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サッカー スローイン 戦術 パターンで点を奪う再現ドリル集

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スローインは「時間稼ぎ」でも「つなぎの再開」でもなく、点に直結する武器になります。本記事は、スローインを戦術化してゴールまでつなげるための発想、再現しやすい攻撃パターン、そして練習現場に落とし込めるドリルをまとめた実用集です。試合で即使える呼称や合図、相手守備タイプ別の攻略、失敗の修正ポイントまで一気通貫で整理しました。明日からのトレーニングにそのまま持ち込んで、スローインを「セットプレー化」していきましょう。

序章:スローインで点を奪うという発想

スローインを“セットプレー化”する価値

スローインは90分で20〜40回前後発生することが多い再開局面です。フリーキックやコーナーほど注目されにくい一方で、相手が整い切る前に再開できるため、意図的に「型」を持つと期待値が上がります。合図、走路、役割、残し方まで決めておけば、小さな優位を何度でも再現できます。結果、シュートに直結する回数、セカンドボールの回収率、敵陣でのセット獲得数が増え、得点と支配の両方に効いてきます。

テンポ差と位置的優位で崩す基本原理

  • テンポ差:相手が静止→加速の切り替えに遅れる瞬間を突く(クイック再開、フェイク→実行)。
  • 位置的優位:ライン間・背中側・三角形の角を先取りして、前向きの受け手を作る。
  • 身体的優位:スクリーン、ターン、フリックで競り合いを設計し、2人目・3人目の前進を保証。

この3つが噛み合うと、短いパスでも相手ブロックを一気に剥がせます。

得点に直結する3つの狙い(侵入・シュート・セット獲得)

  • 侵入:ライン間→ハーフスペース→BOX内。角度とタイミングを揃えて縦パス・折り返しへ。
  • シュート:落とし→ミドル、サードマン→カットバック、ロングスロー→セカンド押し込み。
  • セット獲得:CK/PK/危険FKの誘発。局面勝率を上げる「次の一手」として狙う。

スローインのルールと前提知識

反則にならないための基礎(両足・頭上から・ライン外)

  • 両足がタッチライン上もしくは外側に接地。
  • ボールは頭上の後ろから両手で投げる(回転の強制ルールはないが、投げ方の不自然さはNG)。
  • 踏み出す足がライン内側に入るとファウルスローの可能性。フォームを固定しておくと安全。

投げる位置と味方・相手の配置のルール理解

  • 相手は2m(ヤード)以上離れる必要がある。距離感を主審に確認しつつクイック可否を判断。
  • オフサイドはなし。ただしスローイン後の2本目のパスからは通常のオフサイドが適用。
  • 投げる位置のズレは注意。審判に止められるとテンポを失いやすい。

審判が見ているポイントと試合運用上の注意

  • 足の位置・投球モーション・相手の距離。迷いが出ると吹かれやすい。
  • ボールの用意を素早く。マルチボール運用の場合はベンチと連携してクイックの頻度を上げる。
  • 抗議より実行。止められたら即リカバリーの準備(別パターンに切替)。

基本技術の磨き方(投げる・受ける・関わる)

正確性とテンポの両立:クイックリスタートの型

  • 決め事1:近距離の“安全な相棒”を常に確保(GK/CB/アンカー)。
  • 決め事2:視線→合図→投球まで5秒以内。迷ったら「戻す・変える・蹴る」のセーフティ三択。
  • 決め事3:拾い直し禁止。片手で素早く持ち替え、肘を締めてコンパクトに投げる。

飛距離と弾道のコントロール(フラット/山なり/バウンド)

  • フラット:短距離・速いテンポ。受け手の前足に向けて刺す。
  • 山なり:競り合い前提。落下点の味方優位を設計(スクリーン役とセカンド回収)。
  • バウンド:相手のタイミングを外す。意図的なワンバウンドで裏のスペースへ。

受け手の体の向き・初速・ファーストタッチの質

  • 半身で受ける:外足で押し出し前向きを取る。肩とつま先の向きを一致。
  • 初速:マーカーの死角から一歩目で剥がす。止まって受けない。
  • ファーストタッチ:前進かキープかを決めてから触る。迷いは奪われる最大要因。

ピッチエリア別の狙いと優先順位

自陣深い位置:プレス回避と安全確保

  • 最優先はロストしない。CB→GK→逆CBの三角形で圧を外す。
  • 相手のラインが高ければロングで背後も選択肢に。ウイングの外走りを合図に。

ミドルサード:ライン間侵入と前進の設計

  • アンカー・IHが斜めに顔を出し、落としから縦。
  • 同サイド圧縮→逆サイド転換で一気に抜けるレーンを創出。

アタッキングサード:BOX侵入とシュート直結

  • ニアを潰してファーで仕留める、または折り返しのカットバックを前提に配置。
  • フリック→3人目の抜けで最短距離のシュートまで設計。

コーナー付近:CK相当の狙いと追撃ルート

  • ロングスロー or ショートで角度を作ってクロス。セカンド回収部隊をPA外に2〜3枚。
  • 相手が5バック化するなら、ペナルティアーク前のミドルも即準備。

攻撃パターン総覧(ショート系で剥がす)

ワンツー解除:投げ手→受け手→投げ手の再加速

投げ手がそのままオーバーラップ。受け手はワンタッチで壁役。相手がボールウォッチした瞬間に縦へ抜ける。角度はタッチラインと平行よりも斜め前が有効。

サードマンラン:受けて落として3人目が抜ける

受け手が背負ってキープ→インサイド落とし→3人目が縦に刺す。落とす位置は相手の足の届かない外側に。

背中取りカット:マーカーの死角を奪う動き出し

フェイクで足元要求→同時に背後へスプリント。投げ手はバウンドで裏へ。タイミング命。

スクリーン→ターン:身体を使って前を向く

受け手が身体を入れてマーカーを背負い、味方のスクリーンで剥がしてターン。審判基準に合わせて腕の使い方をクリーンに。

フリックオン→裏抜け:ニアの接触を活用

ニアで触る役と走る役を分ける。ボールは眉の高さ、外側へ流すのがコツ。GKの前に落とさない。

ピボット受け→はがし:強い基点から前進

体格やフィジカルに優れた選手をピボットに据え、足元で引き付けて周囲が回転。二列目の突入で前進。

ニア潰し→ファー流し:エリアを空けて刺す

ニアに2枚を走らせて相手を吸い込み、ファー側で時間を作る。クロス or カットバックで決着。

攻撃パターン総覧(スイッチ・展開系で崩す)

オーバーロード→スイッチ:密集を作って逆を突く

同サイドに3〜4枚集めて相手を圧縮。リターン経由で逆サイドのフリーへ一発転換。

縦圧縮→逆サイド転換:レーン移動でフリー創出

サイドライン沿いで縦の選択肢を見せ、中央の底に落として大外へ。斜め対角パスで時間を確保。

インサイドレーン侵入:ライン間で前向き確保

受け手がタッチラインから一歩内側へ。半身で受けて前進、SBの内側走りでサポート。

三角ローテーション:マーカーを外す循環

投げ手・受け手・サポート役が三角形でローテ。マーカーの受け渡しにズレを起こす。

ダブルムーブ:フェイク→本動作でギャップ生成

足元要求のフェイク→一拍置いて背後 or 内側へ。投げ手はフェイクに騙されず、約束の本動作へ投げる。

攻撃パターン総覧(ロングスロー活用)

ニア混戦→セカンド回収:こぼれ球の設計図

ニアへ強い弾道。競り役・潰し役・回収役の三層を事前に配置。弾き返しの角度を予測してゾーンに人を置く。

ファーターゲット:逆サイドの高さを生かす

ファーで背の高い選手に合わせる。ニアはフェイクで相手を釣る。GKの出辛い弾道(やや外側から内側)を意識。

キーパー視界遮断とスクリーン:安全な運用の工夫

GK前で静止しない。遅れて入り直すことでファウルを避けつつ視界を遮る。接触は最小限に。

フラット投球→落とし→ミドル:距離を縮めて打つ

PA外のミドルシューターを起点に、フラット→ワンタッチ落とし→ダイレクト。こぼれも拾える二段構え。

走り込みヘッド:助走とタイミングの同期

投げ手のモーション開始を合図に助走開始。踏み切りのタイミングを全員で統一する。

作戦の合図とコール設計

ハンドサインの作り方(簡潔・偽装・再現性)

  • 簡潔:片手で完結。耳・胸・袖など1〜2動作で伝わるもの。
  • 偽装:同じ動きに2パターン紐付け(相手に読まれにくい)。
  • 再現性:誰が投げても同じ意味。ベンチからも見える。

キーワード運用とバリエーション化

  • 例:「赤」=足元、「青」=裏、「星」=サードマン、「月」=逆展開。
  • 前半・後半で意味を入れ替える「スイッチワード」も有効。

投げる前の“トリガー”共有(視線・合図・タイミング)

  • 視線の固定:狙いと反対を見て投げる偽装を標準化。
  • タイムトリガー:審判の笛、ボール受け取り、味方の足踏みなど合図を事前共有。

相手守備タイプ別の攻略

マンツーマン守備への対策(スクリーン・ローテ)

スクリーンでマーカーを遅らせ、斜めの抜けで受け直す。三角ローテで受け渡しの混乱を誘発。

ゾーン守備への対策(位置の上書き・遅延と急加速)

ゾーンの外から内へ移動し、基準点を上書き。止まって→一気に加速でライン間へ侵入。

ミックス守備への対策(役割のズレを突く)

マンマーキング担当とカバー担当の間へ。サードマンで一人増やして数的優位を作る。

対ロングスロー対策への対応(セカンドと逆サイド)

相手が多人数をPA内に入れるなら、アーク前と逆サイドで回収→即シュート or 展開の二択を準備。

リスク管理と即時守備(ネガトラ)

ボールロスト時の3秒ルールとトンネル封鎖

失った直後3秒は全員が前向きに圧縮。縦パスのトンネル(中央レーン)を塞いで遅らせる。

カウンター遮断の初期配置(残し方と幅)

常に1枚は後方で残す。逆サイド高い位置にもう1枚でセカンド回収とカウンター抑止を両立。

セーフティへの逃げ道(リターン先・バックパス)

GK/CBへの固定リターンルートを決めておく。パス角度は相手から遠ざかる外側へ。

再現ドリル集:個人スキルを底上げ

クイックリスタート習慣化ドリル(5秒以内)

手順

  • コーチが合図→5秒以内に最適解へ投げる。10本×3セット。
  • 判断基準を口に出す(足元/裏/戻す)。

コーチングポイント

  • ボールピック→グリップ→投球までのリズム固定。

投球フォーム反復(弾道と狙い分け)

  • フラット・山なり・ワンバウンドを各10本×3。目標マーカーへ命中率を記録。

受け手の体の向きトレーニング(半身・正対)

  • 半身→前進、正対→キープの二択をコールで切替。ファーストタッチの方向を固定。

足元/背後/スペースの使い分け判断

  • コーチの色札で指示(赤=足元、青=背後、黄=スペース)。反応速度と精度を同時鍛錬。

フェイントとタイミングの同調(視線・肩・ストップ)

  • 足元要求フェイク→ストップ→加速の3拍子。動画で肩の向きと一歩目をチェック。

再現ドリル集:2〜3人連携で剥がす

壁パス解除ドリル(タッチ数制限)

  • 投げ手→壁役→投げ手のオーバーラップ。タッチ数1〜2で制限し、テンポを上げる。

サードマンラン導入(合図→走路→リターン)

  • 3人三角形配置。落とし位置をマーカーの外に設定、走路はハーフスペースへ。

スクリーンの作り方(角度・接触・タイミング)

  • 体の向きをゴール向きに固定し、接触は肩〜胸でソフトに。笛対策で手は広げない。

フリックオン連続(ニア競り合いの習熟)

  • ニアでのヘディング方向付けを反復。ファーへの走りと同期させる。

スイッチと逆展開(レーン跨ぎの一発)

  • 同サイドに3人圧縮→中央→逆サイドに開いた選手へ。パススピード重視。

再現ドリル集:ライン別とゴール前特化

サイド深い位置からの崩し3選

  • 1)ワンツー解除 2)サードマン→カットバック 3)スクリーン→ターン→シュート。

ボックス侵入の定形(ニア・ファー・カットバック)

  • ニア潰し役、ファー待ち、折り返し受けの3役を固定し、連続10本で役割交代。

ロングスロー競り合いの役割分担

  • 競る/潰す/拾う/外で撃つ/リスク管理(残す)の5役を明確化。記号でコール。

セカンド回収→即フィニッシュの連続性

  • こぼれ→即1本でシュートまで。3秒ルールの攻撃版を徹底。

年代・レベル別アレンジと制約

小中学生向け:安全・反復・理解度優先

  • 接触プレーを抑え、目印と合図をシンプルに。成功体験を増やす。

高校・大学・社会人:強度・駆け引き・再現性

  • スクリーンやフリックの強度を上げ、セットごとにKPIを設定。映像フィードバック併用。

女性・マスターズ:負荷管理と効率化

  • ロングスローの代替としてフラット速球やクイック再開を主軸に。可動域ケアを徹底。

少人数練習の代替設定(マーカー・ゾーン活用)

  • マーカーで相手の位置を仮定。ゾーン通過でポイント制にして競争心を引き出す。

計測とチェックリストで“再現”を担保

成功率の定義(前進・侵入・シュート・セット獲得)

  • 4段階で評価:前進成功/ライン間侵入/シュート到達/CK等のセット獲得。

KPIと記録(回数・所要秒数・期待値の考え方)

  • 1試合のスローイン回数、クイック成功率、再開からシュートまでの平均秒数を記録。

映像での自己評価ポイント(体の向き・角度・間隔)

  • 受け手の半身、三角形の角度、10〜14mの間隔が保てているかを停止画で確認。

練習から試合への移植(週次ルーティン)

  • 月:個人技術/水:2〜3人連携/金:全体戦術と合図確認/試合前日:15分の型復習。

よくある失敗と修正ポイント

静止し過ぎ問題:動き出しの層を作る

二層(三層)でタイミング差を作る。止まって手を上げるだけは厳禁。

選手間距離が近/遠すぎる:最適間隔の目安

ショートは8〜12m、展開は18〜25mを目安。相手強度で微調整。

合図がバレる:偽装とバリエーション

同合図に2案、前半後半で意味を入れ替え。コールは日常語に紛れさせる。

スローイン反則の予防策(足・手・体の使い方)

踏み出し足の癖を動画で確認。肘張りすぎや片手風の投げ方はリスク。フォームを標準化。

フィジカル・メディカルの注意点

肩・肘のケア(可動域・ストレングス)

  • チューブで外旋・内旋、スキャプラ安定化。可動域は痛みなく頭上で組める範囲を確保。

体幹と背中の強化(姿勢と出力の安定)

  • プランク、デッドバグ、ヒンジ系で出力ラインを整える。腰反りを避ける。

ウォームアップとクールダウンの型

  • 投球前は肩甲帯の動的ストレッチ→軽投。終了後はローテーターカフ中心に静的ストレッチ。

過度なロングスロー運用のリスク管理

  • 連発による疲労・フォーム崩れは怪我に直結。試合内の本数と間隔を管理。

戦術ブックの作り方と運用

パターン命名とレベル分け(A/B/C)

  • A:安全・前進用、B:侵入・展開用、C:フィニッシュ直結用。名称は短く覚えやすく。

週次の導入計画(段階的習熟)

  • 週1で新規1型、既存2型を復習。映像とKPIで定着度を確認。

役割固定とローテーションの最適解

  • 核となる投げ手・壁・走り役は固定しつつ、試合ごとの相手特性でローテ。

対戦相手別の選択と捨てる勇気

  • 風・ピッチ・相手の高さを勘案し、効く型を3つに絞る。全部やろうとしない。

まとめ:試合で点に結びつける運用術

試合前日のチェックリスト

  • 合図と呼称の最終確認/投げ手の弾道感覚/役割分担表の共有/逆サイドの残し方。

ゲーム内の微調整(風・相手・スコア)

  • 向かい風=フラット多め、追い風=裏狙い。相手が読んだら即Bプランへ。リード時はセーフティ優先。

振り返りテンプレートと次の一歩

  • 本数/成功段階(前進・侵入・シュート・セット)/所要秒数/映像コメント。翌週のドリルに直結させる。

スローインは「起点」ではなく「武器」にできます。合図・型・再現ドリルで意思決定を早くし、テンポ差と位置的優位を繰り返し作る。今日からチームに合う3つの型を決め、KPIで運用すれば、スコアに直結する場面は必ず増えていきます。

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