サッカーの試合で「思ったパスがうまく通らない」「もっと相手を崩せるパス選択がしたい」と感じたことはありませんか?パスはサッカーにおける“意思疎通”のツールであり、同時にチャンスを生み出す最大の武器です。けれど「なんとなくインサイドパス」「ロングパスが安定しない」といった悩みを抱えている方も少なくありません。この記事では、サッカー経験を積んだ高校生、または指導者・保護者の方に向けて、パスの種類ごとの特徴や“使い分け”、練習法、そして実戦で役立つ考え方まで徹底解説します。誰でも実践できる具体的なテクニックを紹介するので、ぜひ今日からパスの質を高めてみましょう。
はじめに|なぜ『パスの種類と使い分け』が重要なのか?
サッカーで「ゴール」を目指す上で、全員がボールを持ってドリブルし続けることはできません。攻守のバランスや、相手との駆け引き、そして仲間との連携を円滑に進めるには“パス”が不可欠です。パスのバリエーションを持つことで、相手の予測を上回る攻撃や、自身のプレーの選択肢が広がり、チーム全体の攻撃力や安定感が格段に向上します。同じインサイドパスでも、受け手の状況や攻撃の目的によって質や出し方が変わります。
「パスの種類や使い分け」を理解し、状況ごとに最適なパスを選択できる選手は、ただボールを蹴る人から「ゲームを動かす存在」へと進化します。この記事であなたが新しいパス技術への“気づき”を得て、次からの試合で一歩先のプレイヤーへと成長できることを目指しています。
サッカーにおけるパスの基本|押さえておくべきポイント
まず押さえたいのが、どのパスも「受け手ありき」ということ。上手い選手は仲間の動き、姿勢、スペース、相手DFの位置を観察し、何気ないパスにも明確な意図を込めています。基本となるポイントは以下です。
- 視野を確保する: ボールを蹴る前に必ず周囲を見る癖をつけ、フリーの味方やスペースを探す。
- パススピード: 必要以上にゆっくりでも速すぎてもNG。受け手に合わせ、相手DFが反応しにくい強度をイメージ。
- タイミング: 味方の動きだし・相手の重心移動を見極め、最適なタイミングで通す。
- パスコース: 目の前の選手に当てるのではなく、受け手が有利になる「足元 or スペース」に狙いを定める。
これらを踏まえた上で、パスの種類ごとの特性と“違い”を知っておくことが上達には欠かせません。
代表的なパスの種類と特徴
インサイドパス|基本にして最も使われるパス
最もスタンダードで汎用性が高いのが、このインサイドパスです。足の内側(インサイド)を使うことでボールコントロールがしやすく、短い距離から中距離まで安定したパスを出せます。止めて蹴る技術もこのパスが基本。チーム練習でも個人練習でも必ず反復される理由は、試合でもっとも多用されるからです。
メリット: 精度が高い・ミスが起きにくい・味方との連携で“安心感”を生みやすい
使いどころ: ビルドアップ、近距離のワンツー、リズムを作りたい場面など
インステップパス|距離を稼ぐときに有効
インステップ(足の甲)で蹴るパスは、キックの力を最大限に使って中・長距離に飛ばすのに適しています。いわゆる「ロングパス」もこの部類ですが、15〜25m程度の“速いパス”にも活用されます。フォームが崩れると精度が下がるため、基礎をしっかり身につけることが重要です。
メリット: 大きな距離を一気に稼げる・勢いのある速いパスで相手DFを抜けやすい
使いどころ: サイドチェンジ、相手プレスを回避したい時、裏を狙う場面など
アウトサイドパス|予想外のリズムを与える
足の外側(アウトサイド)でボールを蹴るテクニカルなパス。通常のフォームを変化させ、急なコース・スピンをかけられるので、相手の予測を外す“意表をつく”パスとして有効です。トリッキーな印象もありますが、狭いスペースで角度を変えたい時や、素早い展開をしたい時に大活躍。
メリット: 素早いターン・局面転換で有利・ワンテンポ違う展開ができる
使いどころ: 狭いスペース、密集エリアで受け手の足元に通したい時、ワンタッチプレー時
ロングパス|一気に局面を変える武器
ゴールキーパーからディフェンダー、ミッドフィルダーからサイドや最前線へ「大きく展開」する時のパスです。ピッチを広く使い、相手ブロックを一発で崩せるダイナミックな武器。狙いが明確でないとロストに繋がるリスクもあるので、精度・タイミングが問われます。
メリット: 局面の一気打開、相手の裏を突く展開、ポゼッション安定化
使いどころ: サイドチェンジ、プレス回避、カウンターの起点、相手ディフェンス裏狙い時
スルーパス|ディフェンスの裏を狙う
相手DFラインの背後に、味方が走り込むスペースへ出す“通す”パス。ゴール前や中盤での決定的なシーンを演出することが多く、パスを出すタイミング・スピード・コースの精度が要求されます。スルーパス一発でビッグチャンスを作るシーンはサッカーの醍醐味の一つです。
メリット: 決定機の創出、受け手のスピードを最大化
使いどころ: ゴール前、カウンター、サイドからの中への侵入時など
ワンツーパス(壁パス)|連携で相手を崩す
味方にボールを預けてすぐにリターンしてもらい、自分が有利な位置へ走り直す『壁パス』。2人・3人の連携を生かし、密集地帯を素早く突破する場面で有効です。短距離でリズミカルな技術と、タイミングの合わせ方がポイントになります。
メリット: 相手DFを一時的に“置き去り”にできる・リズムに変化を生み出せる
使いどころ: ゴール前、サイド、ミッドフィルダー同士のコンビネーション、狭いエリア打開時
フライパス(浮き球パス)|空中を使って相手をかわす
地面を転がすだけでなく、空中のコースを利用した浮き球のパス。相手選手の頭上を越したい時や、ピッチコンディションが悪い(芝が伸びている・雨天)時にも活用できます。強弱によって相手DFの間を突く速いフライパスや、やや高めに落とすループ系など種類も豊富です。
メリット: ブロックの間を抜く・グラウンド状況に左右されにくい
使いどころ: サイドチェンジ、密集地帯突破、FWの頭へ供給する時 など
ヒールパス|意表をつく遊び心あるパス
足の裏からカカトで後方などにパスを出す技術。自分の進行方向と逆にボールを送るので、相手の意識外のスペースや予期しない動きを引き出せます。強度や精度が難しいため、ここぞという時のアクセントとして取り入れたい“隠れ技”です。
メリット: 意外性・スピード感・ゴール前の細かい局面打開
使いどころ: ゴール前、中央の狭いスペース、味方のオーバーラップ時 など
ラストパス(決定機を作るパス)|ゴールを演出する最終局面
ゴールを生み出すため最後に出される「決定的なパス」です。スルーパス、クロス、グラウンダー、リターンなど“形”は様々ですが、共通するのは「味方のシュートとセットで成立」すること。受け手の動き、相手GKやDFの位置、微妙な重心のズレまで感じ取り、シュートしやすいコースやタイミングを見極める必要があります。
メリット: 得点チャンスの最大化・アシストという新たな“価値”
使いどころ: ゴール前、サイド突破からの折り返し、中盤からの鋭い縦パス など
【目的別】パスの使い分け方とテクニック集
ビルドアップ時のおすすめパス&その理由
自陣から攻撃を組み立てるビルドアップでは、失敗が直接失点に繋がるリスクを伴います。そのため安全かつ確実なインサイドパスが軸となりますが、相手のプレスに応じてパスの種類や使い方を調整することが重要です。
- ショートパス(インサイド)でテンポよく“ズレ”を作る
- プレスを受けた時はロングパスやフライパスで一気にサイドチェンジ
- 相手全体を動かしたい時は、アウトサイドパスで素早く角度を変える
リスキーな縦パスは「チームの約束事」や「受け手とのタイミング」が合う場合のみに。安全性とリズム変化のバランスがカギです。
サイド展開時に有効なパスとポイント
ピッチを幅広く使うためには「サイドへの展開力」が欠かせません。守備の寄せが中央に集まりがちなため、ウィングやサイドバックへのパスが効果的となります。
- 横方向へのロングパス・フライパスで大きく“展開”する
- サイドバックの上がりにはインステップで速い足元パス or スペースへのパス
- 狭い局面ではアウトサイドやワンツーなど短いパスで連携
受け手の走るコースや相手DFの位置、パス後の動き直しも大切にしましょう。
ゴール前で効果的なパス選択のコツ
ゴール前は相手守備の密集&プレッシャーも強烈。その中で決定的なパスを出すポイントは“速い判断”と“意図の共有”です。
- ワンツーやヒールパスで密集の壁を突破
- DFラインの高さを見てスルーパス or スペースへのフライパスを選択
- サイドから中央へのグラウンダーでDFとGKの間を突く
受け手の入りたい場所や利き足、フェイクとの組み合わせも意識できると、得点につながる確率が高まります。
相手守備ブロックを突破するパスの工夫
中央や相手陣地で数的同数・劣勢の状況。ここを打開するためには、定番のパスワークだけではなかなか崩れません。
- アウトサイドでクイックに角度を変えDFの「死角」へパス
- 縦と横のラインを交互に使う「L字パス」
- あえて相手DFと平行になるパスで、守備ラインを“動かす”工夫
ボール保持だけでなく、味方のサポート、時にはラストパスを出さない“溜め”となる判断も効果的です。
カウンター時のパス選択で意識したいこと
相手チームが前がかりになったタイミングでのカウンターは、一気にチャンスを作れる時間帯。強く速いパス・長い距離・精度が求められます。
- ダイレクトで受け手の走路前方へロングパス・スルーパス
- ワンタッチでリズムを変えるアウトサイドパスやヒールパス
- サイドチェンジで相手守備の逆をつく展開
カウンター時は「見る・決断・蹴る」を最短で行い、受け手との意思疎通が勝負を分けます。
パス精度を高めるための練習法とセルフチェック
一人でもできる個人練習メニュー
- 壁あてパス練習: インサイド・インステップ・アウトサイド全て、壁に正確に当ててリターンを受ける
- ターゲットを決めてパス: コーンやマーカーで的を作り、指定した足に何回連続で当てられるかチャレンジ
- 動きながらパス: 移動しつつリズムよく壁当て/的当てすることで、実戦に近づける
基本の反復が上達の秘訣です。自分のパス成功・失敗を動画で振り返るのもおすすめ。
仲間と取り組むグループ練習ドリル
- 2人組パス&コントロール: 近距離・中距離、左右両足で正確にパス交換
- 3〜4人組のロンド: 狭いエリアで複数人がボール回しし、プレッシャー下でも焦らず正確にパス
- ワンツー連続パス練習: サポート役とワンタッチパスを繰り返す
- フライパスまたはロングパスドリル: 離れた仲間へ浮き球で正確に届ける技術を磨く
周囲との声掛けや合図を大切に、コミュニケーションまで意識できるとより実践に役立ちます。
実戦で結果を出すための意識ポイント
- 「蹴る前」に必ず見る(視野の確保)
- 受け手の状況・動き・利き足を観察する
- 成功率だけでなく“意図”を持ったパスかを自己チェック
- ミスしたら原因を分析する「なぜ通らなかったか」
パスの練習は形だけでなく「自分で意図する→実現する」能力を高めることが大切です。
パス上達のための考え方|プロや指導者から学べること
パスの上手な選手は、単に技術が優れているだけでなく「目的」を常に意識したプレーを行っています。
たとえばJリーグや海外のトップ選手たちは、「どの味方へ、なぜ、どんな強さで、どんなコースにパスするのか」を瞬時に判断しています。これには状況把握能力、洞察力、予測力、そして大胆さが求められます。
プロの試合を観る際は、「なぜ今そのパスだったのか?」「他に選択肢はなかったのか?」という視点で見ることで自分自身のパスセンスを磨くヒントが得られます。また、指導者からは「なぜその判断だったか」フィードバックをもらうことで新たな発見が生まれます。
パスが上達する選手は「ミスを恐れずチャレンジする姿勢」と「相手・味方の状況を感じとる意識」を高く持っています。技術も大切ですが、考え方=“サッカー脳”も鍛えていきましょう。
よくあるパスミスとその対策
- 受け手が見えていない → 必ず蹴る前に全体を確認する。苦手エリアの視野拡大を意識
- パスが弱すぎてカットされる → 距離・状況に応じた強さを「蹴る前にイメージ」する
- 浮き球/ロングパスがずれる → 上体・軸足のフォームを安定させる練習を繰り返す
- 受け手との“以心伝心”が足りない → アイコンタクト・声掛け・サインプレーを積極的に活用する
- ワンツー/スルーパスが相手に読まれる → フェイントやパスのタイミングに変化をつけて“予測されにくい”工夫を
誰でもミスはしますが、「なぜ」「どうしたら」の原因→解決策をセットで考えられると成長スピードが一気に上がります。
まとめ|自分に合ったパスと使い分けを身につけよう
サッカーのパスは一見シンプルな技術ですが、相手DFとの駆け引き、味方との連携、「いま、なぜそのパスを選ぶか?」という頭脳のスポーツでもあります。紹介した様々な種類のパスを“知る”だけで満足せず、ぜひ日々の練習と試合で「状況ごとの使い分け」「成功するための意図」「意図通りいかなかった時の振り返り」を意識してみてください。
自分の得意・不得意を把握し、少しずつオリジナルなパス技術や判断力を高めていくことが、サッカー選手としてのレベルアップに繋がります。周囲と助け合いながら、あなたらしいプレースタイルのパスをどんどん増やしてくださいね。誰もが「一つ上のパス」を身につけ、ピッチで自信を持ってプレーできることを応援しています!