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サッカー高校生のフィジカル練習メニュー、週3で差がつく設計

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サッカーで差がつくのは、センスだけじゃありません。高校生の今、限られた時間の中で「週3」に絞ったフィジカル練習メニューを正しく積み上げれば、スプリント、切り返し、球際、最後のひと踏ん張りにまで効いてきます。この記事では「サッカー高校生のフィジカル練習メニュー、週3で差がつく設計」をテーマに、12週間で伸ばすための全体設計から、1回ごとのメニュー、学校・部活との両立、ケガ予防、測定方法までを丸ごとまとめました。器具が少なくても実施できる内容を中心にしています。

導入:なぜ高校生は「週3」で差がつくのか

週3の根拠:超回復と学業・部活の両立

フィジカルは「やった分だけ伸びる」ではなく、「適切に休めた分だけ伸びる」が基本です。高強度の刺激を入れると、48〜72時間で回復と上積み(超回復)が起こります。週3の頻度は、この超回復のリズムに合いやすく、学校や部活の時間とも両立しやすい現実的なラインです。毎日ハードワークするよりも、強・中・軽の波をつけて週3回に集中したほうが、疲労を溜めずに継続しやすく、結果的に伸びやすくなります。

サッカー特異性に合うフィジカル要素(加速・減速・方向転換・反復スプリント)

サッカーで効くのは、トップスピードだけではありません。最初の3〜5歩の加速、急停止のブレーキ、45〜90度の方向転換、短い全力ダッシュの反復(RSA)が、プレーのリアルです。週3メニューはこれらを柱に設計します。

量より質:短時間高品質メニューで差がつく理由

同じ60分でも、狙いがぼやけた練習と、意図が明確な練習では効果が別物です。ウォームアップ〜メイン〜クールダウンの流れを短時間で高品質に組み、RPE(主観的強度)や休息時間を管理することで、疲労を溜めずに必要な能力へピンポイントに刺激を通せます。

全体設計の原則:マクロからマイクロへ

12週間メゾサイクルの見取り図(導入→出力向上→試合期寄せ)

12週間を3つのフェーズに分けます。Weeks1-4は導入期(フォーム・可動性・耐性)。Weeks5-8は出力向上期(スプリント・プライオの強度UP)。Weeks9-12は試合期寄せ(RSAと鮮度重視)です。各期で狙いを絞ると過負荷→適応→定着の流れが作りやすくなります。

週次の負荷配分(強・中・軽)とリカバリーの位置づけ

基本は「強・中・軽」。例:月=強(Day1)、水=中(Day2)、金=軽(Day3)。試合が土日の場合、48時間前は強刺激を避け、軽めで整えるのが目安です。軽日は丁寧なウォームアップや短い高品質ドリル+回復でOK。

ポジションや個体差に合わせた微調整の考え方

同じテンプレでも、得意・苦手やポジションで微調整します。脚の張りが強い週は量を2割落とす、ハムが弱い選手はDay2で1種目追加、DFはブレーキと後退走を厚めに、といった感覚でOKです。

週3メニューの全体像(テンプレート)

Day1:爆発的パワーとスプリント(加速・減速・方向転換)

  • 所要45–60分:ウォームアップ10–15分→加速・減速→方向転換→パワー(メディシンボール/ジャンプ)→短いゲーム形式
  • 強度:RPE7–9、スプリントは完全回復(1回行くたび60–120秒休む)

Day2:基礎筋力・体幹・可動性(ケガ予防を含む)

  • 所要40–60分:モビリティ→全身複合→下肢強化→ハム重点→体幹→足首ケア
  • 強度:RPE6–7、正確なフォームと可動域重視

Day3:反復スプリント持久(RSA)と回復の組み合わせ

  • 所要40–55分:ウォームアップ→RSAプロトコル→小規模ポゼッション→クールダウン
  • 強度:RPE7前後、最後に呼吸法とストレッチで下げる

ウォームアップ設計:ケガ予防×パフォーマンスを両立

ランニングドリル(Aスキップ、メカニクスの整え方)

  • Aスキップ:15–20m×2–3本(膝は腰の高さ、つま先は軽く上げ、地面を真下に押す)
  • マーチ→スキップ→バウンディングの順で段階化
  • 姿勢キュー:「背中は高く」「視線は遠く」「骨盤は前傾しすぎない」

モビリティとアクティベーション(股関節・足首・足部)

  • 股関節:ワールドグレーテストストレッチ×左右各5回
  • 足首:ニーハグtoアンクルロッカー×10回、カーフポンプ×20回
  • 臀筋活性:バンドサイドステップ10–15m×2、グルートブリッジ10–12回×2

スプリント準備のプライオ(低〜中強度の段階設計)

  • アンクルホップ10m×2、ポゴジャンプ10回×2、ハードルミニ跨ぎ5本×2
  • 意図:弾性を軽く起動→腱に過度な衝撃を入れず神経系を温める

Day1 詳細:加速・減速・方向転換で“試合スピード”を作る

加速ドリル(10m・20m・フライングスプリント)

  • 10m加速:5本、完全回復(90–120秒)。スタート姿勢を3種(立位/スプリット/前傾ホールド)
  • 20m加速:3–4本、120–150秒休息。前半10mで積極的に前傾→後半で素早く立てる
  • フライング20m(助走10m→計測20m):3本、150秒休息。脚の回転を止めない

減速とブレーキ強化(エキセントリック重視の落とし方)

  • 20m中強度→5mで停止×4–5本。重心は低く、最後の3歩でストライドを詰める
  • 3段階ブレーキ(70%→85%→95%)で膝の内倒を抑える意識づけ

方向転換(505系・45度/90度・反応付き)

  • 505テスト形式ドリル:左右各3本(5m加速→ターン→5m戻り)。ターン前2歩のストライド短縮を徹底
  • 45度/90度カット:各3本×2セット。コーンに対して外足で切る→内足でも実施
  • 反応付き(コーチの指示/色コーン):6–8反復、休息長めで質優先

パワー出力(メディシンボール投げ・ジャンプの活用)

  • MBローテーショントス:左右各6回×2(全身で床を押して投げる)
  • カウンタームーブメントジャンプ(CMJ):5回×3、間60–90秒
  • デプスジャンプ(導入期後半〜):3–5回×2、落下高は20–30cmから

グラウンドでの実装例(1v1/2v2へのブリッジ)

  • スプリント→急停止→1v1(3秒ルール):片道15m→ブレーキ→即1v1、左右3本ずつ
  • 2v2のトランジション制限(5–8秒全力→10–15秒レスト×4ゲーム)

Day2 詳細:基礎筋力・体幹・可動性を底上げ

全身複合(自重〜軽負荷:スクワット/ランジ/プッシュ/ロウ)

  • サーキットA×3周(フォーム最優先、RPE6)
  • エアスクワット10–15回/プッシュアップ8–12回/ヒップヒンジ10回/インバーテッドロウ8–10回

下肢強化(スクワットパターンとヒンジのバランス)

  • ゴブレットスクワット:6–10回×3(踵荷重+胸を落とさない)
  • ヒップヒンジ(RDLまたはグッドモーニング):8–10回×3(背中はフラット)

ハムストリングス重点(ノルディック、RDL、スライダー)

  • ノルディックハム(補助あり可):3–5回×3、週ごとに反復数を微増
  • スライディングレッグカール:8–12回×3(足裏 or かかと)

体幹:アンチローテーション・アンチエクステンション

  • デッドバグ:8–10回×2
  • パロフプレス(チューブ):左右各10–12回×2
  • ハイプランクマーチ:20–30秒×2

足首・アキレスのケア(カーフレイズ、ソールフレックス)

  • カーフレイズ:20回×2(膝伸ばし)+15回×2(膝曲げ)
  • フットドーム(足裏アーチ作り):10秒ホールド×5

Day3 詳細:反復スプリント持久(RSA)を伸ばす

RSAプロトコル(15-15/30-30、コート活用のシャトル)

  • 15-15(15秒走+15秒休):20本、合計10分。距離目安70–90m/分(個人差あり)
  • 30-30(30秒走+30秒休):8–10本。距離目安120–160m/分
  • シャトル(20m往復):10–12本、RPE7、フォーム維持が崩れたら終了

小規模ポゼッションでの心拍帯管理(RPEと組み合わせ)

  • 3v3〜4v4、グリッド20×15m、レスト長め(1:1〜1:1.5)。2–3分×3–4本
  • 狙い:RSAの心拍負荷を技術・判断とつなげる

回復ドリルとストレッチ(呼吸法・軽強度ジョグ)

  • 鼻呼吸ベースの90–120秒ブリージング×2
  • 軽いジョグ5分→ハム・股関節・ふくらはぎ中心に静的ストレッチ各20–30秒

学校・部活スケジュールとの両立

試合週の調整(ターパリングと48時間前の負荷管理)

  • 試合48時間前:Day1の高強度は避け、Day3の軽縮小版(RSA半分+整え)
  • 試合前日:ウォームアップと反応スプリント2–3本(60–70%)のみ

テスト期間・行事のバリエーション(時短版メニュー)

  • 15分版:Aスキップ→ポゴ→10m加速×4→ノルディック×2→デッドバグ×2
  • 20分版:RSA15-15×10本→ストレッチ5分

睡眠・栄養・水分のミニマムライン

  • 睡眠:7–9時間を目安。就寝前のスマホは30分前に切る
  • 栄養:3食+補食。トレ前後の炭水化物とたんぱく質を確保
  • 水分:無色の尿を目安に、練習前後で体重の変化をチェック

進捗の測定とセルフマネジメント

測定項目(10mタイム、505、Yo-Yo/間欠的テスト)

  • 10m:月1で計測。スタンディングから
  • 505(方向転換能力):左右差にも注目
  • Yo-Yo IR1または間欠的シャトル:RSAの目安として

トレーニングログのつけ方(セット数・RPE・睡眠)

  • 項目:日付/メニュー/セット×回数/RPE/睡眠時間/体調メモ
  • 週ごとに「何が良かったか/次週の修正」を一行で書く

簡易ウェルネスチェック(疲労・筋肉痛・ストレス)

  • 朝の主観スコア(1–5):疲労・筋肉痛・ストレス・睡眠の4項目
  • 合計が一定以上悪化したら、その週は量を2–3割落とす

安全性と成長期への配慮

成長痛/オスグッド/シンスプリントの兆候と対策

  • 膝下の骨の痛み(オスグッド)、すねの痛み(シンスプリント)を感じたら、跳躍と走行量を一時的に減らし、アイシングとモビリティを優先
  • 痛みが持続・増悪する場合は医療機関へ相談

体重管理と無理な減量のリスク

  • 急な減量はパフォーマンス低下・ケガリスク増につながる
  • 体組成を整える場合も、食事は「不足を作らない」が基本

医療・専門職に相談すべきタイミング

  • 鋭い痛みが続く、腫れ・熱感、動作で痛みが増す、夜間痛があるなど

よくある失敗と改善策

“量を増やすほど強くなる”の落とし穴

  • 症状:慢性疲労、スピード低下、集中力の欠如
  • 対策:週3の枠で「質>量」。セット間休息を十分に取る

フォーム崩壊・代償動作の検知と修正

  • 動画で前後左右を月1チェック。膝が内側に入る、骨盤の傾きが大きいなどを確認
  • 修正:可動性→アクティベーション→軽負荷ドリル→本番の順

技術練習との干渉を減らす配置(順番と休息)

  • スプリントと技術は「スプリント→技術」がおすすめ(疲労前に速さの学習)
  • 試合前日は高強度下半身を避け、反応系と可動性中心

ポジション別の微調整例

DF:1対1・空中戦・後退走の強化

  • ブレーキ+後退走→前進の切り替えドリルを追加(10m後退→10m前進×4)
  • ジャンプ着地の安定化を重視(スティック着地3–5秒ホールド)

MF:反復高強度とターン頻度の最適化

  • RSA本数を+10–20%、505の反復を増やす
  • ターン前の視線・首振りをセットにした反応付きドリル

FW:最終局面の加速・ジャンプ・最初の一歩

  • 10m加速の本数を増やし、スタートバリエーション(背後から合図、背面スタート)
  • ヘディング局面を想定した垂直跳び+セカンドアクション

GK:横移動・反応速度・着地のコントロール

  • サイドシャッフル→ダイブの連結、着地後の再加速
  • メディシンボールの胸前キャッチ→素早い投げ返しで反応刺激

家でもできる“ミニ”フィジカルメニュー

6畳でできる神経系ドリル(スキップ、反応ステップ)

  • ハイニー/スキップ:20秒×3、軽い接地音を意識
  • 反応ステップ:色や声の合図で前後左右へ1–2歩×10反復×2

チューブ・自重での補強(ヒップ・体幹・足首)

  • モンスターバンドウォーク10–15歩×2
  • サイドプランク20–30秒×2
  • 片脚カーフレイズ12–15回×2

栄養・補食:トレ前後で差をつける

トレ前後の炭水化物とたんぱく質の目安

  • トレ前(60–90分前):炭水化物1–2g/kg+水分
  • トレ後30–60分:たんぱく質20–30g+炭水化物1–1.5g/kg

水分・電解質管理(発汗量に応じた補給)

  • 練習前後の体重差を目安に、減少1kgあたり1–1.5Lを数回に分けて補給
  • 暑熱時は電解質(ナトリウム)の補給も検討

サプリの注意点(カフェイン・クレアチンの基礎情報)

  • カフェイン:量やタイミングは個人差が大きく、睡眠を妨げる可能性あり。未経験での試合投入は避ける
  • クレアチン:筋パワーに関する研究はありますが、摂取は自己判断でなく、保護者・指導者・必要に応じ医療/専門家に相談。食品からの栄養を基本に

具体的な12週間プラン例

Weeks1-4:基礎固め(フォーム・耐性・可動性)

  • Day1:10m/20m加速少なめ+505基礎+低〜中強度プライオ
  • Day2:自重〜軽負荷の全身複合、ノルディック導入
  • Day3:15-15を短め(12–16本)+回復重視

Weeks5-8:出力向上(スプリント・プライオ強度UP)

  • Day1:フライングスプリント追加、デプスジャンプ導入
  • Day2:負荷を段階的に増、ハム重点を継続
  • Day3:30-30を採用、シャトル本数を微増

Weeks9-12:試合期寄せ(RSAと鮮度重視)

  • Day1:本数は維持、休息を十分に取り質を最大化
  • Day2:ボリューム2割減、体幹と可動性に配分
  • Day3:RSAは短時間高品質、週末試合に向けて48時間前は軽め

Q&A:現場の疑問に答える

部活が毎日あるのに週3で実施できる?

できます。部活の強度が高い日はDay3の軽縮小版に置き換える、週全体で強・中・軽の波を作るなど、重ね方を工夫すれば干渉は減らせます。

器具がなくても効果は出る?

出ます。自重・チューブ・地面反力を活用すれば、加速・減速・方向転換・RSAの多くはカバー可能です。器具は「精度を上げるための選択肢」と考えましょう。

女性選手や保護者が押さえるべきポイントは?

原則は同じですが、個々の柔軟性や筋力差に応じて量と強度を調整し、膝の内側への崩れ(ニーイン)をより丁寧に管理します。痛みがある場合は無理をせず専門家へ相談してください。

まとめ:週3テンプレのチェックリスト

要点の再確認(強度・頻度・回復)

  • 週3の枠で「加速・減速・方向転換・RSA・基礎筋力」を回す
  • RPEと休息を管理し、48–72時間の超回復を味方に

ケガ予防の3原則

  • 丁寧なウォームアップ→正確なフォーム→段階的な負荷
  • 痛みがある日は中止・変更。痛みが続く場合は受診

毎週のセルフレビュー項目

  • 10mの感触、方向転換の切れ、息の上がり具合
  • 睡眠・食事・水分の安定、学業とのバランス
  • 翌週に1つだけ改善ポイントを決めて実行

サッカー高校生のフィジカル練習メニューは、週3の設計で十分に差がつきます。量を追いすぎず、狙いを絞って積み上げましょう。小さな前進の積み重ねが、試合の1プレーを変えます。

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