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サッカーのスローインのやり方 反則ゼロで飛距離が伸びる基本
スローインは「ただ投げる」ではありません。反則ゼロで安定して遠く・正確に飛ばすためには、ルール理解とフォームづくり、そして再現性のある練習が必須です。本記事では、実戦で即効性のある基本から、4週間の上達プログラム、ケガ予防、よくある疑問まで、丸ごと整理しました。今日からの練習にそのまま使える内容だけを厳選しています。
結論と全体像:反則ゼロで飛距離が伸びるスローインの作り方
今日から変わる3つの核心(足・体幹・リリース)
スローインのパフォーマンスは、次の3点を整えるだけで一気に変わります。
- 足:リリース時に両足の一部が必ず地面に接地し、つま先がピッチ内に入りすぎない。スタンスは肩幅〜1.5肩幅。
- 体幹:背中を「弓なり」にたわませ、骨盤→胸→腕の順で復元させる。腕力勝負にしない。
- リリース:頭上から前方へ、角度はおよそ35〜45度を中心に調整。早すぎず遅すぎず、頂点手前で放す。
この3つを守るだけでも、反則を避けながら飛距離と直進性が伸びます。
距離と正確性は両立できる
「遠いか、正確か」の二択ではありません。助走の止まり方、胸椎(背中上部)の伸展、フォロースルーの方向をそろえれば、距離とコントロールは同時に上がります。正しい型で練習を重ねるほど、毎回同じ弾道で投げられます。
ルールの基礎:反則ゼロの条件を正しく理解する
正しいスローインの手順(IFAB準拠)
- ボールがタッチラインを完全に越えた地点から再開する(概ねその地点)。
- 投げる選手はフィールドに向き、両手で、頭の後ろから頭上を通すように投げる。
- リリースの瞬間、両足の一部が地面に接地し、タッチライン上または外側にある(完全にピッチ内は不可)。
- ボールがフィールド内に入った時点でインプレー(入らなければやり直し)。
- 投げた選手は、ほかの選手が触れる前にボールへ再び触れてはいけない。
ファウルスローの主な原因と境界線の解像度
- ジャンプ投げ:リリース時に両足が浮いている。
- 片手・横投げ:両手で頭上から投じていない。
- 足の位置違反:足の全部がピッチ内に入っている/ラインを大きくはみ出して前進。
- 背中が丸すぎるだけで投げる:頭の後ろからの軌道になっていない。
- リリース地点のズレ:明らかに出た地点から遠い場所で投げる。
グレーにしないコツは「リリース瞬間の写真」を頭に入れておくこと。両足接地・両手・頭上・ライン管理の4点を同時に満たせばOKです。
オフサイド・直接得点・再開位置の注意点
- オフサイド:スローインから直接受けた味方はオフサイドにならない。
- 直接得点:スローインから直接ゴールは認められない(相手ゴールならゴールキック、自陣ゴールならコーナーキック)。
- 再開位置:ボールが出た地点から。主審が修正指示することもある。
GKへのスローとハンドの関係
- GKは味方のスローインを直接手で扱えない(反則。相手に間接FK)。
- 投げた本人がボールに再び触るのはNG。手で触れば通常は直接FKの対象。ただし投げた本人がGKで自陣PA内で手で触れた場合は間接FK。
相手の距離(2m)と主審への申し出の使い方
- 相手はスローイン地点から2m以上離れる義務がある。
- 近づきすぎ・妨害は警告対象。主審に一言伝えるのは有効。
- 手にボールを持ったまま待ち過ぎると遅延扱いのリスク。合図→素早い実行が基本。
基本フォーム:誰でも再現できる5ステップ
ボールの持ち方(両手の対称と指の使い方)
- 親指は背骨のように中央で支え、人差し指と中指でタテ方向の安定を作る。
- 左右の手はできるだけ対称。片手が前に回りすぎると横投げ判定のリスク。
- 濡れ球は指先で「引っかける」感覚を強める。手のひらで押しつぶさない。
足の置き方とスタンス(ラインと足裏のルール適合)
- つま先は基本、タッチラインと平行。やや外向きにすると体幹が使いやすい。
- かかと、つま先のどちらでも接地は可。リリース瞬間に両足の一部が地面に触れていることが絶対条件。
- スタンスは肩幅〜1.5肩幅。広すぎると復元力が弱まり、狭すぎるとバランスが崩れる。
体幹と背中の使い方(弓なり→復元力)
- ボールを頭上にセットしたら、胸をやや上に向け、胸椎を反らせる。
- 骨盤を前傾→胸→腕の順にしなる「波」を前方へ。腕だけで投げない。
- 視線は投げたい目標のやや上。顎が下がると角度が低くなる。
リリース角度とタイミング(高すぎ・低すぎの分岐)
- 目安は35〜45度。向かい風は低め、追い風は高めに微調整。
- 最速点の少し手前で放す。遅いと山なり、早いと失速しやすい。
- 指先は最後までボールの背中を押し出す。回転をコントロールできる。
フォロースルーと重心移動で直進性を作る
- 投げた後、両手は目標方向へまっすぐ伸ばす。左右に流さない。
- 重心は後足→前足へ移すが、前足がピッチ内に入らないよう注意(入るのはボールが離れた後)。
- 最後に腹圧を抜かず、体幹で止まる。「止まれる投げ」はブレない投げ。
飛距離アップのメカニズム:力学と身体連動
ランアップの使い方:止まれる助走が距離を生む
- 助走は2〜4歩が標準。最後の一歩で減速し、両足接地→リリースを確実に。
- 「小走り→止まる→反動」のリズムを一定化。助走の勢いを前方へ逃がさない。
長いレバーを作る(肩甲帯・胸椎伸展・股関節)
- 肩甲骨を寄せて下げる意識で、腕のストロークを長くする。
- 胸椎の伸展を使って弓を大きく。腰だけ反ると負担増。
- 股関節を後ろに引き、骨盤の前傾で「ため」を作る。そこから前へ連鎖。
バックスピン/無回転の使い分けと再現性
- バックスピン:落下が遅く受け手が合わせやすい。指先でやや下から前へ押し出す。
- 無回転:直線的で速い。風の影響を受けやすいので短中距離向き。
- どちらも「同じ手順・同じスピード」で出すことが再現性の鍵。
安全に伸ばす力学(腰・肩の負担を減らすコツ)
- 腹圧(お腹の内圧)を先に作る。へそ周りを固めてから背中を反る。
- 肩はすくめない。鎖骨を横に広げるイメージで首を長く。
- 「腕で振る割合」を下げ、「体幹の復元力」を主役にする。
状況別の投げ分け:実戦で効くパターン
自陣深い位置:失わないための3択
- 近距離の壁役→落とし(ワンツーで前進)
- 中距離の外側選手→内向きターンの余白を作る
- GKまたはCBへ「安全最優先」リターン
原則は、相手の2mルールを活用して最低1つは自由な選手を作ること。味方の立ち位置を事前に共有しておくとロストが減ります。
中盤:前進を助ける三角形とスイッチ
- スローアー+近距離+斜め前で三角形を作り、落とし→裏抜けのスイッチ。
- 逆サイドのIH/SHが内側で受けるパターンも効果的。
相手陣地:ロングスローをセットプレー化
- ニアで flick(そらし)、ファーに走り込む。
- スクリーン(合法的な立ち位置)でマークを遅らせる。
- セカンドボール回収位置を事前に固定する。
受け手の基本(半身・背負う・壁役の作り方)
- 半身で受けて前を向く選択肢を残す。
- 背負うときは腕一本ぶん相手と距離を空け、体を間に入れてキープ。
- 壁役は「返すときに相手の足の届かない側」へ置く。
相手の2mルールを最大限に活用する
- 近づいてくる相手は審判の前で明確に指摘。注意・警告が入れば次から距離が取れる。
- 2mの円を自分で描く感覚を持つと、受け手の動き出しが合わせやすい。
ロングスロー習得プログラム(4週間)
1週目:フォーム固め(膝立ち→片膝→立位)
- 膝立ちで背中のしなり→押し出しの順番を覚える(10本×3セット)。
- 片膝で安定化。左右差をチェック(各10本×2)。
- 立位で両足接地のままショートスロー(15本×2)。
2週目:距離と的中率の両立
- ターゲット帯(幅2m)を作り、15m→20m→25mと段階アップ。
- 命中率70%以上で距離を伸ばす。外れたら前の距離に戻すルール。
3週目:パワー強化とスピード化
- 助走2〜4歩を導入。止まれる助走の習得。
- タイム計測(到達時間)でスピードを管理。短縮を狙う。
- 週2回の補強(体幹・広背筋・臀筋)を追加。
4週目:試合形式での統合
- 実戦配置でパターン練習(ニアそらし、ファー狙い、落とし)。
- 相手プレッシャーありの状況で成功率60%超を目標。
計測と記録(距離・角度・到達時間)のテンプレート
日付/天候/風向風速距離(m):成功本数/試行本数的中帯(幅2m)命中率(%)到達時間(秒):平均/最速メモ:リリース角度・助走歩数・感覚
部活・自宅でできるドリル集
フォームドリル:スローイン分解練習
- 背中しなり→静止→押し出しだけ(腕9割封印)×10
- 手首・指先の押し出し感覚ドリル(軽いボール)×20
- リリース瞬間の両足接地確認(動画でチェック)
壁ターゲットとゲート精度ドリル
- 壁にテープで1m×1mの枠。10本中7本以上の命中を目安。
- マーカーで幅2mのゲートを作り、ワンバウンドで通す。
距離メジャー法と自己ベンチマーク
- 5歩=約3.5〜4mを基準に簡易測定(自分の歩幅を事前に実測)。
- スマホの測定アプリや巻尺で月1回は正確に更新。
プレッシャー慣れのペア&グループ練習
- 相手役が2mギリギリでスタンバイ→審判役のカウントで投げる。
- 10秒ルール(ボール入手→10秒以内に実行)でテンポを速く。
雨天・濡れ球への対応ドリル
- 濡れたボールで握り替え練習。親指と人差し指の圧を強める。
- リリース角度はやや高め、バックスピン気味で失速を防ぐ。
- 許可される範囲でタオルを活用(大会規定を確認)。
ケガ予防:可動性と筋力のバランス
肩・肘を守る可動域セルフチェック
- 両腕を耳横まで上げられるか(腰を反りすぎず)。
- 肘が痛む角度がないか。違和感が続く場合は投げ込みを控える。
胸椎伸展と肩屈曲のモビリティ向上
- フォームローラーで胸椎の反り出し(30〜60秒×2)。
- 壁スクワット(腕を上げたまましゃがむ)×8回×2。
体幹・広背筋・後鎖の実戦筋トレ
- デッドバグ/プランク:体幹の安定。
- ラットプル(またはチューブプルダウン):広背筋の押し出し補助。
- ヒップヒンジ系(ルーマニアンDL):骨盤主導の「ため」を強化。
ウォームアップ/クールダウンの標準ルーティン
- 動的:肩回し→胸椎モビリティ→股関節開閉→軽い助走ドリル。
- 静的(終了後):広背筋・胸・ハムストリングのストレッチ各30秒。
反則にならない『攻めるフェイント』の作法
許されるフェイントとNG行為の線引き
- 許容:投げるタイミングの小さな間、視線のフェイク、肩の見せ。
- NG:相手の視線を故意に妨げる過度な動作、距離違反を誘う挑発、過度な遅延。
主審・副審とのコミュニケーション術
- 相手が2m以内ならボールを持ったまま一言でOK。「距離お願いします」。
- 位置修正は素直に従う。次回からの信用が上がる。
時間帯別のマネジメント(リード時/ビハインド時)
- リード時:安全第一。ショート優先で確実に保持。
- ビハインド時:テンポアップ。素早い再開とロングを織り交ぜる。
用具と環境の最適化
グリップを安定させる実用的工夫
- 爪を切る、手汗対策(マグネシウム類は大会規定を確認)。
- ボールの縫い目を指にかける癖をつける。
タオル利用と公平性の考え方
- 一部大会では使用可/不可が分かれる。事前確認を徹底。
- 使用可の場合は両チームに公平である必要がある。
ライン付近のスペース確保とボールパーソンの連携
- ベンチ側は立ち位置を整理してランアップ動線を確保。
- ボールパーソンには「素早い供給→近いスローイン」を共有。
よくある質問(FAQ)
走りながら投げてもいい?助走とリリースの関係
助走はOK。ただしリリースの瞬間に両足の一部が地面に接地している必要があります。止まれる助走を身につけましょう。
ジャンプして投げるのは反則?両足接地の判断基準
ジャンプ状態でリリースすると反則。写真で切り取った瞬間に「両足接地」が見えることが基準です。
片手で回転をかけるのはOK?両手同時性のルール
両手で頭の後ろから頭上を通す投げ方が必須。片手主導や横投げは不正と見なされます。回転をかけるなら両手の押し出しで行います。
スローインから得点できる?直接得点の可否
直接得点は不可。相手ゴールへ直接入ればゴールキック、自陣ゴールへ直接入ればコーナーキックで再開です。
受け手はオフサイドになる?例外の整理
スローインから直接受ける場合、オフサイドにはなりません。次のプレーでオフサイドの条件を満たせば別です。
GKはスローインを手で触れる?間接FKの条件
味方のスローインをGKが直接手で扱うのは反則。相手に間接FKが与えられます。
相手が2m以内に寄ってくる時の対処は?
主審に距離確保を依頼。妨害が続く場合は注意・警告の対象です。焦って投げてミスしないことが大切。
チェックリスト:試合前と試合中の確認事項
試合前の10項目チェック
- ボール・スパイクのグリップ良好
- 爪・手汗対策
- 肩・背中・股関節の可動域OK
- 助走の歩数を決めている
- ターゲット合図(声・ジェスチャー)を共有
- ニア・ファーの合言葉を統一
- 濡れ球時の代替プラン確認
- 主審の傾向(距離・位置の厳しさ)を早期に把握
- タオル可否・ボールパーソンの運用確認
- 自分のベストレンジ(距離・角度)を再確認
フォーム自己診断の観察ポイント
- 両足接地で止まれているか
- 肩がすくんでいないか
- 背中→体幹→腕の順でしなれているか
- リリース角度が毎回そろっているか
- フォロースルーが目標方向へ伸びているか
距離・精度の目標設定と更新ルール
- 距離:月ごとに+2〜3mを目標(無理はしない)。
- 精度:幅2m枠で命中70%以上を維持しながら距離アップ。
- 更新は「3回連続で基準達成」で正式記録とする。
まとめ
スローインは、ルール理解×再現性の高いフォーム×状況判断の3点で勝負が決まります。両足接地・両手・頭上というルールの核を外さず、体幹主導の「弓なり→復元」で押し出す。助走は止まれる範囲で、リリース角度は35〜45度を基本に微調整。あとは4週間のプログラムで距離と精度を同時に磨けば、試合での一手が確実に増えます。今日の練習から、まずは「止まれる助走」と「同じ角度の再現」から始めてみてください。結果はすぐについてきます。