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サッカーポジション向き不向き診断 実戦と数値で最適解を導く

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「自分はどのポジションが一番伸びるのか?」に終わりはありません。実戦の中での手応えと、測定できる数値。その両方を使って、いまの自分に最もフィットする役割を決める──本記事は、そのための具体的な手順をまとめた実践ガイドです。90分のプレーから逆算したKPI、スマホで測れるテストバッテリー、無料ツールでのデータ取得、重み付けスコアの作り方、そして最終的な意思決定フローまで。読んだらそのまま「測る・診断する・決める」まで進めるよう、テンプレートも用意しました。

記事の目的と前提:実戦と数値でポジションの最適解を導く

ポジション選択のよくある誤解を解く

・「身長が高い=CB」「足が速い=WG」で決まりではありません。試合の文脈、相手との相性、チームの戦術で価値は変わります。
・テクニックと戦術理解が高ければ、フィジカルの不足を役割で補えることも珍しくありません。
・一回の良し悪しで決め切るのは危険。継続的なデータと繰り返しの観察で、傾向としての最適解を見つけるのが現実的です。

「向き不向き」は固定ではなく更新される仮説

「いまの自分にとっての最適」は、成長や戦術の変化で更新されます。診断は結論ではなく仮説。四半期ごとに再測定し、実戦のKPIと突き合わせて、仮説をアップデートしていきましょう。

診断の全体像:実戦観察×数値評価×意思決定フロー

1) 実戦観察:90分(もしくは複数試合)のKPIを収集。
2) 数値評価:スピード、持久、パワー、技術、視野・意思決定、メンタルのテストを実施。
3) スコアリング:ポジション別の重み付けでスコア化。
4) 可視化:レーダーチャートや散布図で強みの形を把握。
5) 意思決定:3候補まで絞り、実戦で短期トライ→KPI比較→最終選定。

ポジション別に求められる能力マップ

GK/CB/SB/DMF/CMF/AMF/WG/STの役割と必須要素

・GK:ショットストップ、反応、空中戦、足元(ビルドアップ)、コーチング。
・CB:対人・カバーリング、空中戦、配球(縦パス/サイドチェンジ)、ライン統率。
・SB(FB):上下動、1対1守備、オーバーラップ/インナーラン、クロス品質。
・DMF:位置取り、プレス耐性、配球(スイッチ/縦ズドン)、奪取と二次回収。
・CMF:前進力(運ぶ/出す)、セカンド回収、連動(トライアングル形成)、ボックス到達。
・AMF:受ける技術(間で受ける)、ラストパス、シュート関与(xGに絡む)。
・WG:縦突破/カットイン、逆足精度、クロス/シュート選択、帰陣の速さ。
・ST(CF):裏抜け、ポスト、決定力、プレスのスイッチ(守備の合図)。

身体特性・技術・戦術理解・メンタルの重み付け

・GK:身体40%/技術20%/戦術20%/メンタル20%。
・CB:身体35%/技術20%/戦術30%/メンタル15%。
・SB:身体35%/技術25%/戦術25%/メンタル15%。
・DMF:身体20%/技術30%/戦術35%/メンタル15%。
・CMF:身体25%/技術30%/戦術30%/メンタル15%。
・AMF:身体20%/技術35%/戦術30%/メンタル15%。
・WG:身体35%/技術30%/戦術20%/メンタル15%。
・ST:身体30%/技術30%/戦術25%/メンタル15%。

重みはあくまで目安。チームコンセプト(ポゼッション/トランジション重視)で調整しましょう。

高校〜社会人での優先度の違いと現実的な基準

・高校世代:スピード/走力の影響が大きい傾向。判断速度は個人差が出やすいので、シンプルな基準で評価。
・社会人:判断とポジショニングの重要度が相対的に上昇。持久系は「落ちないこと」が評価されがち。
・現実的な基準:30m走、Yo-Yoテスト、5-10-5敏捷、パス精度、スキャン頻度など、再現性のある指標を採用。

実戦ベースの診断プロトコル

90分から逆算するポジション別KPI設定

・GK:セーブ率、被枠内シュートに対する失点率、ハイボール処理成功率、ビルドアップ成功率、コーチング回数。
・CB:対人勝率、空中戦勝率、ラインブレイク阻止数、縦パス成功数、被背後ラン許容回数。
・SB:スプリント回数、1対1守備成功、クロス到達率/決定機創出、インナーラン侵入回数、ボールロスト後の即時奪回。
・DMF:前向き受け回数、ライン間前進パス本数、奪取/インターセプト、被プレス下のロスト率、セカンド回収数。
・CMF:キャリーでの前進距離、スルーパス/ラストアクション関与、セカンド回収、ボックス侵入、被プレス下成功。
・AMF:間受け回数、キーパス、PA内タッチ、xG+xA関与、被プレス時の前進成功。
・WG:1対1仕掛け回数と成功率、カットインからのシュートxG、クロス到達率、裏抜け回数、帰陣スプリント。
・ST:シュート本数とxG、枠内率、ポストプレー成功、最初のプレススイッチ数、裏抜け回数。

ゲーム内チェックリスト(ビルドアップ/守備/トランジション)

・ビルドアップ:前向きに受けられたか/数的優位を作れたか/安全と前進のバランス。
・守備:ファーストアクションの質/スライドの速さ/相手の縦パスを消せたか。
・トランジション:ロスト直後の3秒/奪取後の前進速度/相手の逆襲に対する遅れ有無。

スモールサイドゲームでの適性確認:制約設計と評価ポイント

・4v4+3フリーマン(幅広):DMF/CMF/AMFの間受けと配球を評価。タッチ数制限(2~3)で判断速度を見る。
・3v3+GK(縦長):WG/ST/GKのフィニッシュ/守備、裏抜け、1対1対応の頻度を増やす。
・6v6(幅狭):SB/CBの守備対応、ラインの連携を評価。逆サイドへの展開を追加ミッションに。
・評価ポイント:意図の一貫性、成功率だけでなく「試みの回数」、リカバリーの速さ。

数値で測る診断テストバッテリー

スピード:10m・30m、反応時間、反復加速力

・10m(初速):スタンディングスタート。高校〜社会人の目安は1.70〜1.95秒。
・30m(最高速への到達):目安は4.00〜4.60秒。
・反応時間:スマホアプリや簡易反応テストで0.18〜0.25秒が一般的な成人の範囲。
・反復加速力:10m往復×6本(20秒レスト)で平均タイムと落ち幅を記録。

持久:Yo-Yoテスト、心拍回復、反復スプリント耐性

・Yo-Yo IR1:一般的なアマ〜競技者で1200〜2200mが多い。
・心拍回復:高強度後1分でどれだけ下がるか(10〜30bpm低下が目安)。
・反復スプリント:30m×6〜10本(20秒間隔)の平均と最遅/最速比。

パワー:立ち幅跳び、CMJ、方向転換能力(5-10-5)

・立ち幅跳び:2.0〜2.5mが一般的な成人男性の目安。
・CMJ(カウンタームーブメントジャンプ):30〜50cmがよくみられる範囲。
・5-10-5敏捷:4.5〜5.5秒の範囲が目安。

技術:パス正確度、ファーストタッチ、フィニッシュのxG差

・パス正確度:10m/20mのゲート通過(幅1.5m)各20本で成功率。
・ファーストタッチ:壁当て→指定ゾーン(2m四方)へのコントロール20回。
・xG差:ミニゲームの各シュート位置を簡易ゾーン化(PA中央近距離高xG、PA外低xG)し、期待値合計−実得点を算出。

視野・意思決定:スキャン頻度、選択遅延、リスク選好

・スキャン頻度:受ける前の3秒での首振り回数。2〜6回/3秒が目安。
・選択遅延:ボールコントロール可能になってからパス/シュートまでの時間(秒)。
・リスク選好:ラインブレイク狙いのパス割合や、1対1仕掛け割合を記録。

メンタル:プレッシャー下の一貫性とコミュニケーション

・圧力条件(制限時間、加点/減点ルール)でのパフォーマンス落差。
・声かけの頻度と具体性(方向/距離/合図)。

データの取得方法と無料ツール

スマホと無料アプリでできる計測セットアップ

・撮影:スマホをタッチライン中央の高め位置に固定。60fps以上推奨。
・計測:タイムはスマホのストップウォッチでOK。複数回測定して中央値を採用。
・編集/スロー再生:無料の動画アプリやPCならオープンソースのKinoveaが便利。
・記録:Googleスプレッドシートでテンプレート化し、リンク共有でチームと共有。

映像からの簡易イベント集計(タグ付けと時刻記録)

・方法:プレーごとに「時刻・イベント・成否・メモ」を1行で記録。
・推奨タグ:受ける/前進パス/奪取/1対1/クロス/シュート/プレススイッチ 等。
・無料ツール例:Kinoveaのタイムコード、LongoMatch(コミュニティ版)、スプレッドシート。

GPSなしでの走行距離・スプリント数の推定法

・ライン基準:センターサークル半径9.15m、PAの幅約40.32m、ゴールエリア幅約18.32mなど既知の長さでスケール化。
・視差補正:同一カメラ固定で、フィールド中央付近の距離推定を優先。
・距離推定:フレーム間の移動ピクセル/スケール(m/px)で近似。スプリントは一定速度以上(例:6.5m/s相当)をスプリントと定義。

診断アルゴリズムの作り方

重み付けスコアリングと閾値設定の手順

1) 各テストを0〜100点に正規化(例:30m 4.0秒=90点、4.6秒=50点など)。
2) ポジションごとの重みを掛け合わせ、合計スコアを算出。
3) 実戦KPIの重みを高め(例:数値テスト60%、実戦KPI40%)、二軸で判定。
4) 閾値は「合格/ボーダー/要再考」の3段階で設定。

レーダーチャートと散布図によるクラスター判定

・レーダー:身体/技術/戦術/メンタルの4象限で形を見る。
・散布図:縦軸=実戦KPI、横軸=数値スコアで、ポジション別に色分け。右上に近いほど適合度が高い。

3候補ポジションに絞る意思決定フロー(分岐条件)

・分岐1:数値スコア上位3ポジションを抽出。
・分岐2:その3つで直近3試合のKPIを比較(役割に応じて換算)。
・分岐3:最上位と次点で2週間トライ→KPI差が有意(10〜15%)なら決定。差が僅差ならハイブリッド(例:WG/AMF)で運用。

ポジション別の判定基準と合否ライン

GK:反応速度、空中戦、足元、コーチングの基準値

・反応:0.20秒以下◎/0.21–0.24○/0.25秒〜要改善。
・ハイボール:被空中デュエル勝率60%以上◎/45–60%○。
・足元:ビルドアップ前進パス成功50%以上◎(距離10–25m基準)。
・コーチング:明確な指示が15回/試合以上◎。

CB:デュエル勝率、カバーリング、対人対応、配球

・対人勝率:60%以上◎/50–60%○。
・空中戦:55%以上◎。
・配球:縦パス前進回数8本/試合以上◎。
・背後対応:被裏抜け0〜1回/試合◎/2回〜要改善。

SB(FB):走力、オーバーラップ、クロス品質、1対1守備

・スプリント:20回/試合以上◎(試合強度で変動)。
・クロス到達:40%以上◎/25–40%○。
・1対1守備成功:60%以上◎。
・インナー/オーバーラップ合計侵入:6回/試合以上◎。

DMF:位置取り、プレス耐性、配球、ボール奪取

・被プレス下パス成功:80%以上◎。
・縦パス/スイッチ成功:10本/試合以上◎。
・奪取+インターセプト:8回/試合以上◎。
・逆サイド展開(30m級):2本/試合以上で○以上。

CMF:前進力、連動、セカンド回収、シュート関与

・キャリー前進(合計):150m/試合以上◎(簡易推定で可)。
・セカンド回収:6回/試合以上◎。
・ラストアクション関与(xG+xA):0.4/試合以上◎。
・三角形成(ワンツー/三人目):5回/試合以上○以上。

AMF:受ける技術、ラストパス、ゴール前の間合い

・間受け回数:12回/試合以上◎。
・キーパス:3本/試合以上◎。
・PA内関与:4回/試合以上○以上。
・ターン成功(前向き化):70%以上◎。

WG:縦突破、カットイン、逆足精度、帰陣の早さ

・1対1仕掛け成功:40%以上◎。
・逆足シュート/クロスの枠内・到達:40%以上○。
・帰陣スプリント:8回/試合以上◎。
・xG関与:0.4/試合以上◎。

ST(CF):裏抜け、ポストプレー、決定力、プレスのスイッチ

・裏抜け:6回/試合以上◎。
・枠内率:シュートの50%以上◎。
・ポスト成功:70%以上◎。
・プレススイッチ:10回/試合以上○以上。

フィジカル参考ライン(一般的な高校〜社会人):30m 4.2秒以下=俊足、4.3–4.5=平均、4.6以上=要強化。Yo-Yo IR1:1800m以上◎/1500–1800○。5-10-5:4.8秒以下◎/5.0前後○。立ち幅跳び:2.3m以上◎。CMJ:40cm以上◎。

ケーススタディ:測定→診断→適正ポジションの導出

例1:高校2年・165cm・俊敏タイプの最適解

・数値:10m 1.74s、30m 4.18s、5-10-5 4.78s、Yo-Yo 1700m、立ち幅跳び2.25m。
・技術/視野:スキャン3秒で4回、1対1仕掛け成功45%、逆足クロス到達35%。
・KPI:仕掛け回数10、xG関与0.45、帰陣スプリント9。
・診断:WGが最上位、次点AMF/SB。2週間WGで起用→KPI増。AMFは間受けは良いが終局の貢献がWGより低い。結論:WG優先、AMF併用。

例2:社会人・180cm・空中戦に強みを持つ選手

・数値:30m 4.45s、5-10-5 5.05s、立ち幅跳び2.45m、CMJ 45cm、Yo-Yo 1600m。
・KPI:空中戦勝率65%、対人勝率58%、縦パス成功8本、被裏抜け1回。
・診断:CBが最上位、次点DMF。CBでの実戦KPIが安定し、配球も強み。結論:CB主務、試合展開で終盤DMF投入も可。

例3:小柄だがキック精度が高いプレーメーカー

・数値:30m 4.55s、5-10-5 4.98s、Yo-Yo 1850m。
・技術:パス正確度(10/20m)90/85%、スキャン頻度高、選択遅延短い。
・KPI:縦パス10本、被プレス下ロスト少、ラストパス3本。
・診断:DMF/CMFが適合。AMFはゴール前の決定的関与がやや不足。結論:DMF寄りCMFのハイブリッド。

実戦への落とし込み計画

週1〜3回でできる微調整メニュー(個別化)

・WG:加速10–20m×8、カットイン→シュート×左右各12、逆足クロス×20。
・CB:対人1v1方向制御、ヘディングクリア×15、縦パス通し×30。
・DMF:被プレス下の方向転換→前進パス×20、インターセプトドリル×10。
・ST:裏抜けタイミング(マーカー活用)×12、ファーストタッチ→即シュート×20。

セレクションや部内争いでのアピール戦略

・自分のKPIカード(直近3試合)を用意し、強みを一言で言語化。
・チーム戦術に合わせた役割提案(例:「WGとして縦突破と帰陣で強度を担保できます」)。

監督・コーチとのコミュニケーション設計

・仮説を提示→2週間の検証枠を依頼→結果を共有して再調整。データは簡潔に(上位3指標)。

よくある失敗と回避策

身長や体格だけで決めつけるリスク

・小柄でもDMF/CB以外でゲームを制御できるケースは多い。役割で補える領域を探す。

データ過信とサンプル数不足の落とし穴

・単発の好不調で結論を出さない。最低3試合+再測定で傾向判断。

一試合の印象でポジションを固定しないために

・四半期で再評価。KPIと数値の両輪で判断し、役割の幅も持たせる。

成長に伴うポジション再評価サイクル

期ごとの再測定とKPI更新(四半期スパン)

・3カ月ごとにテスト再実施→基準値と比較→弱点強化→再診断。

怪我明け・身体変化時の再診断プロトコル

・復帰段階で段階的テスト(持久→スピード→反復→対人)を進め、無理なく役割を戻す/見直す。

シーズン中の微調整とハイブリッド役割の導入

・WG/AMF、SB/CB、CMF/DMFなど近接ポジションのハイブリッド化で出場機会と価値を最大化。

自主診断テンプレート(コピー用)

測定項目リストと入力欄(簡易スコア表)

・10m:[ ]秒 ・30m:[ ]秒 ・5-10-5:[ ]秒
・Yo-Yo IR1:[ ]m ・立ち幅跳び:[ ]cm ・CMJ:[ ]cm
・反応時間:[ ]秒 ・パス正確度10m/20m:[ ]%/[ ]%
・スキャン頻度(3秒):[ ]回 ・選択遅延:[ ]秒
・1対1仕掛け成功:[ ]% ・逆足クロス/シュート:[ ]%

ゲーム内チェックリスト(局面別)

・ビルドアップ:前向き受け[ ]回/縦パス成功[ ]本/ロスト[ ]回
・守備:対人勝率[ ]%/空中戦勝率[ ]%/プレススイッチ[ ]回
・トランジション:即時奪回[ ]回/帰陣スプリント[ ]回

判定フロー用質問(分岐Yes/No)

1) 数値スコア上位3ポジションは抽出できた?[Y/N]
2) 直近3試合でその3つのKPIは集めた?[Y/N]
3) 最上位と次点で2週間トライ可能?[Y/N]
4) KPI差が10〜15%以上出た?[Y/N]→Yesなら上位決定、Noならハイブリッド検討。

FAQ

二つ以上のポジションで同点だった場合

・チーム戦術により価値が高い方、出場機会が増える方を優先。2週間の実戦比較で決めましょう。

戦術と自分の適性が合わない時の選択肢

・役割の微調整(内/外、高/低のポジショニング)で解決できることが多い。監督とKPIを共有して提案を。

身長が低いとセンターバックは不可能?

・絶対ではありませんが、空中戦とスピード対策が必要。配球やカバーリングで価値を上げられるなら選択肢に。

まとめと次のアクション

今日から始める3ステップ

1) スマホで1試合撮影し、KPIをスプレッドシートに記録。
2) 30m・5-10-5・Yo-Yo・パス精度・スキャン頻度を測定。
3) 重み付けでスコア化→上位3ポジションを2週間ずつトライ。

計測結果の共有とアップデートの習慣化

・四半期で再測定し、KPIと合わせて仮説を更新。チーム内で共有して役割を最適化しましょう。今日の一歩が、明日の最適解を連れてきます。

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