レッドカードで退場になったら、次は何試合出られないのか、処分はどう決まるのか。試合直後ほど落ち着いて情報をまとめておきたいのに、実は大会ごとにルールが違うため「調べ方」を知らないと迷子になりがちです。本記事は、出場停止の基本原則から種類別の目安、どの試合に適用されるのか、学生・アマチュアの現場での実務、処分を重くしない立ち振る舞い、再発防止のトレーニングまでを、客観的な考え方と実践的なヒントで整理します。結論を先に書くと「多くの大会で最低1試合の出場停止。内容次第で2〜数試合以上。最終的には主催者の規程と規律委員会の判断で決まる」です。目安に頼り切らず、自分が出ている大会の規程までしっかり確認することが“損をしない”近道です。
目次
レッドカード退場の出場停止は何試合？先に結論と考え方
自動的な出場停止の原則（多くの大会で最低1試合）
多くの公式戦では、レッドカードでの退場に伴い「自動的に最低1試合」の出場停止が科されます。これは、違反の種類にかかわらず適用される共通的な起点です。次戦が同一大会における直近の試合であれば、その試合から消化されるのが一般的です。
追加処分の仕組みと幅（違反の種類・悪質性・態度で変動）
自動停止に加え、規律委員会が映像や主審報告書をもとに「追加試合数」を決めることがあります。判断材料は主に、反則の種類（例：決定機阻止、重大な反則行為、暴力行為など）、プレーの危険性・結果（相手の負傷度合い等）、行為後の態度（抗議、遅延、審判への接触など）です。悪質と評価されるほど試合数は増え、逆に軽減が妥当と判断されれば自動停止のみで終了することもあります。
競技会ごとの差異と「目安」を鵜呑みにしない注意点
同じ反則名でも、主催団体（国際／国内リーグ／学生大会／地域リーグなど）で懲罰基準が異なります。例えば、つば吐きや差別的発言などは、国際大会では非常に重い下限を定めるケースがある一方、国内の一部大会では幅を持って運用されます。ネット上の「○試合が普通」という断定は、その大会に限った話であることが多いので、必ず自分が所属する競技会の規程まで到達して確認しましょう。
レッドカードの種類別：一般的な出場停止の目安
以下は多くの大会で見られる“傾向”です。最終決定は各大会の規程・規律委員会の判断に従います。
二枚目のイエローによる退場（累積退場）
最も軽い部類で、原則は「1試合の出場停止」。追加処分が付くのは、退場時の過度な抗議や遅延、挑発的なジェスチャーなど、行為後の態度が問題視された場合です。多くの大会では二枚目イエローの内容自体に追加審理は行われにくく、誤認以外は原則覆りません。
DOGSO（決定的得点機会の阻止）
得点機会の明白な阻止での退場は、基本「1試合の出場停止」が多いです。プレーに対する正当な挑戦ではなく、掴む・押すなどで明確に阻止した場合は重く評価されやすい一方、ボールへ正当にチャレンジした結果のDOGSOとみなされる場面では追加が付かない傾向があります。とはいえ、SFP（重大な反則行為）を伴っていた場合は下記の基準へ移行します。
重大な反則行為（SFP）
過度な力や危険な方法でのタックル・チャージは「2〜3試合前後」が目安。足裏でのハイタックル、無謀な踏みつけ、相手の安全を脅かす危険な接触などは、映像で悪質性が高いと判断されるほど試合数が加算されます。結果として相手が負傷離脱した場合も、判断に影響し得ます。
暴力行為（VC）
プレーと無関係、あるいはボールが近くない状況での殴打・蹴り・頭突き等は「3〜5試合以上」が目安。双方の小競り合いでも、先に手を出したか、継続性、止めに入るスタッフや審判への接触の有無などで差が出ます。複数人の関与やベンチからの飛び出しが重なると、チームへの罰金や追加処分も起こり得ます。
つば吐き・噛みつき・人種差別的/侮辱的発言
つば吐き・噛みつきは、国際大会では非常に重く扱われる傾向が強く、長期の出場停止（複数試合以上）が科されやすい領域です。国内大会では「3〜6試合以上」が目安になることが多い一方、国際基準ではより厳しい下限が規定される場合があります。人種差別的・差別的な言動についても、重い下限と教育プログラムの受講などが併科される事例が見られます。
ベンチメンバー・スタッフの退場
交代要員や交代済み選手、チームスタッフの退場も、登録カテゴリー内での出場停止やベンチ入り制限が科されます。目安は「1試合以上」。暴言や相手ベンチとのトラブル、審判への侮辱・接触があると複数試合に拡大する可能性があります。監督・コーチにはテクニカルエリアの制限や罰金が付くこともあります。
出場停止はどの試合に適用される？適用範囲の実務
同一大会への適用が基本／別大会への持ち越しの扱い
出場停止は原則として「同一競技会」で消化します。例えばリーグ戦での退場は、次のリーグ戦から消化、といった運用です。ただし、規程によっては同一主催者の別大会（カップ戦など）へ横断適用する場合もあります。複数の大会に同時参加しているときは、必ず適用範囲を規程で確認しましょう。
カップ戦・リーグ戦・年代別の横断適用の有無
トップカテゴリーと年代別（U-18など）、男子と別カテゴリー、国内と国際の間で出場停止が相互に適用されるかどうかは主催者次第です。多くは横断しない設計ですが、同一連盟内で横断運用を定める大会もあります。ベンチ入り（帯同）の可否やスタジアム入場の可否まで規定していることもあるので注意してください。
未消化の出場停止の翌シーズン持ち越し
大会終了時点で未消化の出場停止は、原則として「翌シーズンの同大会」に持ち越されます。トーナメントで最終戦に退場した場合などは、翌年度の初戦から停止になるのが一般的です。移籍・チーム変更時の扱いも規程に明記されていることが多いので、早めに確認を。
退場後の流れ：報告書から処分決定まで
主審の競技報告書と映像資料
試合後、主審は退場の根拠と状況を記した競技報告書を提出します。映像がある大会では、該当シーンの映像も参照されます。判定に影響するのは「何が起きたのか」を裏付ける客観情報です。
規律委員会の審議プロセス（基準・参照資料）
規律委員会は、競技規則、主催者の懲罰基準、過去の事例、報告書や映像、医療報告（負傷がある場合）などを参照し、処分試合数や罰金、チームへの制裁（再発防止策の要請等）を決定します。
当事者の意見書・弁明・不服申立ての可否
選手・クラブが意見書を提出できる大会もあります。多くの大会で「二枚目イエローの退場」については不服申立て不可（誤認の例外を除く）とする運用が見られますが、直接レッドの場合は手続きが用意されていることがあります。提出期限は短いので、クラブ担当とすぐ動くのがポイントです。
公表方法と通知、罰金・チームへの懲戒
プロや上位カテゴリーでは公式発表、学生・地域ではチーム宛の通知のみという運用が一般的です。個人の出場停止に加え、クラブに罰金、観客・選手の集団的な振る舞いに対する注意・制裁が付くこともあります。
学生・アマチュアで気をつけたいポイント
学校大会（高体連・大学連盟）の運用傾向
学校主催の大会は「教育的観点」を重視し、反省文・ミーティング・フェアプレー講習の受講などが併科されることがあります。二枚目イエローは1試合、SFP/VCは複数試合という構図は多くの大会で似ていますが、詳細は各連盟の懲罰基準を必ず確認してください。
クラブユース・社会人リーグでの留意点
主催団体の規程により、出場停止の消化方法（同一大会のみなのか、他大会にも及ぶのか）、ベンチ入り可否、身分証の取り扱いなどが細かく定められています。練習試合の扱いも大会によって違うため、「どの試合で消化されるのか」を事前に把握しておきましょう。
チーム内規律（独自の追加処分）と保護者対応
クラブや学校は、大会からの処分に加えて独自のペナルティ（スタメン外、キャプテンマーク剥奪、ボランティア参加等）を定める場合があります。未成年の場合は、指導者が保護者へ経緯と再発防止策を丁寧に共有し、選手本人の理解を深める機会にしましょう。
出場停止を重くしないための現場対応
退場後の適切な行動（速やかな退出・再発防止の意思表示）
レッドが出たら、速やかにフィールド外へ。ベンチに戻れるか、ロッカールームへ直行かは大会規程に従います。退場後の態度は処分に影響します。暴れない、相手や審判を挑発しない、必要なら試合後にクラブを通じて謝意・反省の意思を伝えるなど、冷静さを最優先に。
遅延・暴言・審判への接触は追加処分のリスク
カード提示後にボールを蹴り飛ばす、審判へ詰め寄る、肩や腕に触れる、過度なジェスチャー、観客を煽る行為は追加処分の典型的な要因です。指導者は、退場選手の退場誘導を迅速に行い、ベンチ全体の感情を落ち着かせましょう。
SNSやメディアでの発信の注意
審判や相手への中傷、判定への挑発的な投稿は、規律面だけでなくクラブ・学校の信用にも影響します。事実確認が済むまで個人的な発信は控え、広報・顧問の指示に従いましょう。
再発防止：技術・戦術・メンタル・ルール理解
危険なタックルを減らす技術ドリル
危険性は「アプローチの質」で大きく下げられます。角度をつけて入る（正面衝突を避ける）、減速の2段階（5m手前で減速→1mでストップ可能に）、体の軸を立てる（膝・股関節を柔らかく使う）、足裏を見せない、相手の軸足を刈らない。1対1の守備ドリルでは、スライディングの代わりに“遅らせる”ストップ＆シャドウの反復を増やすと、SFPリスクは確実に下がります。
守備でのリスク管理（DOGSOを招かない判断）
最後の局面で無理に倒しに行くより「コース限定」「並走」「シュート角度を切る」を優先。カバーディフェンスの距離・ラインコントロール、ボランチの“即時カバー”の共通理解をチームで整えましょう。戦術的に遅らせる選択をチーム共通語で決めておくと、個人の焦りを減らせます。
感情コントロールとチーム内での共有ルール
深呼吸・セルフトーク（キーワードで切り替え）・視線を下げる等の“即効テク”をチームで統一。主審へのコミュニケーション役を1人に限定する、カード時のベンチ対応をマニュアル化するなど、組織的にリスクを下げます。
競技規則のアップデートを追う習慣
IFABの競技規則は毎年更新されます。DOGSOの基準、ハンドの扱い、スタッフの行為に対する罰則など、細部が変わることも。主催者の通達・技術レポートを定期的にチェックし、誤解からの退場を未然に防ぎましょう。
よくある質問（FAQ）
レッドで退場した翌日の練習試合は出られる？
多くの規程では「公式戦」に出場停止が適用され、練習試合は対象外です。ただし、主催者が「同一主催のすべての試合」に適用すると定める場合や、クラブ内規で禁止する場合もあります。必ず大会規程とチームの方針を確認してください。
ゴールキーパーが退場した場合、次戦も出場停止？
はい。ポジションに関係なく、選手として出場停止になります。次戦にフィールドプレーヤーとして出ることもできません。ベンチ入りやウォームアップの扱いは大会規程に従います。
二枚目イエローの退場と一発レッドは処分に差がある？
一般的に、二枚目イエローは「1試合」、直接レッドは違反の種類次第で「1〜複数試合」と差が出ます。同じ退場でも、悪質性の評価と事後の態度で結果は大きく変わります。
異議での退場は何試合になる？
「異議」は通常イエローカードの対象ですが、侮辱的・攻撃的な言動（OFFINABUS）に該当するとレッドになり、複数試合の出場停止となる場合があります。言葉・ジェスチャーの内容と強度が判断のポイントです。
出場停止は動画判定（VAR等）で変わることがある？
試合中のVARは主審の最終決定を支援するもので、懲罰の試合数を直接決めるものではありません。ただし、規律委員会は映像を参照するため、悪質性が明確になれば追加処分の可能性が上がります。逆に、明確な誤認が確認されれば取り消し・軽減が行われることも、規程上あり得ます。
参考と確認方法
自分の大会の懲罰基準の探し方（検索例つき）
以下のキーワードで公式資料にたどり着きやすくなります。
- 「大会名 懲罰規程」
- 「主催団体名 規律 規程 PDF」
- 「リーグ名 出場停止 適用範囲」
- 「連盟名 懲罰基準 表」
検索後は、公式サイトのPDF・通達・大会要項を優先して確認。適用範囲（同一大会／横断）、未消化の扱い、スタッフの規律、異議申立ての手順と期限をチェックしましょう。
国際基準（IFAB競技規則）で確認しておきたい条項
競技規則（Laws of the Game）では、主に以下を押さえると理解が早いです。
- 競技規則 第12条（ファウルと不正行為）：SFP、VC、DOGSO、つば吐き、攻撃的・侮辱的・下品な言動などの定義
- 競技規則 第5条（主審）：主審の権限と報告書
- 通達・年次更新：用語や適用指針のアップデート
懲罰の試合数自体は競技規則ではなく「主催者の規程」で決まる点を忘れずに。定義を知ったうえで、各大会の懲罰基準に当てはめるのが正しい手順です。
まとめ：損をしないための3ポイント
規程を先に把握する
最低1試合＋内容次第で追加、という全体像は共通。最後は主催者の規程と規律委員会の判断です。自分の大会の懲罰基準と適用範囲を、シーズン前にチーム全員で共有しましょう。
退場後の行動でリスクを増やさない
速やかな退出、抗議や挑発の封印、SNSでの過激な発信を控える。これだけで追加処分のリスクを大きく減らせます。
技術・戦術・メンタルで再発を防ぐ
危険なタックルを減らす技術、DOGSOを招かない守備の原則、感情コントロール、最新ルールの理解。この4点を継続して磨くことが、長期的な“出場機会の確保”につながります。
あとがき
カードや処分の話は、プレーの楽しさとは遠いテーマに見えますが、知っておくほど選手もチームも守れます。現場での1つの振る舞いが、次の数試合を左右することもあります。目安はあくまで目安。最後は規程を読む力と、ピッチ内外の振る舞いの積み重ねです。次の試合を無駄にしないために、今日からできる準備を着実に進めていきましょう。
