「良い練習メニューは、現場で回り、選手が理解し、試合で再現できる」。この記事では、サッカー練習メニュー作り方|コーチ向け現場で使える設計術として、今日から導入できる具体策をまとめました。目的から逆算し、制約を味方にし、データで振り返る。大掛かりな設備がなくても回る、試合に繋がる、選手が主体的に考える。そのための設計ポイントを一気通貫でお届けします。
目次
- 現場で使えるサッカー練習メニュー作り方の全体像
- 目的から逆算する設計術:サッカー練習メニューの作り方の基本
- 戦術的ピリオダイゼーションを現場に落とす
- 90分セッションの標準構成:ウォームアップ→基礎→メイン→フィニッシュ→整理
- 制約主導アプローチ(CLA)で意図を埋め込むドリル設計
- テーマ別メニューの作り方と展開例
- 人数・設備・天候の制約別:現場対応の設計術
- 年代・レベルに応じたサッカー練習メニュー作り方の注意点
- フィジカル統合:ボールを使って強度をデザインする
- GKを練習メニューに統合する設計ポイント
- コーチングコミュニケーション:伝わる言葉と介入の質
- データと記録:練習の再現性を担保する仕組み
- よくある失敗と現場でのリカバリー策
- シーズン計画:プレシーズン/インシーズン/ポストの設計例
- チーム文化とモチベーションをデザインする
- テンプレート&チェックリスト:そのまま使える設計支援
- ケーススタディ:1週間の練習メニュー作り方(試合日曜想定)
- 小人数・時間不足でも質を落とさない即席メニュー集
- 安全管理とリスク対応:現場で守るべき基本
- まとめ:明日からの練習メニュー作り方チェックポイント
現場で使えるサッカー練習メニュー作り方の全体像
良い練習メニューの条件とは何か(成果・楽しさ・再現性)
良いメニューは次の3条件を満たします。
- 成果:試合での行動が変わる(例:前進回数が増える、被カウンターが減る)。
- 楽しさ:挑戦と達成感がある。適切な難易度で「うまくなっている実感」を作る。
- 再現性:コーチが変わっても、人数や天候が変わっても、意図が保てる。
この3つはトレードオフに見えて、実は同時に追えます。カギは「目的が具体」「負荷が見える」「振り返りが簡単」の3点です。
メニュー設計の5要素(目的・強度・空間・人数・時間)
- 目的:技術/戦術/フィジカル/メンタルのどれを、なぜ、いつまでに?
- 強度:心拍・スプリント・デュエル数などの「きつさ」。主観指標(RPE)で管理。
- 空間:縦横のサイズ、ゴールの有無、ゾーン設定。解決策を誘発するサイズに。
- 人数:同数/数的優位/数的不利。判断の密度を操るレバー。
- 時間:作業-休息比、反復回数。集中が切れないブロックで設計。
本記事の活用方法(即日導入→改善→定着)
- 即日導入:今日のセッションに「目的・強度・検証」を追加する。
- 改善:週次でKPIを1つだけ追い、良し悪しをメニューに反映する。
- 定着:テンプレート化し、スタッフと選手に共有。誰でも同じ質で回せるように。
目的から逆算する設計術:サッカー練習メニューの作り方の基本
1セッション=1テーマ:狙いの明確化
90分で複数テーマを欲張ると、強度も理解も分散します。「今日は第2ライン突破」「今日はカウンタープレスの最初の3秒」のように、1テーマで深掘りしましょう。副次テーマが出ても、主テーマのKPIに繋がるかで採用可否を判断します。
技術・戦術・フィジカル・メンタルの優先度の付け方
- 技術:止める・蹴る・運ぶの精度と速さ。戦術テーマの中で統合して扱う。
- 戦術:状況認知→判断→実行。方向性とスキャンのきっかけを明確に。
- フィジカル:走る/切り替える回数を設計上で担保。ボールありで鍛える。
- メンタル:合図で動く、声で整える、ミス後の再集中。ルールで内蔵する。
テーマを「戦術」に置き、技術・フィジカル・メンタルは“結果として鍛えられる”よう組み込むと効率的です。
成功指標(KPI)の設定と観察ポイント
- KPI例:前進回数/10分、プレス開始から奪取までの平均秒数、カットバックからのシュート本数など。
- 観察ポイント:初期配置、最初のパス方向、フリーマンの活用、ミスの型。
- 記録法:マーカーでゾーン区切り→スタッフが目視カウント→練習後2分で共有。
戦術的ピリオダイゼーションを現場に落とす
マクロ(季節)・メゾ(月)・マイクロ(週)の分解
- マクロ:シーズン全体。プレー原則の設定と大テーマ配分。
- メゾ:4〜6週ブロック。テーマの重点化(例:前進→守備→トランジション)。
- マイクロ:週。試合から逆算し強度の波とテーマを整える。
試合から逆算する週内配分(強度・ボリューム・テーマ)
試合日を軸に、強度の波を作ります(例:試合=日曜)。
- 月:回復+技術(低〜中強度)
- 火:戦術メイン(高強度)
- 水:戦術補強(中〜高)
- 木:セットプレー+仕上げ(中)
- 金:調整(低)
- 土:前日確認(低)
負荷マップの作成例とオーバーロード/リカバリーの考え方
- 負荷マップ:各日RPE×時間で「負荷量(sRPE)」を可視化。
- オーバーロード:週内で1〜2回の高負荷日を確保。
- リカバリー:高負荷日の翌日は技術系やポジショナルで負担を調整。
90分セッションの標準構成:ウォームアップ→基礎→メイン→フィニッシュ→整理
時間配分の目安と待ち時間を削るレイアウト
- ウォームアップ 10〜15分:動的ストレッチ+ボール導入。
- 基礎 15分:技術×判断の小ドリル(同時に3グリッドで渋滞回避)。
- メイン 40分:テーマのゲーム形式(制約で意図を固定)。
- フィニッシュ 15分:シュート/セットプレーで成功体験を作る。
- 整理 5分:振り返り(KPI確認と次回のヒント)。
同一レイアウトでドリルを連続展開すると、移動ロスを削減できます。
60分/30分でも崩れないショート版テンプレート
- 60分:WU10→基礎10→メイン30→整理10。
- 30分:WU5→メイン20→整理5(制約を強めてテーマを濃縮)。
チーム事情に合わせた柔軟な入れ替えと連結
高温・連戦・欠席多発などは即調整。強度を下げたい日はタッチ制限や方向制限を緩め、空間を広げて接触を減らします。逆に強度を上げたい日は狭く、同数で方向性を与え、反復間の休息を短くします。
制約主導アプローチ(CLA)で意図を埋め込むドリル設計
ルール・空間・刺激で学習を誘発する方法
- ルール:ゴール前5mはワンタッチ、奪って3秒以内に前進で2点など。
- 空間:サイドを広く、中央を狭く。解きたい課題に合う地形を作る。
- 刺激:カウント、タイムプレッシャー、得点配分で意図を強調。
人数・タッチ制限・方向性のコントロール
- 人数:数的優位で原理習得→同数で適用→数的不利で耐性づくり。
- タッチ制限:観る回数を増やすために2タッチ縛り→解除で自動化を確認。
- 方向性:相手ゴールを設定。前向きの判断を促す。
“教えすぎない”コーチングキューと観るポイント
- キュー例:「顔を上げる合図は?」「次の受け手はどこ?」
- 観るポイント:初手のサポート角度、3人目の関与、奪われた後の最初の3歩。
テーマ別メニューの作り方と展開例
ビルドアップ(GK統合/第1・第2ライン突破)
- 設定:5v3+GK、縦30×横25m。中央に回避不可ゾーン。
- 意図:GKを+1枚として数的優位を早く作る。背後か内側の2択を素早く。
- KPI:ライン間通過回数/分、前進の前の後退パス比率。
プレッシング&カウンタープレス(合図と連動)
- 設定:6v6+2フリーマン、2ゴール、縦40×横35m。
- 合図:横パス・トラップ外・背向き受けでスイッチ。
- KPI:プレッシングからの奪取までの平均秒数、縦切り回数。
フィニッシュ(クロス・カットバック・ハーフスペース)
- 設定:サイドゾーン通過で得点2点、PA内はワンタッチのみ。
- 意図:ニア/ファー/カットバックの3レーン占有を徹底。
- KPI:クロス起点の枠内シュート本数、二次攻撃の回収率。
トランジション(攻守・守攻の最初の3秒)
- 設定:ゴール後にすぐ別ボール投入。3秒以内前進は2点。
- 意図:切替の初動を行動化。奪回/前進の優先順位を共有。
ロンドからポジショナルプレーへの橋渡し
- ロンドで原理(角度・距離・3人目)→同原理を方向付きゲームへ段階移行。
人数・設備・天候の制約別:現場対応の設計術
6人以下/8人/12人/18人以上の成立パターン
- 6人以下:2v2+2フリーマン、反復シュート、1対1連続。
- 8人:3v3+2GK、4v4ロンド→方向付き。
- 12人:5v5+2フリーマン、3チームローテ。
- 18人以上:6v6v6の勝ち残り、8v8+フリーマンで幅と深さを確認。
狭いコート・屋内・ライン不足での工夫
- コーンでゾーン代替。通過で得点など簡易ルール。
- 壁当てOKにし、ワンツーの頻度を増やす。
雨天・強風・高温時の安全と意図維持の代替案
- 雨:接地・滑りを想定したパス強度の調整。競り合いの頻度を下げる。
- 風:地上戦中心、グラウンダー縛り。
- 高温:休息回数を増やす、影でのブリーフィング、RPE監視。
年代・レベルに応じたサッカー練習メニュー作り方の注意点
高校・大学・社会人:理解速度と負荷許容量の違い
理解速度や生活リズムを考慮。社会人は本数より質、大学は強度波を大きく、高校は説明を短く反復を多く。
小中学生に応用する際の配慮(抽象度・言語化)
- 言葉は短く具体。「顔を上げる」→「受ける前に1回見る」。
- 成功体験を多く。得点配分で正解の行動を増やす。
初心者と経験者の混在チームでの差分設計
- 役割差:経験者は制限強め、初心者は時間と空間を広めに。
- 同一ドリル内で条件を変える(段階的難易度)。
フィジカル統合:ボールを使って強度をデザインする
RPE(主観的運動強度)で管理する実務フロー
- 0〜10のスケールを採用(感じたきつさ)。
- 終了10分後に各自入力→平均×実施時間=sRPEで日次管理。
速度帯・反復回数・休息比のコントロール
- スプリント含むドリルは反復と休息を明確に(例:20秒作業/40秒休息×8)。
- 小ゲームの連続は2〜4分×3〜5本が目安。
怪我予防のウォームアップ(例:FIFA 11+の活用)
- 股関節・膝周りの安定化、着地動作、方向転換を含む。
- 定型プログラムを継続実施し、チームで習慣化。
GKを練習メニューに統合する設計ポイント
GK専用→全体合流のタイムラインと役割設定
- 前半10分:ステッピング・キャッチング・配球の個別。
- 以降:ビルドアップや移動式シュートに統合。
配球・ポジショニング・ビルドアップでの関与を増やす
- GKからのスイッチで得点2点など、関与を評価するルール設定。
シュート練習の質を上げる条件(コース・距離・再現性)
- 距離と角度を限定し、同型反復→変化付与の順で。
- GKの視界を遮るスクリーン役を導入し、実戦性を確保。
コーチングコミュニケーション:伝わる言葉と介入の質
デモ・キュー・質問法で自律学習を促す
- デモは短く1回、キューは2つまで。
- 質問:「今の前進、別の選択は?」で内省を引き出す。
口頭・ホワイトボード・動画の使い分け
- 口頭:リズムよく即時修正。
- ボード:配置やパターンの合意形成。
- 動画:週次レビューで客観化。
個別/全体への介入タイミングとスケーリング
- プレー中はキュー、停止はルール再設定、個別は合間に。
データと記録:練習の再現性を担保する仕組み
セッションシートの書き方(狙い・KPI・アレンジ)
- 狙い:1行で。KPI:数で。アレンジ:人数/サイズの代替案を併記。
練習KPIログと試合レビューの接続
- 練習:前進成功/分。試合:前進回数/90分。差を次週のテーマへ。
PDCAを回す週次レビューの型
- 事実:KPI。
- 解釈:なぜ?
- 次策:ルール/空間/人数のどれを触る?
よくある失敗と現場でのリカバリー策
待ち時間が増える問題への即時対応
- グリッドを増やして同時進行、列は最大3人を基準に。
強度が足りない/過剰になったときの調整スイッチ
- 不足:サイズを狭く、方向付き、休息短縮。
- 過剰:数的優位化、サイズ拡大、得点条件を緩める。
意図と行動がズレた時のルール再設計
- 狙いに直接効く得点配分へ即変更(例:背後突破=2点)。
シーズン計画:プレシーズン/インシーズン/ポストの設計例
プレシーズンの構築(共通原則と負荷漸増)
- 原則の合意→ゲーム体力の構築→セットプレーの骨組み。
リーグ期間の維持・改善のバランス
- 維持:週1の高強度。改善:対戦相手の弱点に合わせたテーマ補正。
連戦・大会期の回復重視プランとローテーション
- 試合間48〜72時間は回復優先。ローテは事前に基準を共有。
チーム文化とモチベーションをデザインする
ルールと評価の透明性で自走を促す
- 「なぜこの練習か」「何で評価するか」を事前に掲示。
役割定義とリーダー育成(キャプテンシー)
- 練習中の係(時間、得点、ボール回収)を固定せずローテ。
学業・家庭との両立を支える運用(連絡・共有)
- 週次予定と目的・持ち物を前日共有。欠席連絡のルールを明確に。
テンプレート&チェックリスト:そのまま使える設計支援
セッション設計チェックリスト(目的→検証)
- 目的は1つか/KPIは数で測れるか/強度の目安はあるか/代替案はあるか/振り返り時間を確保したか。
週次プランのテンプレートと書き方例
週目標:第2ライン突破の回数増火:高強度 5v5+2F(縦40×横35) KPI=前進/10分水:中強度 8v8方向付き KPI=前進後の得点期待行動木:セットプレー&守備調整金:調整ゲーム 6v6v6
当日の持ち物・コートレイアウト事前確認項目
- コーン・ビブス・マーカー・ホイッスル・ホワイトボード・水・救急セット。
- コートサイズ、ゴール有無、ライン代替の準備。
ケーススタディ:1週間の練習メニュー作り方(試合日曜想定)
月〜日のテーマ配分と強度曲線のサンプル
- 月(低):回復+技術ロンド。
- 火(高):プレッシング連動。
- 水(中高):ビルドアップ第2ライン突破。
- 木(中):セットプレー+トランジション。
- 金(低):調整ゲーム。
- 土(低):前日確認。
- 日:試合。
各日のドリル構成と代替案
- 火:6v6+2F→方向付きゲーム。代替:人数不足は4v4+2F。
- 水:5v3+GK→8v8。代替:狭小時は縦短で判断密度UP。
試合→練習への学習ループの回し方
- 試合翌日に事実(数)→原因(映像or口頭)→次策(ルール変更)を15分で共有。
小人数・時間不足でも質を落とさない即席メニュー集
15分・30分のミニブロックで成果を出す
- 15分:3v1ロンド→方向付き3v3ミニゲーム。
- 30分:WU5→5v3前進→4ゴールゲーム20。
2〜4人で可能な技術×判断ドリル
- 三角パス+スキャン合図、1対1制限(片側1タッチ)、配球者のコーチング付き。
用具が少ない/ラインがない時の代替設定
- ペットボトルでゲート、タオルでゾーン。スマホのタイマーでインターバル管理。
安全管理とリスク対応:現場で守るべき基本
ウォームアップ・水分・熱中症/寒冷対策
- 動的ストレッチ→神経活性→ボール導入の順。
- 定期給水、炎天下は休息増、寒冷時は防寒と長めのWU。
コンタクトドリルの段階的導入
- 非接触→限定接触→自由接触の順。安全語を共有(ストップ合図)。
怪我発生時の初期対応フローと再開判断
- プレー中止→安全確保→状況確認→必要時は医療機関へ。
- 再開は痛み・腫れ・可動域・機能の確認を基準に無理をしない。
まとめ:明日からの練習メニュー作り方チェックポイント
目的・強度・検証の三点固定
- 目的は1つ、強度はRPEで見える化、KPIで結果を測る。
“制約で教える”を習慣化する
- ルール・空間・人数で意図を埋め込み、教えすぎずに気づきを促す。
記録して改善する仕組みをチーム文化にする
- セッションシートと週次レビューを標準化し、誰が指導しても再現できる状態に。
サッカー練習メニュー作り方は、才能ではなく設計の技術です。小さな改善を毎週積み上げれば、試合のふるまいは必ず変わります。今日のセッションから、目的・強度・検証をセットで設計してみてください。現場が整えば、選手はもっと自由に、もっと速く、うまくなります。
