

落とし穴と回避策|練習が“勝点”に転換しない理由

メニュー詰め込み過多と学習の希薄化

・症状:毎回新しいことばかりで定着しない。
・回避:テーマを1-2個に絞り、3週スパンで深める。

制約が目的化する問題(判断の余白を残す)

・症状:タッチ制限に縛られ、最適解を選べない。
・回避:意図が浸透したら制約を段階的に外し、自由解を許容。

声かけの質と量(情報過多を避けるガイドライン)

・原則:指示は3語以内(例:「前向きOK」「外切り!」)。
・タイミング:止める→見る→やってみる、の順で短く。

安全と公平性|怪我予防・熱中症対策・学習機会の均等

違和感の早期申告と即時対応プロトコル

・ルール:「痛みは勇気ではない」。違和感→手を上げて申告→別メニューへ。
・記録:痛みの部位と発生日を簡易記録、再発防止につなげる。

暑熱/寒冷環境でのアップ・水分・休息の設定

・暑熱:ミニ休憩を10-12分ごと、氷水・塩分補給。
・寒冷:アップ長め、ウェアの重ね着、終了後の体温低下に注意。

出場時間と役割のローテーション方針

・練習内ゲームでの出場時間を均等化し、役割(キッカー/コーラー/キャプテン役)も回す。
・目的:全員が学ぶ機会を持つことで、層の厚さが勝点に変わる。

まとめ|“勝点を生む90分”を自分たちの文脈に落とし込む

今日からできる最小の一歩(1メニューの置換)

・提案:いつもの鳥かごを「方向性ありRondo」に置き換える。前進価値が生まれ、試合への接続が一気に高まります。

現場適応のヒント(相手・メンバー・環境で微調整)

・相手が引くなら:カットバックの反復を増。
・相手が前から来るなら:GKを絡めた三角形で前進。
・環境が悪いなら:接触を減らし、判断系ドリル中心に。

継続の仕組み化(記録→レビュー→改善のループ)

・KPIを1-3個に絞り、毎回紙1枚で記録。
・良かった点/改善点を1つずつ、次回の冒頭に共有。
・小さな前進を可視化すると、チームは確実に強くなります。

後書き

サッカーチーム練習メニュー例で勝点を生む90分は、魔法ではなく積み重ねです。意図のある制約、短い言葉、再現可能なKPI。この3点を押さえるだけで、練習は試合のための投資に変わります。今日の90分が、次節の勝点1を勝点3に変える。その感覚を、ぜひ現場で確かめてください。

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