サッカーチームの練習メニュー、中学生が勝てる90分設計

サッカーチームの練習メニュー、中学生が勝てる90分設計

中学生が試合で勝つために必要なのは、うまさだけではありません。技術・判断・運動量をセットで伸ばし、短時間でも「試合に直結すること」へ集中することが鍵です。本記事では、サッカーチームの練習メニューを90分に最適化し、即効性と継続性の両方を狙う設計を提案します。試合から逆算したタイムテーブル、目的別ドリル、強度管理、KPIまで、日々の練習にそのまま落とし込める形でまとめました。

中学生が勝てる練習の設計思想：90分で何を伸ばすか

勝敗を分ける3要素：技術・判断・運動量

90分の中で「ボール扱い」「状況判断」「走力（出力の継続）」の3つを同時に鍛えると試合への転換が早いです。単発の基礎練だけではなく、時間の後半ほど判断と運動量を伴う対人・ゲームへ移行し、技術がプレッシャー下で使える形になるよう設計します。

• 技術：ファーストタッチ、方向づけ、キック精度
• 判断：スキャン→選択→実行の速さ
• 運動量：反復スプリントと切り替え回数

年代特性と成長曲線を踏まえた負荷設定

中学生は成長スパートで身長・体重が変化しやすく、協調性の波が出ます。強度は主観的運動強度（RPE）で可視化し、練習中盤にピーク、終盤はゲーム形式で質を担保するのが無理のない配分です。痛みがある場合はジャンプ・着地回数を抑え、代替メニューを用意します。

試合から逆算するトレーニングデザイン

「どんなゴールで勝つか」「どう守るか」から練習を逆算します。例えば、即時奪回と速攻を狙うなら、5秒以内の再奪回ルールや縦に速い制限をゲームに埋め込み、評価軸も「即時奪回成功率」「枠内率」など試合と同じKPIで測ります。

全体像：サッカーチームの練習メニュー90分のタイムテーブル

00-10分｜ダイナミックウォームアップとコーディネーション

ラダーやスキップ、切り返しを組み合わせ、関節可動域と神経系を起こします。ボールなし→ありの順で、最後の1分は対面でショートパス。声と合図（「ターン」「ワンツー」など）を使い、序盤からコミュニケーションをオンにします。

10-25分｜ボールマスタリーとファーストタッチ

両足のボールタッチ、方向づけトラップ、ターンの反復。プレッシャーなし→影（パッシブ）→軽い対人へ。タッチ数を制限せず、最適解のファーストタッチを優先します。ターン後の視線（スキャン）を声かけで徹底します。

25-45分｜ポゼッション＆プレッシング（判断力強化）

3対1や4対2から始め、6対3、6対6+フリーマンへ。攻守の役割を頻繁にローテし、「ボール保持の目的＝前進」を明確にします。守備側はアプローチ角度と2人目の連動を評価します。

45-70分｜ゴール前の局面（フィニッシュと崩し）

サイドからのカットバック、中央での三人目の動き、リバウンド対応までを一連に。シュート後の3秒間は全員が即時奪回モードで二次攻撃へ。枠内率とセカンドボール回収率を記録します。

70-85分｜スモールサイドゲームで統合（トランジション重視）

5対5〜7対7。タッチ数制限なし、ただし「奪って5秒以内にゴールすれば2点」のようなルールで狙いを強調。ビルドアップの起点、背後の狙い、ファーストディフェンスをチェックします。

85-90分｜クールダウンと振り返り（ミニKPI）

軽いジョグとストレッチ、呼吸を整えてから、今日のKPI（例：ファイナルサード進入、枠内率、即時奪回）を口頭で共有。各自の良かった点・次回修正を一言で残します。

目的別ドリル集：すぐ使える中学生向け練習メニュー

個人技術：ファーストタッチ・方向づけ・キック精度

ドリル：三角ターン＆前進

3コーンで三角形。パス→方向づけ→運ぶ→次のコーンへ。ターン後の顔上げを義務化。成功基準は「最初のタッチで進行方向へ置けた率」。

ドリル：レンジキックの分解

20m・30m・40mの目標ゾーンに蹴り分け。助走と軸足位置を固定し、回転と弾道の違いを体感。枠（ゾーン）到達率を記録。

守備原則：1st/2nd/3rdディフェンダーの役割

ドリル：1v1＋シャドウ

攻撃1、守備1、後方にシャドウ1。1stは遅らせる角度、2ndは奪いどころを合図、3rdは背後カバー。役割を30秒ごとに交代。

攻撃原則：幅・深さ・三人目の関与

ドリル：ワイドtoカットバック

サイドで2対1→エンドライン侵入→カットバックに対して、ニア/ペナ頂点/ファーの3枚が分担。三人目の走り直しを強調。

トランジション：5秒ルールと即時奪回

ドリル：5秒スイッチゲーム

4対4+2フリーマン。奪われた側が5秒以内に奪い返せば継続、失敗なら相手に1点。全員の初速と距離感を合わせます。

セットプレー：中学生に適したゾーン＋マン併用

ドリル：CKゾーン3＋マン2

ニア・中央・ファーをゾーンで守り、最も強いキッカー/ターゲットにマンマーク。役割を固定しすぎず、相手に応じて1枠調整します。

コミュニケーション：合図・キーワードの統一

キーワード例

• 「ターン」＝前向ける
• 「ワンツー」＝即壁
• 「スイッチ」＝ポジション入れ替え
• 「プレス」＝ファーストディフェンス開始

ポジション別の重点ポイントと練習の当てはめ方

GK：ビルドアップ参加とセービングの二軸

GKは前進の一員。ビルドアップの三角形を作り、背後のロングレンジも使い分け。セービングはポジショニングとリバウンド対応をセットで反復します。

DF：ラインコントロールとインターセプト

背後管理は最優先。縦スライドと横スライドを声で同期し、前向きな予測で奪い切る。カバーの立ち位置を半歩内側に置くのが基準です。

MF：スキャン頻度と前進の優先順位

受ける前のスキャン回数を最低2回。選択は「縦→斜め→横」の優先順位。三人目との連動で前進ルートを複線化します。

FW：裏抜けのタイミングとファーストディフェンス

相手CBの視線が外れた瞬間にスタート。ボールを失った直後は進行方向を限定する守備で味方を助けます。

人数・スペース・道具が限られるときのアレンジ

少人数（6〜10人）での設計

3対2＋フリーマン、4対4の縦長コートなどで判断負荷を確保。GK不在時は小ゴール2基やゲートで代用します。

大人数（20人以上）でのローテーション管理

3面展開で同一テーマを並列運用。待ち時間は「個別課題レーン」（方向づけやレンジキック）を設け、密度を下げない設計に。

狭いグラウンドでの工夫と代替マーカー

コーンが足りなければビブス・ボトルで代替。縦を短く横を広く使い、ワンツーや三人目の関与をテーマにします。

ボールが少ない／ゴールがない場合の代替ドリル

1球でも回るロンド、ゲート通過で得点化、ミニゴールはコーン2本で代用。シュートは「枠＝地面に置いた2m四角」を設定します。

強度管理と怪我予防：安全に強くなるための基準

RPEを使った強度可視化と休息

練習後に10段階で自己申告。週内の山谷を作り、連日の高強度を避けます。ゲーム日の前日はRPE4〜5を目安に軽めに。

成長期のオスグッド等への配慮

膝前面の痛みがある場合はジャンプ・ダッシュを減らし、股関節主導の動きづくりへ。痛みが続くときは早めに医療機関へ相談を。

暑熱対策と水分補給ルール

10〜15分に一度の給水、日陰で休息、ビブスの色で交代を可視化。熱中症リスクが高い日は強度と時間を短縮します。

週のマイクロサイクル例：試合中心の計画術

試合2日前（MD-2）：強度中・戦術整理

25分の判断ドリル＋25分の局面練習＋20分のゲーム。即時奪回やライン間攻略をテーマに調整します。

試合前日（MD-1）：強度低・セットプレー最終確認

RPE4〜5で軽く。カウンター時の役割分担、CK/FKの入り方、合図を短時間で共有します。

試合翌日（MD+1）：リカバリーと個別課題

出場時間に応じたジョグとモビリティ。出場少の選手は短時間の高強度ドリルで刺激を入れます。

90分メニューの詳細解説：コーチングポイントと評価軸

ウォームアップの質を上げるチェックリスト

• 足首・股関節が温まっているか
• 切り返しの減速→再加速が滑らかか
• 声と視線で合図が通っているか

ポゼッションドリルの成功基準（3回連続の前進など）

3本連続で縦パスが通る、10秒以内にサイドチェンジ成功、奪われたら5秒で再奪回。数値化して進捗を見ます。

フィニッシュ練習の期待値思考（枠内率とリバウンド対応）

枠内率60％以上を目標に。セーブされた後の二次攻撃に点を付け、ゴール前の期待値を底上げします。

スモールサイドゲームのルール設計で意図を強調

「縦パス起点の得点は2点」「5秒カウンターは2点」など、得点配分で狙いを際立たせます。守→攻の初速を常に評価。

終わりの3分での振り返りテンプレート

• 今日のテーマ：1つ
• できたこと：具体例を1つ
• 次回の修正：行動を1つ

よくある詰まりを解消する修正案

ビルドアップで前進できないときの解決策

SBの内側立ち、IHの幅取り、GKを絡めた3人目の前進で解消。相手の1stラインの外側に起点を作ります。

ライン間で受けられないときの動き直し

受ける前に相手の背中を取る→見られたら流れる→再び背中へ。動き直しを2回セットで仕込むと通りやすくなります。

守備でマークがズレるときの基準言語

「縦切り」「内切り」「預ける」「押し上げる」を統一。ボールサイド3枚の役割（寄せ・カバー・バランス）を固定します。

シュート本数が伸びないときの仕組み

カットバック解禁、遠いサイドの逆サロ（逆走り込み）を義務化。ショット前の3秒で人数をかけるルールを導入します。

今日から使える90分メニュー3選（目的別）

即時奪回とカウンター強化プラン

• WU10分：コーディネーション＋2人組プレッシング
• 判断20分：4対4+2（5秒奪回2点）
• 局面25分：奪って3パス以内でフィニッシュ
• ゲーム20分：縦速カウンター2点
• 振り返り5分：即時奪回成功率

ポゼッション安定と前進プラン

• WU10分：ファーストタッチ方向づけ
• 判断20分：6対3（前進で1点）
• 局面25分：三人目の関与から背後へ
• ゲーム20分：10本パスor前進で加点
• 振り返り5分：前進回数×成功率

フィニッシュ精度と再奪回プラン

• WU10分：レンジキック精度
• 局面25分：サイド崩し→カットバック
• 局面20分：リバウンド回収ゲーム
• ゲーム20分：シュート後3秒奪回で2点
• 振り返り5分：枠内率・二次得点

成果を測る：中学生向けKPIと記録法

個人：スキャン回数・成功率・スプリント回数

受ける前の視線移動回数、パス成功率、5m〜15mのスプリント回数をチェック。試合と練習で同じ指標を使います。

チーム：ファイナルサード進入数・枠内率・即時奪回成功率

前進の量と質、ゴール期待値に直結するKPI。1回の練習で3項目までに絞り、継続して追います。

振り返りシートと動画の活用法

練習直後に1分で記入、週末に動画で確認。良い例をチームで共有し、言語と映像を一致させます。

保護者との連携と選手の自立を促す仕組み

家庭でできる補助トレーニングと負荷管理

自重のヒップヒンジ、片脚バランス、短時間のボールタッチ。RPEを家でも共有し、疲労が強い日は睡眠優先に。

食事・睡眠の基本と練習への影響

炭水化物・タンパク質・水分をバランス良く。睡眠は目安8時間以上、就寝前のスクリーン時間を短縮します。

メンタルサポートとフィードバックの伝え方

結果ではなく行動を称賛。「今日の良かった行動」を具体的に1つ。失敗は次の行動に置き換えます。

参考情報と根拠の示し方

信頼できる資料の探し方と引用の基本

国内協会の指導ガイド、年代別の育成指針、スポーツ医学の基礎資料を確認。引用は出典名・年・ページを明記します。

年代別指導ガイドラインのポイント確認

中学生は技術の自動化と判断の高速化が主眼。強度は段階的に、休息と栄養をセットで管理します。

まとめ：90分を「試合の縮図」にする

サッカーチームの練習メニューを90分で設計するコツは、技術・判断・運動量を分離せず、試合の流れに沿って積み上げることです。冒頭で体を起こし、個人技術を整え、中盤で判断に負荷をかけ、終盤はトランジションの速さで統合する。KPIで振り返り、週の中で山谷を作れば、成果は数字とプレーに現れます。明日の練習から、ひとつだけでも導入してみてください。継続が最短ルートです。