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サッカーのレッドカード退場後の出場停止は何試合?処分の全容
レッドカードで退場すると、次は何試合出られないのか。大会によって違うのは知っているけれど、実際はどんな基準で決まるのか。この記事では、国内外の運用と規則の考え方を整理しつつ、ケース別の目安、数え方、手続き、予防までを一気に解説します。結論から言うと「最低○試合」は多くの大会で1試合が基本ラインですが、反則の質や態度、結果(怪我の有無)などで加重・減軽され、2〜数試合になることも少なくありません。ここでは「どこで何が決まるか」を明確にし、損をしないための実務ガイドも添えています。
結論:出場停止は何試合?基本の目安と考え方
一発レッドの基本的な出場停止の目安と追加処分の可能性
多くの大会で「一発レッド=次の公式戦1試合停止」が最低ラインとして運用されています。ただし、これはあくまで“自動的に適用される最低”であり、規律委員会の審理によって、反則の種類・危険度・相手への影響・当人の態度(抗議・挑発・謝罪など)・再犯歴等を踏まえ、2試合以上に加重されることがよくあります。特に乱暴な行為(Violent Conduct)や差別的言動などは重く見られる傾向です。
警告2枚による退場(退場=レッド扱い)の目安
警告2枚での退場は、実質的に「次の公式戦1試合停止」とされるのが一般的です。2枚目の警告になった行為が著しく悪質と評価されない限り、追加の試合数が上乗せされるケースは多くありません。
DOGSO(決定的得点機会の阻止)の扱い
DOGSOは状況で「退場」か「警告」が分かれます。ペナルティエリア内で“明らかにボールをプレーしようとして”犯したファウルは、原則として警告(いわゆる二重罰の緩和)となり、退場にはなりません。一方、手での阻止、引っ張りや押さえ込み、ボールをプレーする意図が乏しいファウル、またはペナルティエリア外のDOGSOは退場の対象です。DOGSOでの退場は、目安としては1試合が基本ですが、危険なタックルや乱暴な行為が伴えば加重されます。
「最低◯試合」から「加重・減軽」の判断軸
加重・減軽は主に以下の観点で決まります。
- 反則の性質:乱暴な行為(肘打ち・殴打・蹴り)/危険なタックル/DOGSO/侮辱・差別的言動など
- 結果:相手の怪我の程度、試合の混乱や乱闘の誘発
- 態度:直後の抗議・挑発、主審や相手への接触、試合後の言動
- 再犯歴:同種の違反が過去にあるか、短期間の再発か
- 謝罪・反省:クラブの指導・再発防止策の提出など
この枠組みを覚えておくと、自チームのリスク評価やクラブ文書の作成にも役立ちます。
ルールの枠組み:誰が何を決めるのか
IFAB競技規則と大会規定・懲戒規程の関係
IFAB競技規則(Laws of the Game)は「何が退場か」を定義します。しかし「何試合の出場停止にするか」は各大会の規定(懲戒規程・大会要項)で決まります。つまり、レッドカードの基準は世界共通でも、処分の長さや適用範囲は大会ごとに異なります。
国内の決定プロセス(JFA/Jリーグ/高体連・大学連盟など)
日本では、主催団体(JFA、Jリーグ、各連盟や都道府県協会)が規律委員会等を設け、主審レポートや映像を基に審理します。自動的な1試合停止をベースに、必要に応じて加重や減軽が決まる、という流れが一般的です。学校年代や地域リーグでも、主催者が定める懲罰基準が存在します。
国際大会(FIFA/AFC/UEFA等)での一般的な運用
国際大会では、退場時は「最低1試合」を起点に、暴力行為や差別的言動などは複数試合へ。大会をまたいだ持ち越しの取り扱いも規程で明示されています。異議申立てや出場停止の消化方法も、国際大会ごとの規定に従います。
大会別の運用の違いと具体例
Jリーグの原則(リーグ戦・ルヴァン杯・天皇杯との関係)
Jリーグ主催の大会(リーグ戦やリーグカップ)間では、懲戒の取り扱いが連動するシーズンがあります。一方、天皇杯はJFA主催の別大会で、原則は別枠で扱われます。ただし、重い処分(複数試合・全公式戦停止など)は主催の枠を越えて適用される場合もあり得ます。必ずシーズンごとの大会要項・懲罰基準を確認してください。
天皇杯/地域リーグ/社会人・大学・高校の傾向
天皇杯は全国統一の要項に基づく運用がされますが、地域予選は地域協会の規定に準じます。社会人・大学・高校も主催団体ごとの基準があり、「退場=次の公式戦1試合停止」は共通の起点であることが多いものの、乱暴な行為や差別的言動は複数試合に加重されるのが一般的です。
国際試合(代表・クラブ)の出場停止の数え方
国際試合では、出場停止は原則としてその大会内で消化します。大会をまたいでの持ち越しや、ワールドカップ予選から本大会への適用など、詳細は大会規定で定められています。国際移籍時の未消化処分は、FIFAの規律規程に基づき新所属・新協会にも引き継がれるのが一般的です。
少年年代(U-12/U-15)の留意点
少年年代は「教育的観点」が強く、審判・主催者が行動改善を重視する傾向があります。出場停止数自体は軽めでも、保護者・指導者向けの指導やレポート提出、チームへの注意喚起が課されるケースがあります。地域・年代の要項を必ずチェックしましょう。
ケース別:出場停止試合数の決まり方
暴力行為・乱暴な行為(Violent Conduct)
殴打・蹴り・頭突き・意図的な肘打ちなどは最も重く扱われます。多くの大会で複数試合(2〜数試合)への加重対象です。相手への接触強度、故意性、プレーと無関係かどうか、試合の混乱度合い、被害選手の怪我状況が判断材料になります。
危険なタックル・著しく不正なプレー(Serious Foul Play)
足裏を見せる、高速度で両足で突っ込む、足首や膝を狙うなど、相手の安全を著しく害するタックルはSFPです。1試合を起点に、危険度や結果(負傷)によって複数試合へ加重されます。「ボールに行っていたか」より「相手の安全を危険にさらしたか」が重視されます。
侮辱的/差別的言動(Insulting/Abusive/Discriminatory Language)
人種・民族・国籍・性別・宗教・障がいなどに関わる差別的言動は、世界的に厳格化が進んでいます。試合中・試合後・SNSを含め重い処分(複数試合、研修義務、罰金、チームへの制裁)となることがあります。
審判への異議・暴言・接触
執拗な抗議、侮辱、物理的接触は加重の対象です。退場後に抗議を続ける、退出を拒む、観客を煽る行為は処分が重くなりがちです。キャプテンやスタッフは即座に選手を落ち着かせ、退出を促すのが得策です。
DOGSO(手・ファウル)と二重罰則の考え方
手によるゴール阻止や、ボールをプレーする意思の乏しいホールディング・プッシング等で決定機を止めた場合は退場対象。エリア内で「ボールをプレーしようとした」ファウルは警告になり得るため、同じ決定機阻止でも処分が変わります。退場となったDOGSOは、通常は1試合が起点ですが、危険なファウルが伴えば加重されます。
ゴールセレブレーションに伴う不適切行為
過度な挑発、観客席への過剰な侵入、相手ベンチに向けた挑発的ジェスチャー等は処分対象です。ユニフォーム脱衣は警告(既に警告があると退場)という運用が一般的で、退場に至れば1試合停止が基本線です。
ベンチ(控え選手・スタッフ)の退場と処分
控え選手・交代要員・チーム役員の退場も、懲戒の対象です。試合出場資格や指揮権の停止、ベンチ入り禁止、罰金など、役割に応じた制裁が科されます。複数試合の停止や再発時の加重もあり得ます。
出場停止の「カウント方法」
どの試合で消化されるか(公式戦の定義)
多くの規程では「公式戦」でのみ消化され、練習試合・親善試合・非公式大会では消化されません。公式戦の定義は主催者が規定し、スターティングメンバーやベンチ入りの有無が要件に含まれる場合もあります。
大会をまたぐ適用/別大会の扱い
同一主催内の大会間で相互に適用される場合があります。一方、主催が異なる大会(例:リーグと協会主催のカップ)は別枠が原則で、移行や相互消化の可否は要項に明記されます。重い処分は「全公式戦」に適用される可能性があるため注意が必要です。
延期・中止・不戦勝・没収試合の扱い
一般的には「実施され、選手が出場資格を持った上で消化された試合」のみカウントされます。中止や不戦勝では消化されない取り扱いが多いですが、最終判断は大会規定に従います。
移籍・登録変更時の持ち越し
未消化の出場停止は、同一協会内では新クラブへ、国際移籍でもFIFAの規律枠組みにより新協会へ引き継がれるのが一般的です。時期や大会の区分によって適用先が変わるため、移籍手続き時に必ず確認しましょう。
リーグ最終節での退場と翌シーズンへの影響
未消化の出場停止は翌シーズンへ持ち越されます(同一大会が原則)。大会をまたいでの持ち越しやクリアの条件は要項に依存するため、クラブ・部活動はシーズンオフの段階で書面上の確認を済ませておくと安全です。
VARとレポート:処分が決まるまでの流れ
VAR介入でのレッド/見逃し後の追加処分
VAR導入下では、オンフィールドレビューを経て退場が宣告されることがあります。また、試合中に見逃された重大な行為は、試合後に映像を基に追加処分が下ることもあります(主審が見ていない・見ていても対象外の事象などが該当)。
主審レポートと規律委員会の審理プロセス
主審は試合後にレポートを提出します。規律委員会はレポートと映像、関係者の意見書等を総合して判断。自動停止に加え、必要に応じて加重・減軽・罰金等を決定します。
映像証拠の取り扱いと判定基準
映像は決定的証拠として重視されますが、フレームレートやカメラ位置の限界も考慮されます。判断は「反則の事実」「危険度」「故意性」「態度」「影響」の5点セットで行われるのが一般的です。
罰金・クラブ処分・保険の話
選手個人への罰金・減俸の可能性
大会の規程に基づく罰金のほか、クラブ規程での罰金・減俸・社会貢献活動の義務付け等が行われることがあります。プロだけでなく社会人や学生チームでも、チーム内規律での処分が定められている場合があります。
クラブへの制裁と再発時の加重
ピッチ内外の混乱や度重なる問題行為には、クラブへの罰金・無観客・勝点剥奪などの重い制裁が科されることがあります。再発時は加重されるのが一般的です。
負傷相手への補償とスポーツ保険の基本
アマチュアではスポーツ保険やチーム加入の傷害・賠償保険が適用されることがあります。重篤な怪我の場合、当事者間や主催を交えた調整が必要になることも。指導者は加入状況と連絡フローを平時から確認しておきましょう。
よくある誤解と注意点
「レッドは必ず3試合停止」ではない理由
レッド=3試合停止は固定ルールではありません。最低1試合が起点で、行為の性質と結果によって増減します。大会によっては1試合で済むケースも多くあります。
過去の累積・再犯歴が与える影響
短期間での再犯、同種の危険な行為の繰り返しは加重の重要な要素です。クラブとしての再発防止策や個人の改善計画が、処分量に影響を与えることもあります。
SNSや公的発言が処分対象になるケース
審判や相手を侮辱・中傷する投稿、差別的表現は、試合外でも処分の対象になり得ます。公式の場での発言管理は、現代サッカーの重要なコンプライアンス事項です。
実務ガイド:当日から出場停止確定までの動き方
現場対応(キャプテン・監督がやること)
- 退場選手を速やかに落ち着かせ、ロッカールームへ誘導
- 相手・審判への不必要な接触や抗議を止める
- 代替の戦術整理(守備ブロック・プレス強度・セットプレー担当の即時見直し)
クラブ/部活の書類対応(意見書・証拠提出)
主催からの照会に備え、事実経過、当人のコメント、指導内容、再発防止策を整理。必要に応じて映像や目撃証言を提出します。感情的な表現を避け、事実と所見を分けて書くのがポイントです。
アピール/異議申立ての可否と戦略
大会によっては異議申立てが認められます。成功の鍵は「明白な事実誤認」または「規程解釈の相違」を具体的に示せるか。主観的な不満では覆りにくいので、映像・規程条文・判例(過去の処分例)で裏付けましょう。
選手本人のリカバリーと再発防止面談
フィジカルとメンタルの双方でリカバリーを。技術面は接触の強度コントロール、タックルの角度、ステップダウンの質を練習で再確認。メンタル面はセルフトーク、呼吸法、アンガーマネジメント。スタッフ面談で具体的行動目標を言語化します。
予防とトレーニング:退場を減らすために
フェアプレー判断のスキル化(間合い・身体の入れ方)
- 間合い管理:1st接触は腰と胸を並行、足裏は見せない
- アプローチ角度:アウトサイドから回り込む、体を先に入れて手を使わない
- 最後の局面:スライディングは片足・低い重心・進路限定でスピードを殺す
感情コントロールとセルフトーク
ピンチや判定時の合言葉を決める(「深呼吸3回」「笛に反応しない」「次のプレー」)。ベンチも同じフレーズで統一し、チーム全体で感情の沸点を下げます。
審判コミュニケーションの技術
抗議ではなく確認を。「主審、番号◯◯のファウルの基準を教えてください」と短く、1回で終える。キャプテンを窓口にし、周囲は離れる。試合後の握手と短い礼で印象をリセットします。
チーム戦術でのリスク管理(最後の選手の守り方)
- 最後の局面は「並走で遅らせ、PA外で味方の戻りを待つ」を原則化
- カバーの角度を固定(CBの内側優先/SBは縦優先など)
- 相手の斜め走りに対しては、軽い接触でコース誘導し、背後のホールディングを禁じ手に
最新トレンドとガイドライン更新への備え
IFAB年次改正で追随すべきポイント
IFABは毎年競技規則を更新します。DOGSOやハンドの基準、異議・セレブレーションの取り扱いなど、細部のニュアンスが変わることがあります。クラブはシーズン前に要点を共有し、練習に落とし込みましょう。
国内大会要項・懲罰基準の確認方法
所属リーグ・カップの公式サイトに掲載される「大会要項」「懲罰基準」「規律委員会規程」をブックマーク。年度版のPDFは最新版に差し替わるため、毎年の更新確認をルーティン化するのが安全です。
まとめ:損しない知識と健全な競技文化のために
レッドカード後の出場停止は「最低1試合」を起点に、行為の質・結果・態度・再犯歴で上下します。誰が何を決めるのか(IFABの定義/主催者の懲戒規程)を理解すれば、不要な混乱や損失は避けられます。試合当日の現場対応、書類と映像の準備、異議申立ての要件を押さえ、再発防止は技術・戦術・メンタルの三位一体で取り組む。最新の規則改正や要項の更新をキャッチアップし続けることが、選手とチームを守る最良のディフェンスラインです。
FAQ
警告2枚退場で何試合休む?
多くの大会で次の公式戦1試合が基本です。追加の加重はまれですが、過度な異議や挑発が伴う場合は加重されることがあります。
退場後、次のカップ戦は出られる?
主催が同じ大会間では相互に適用される場合がありますが、主催が異なる大会は別枠が原則です。シーズンの大会要項を必ず確認してください。
高校サッカーとJリーグで違いはある?
あります。IFABの退場基準は同じでも、出場停止の試合数や適用範囲は各主催の懲戒規程で異なります。高校・大学・地域リーグは各連盟や協会の要項に従います。
退場が誤審だった場合は?
異議申立てや審査制度がある大会では、映像とレポートでの覆しが可能なことがあります。成功の鍵は「明白な事実誤認」の立証です。規程で申立て期限と方法を確認しましょう。
出場停止は練習試合で消化できる?
できないのが一般的です。公式戦のみで消化されます。公式戦の定義は大会規定に従います。
