サッカーのパス、小学生でも正確に通す練習法を、家でもグラウンドでもすぐ実践できる形でまとめました。コツは「フォーム」「評価基準」「判断」の3本柱。難しい専門用語は使わず、目標を数値化し、上達が見えるドリルをたっぷり紹介します。今日から静かに、安全に、しかも楽しく精度を上げていきましょう。
目次
- 導入:なぜ「正確なパス」は小学生から身につけるべきか
- 正確なパスの条件と評価基準
- まずはフォーム:インサイドキックの基本
- よくあるミスと改善チェック
- 練習環境の作り方(安全・準備・道具)
- 1人でできる壁パスドリル(基礎を固める)
- 2人でのパス基礎ドリル(距離・精度・テンポ)
- 3人以上の連携ドリル(角度とレーンの意識)
- 距離別の蹴り分けとボールスピード
- 視野と判断を鍛える(見る→決める→蹴る)
- 動きながら正確に通すためのコツ
- 試合に近いゲーム形式で仕上げる
- 家でできる小スペース練習(静音・安全)
- 週2〜3回の練習計画例(30〜60分)
- 成長を見える化する方法
- 親や指導者の関わり方(声かけと環境)
- ケガ予防とコンディショニング
- よくある質問(Q&A)
- 次のステップ:応用の通すパス
- チェックリストまとめ(今日から実践)
- まとめ
導入:なぜ「正確なパス」は小学生から身につけるべきか
正確の意味と試合での価値
パスの「正確」とは、狙った場所に、受け手が止まらずコントロールできる速さで、狙い通りの回転と弾道で届くこと。試合ではトラップの負担が減り、次のプレーが速くなります。結果としてボールロストが減り、攻撃のテンポが安定します。
小学生でも伸びやすい理由(神経系の発達と学習効率)
小学生は動きを覚える神経の回路が作られやすい時期。細かなフォームやタイミングは、この年代から繰り返すほど身につきやすく、その後のプレー全体の土台になります。
この記事の練習全体像と到達目標
到達目標は「5mの距離で、1m幅のターゲットに80%以上の成功率」「受け手が止まらない強さでワンタッチ交換が10本連続」。壁、2人、3人以上、家練の順に無理なくレベルアップできる構成です。
正確なパスの条件と評価基準
到達地点の誤差(目標からのズレを数値化する)
コーンやマーカーで1m幅のゲートを作り、何本通ったか記録します。10本中何本成功かを毎回ノートに残し、成功率の変化で上達を確認します。
速度とタイミング(受け手が止まらないスピード)
受け手の進行方向1歩前に届くスピードが理想。近距離は転がりが途切れない強さ、中距離は体の前で自然に止められる強さを狙います。
回転と弾道(グラウンダー/浮き球の使い分け)
基本はグラウンダー。混んだ局面では浮き球で相手の足を越える選択も有効。状況に合わせて弾道を選べるとミスが減ります。
判断までの時間(見る→決める→蹴るの短縮)
首を振って情報を先取りし、触る前に「どこへ」「どの強さで」を決める習慣が、精度とスピードを同時に上げます。
まずはフォーム:インサイドキックの基本
軸足の置き方(ボールの横5〜10cm・つま先の向き)
軸足はボールの横5〜10cm、つま先は狙う方向へ。近すぎると詰まり、遠すぎると弱くなります。
足首ロックと面づくり(土踏まずの固い面)
足首を固定し、土踏まずの固い面をまっすぐ作る。親指が寝ると面がブレます。
体の向きとフォロースルー(蹴り抜きでまっすぐ運ぶ)
体と骨盤は狙いに正対。蹴り抜きは低くまっすぐ。大振りは不要です。
当てる位置とミート(ボール中心少し下)
芯を少し下に当て、回転を抑えた素直なグラウンダーを出します。
よくあるミスと改善チェック
体が開いて外へ流れる
対策:軸足つま先をターゲットへ。フォロースルーもまっすぐ。
軸足が遠い/近すぎる
対策:インパクト前に一瞬止まって足位置を確認。ゲート練習で修正。
ひざが伸びてインパクトが弱い
対策:膝を軽く曲げて体重をのせる。小刻みなステップから入る。
足の面が安定しない(親指が寝る)
対策:足首ロックの素振りを10回×3セット。面の角度を固定。
目線がボールだけで相手を見ない
対策:ボール→相手→またボールの順で視線を往復させる癖づけ。
練習環境の作り方(安全・準備・道具)
安全なスペース確保と地面コンディション
平らで滑りにくい場所を選びます。濡れた路面や段差は避けましょう。
1mグリッドのコーン配置で狙いを可視化
コーン2本で1mゲートを作り、距離を3m・5m・8mと段階設定します。
ボール選びと空気圧(学年・号数の適合)
小学生は4号球、中学生以上は5号球が一般的。空気は指で押して少し凹む程度に。
壁・ターゲットの作り方(養生と騒音対策)
壁には養生マットや段ボールを貼ると静かで安全。近隣配慮も忘れずに。
1人でできる壁パスドリル(基礎を固める)
連続10本インサイド(フォーム固定)
距離3〜5m。フォームを崩さず10本連続で同じ強さを目指します。
1mターゲット当て(誤差を測る)
壁に1m幅の目印を作り、10本中の成功数を記録。週ごとに比較。
ワンタッチ壁パス(リズムと面づくり)
リズムは「タッ・タッ」。面を早く作る意識で10本×3セット。
左右交互30本(逆足の底上げ)
右→左の順でテンポよく。逆足の面が崩れたらスピードを落としてリセット。
2タッチ:止めて蹴るの質を上げる
ファーストタッチでボールを体の前に置き、2タッチ目で同じゲートへ。
片足立ちインサイド(体幹と軸安定)
片足立ちの状態で軽いインサイドキック。10本×2セットでバランス強化。
2人でのパス基礎ドリル(距離・精度・テンポ)
5m往復パス(足元へ正確に)
受け手の利き足の内側20cmを狙うつもりで。10往復×2セット。
ワンタッチ限定(テンポと体の向き)
体を開いて半身で受け、1タッチで返す。成功10本を目標。
受け手の前方へ通す(走らせるパス)
受け手の進行方向1歩前へ置く意識で。強さは相手のスピードに合わせる。
逆足限定ラリー(弱点の底上げ)
逆足のみで10本連続に挑戦。面の安定を優先。
2タッチ:ファーストタッチで置く→正確に蹴る
置く位置は「自分の蹴り足の前、足1つ分」。ここが定まると精度が安定します。
3人以上の連携ドリル(角度とレーンの意識)
トライアングルパス(45度の差し込み角度)
三角形の頂点に立ち、45度の角度で差し込み。体の向きを常に前へ。
ダイヤモンド回し(サポートの距離感)
距離は5〜8m。サポートは斜め前、受けてから次のパスまで2タッチ以内。
レーン跨ぎパス(中央・外・ハーフスペース)
3本の縦レーンを意識。外→中央→外の順でテンポよく。
色コール反応(判断スピード強化)
コーチが色をコール。呼ばれたマーカーへ即座に方向転換してパス。
距離別の蹴り分けとボールスピード
近距離3〜5m:面の安定と転がりの質
低く速い転がりを狙い、面のブレをゼロに。足首ロックを最優先。
中距離8〜12m:膝下の振りと体重移動
膝下のしなやかな振り+体重の前移動で伸びるボールを出します。
ロング15〜25m:助走とフォロースルー
2〜3歩の助走から、フォロースルーを長く。体の回転でパワーを伝える。
グラウンダー/浮き球の選択基準
足元が空いていればグラウンダー、相手の足が出るコースでは軽い浮き球で回避。
視野と判断を鍛える(見る→決める→蹴る)
首振りの2秒ルール(事前情報の収集)
ボールが来る2秒前から左右に1回ずつ首を振り、味方と相手の位置を確認。
スキャン→決断→実行のルーティン化
見る→決める→蹴るを声に出してもOK。意識を言語化すると迷いが減ります。
背後情報の確認(後方のプレッシャー)
受ける直前に後ろを一瞥。背後からの寄せに気づくとミスが激減します。
片目バイアス対策:左右スキャンの癖づけ
右→左→正面の順で3点チェック。偏りをなくすと判断が安定します。
動きながら正確に通すためのコツ
斜めのサポート角度(パスラインを作る)
縦一直線ではなく、斜め45度にサポートすると相手に読まれにくい。
オープンボディ(半身で受けて前へ)
体を半身にして受けると、前向きのパスが出しやすく、選択肢が増えます。
ファーストタッチの置き所(次を楽にする)
次に蹴る足の前、進行方向へボール1個分。置き所が精度を決めます。
リターンパスと三角形の循環
一度戻して角度を変える三角形の循環で、相手をずらしながら通す。
試合に近いゲーム形式で仕上げる
4対1ロンド(プレッシャー下の精度)
タッチ数制限なしから開始。奪われたら守備交代で緊張感を保つ。
4対2ロンド(ワンタッチの判断)
攻撃は2タッチ以内→慣れたらワンタッチ縛り。角度と体の向きが鍵。
3対3+2フリーマン(前進のパス選択)
フリーマンを使って前進。足元とスペースの蹴り分けを実戦で磨く。
赤黄コールゲーム(色で瞬時に方向転換)
コーチが色をコールした側へ即座に攻撃方向変更。判断と精度を同時に鍛える。
家でできる小スペース練習(静音・安全)
タオル的当て(転がりを短く静かに)
床にたたんだタオルを置き、そこに沿って転がす。音が小さく、面の確認に最適。
新聞紙ターゲット(軽量で壁を傷つけにくい)
新聞紙を壁に貼って的に。軽い当たりで十分、騒音対策にもなります。
足首ロックの素振り(ボールなしで面づくり)
鏡の前で足首固定→面キープの素振り10回×3セット。
ミニボールで面安定(2〜3号球)
小さいボールは面ブレがすぐバレる。低速で丁寧に。
週2〜3回の練習計画例(30〜60分)
ウォームアップ:関節と動きづくり
足首・股関節の回旋、軽いジョグ、片足バランス各30秒。
技術ブロック:フォーム固定ドリル
壁インサイド10本×3セット、1mゲート当て10本×2セット。
判断ブロック:視野・色コール・制限付き
色コールパス、ワンタッチ縛りでテンポを上げる。
ゲーム形式:ロンド/少人数ゲーム
4対1→4対2へ発展。計10〜15分。
クールダウン:整理運動と振り返り
股関節・ハムストリングのストレッチ、成功率と気づきをメモ。
成長を見える化する方法
成功率の記録(回数/ミスの種類)
「外へズレた/弱かった/強すぎた」などミスの種類も一言で記録。
簡易スピード測定(到達時間で評価)
距離と到達時間をメモ。距離÷時間でおおまかな速さを把握できます。
動画でフォーム確認(角度と面)
横と正面から撮影。軸足位置と足の面、体の向きをチェック。
月ごとの課題設定と振り返りシート
月初に1つだけテーマ設定(例:逆足の面)。月末に達成度を評価。
親や指導者の関わり方(声かけと環境)
プロセスを称賛する声かけ
「面が安定してきたね」「狙いを変えた判断が良い」など過程を褒める。
簡単→難しいの段階設計
静止→2タッチ→ワンタッチ→色コールの順に難度を上げる。
安全配慮とルールづくり
周囲の確認、時間帯の配慮、片付けまでをセットで習慣化。
やりすぎ防止と休養の確保
集中して短く。疲労や痛みがある日は量を減らすか休む。
ケガ予防とコンディショニング
足首・膝周りの強化(バランス系)
片足立ち、つま先立ち、ミニバンドでの膝外側意識。各30秒〜。
ダイナミックウォームアップ(股関節・ハム)
レッグスイング、ランジ、ヒップオープナーで可動域を確保。
クールダウンと柔軟性
ふくらはぎ、ハム、内転筋をゆっくり伸ばす。呼吸を深く。
練習量の目安(頻度・本数・休息)
週2〜3回、各30〜60分。質が落ちたら休息。焦らず継続が近道です。
よくある質問(Q&A)
何歳から始めるのがよい?
ボール遊びはいつからでもOK。パスの基礎は小学生から十分に身につきます。
逆足はどう鍛える?
逆足のみの日を作る、壁当て左右交互30本、短い距離から始めるのが効果的。
体が小さくても強いパスは出せる?
フォームとタイミングで十分補えます。体重移動と面の安定が鍵です。
何号球を使うべき?
一般的に小学生は4号、中学生以上は5号。小スペース練習はミニボールも有効。
家練の騒音・壁対策は?
養生マットや段ボール、新聞紙ターゲット、タオル的当てで静音化できます。
次のステップ:応用の通すパス
スルーパスの考え方(走路とタイミング)
受け手の走路の先へ、相手DFの背中側へ通す。出し手と受け手の合図を共有。
足元とスペースの蹴り分け
安全に前進したい時は足元、相手を外したい時はスペースへ。状況判断で選択。
フリック・ヒール・チップの基礎
まずは止めてから動きの確認→ゆっくり実施→徐々にスピードアップの順で。
受け手との合図と共通言語
「ワンツー」「ターン」「裏」など短い合図をチームで統一すると成功率が上がります。
チェックリストまとめ(今日から実践)
フォーム(軸足・面・フォロー)
軸足はボール横5〜10cm/足首ロック/まっすぐ蹴り抜く。
判断(見る→決める→蹴る)
受ける前に首を振り、選択肢を決めてからボールに触る。
スピード(受け手が止まらない強さ)
近距離は速い転がり、中距離は体の前で自然に止められる強さ。
成功率(ターゲット誤差の減少)
1mゲート10本中8本以上を目標に、記録を継続。
家での再現性(簡易ドリルの継続)
タオル的当て、新聞紙ターゲット、素振りで毎日5分でもOK。
まとめ
正確なパスは、「正しいフォーム」「明確な評価」「素早い判断」の掛け算です。小学生でも取り組めるシンプルなドリルを、短時間でいいので繰り返すこと。1mゲートの成功率や動画チェックで成長を見える化すれば、練習はもっと楽しくなります。今日の一本を丁寧に。明日の一本が変わります。