トップ » 体調管理 » サッカーの足首捻挫、復帰目安はいつ?損傷度別に解説

サッカーの足首捻挫、復帰目安はいつ?損傷度別に解説

カテゴリ:

足首の捻挫はサッカーで最も多いケガのひとつ。「いつ練習に戻れる?試合はいつから?」は誰もが知りたいポイントです。この記事では、損傷度(グレード)別に復帰の目安を先に示し、その後、基礎知識・受診の判断・急性期の対応・リハビリ計画・復帰チェックリスト・フィールドでの段階的プログラム・装備の選び方・再発予防・成長期の注意点までを、実戦ベースで整理します。嘘は避け、医学的に一般的な考え方に基づいてわかりやすくまとめました。

先に結論:サッカーの足首捻挫、損傷度別の復帰目安

グレードI(軽度):練習・試合復帰の一般的な目安

・特徴:軽い腫れと痛み。靭帯の微小損傷。荷重は比較的可能。
・ジョグ再開:2〜7日(痛みゼロか、違和感程度で翌日悪化しないこと)
・サッカー練習(非接触):7〜14日
・試合復帰:1〜3週間
・ポイント:背屈(つま先を上げる動き)の回復と、片脚カーフレイズ20回以上、Yバランス左右差10%以内を目安に。

グレードII(中等度):練習・試合復帰の一般的な目安

・特徴:はっきりした腫れと痛み。動きの制限あり。荷重は痛みが強いことが多い。
・ジョグ再開:2〜3週(痛みと腫れが落ち着き、片脚立ちが安定してから)
・サッカー練習(制限付き対人):3〜5週
・試合復帰:3〜6週間
・ポイント:片脚ホップの左右差90%以上、片脚カーフレイズ25回、カット動作で痛み0〜1/10、翌日の腫れの増悪なし。

グレードIII(重度):保存療法・手術の違いと復帰目安

・特徴:靭帯断裂レベル。強い腫れ・不安定感。
・保存療法:6〜12週間で段階的復帰(固定→荷重→リハビリ)。
・手術例(不安定性が強い/合併損傷あり/反復捻挫など):競技復帰は3〜6か月のことも。
・ポイント:機能テスト(ホップ電車ごっこ、Yバランス、アジリティ)で95%基準、痛み・腫れが日をまたいで増えないことが前提。

ハイアンクル捻挫(遠位脛腓靭帯損傷):復帰が遅くなる理由と目安

・特徴:足首の少し上(脛腓間)に痛み。つま先を外にねじる・強い背屈で痛む。
・復帰目安:通常の外側靭帯捻挫より長い傾向。軽度でも3〜6週、中等度以上で6〜12週以上。
・理由:スプリントやカット時に脛腓間が開こうとする力が加わりやすく、競技特性上ストレスが大きい。
・ポイント:スプリントと鋭いカットで痛みゼロ、翌日反応なしを厳格に確認。

ポジション別の傾向(DF・MF・FW・GK)とプレースタイルの影響

・DF:対人での接触・着地ミスが原因になりやすい。復帰初期は1対1の強度を段階的に。
・MF:カット・ターン頻度が多く再発リスクに注意。可動域と固有感覚を最優先。
・FW:加速・減速の繰り返し。減速コントロール(ブレーキ動作)の再学習が鍵。
・GK:着地・ブロッキング時の内反ストレス。ジャンプ→着地の質を徹底修正。
・結論:同じ「週数」でも、プレー強度・アクションの種類で復帰可否は変わる。最終判断は機能テストで。

サッカーで起こる足首捻挫の基礎知識(種類と損傷度を正しく理解)

外側靭帯(前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯)と内側のデルタ靭帯

・外側靭帯(前距腓靭帯:ATFL、踵腓靭帯:CFL、後距腓靭帯:PTFL)が最も損傷しやすい。多くは内反(足裏が内側へ)と底屈の組み合わせ。
・内側のデルタ靭帯は強固だが、強い外反ストレスや接触で損傷することもある(頻度は低い)。

ハイアンクル捻挫(遠位脛腓靭帯)と通常の捻挫の違い

・ハイアンクルは「脛骨と腓骨の間」の靭帯損傷。つま先を外にねじる(外旋)+背屈で痛みやすい。
・通常の外側捻挫は足首外側が腫れて押すと痛い。回復スピードはハイアンクルの方が遅い傾向。

損傷度(グレードI・II・III)の目安と症状の特徴

・I:軽い腫れ/圧痛、荷重可能、可動域の低下は小さい。
・II:中等度の腫れ、歩行痛、可動域制限、動揺感。
・III:強い腫れ・内出血、荷重困難、明らかな不安定性。
・最終的な診断は医療機関での評価による。

サッカーで捻挫が起こりやすい場面(着地・カット・接触・ピッチ条件)

・ヘディングやシュート後の着地ミス。
・素早い切り返し・カットでの踏み替え。
・タックル・接触で足が引っかかる。
・硬い人工芝やスパイクとの相性不良(グリップ過多/不足)。

受診と検査の目安:骨折や重症例を見逃さないために

受診が必要なサイン(強い腫れ・変形・荷重困難・しびれ・夜間痛など)

・明らかな変形、急速な腫れ、4歩以上歩けない、しびれ・感覚低下、夜間もズキズキ痛む、内出血が広範囲などは受診を。
・痛みが軽くても長引く、再発を繰り返す場合も評価を受ける価値あり。

オタワ足関節ルールの考え方(X線が必要か判断する基準)

・「くるぶし周囲の痛み」+「外くるぶし/内くるぶし後縁や先端の圧痛」または「直後と医療機関で4歩以上歩けない」ならX線検査を検討。
・中足部の痛み+舟状骨(足の甲の内側)や第5中足骨基部(小指側)の圧痛でもX線適応の目安。
・自己診断は難しいので、迷ったら受診を。

画像検査(X線・超音波・MRI)の役割とタイミング

・X線:骨折の有無を確認。
・超音波:靭帯の連続性、血腫、腱の状態を動かしながら評価可能。
・MRI:靭帯・軟骨・骨挫傷・脛腓靭帯などの詳細確認に有用。
・強い痛みや不安定性、回復が遅いときは医師と相談を。

成長期(高校生・ジュニア)で注意したい骨端線損傷

・成長線(骨端線)が弱点になり、捻挫に見えて骨端線損傷のことがある。
・腫れが強い・圧痛が骨側にある・歩けない場合は特に注意。

急性期の対応(48〜72時間):腫れと痛みを最小化する

PEACE & LOVEの原則(急性期〜回復期の流れ)

・P(保護):痛みが強い動きは避ける。
・E(挙上):心臓より高く。
・A(抗炎症の多用回避):必要以上の抗炎症に頼りすぎない考え方。
・C(圧迫):弾性包帯やサポーターで腫れを抑える。
・E(教育):焦らず段階的に進める計画を知る。
・L(荷重): tolerable な範囲で早期から少しずつ。
・O(楽観):回復イメージをもつ。
・V(血流):痛みのない範囲で軽い有酸素。
・E(運動):可動域・筋力・バランスの段階的トレーニングへ。

RICEとの違いと、最新の考え方

・RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)は痛みコントロールに有効だが、最新の考え方では「過度な安静を避け、早期から安全な範囲で動かす」「抗炎症の使い過ぎに注意」が強調される。

圧迫・挙上・荷重のコントロール

・弾性包帯やサポーターで足首からふくらはぎ方向に適度な圧迫。
・24〜72時間はこまめな挙上。
・痛みが許す範囲で杖やサポーター併用しながら部分荷重→全荷重へ。

痛み止め・湿布の一般的な考え方(使用の目安)

・鎮痛薬や湿布は痛みコントロールに役立つが、使用は最小限・最短期間を心がけ、気になる場合は医療者に相談を。
・アイシングは痛み軽減目的で10〜20分を目安に。皮膚トラブルに注意。

リハビリの進め方:段階的に“走れる足首”へ戻す実践プロトコル

可動域(特に背屈)と腫れのコントロール

・タオルを使った背屈ストレッチ、足首の円運動、壁ドリル(膝を壁に近づける背屈テスト)で可動域を回復。
・腫れが残ると筋出力が落ちるため、圧迫・挙上を継続。

筋力(腓骨筋群・下腿三頭筋・足内在筋・臀筋)を戻す

・セラバンドで外反方向のエクササイズ(腓骨筋群)。
・カーフレイズ(両脚→片脚、膝伸展・屈曲位)。
・タオルギャザーやショートフットで足内在筋。
・ヒップアブダクション、ヒンジ系で臀筋を強化し、膝・足首へのストレスを分散。

バランス・固有感覚(片脚立ち・Yバランスなど)

・片脚立ち(床→不安定面→目閉じ)。
・Yバランスで可動域と安定性を同時に鍛える。
・ラダーで足さばきと接地の質を改善。

ジャンプ・着地・アジリティ(減速・方向転換・カット)

・ドロップジャンプ→ソフトランディングを反復。
・加速だけでなく「減速」のドリルを重視(片脚ストップ、デセルレーション)。
・カット角度を15°→45°→90°と段階的に。

サッカー特異的ドリル(ボールワーク・対人・ゲーム形式)

・ボールありの反復走→方向転換→パス&ムーブ。
・制限付き1対1(接触なし→限定接触)。
・小規模ゲーム(3v3/5v5)→通常ゲームへ。

競技復帰のチェックリスト:安全に“試合OK”と言える条件

痛み・腫れ・可動域の基準(左右差と翌日の反応)

・痛み0〜1/10、圧痛が最小、翌日に腫れや痛みが増えない。
・背屈可動域の左右差が5度以内、もしくは壁ドリルで左右差2cm以内。

機能テスト(ホップテスト・カーフレイズ・Yバランスなど)の目安

・片脚カーフレイズ25回以上(左右差10%以内)。
・ホップテスト(前方/クロス/サイド)で左右差90〜95%以上。
・Yバランス総合スコアが健側の90〜95%以上。

直線走→スプリント→カット→1対1→ゲーム形式の連続テスト

・各段階で痛みゼロ・翌日反応ゼロを確認して次へ。
・競技速度の反復スプリント、急停止、90°以上のカットが鍵。

メンタルの準備度と不安感の評価

・「怖さ」が強いと動きが硬くなり再発リスク増。
・成功体験(問題なくこなせたドリル)を積み上げて不安を下げる。

フィールド復帰の段階的プログレッション(具体例)

ウォーク&ジョグ(痛みゼロでの連続走開始)

・10分ウォーク→10分ジョグ→10分ウォーク。
・翌日の反応ゼロを確認してジョグ時間を+5〜10分。

直線走→ビルドアップ→スプリント反復

・50〜70%走×10本→80%×6本→90%×4本→100%スプリント×4本。
・間に技術ドリル(パス/トラップ)を挟む。

軽い方向転換→カット→減速・停止のコントロール

・コーンドリルで45°ターン→スラローム→Tテスト。
・減速ドリル(10m全力→3mで停止)を追加。

ボールありドリル→対人制限付き→ゲーム形式→フルコンタクト

・ボールありアジリティ→1対1(接触なし)→小規模ゲーム→通常練習→フルコンタクトの試合。

サポーター・テーピング・スパイクの選び方

テーピングと足首サポーターの使い分け(利点・限界)

・テーピング:フィット感が高いが持続性に限界。
・サポーター(レースアップ等):着脱容易で繰り返し使用可。
・復帰初期は外部サポートで内反ストレスを減らす。長期的には筋力・バランスの改善が土台。

スパイクのスタッド長・配置とピッチコンディションの相性

・硬い人工芝や乾いた土:短め・多本数のスタッド(AG/TF)で過度な引っかかりを避ける。
・柔らかい天然芝:やや長めでも可。ただし硬い地面に長いスタッドは避ける(ねじれが強くなる)。
・円錐スタッドは回旋がスムーズで足首に優しい傾向。

インソール・足部アライメントの考え方

・土踏まずのサポートや外側への倒れ込みに対する補正が有効な場合がある。
・個人差が大きいので、違和感があれば専門家に相談。

復帰初期の外部サポート使用期間の目安

・グレードI:1〜2週程度。
・グレードII:2〜4週程度。
・グレードIII/ハイアンクル:症状次第で長め。強度練習・試合では継続使用を検討。

再発予防と慢性足関節不安定症(CAI)への対策

再発リスクの要因(既往・背屈制限・固有感覚の低下など)

・過去の捻挫歴、背屈制限、腓骨筋の弱さ、バランス低下は再発要因。
・硬い地面×グリップ強すぎるスパイクもリスクに。

神経筋トレーニング(FIFA 11+など)をルーティン化する

・ウォームアップで神経筋プログラムを導入すると、下肢傷害の予防に役立つという報告がある。
・週2〜3回、継続がコツ。

背屈可動域の回復と代償動作の修正

・背屈が出ないと膝が内側に入りやすく、足首の内反ストレス増。
・ヒップのコントロール、着地姿勢(膝とつま先の方向一致)を習慣化。

長引く不安定感や重度損傷で手術が検討されるケース

・繰り返す捻挫、明らかな不安定性、軟骨・腱の合併損傷がある場合は手術が選択肢になることも。
・方針は医師と相談し、術後は段階的リハビリが必須。

高校生・ジュニアの注意点(成長期アスリート特有の視点)

骨端線損傷の可能性と診断の重要性

・捻挫に見えて実は成長線の損傷というケースがある。
・痛みが強い、骨の圧痛が目立つ、歩けない時は早めに受診を。

部活動・クラブ・学校の連携(復帰計画の共有)

・医療者・指導者・保護者で「いつ・何を・どこまでOKか」を共有。
・練習メニューの段階表を用意し、逸脱しない。

保護者がチェックしたいサインと記録の付け方(痛み・腫れ・荷重)

・痛みスコア、足首周径、翌日のこわばり、片脚立ちの安定度を日記化。
・増悪があれば一段階戻す、を基本ルールに。

よくある質問(Q&A)

いつからランを再開して良い?目安は?

・歩行痛がなく、片脚立ちで安定、腫れが落ち着いていればジョグ開始のサイン。早い人で1週間、一般的には1〜3週間。

テーピングをすれば試合に出ても大丈夫?

・痛み・腫れ・機能テストが基準を満たした上での最終補助手段。テーピングのみで基準を補うのはNG。

氷と温めはどう使い分ける?

・急性期(48〜72時間)はアイシングで痛みコントロール。循環を促す軽い運動が可能になってきたら、温めはリカバリー目的で検討。

捻挫の瞬間に“ポキッ”と音がした/腫れが少ないのに痛いのは?

・靭帯損傷や骨挫傷、ハイアンクル、腱の関与など様々。音の有無や腫れの量だけで重症度は決められない。気になる場合は受診を。

痛みが軽いのに長引くのはなぜ?どこで詰まっている?

・背屈制限、腫れの残存、腓骨筋の遅れ、バランスの低下、減速技術の不足など。評価してボトルネックを特定しよう。

人工芝と天然芝でリスクは変わる?スパイクはどうする?

・硬い人工芝+グリップ強すぎは内反ストレスが増えやすい。AG/TFや円錐スタッドで回旋の余裕を確保するのが無難。

損傷度別のモデルプラン(1〜8週間の例)

グレードI:1〜3週間のモデル

・週1:圧迫・挙上、背屈可動域、両脚→片脚カーフレイズ、片脚立ち。
・週2:ジョグ、ラダー、軽いカット、ボールありドリル。
・週3:スプリント、1対1(制限付き)→通常練習→試合復帰。

グレードII:3〜6週間のモデル

・週1〜2:圧迫・挙上、部分荷重→全荷重、可動域・腓骨筋強化、バランス。
・週3〜4:ジョグ→ビルドアップ、ラダー、軽いカット、ボールあり。
・週5〜6:スプリント、減速・方向転換、対人、ゲーム形式→試合復帰。

グレードIII・ハイアンクル:6〜12週間以上のモデル(個別化の重要性)

・週1〜3:固定・保護→段階的荷重、可動域回復、腫れコントロール。
・週4〜6:筋力・バランスを重点、ジョグ開始。
・週7〜12:スプリント、アジリティ、対人を慎重に追加。
・個人差が大きいため、テスト基準を満たした上で進行。

復帰後のパフォーマンスと負荷管理

出場時間の増やし方(分数・週あたりのセッション)

・初戦は20〜30分→次戦で45分→フルへ。週あたりの高強度セッションを1→2→3へ段階的に。

主観的運動強度(RPE)と翌日の反応でモニタリング

・RPE×時間(セッション量)と翌日の痛み・腫れ・こわばりを記録。増えたら一段階戻す。

睡眠・栄養・リカバリーで再発を防ぐ

・睡眠7〜9時間、十分なタンパク質と総エネルギー、軽い有酸素で血流促進。
・練習前のウォームアップ(神経筋ドリル)を固定化。

まとめ

足首捻挫の復帰時期は「週数」で決めず、「痛み・腫れ」「可動域」「機能テスト」「翌日の反応」で判断するのが安全です。一般的な目安は、グレードIで1〜3週、グレードIIで3〜6週、グレードIIIやハイアンクルで6〜12週以上。ただしサッカーはスプリントとカットが多く、基準を厳密にクリアしてから実戦へ戻ることが再発予防の近道です。急性期は腫れを最小化し、回復期は背屈・腓骨筋・バランス・減速技術を丁寧に積み上げましょう。装備(サポーター、スパイク)とピッチ条件の最適化も、足首を守る重要な一手です。困ったら我慢せず、医療者やトレーナーと連携して一歩ずつ。安全な復帰と、その先のパフォーマンス向上を目指していきましょう。

RSS