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サッカーのドリブル練習メニュー 奪われにくい実戦ドリル集

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ボールを失わないドリブルは、派手な突破だけではなく、守備のプレッシャーの中で「次のプレーを選べる状態」を作り続ける技術です。本記事は、ピッチですぐ使える「奪われにくい実戦ドリル」を体系化。1人でできる基礎から、ペア・少人数ゲームまで、セットアップ、手順、コーチングポイント、計測方法まで具体的にまとめました。今日の練習にそのまま落とし込み、ゲームで効果を確かめてください。

はじめに:このドリル集の使い方

各メニューは「認知→判断→実行」を速める設計です。必ずウォームアップから入り、個人→対人→ゲーム形式へと段階的に負荷を上げてください。1メニューの時間は短く集中(3〜8分)で回数を回し、記録(ロスト率、保持時間、ゲート通過数など)を取ると、上達が見える化されます。

奪われにくいドリブルとは何か(結論と全体像)

相手に体を入れられない角度と距離を保つ

要点

  • 半身(肩を相手とゴールの間に置く)でボールを隠し、相手の前脚の外側にボールを置く。
  • 距離は約1mの「触れそうで触れない」間合いを基準。近すぎると挟まれ、遠すぎると寄せられて加速を潰されます。
  • ラインや相手の体勢を「壁」に見立て、奪いに来る方向と逆方向へ出口を作る。

認知→判断→実行を速くする(スキャンの頻度と質)

要点

  • 1〜2タッチに1回、首を振って前後左右と相手の重心を確認。
  • 「次の出口(空間)」と「サポート」を同時に把握し、タッチの前に決める。
  • 音(コール)や色(マーカー)など外部刺激を使って反応速度を訓練。

タッチの大きさと回数を状況で変える

要点

  • 寄せが弱い:やや大きめの推進タッチでスピード優先。
  • 寄せが強い:細かいタッチでボールを足元に置き、体でガード。
  • 減速→加速でリズム差を作る。縦に速く、横に短く、を基本リズムに。

接触下でもブレない姿勢と軸足の安定

要点

  • 膝と股関節を軽く曲げ、重心は母指球の上。上体は前傾しすぎない。
  • 接触は肩〜胸で受け、手で相手を押さない。接触側の足で地面を強く押す。
  • 接触→次タッチまでの0.3秒を短縮する意識。

ウォームアップと基礎タッチ(5〜10分)

足裏ロール&V字コントロール

セットアップ

2〜3mのスペース、ボール1個。

やり方

  • 右足裏でボールを内→外にロールし、インサイドで前方へ押し出してV字を描く。左右交互に。
  • 1分×2セット。視線は前、時々首振り。

ポイント

  • 接地時間を短く、ボールは足の近くをキープ。
  • インパクトの瞬間だけボールを見る→すぐ目線を上げる。

イン→アウトの8の字タッチ

セットアップ

コーン2つを2m間隔で配置。

やり方

  • 2つのコーンを8の字で回りながら、インサイド→アウトサイドの連続タッチ。
  • 片側3周で方向転換。1分×2セット。

ポイント

  • 腰を回すのではなく、股関節の切り替えで方向転換。
  • タッチ前に首を振り、次のコーンの外側に置く。

片足バランス・タップ(視線を上げたまま)

やり方

  • 片足立ちで逆足のイン→アウト→足裏を10タップ。左右各30秒×2。

ポイント

  • 目線は遠く、足首の柔らかさを意識。体幹でブレを抑える。

個人ドリル:ボールを隠す・運ぶ(1人でできる)

シールド8の字ドリブル(3コーン:体で隠す角度練習)

セットアップ

  • 3コーンを三角形(各辺2.5〜3m)に配置。1つを仮想DFコーンと設定。

やり方

  • 仮想DFコーンに対し半身を作り、ボールを体の後ろ側に置くように8の字で回る。
  • 周回ごとに足を変える。2分×2セット。

ポイント/計測

  • ボールとDFコーンの間に自分の肩と腰を入れる。
  • 各セットの「被タッチ想定回数(露出したミス)」を自己申告で記録→低下を目指す。

サイドライン活用ストップ&ゴー(外に逃がさない)

セットアップ

  • タッチラインを利用。5〜8m区間を設定。

やり方

  • ラインを背にし、内側足でシールドしながら前進。相手が寄せる想定で、合図でストップ→即ゴー。
  • 減速1歩+加速2歩をリズム化。1分×3。

ポイント

  • 止まる前の2タッチを小さく、加速1歩目は接触側の足で強く地面を押す。

1m間合い維持ドリブル(影法師トレース)

セットアップ

  • 4コーンで8×8m四角。対角線を意識して蛇行。

やり方

  • 仮想DFが1m後方にいると想定し、常に1mをキープする速度で運ぶ。
  • アプリのメトロノーム(80〜120bpm)でリズムを変えて3本。

ポイント/計測

  • 首振りは2タッチに1回。四角1周のタイムとロスト回数(ラインアウト)を記録。

カラーマーカー反応ドリブル(コールに即応)

セットアップ

  • 赤・青・黄・緑のマーカーを四方3mに配置。タイマーor音声メモでランダムコールを録音。

やり方

  • 再生しながらドリブル、コールされた色に最短2タッチで到達→即次の色へ。
  • 45秒×3本。色の順はランダム。

ポイント

  • コールが聞こえた瞬間に顔から向ける→足を動かすのはその後。
  • 大回り禁止。最後の1mは細かいタッチで減速。

ゲート通過・進行方向偽装ドリル(最後に逆を取る)

セットアップ

  • 幅1mのゲートを3つ(直線に2m間隔)。

やり方

  • 1、2つ目のゲートは素直に通過、3つ目の1歩手前で減速→逆足に持ち替え、直角に方向転換。
  • 左右交互に。1分×3。

ポイント

  • 減速の合図(肩の力を抜く)→軸足を先に着く→ボールを後から引き出す。

ペアドリル:奪取プレッシャー下での習得

ミラードリブル(模倣から逆取りへ)

セットアップ

  • 6×6m。攻撃者A、守備者B(最初は鏡役)。

やり方

  • 前半30秒:BはAの動きを鏡のように模倣。後半30秒:Bは逆を狙って軽く奪いに来る。
  • 2本入れ替え。

ポイント

  • 肩と骨盤の向きをフェイントに使い、タッチは最後に出す。
  • 接触ゼロ→軽接触へ段階的に。

肩接触許可の1対1(タッチ数制限付き)

セットアップ

  • 8×10m。制限時間10秒。肩接触のみOK、手の押しはNG。

やり方

  • 攻撃は最大6タッチでフィニッシュライン通過を狙う。守備は体を入れて遅らせる。
  • 3本で交代×2。

ポイント/計測

  • 最初の2タッチを細かく、加速は3タッチ目。
  • 成功率(通過/本数)とロスト原因(接触/露出/タッチ過大)を口頭記録。

背負い半身ターン→抜け出し(半身の作り方)

セットアップ

  • 背後プレッシャー想定。3m背後からBが追走スタート。

やり方

  • Aは背中でBを感じながら半身で受け、ソールロール→アウトでターンし前進。
  • 左右10本ずつ。

ポイント

  • 接触側の肩を低く、軸足の向きは出口へ。ターンは2タッチ以内。

ランダムプレス・ゲート通過チャレンジ(守備の強度変化)

セットアップ

  • 12×12mにゲート3箇所。Bは「弱→強→弱」と強度を変えて寄せる。

やり方

  • Aは10秒内に2ゲート通過。Bはコース切りと寄せで妨害。
  • 3本交代×2。

ポイント

  • 強度が上がった瞬間に逆を取る。減速の質が勝負。

少人数ゲーム形式:実戦再現性を高める

2対2+フリーマン保持ゲーム(ハーフスペース重視)

セットアップ

  • 20×15m。サイドに中立フリーマン1人(タッチ制限2)。

ルール/狙い

  • 5本パスで1点。運ぶ→預ける→貰い直すを徹底。
  • 相手の間(ハーフスペース)で半身の受け直しを狙う。

3色コール付き保持ゲーム(認知負荷の追加)

セットアップ

  • 3色ビブス(味方/敵/コール色)。コーチが不定期に色をコール。

ルール

  • コールされた色の選手からはボールを奪われてもロスト扱いにならない(免疫)。
  • 攻撃側は「免疫」を利用しながらリスク管理。

狙い

  • スキャンの頻度と優先順位を上げる。判断の先出し。

タイトスペース・タッチ制限ロンド(3v1/4v2)

セットアップ

  • 8×8m→6×6mへ縮小。攻撃はタッチ制限2。

狙い/ポイント

  • 体の向きと最初の置き所でプレッシャーを外す。
  • 受ける前の「出口確認」を声か合図でルール化。

サイド圧縮1v1→2v2トランジション(奪われにくさの連続性)

セットアップ

  • タッチライン際で1v1スタート。奪った/運んだ瞬間にもう1組が加わり2v2へ。

狙い

  • ラインを味方にして隠す→数的同数でも失わない判断へ連続させる。

フェイントの使い分けと習得順

ダブルタッチ/プッシュ&カット(最初に覚える軸)

要点

  • ダブルタッチ:縦の速度差と横の幅を小さく素早く。
  • プッシュ&カット:押し出しは弱め、カットに全力。視線は縦に。

シザース/ステップオーバー(相手の軸足をずらす)

要点

  • シザースは1周目フェイク、2周目で抜かない。踏ませてから逆。
  • 軸足の位置をボールの外側に置き、接触に耐える姿勢を保つ。

クライフターン/ソールロールターン(方向転換の核)

要点

  • クライフは軸足のつま先を出口へ向けてから引く。
  • ソールロールは押す足より着く足(軸足)の向きが命。

ストップ&ゴー(減速で抜く)

要点

  • 止まる技術が先。最後の2タッチを刻み、体を前に残したままボールだけ止める。
  • 再加速は1歩目の長さ>2歩目の回転数。

フィジカル連動:奪われにくさの土台作り

股関節・足首の可動域ドリル(可動性の確保)

メニュー(各30秒)

  • 90/90ヒップローテーション
  • 足首ドーシフレクション壁タッチ
  • ワールドグレイテストストレッチ(短縮版)

体幹アンチローテーション(押されても崩れない)

メニュー

  • パロフプレス(チューブ)左右各20秒×2
  • 片膝ハイプランクで外から軽い押し刺激20秒×2

片脚減速・方向転換ブレーキ(減速能力の強化)

メニュー

  • 3歩ダッシュ→片脚ストップ→逆方向2歩×6本
  • コーンZ走(5m間隔)×4本

首振り(スキャン)と頸部の可動(視野確保)

メニュー

  • ボールタップしながら左右45度→90度の首振り10回×2
  • 肩甲帯リセット(肩回し大きく20回)

家でもできる短時間メニュー(3〜15分)

壁当てオリエンテッドコントロール(初速で前向き)

セットアップ/やり方

  • 壁から2.5m。パス→コントロールで最初のタッチを前へ置く。
  • 左右各30本。1タッチ/2タッチを交互に。

ポイント

  • 受ける前に首振り→体の向きを出口へ。

タオルゲート・足裏ドリブル(狭所キープ)

やり方

  • 床にタオル2枚でゲート(幅60cm)。中で足裏/イン/アウトを連続1分×3。

ポイント

  • 音を小さく、タッチを速く。目線は正面。

鏡前フェイント→接地の確認(軸足の位置)

やり方

  • 鏡の前でシザース/ダブルタッチ10回ずつ。軸足と上半身のズレをチェック。

ステップワーク(ラダーなしで代替)

やり方

  • 床にテープで四角を2列。インアウト/左右シフトを各20秒×3。

メニュー設計:週の組み立てと負荷管理

1日の流れ(認知→スキル→対人→ゲーム)

モデル(60〜90分)

  • ウォームアップ10分
  • 個人ドリル20分(2〜3種)
  • ペア/対人20分
  • 小ゲーム20分
  • クールダウン5〜10分

難易度調整の制約(スペース/タッチ数/接触強度)

  • スペース:広→狭で難化。狭→広で成功体験。
  • タッチ:無制限→2タッチ制限で判断を速く。
  • 接触:なし→肩のみ→全身(手押しNG)で段階化。

KPIと記録(ロスト率・保持時間・ゲート通過数)

  • ロスト率=ロスト/試行。週で−20%を目標。
  • 保持時間(1対1):平均7秒→9秒へ。
  • ゲート通過数:45秒での通過数を算出。

回復とクールダウン(怪我予防)

  • 心拍を落とすジョグ2分→下肢ストレッチ。
  • 翌日が強度高の場合は夜の静的ストレッチを短く。

よくあるミスと修正のコーチングポイント

ボールを見過ぎて視野が狭い(スキャンの合図を設定)

  • 合図をルール化:「2タッチに1回首振り」「色コールで必ず顔から向ける」。

身体を開き過ぎてボール露出(半身と支点の作り方)

  • 相手とゴールの間に肩を入れる→軸足つま先は出口へ。
  • 腰を正面に向けない。45度を基準に。

タッチが大きすぎる/小さすぎる(状況での最適化)

  • プレッシャー強=小、弱=大。音(ボール音)で大きさを自己評価。

接触を避けてしまう癖(段階的にバンプを導入)

  • 肩タッチ→軽バンプ→継続接触へ段階化。手の使用は禁止を徹底。

安全対策と用具の前提

接触強度の段階設定(ルール明確化)

  • 非接触→肩のみ→全身の3段階を事前共有。反則例を具体化。

コーン配置とスペース確保(衝突回避)

  • 進行方向が交差しないレイアウト。1レーン1組。

シューズ選びとグリップ(ピッチに適合)

  • 土:HG/TF、人工芝:AG/TF、天然芝:FG目安。濡れた日ほどグリップ優先。

ウォームアップ/クールダウン(ルーティン化)

  • 同じ流れを毎回繰り返し、神経系の立ち上がりを安定させる。

まとめ:明日から始める実戦ドリブル強化

今日の優先課題を1つに絞る

  • 「半身で隠す」「減速の質」「2タッチに1回のスキャン」から1つ選び、全メニューでテーマ化。

週次で計測・振り返り→微調整する

  • 45秒のゲート通過数、1対1のロスト率、保持時間を週1で記録。
  • 数値が停滞したら制約を変える(スペース、タッチ、接触)。

奪われにくいドリブルは「技の数」ではなく「状況適応の速さ」と「体の使い方」が土台です。ここで紹介したドリルを短時間でも継続し、ピッチでの判断と実行のスピードを1つずつ引き上げていきましょう。明日の練習で、まずは1つだけ試してみてください。変化は、すぐに積み上がり始めます。

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