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ターンを中学生向けにやさしく解説|試合で使える基本と練習法
ボールを持って一瞬で向きを変え、守備を外して前へ進む。これがサッカーの「ターン」です。ドリブルが速くなくても、体が大きくなくても、ターンの基本が身につけばプレーは一気に楽になります。この記事では、中学生にもわかりやすく、試合でそのまま使えるターンの考え方、体の使い方、技の種類、練習メニューまでを丁寧に解説します。今日からグラウンドで試して、明日の自分をアップデートしていきましょう。
ターンとは?中学生にもわかる基本の考え方
ターンの定義と「向き直り」との違い
ターンは「ボールをコントロールしながら、身体と進行方向を変える動き」です。単にその場で体をクルッと回す「向き直り」とは違い、ボールの位置・触る面・次の一歩までを含めて、相手に奪われない形で方向を変えます。
- 向き直り:体だけが回る。ボールは置き去りになりやすい。
- ターン:体とボール、足運びがセット。次のプレーにつながる。
いつ使う?ターンが活きる3つの場面
- 背後からプレッシャーが来るとき:受けた瞬間に前を向くため。
- サイドで縦と中どちらも見せたいとき:相手の体重を逆へずらすため。
- 中盤でプレスを外したいとき:一度減速してから角度を作るため。
試合で役立つメリット(時間・空間・角度の獲得)
- 時間の獲得:一発で前を向けると、余裕を持って判断できる。
- 空間の獲得:相手の逆を取ることでフリーのスペースへ出られる。
- 角度の獲得:パスコースやシュートコースを新しく作れる。
体の使い方の基礎
スキャン(首ふり)とオープンボディの作り方
ターンの成否は、ボールが来る前の準備で7割決まります。「スキャン」は首を振って周りの情報を先に集めること。「オープンボディ」はボールを受ける前から半身を作り、どちらにも動ける体の向きにすることです。
- 受ける1~2秒前に左右と背後を確認(目線を素早く)。
- 片足を少し前に出して半身を作る(へそがゴールライン方向を向くイメージ)。
- ボールと相手、スペースの三点を交互に見る。
重心・軸足・ステップの順番
きれいなターンは順番が崩れません。
- 減速で重心を低くする(膝と股関節を曲げる)。
- 軸足を置く(ボールから10~20cm、踏み込みは強く短く)。
- 方向転換のタッチ→次の一歩で前へ出る。
減速→方向転換→再加速のリズム
「タッ・タ・ターン」のように、短い減速から一発の方向転換、素早い加速までをつなげるのがコツ。音を意識してリズムで覚えると、試合でも無意識に出せます。
中学生がまず覚えるべき基本ターン5選
インサイドカット(内側への切り返し)
やり方
- 進行方向と逆足のインサイドでボールの横を軽くカット。
- カットと同時に肩を入れて体の向きを変える。
- ボールは足1~2個分先へ押し出し、再加速。
コツ
- カット前に小さく減速。軸足はボールと平行に。
- 目線はカットの瞬間に逆方向もチラ見して相手をずらす。
アウトサイドカット(外側への切り返し)
やり方
- 同じ足のアウトサイドで外へ押し出す。
- 足首を固め、短く鋭いタッチで角度を作る。
- 二歩で加速し、身体を外へ運ぶ。
コツ
- 相手の届かない外側にボールを置く距離感(足1.5個分)。
- 肩と骨盤を同時に回すとバランスが崩れにくい。
ドラッグバック(引き技)
やり方
- 足裏でボールを自分の後ろへ強めに引く。
- 引いた瞬間に体を回し、反対の足で前へ出す。
コツ
- 引く方向は相手の足の届かない斜め後ろ。
- 上半身をやや前傾にして重心を落とす。
足裏ターン(ソールターン)
やり方
- 足裏でボールを止める/引く。
- 軸足を小さく踏み替えて体を180度回す。
- 反対の足で前へ押し出す。
コツ
- ボールは体の真下に置き、転がりすぎを防ぐ。
- かかとが浮かないよう、足裏全体で触る。
クライフターン(フェイントを活かす方向転換)
やり方
- シュートやクロスのモーションを見せる。
- 振り足のインサイドでボールを支点足の後ろへ引っかける。
- 体を反転し、空いたスペースへ加速。
コツ
- 「見せ」のフォームをしっかり作るほど効く。
- ボールは足1個分後ろへ。強く引きすぎない。
状況別に効くターンの使い分け
背後からプレッシャーが来るとき:半身受けとハーフターン
受ける前に半身を作り、パスが来た瞬間にボールを少しだけ進行方向へ出す「ハーフターン」が有効。大きく回らず、触球1~2回で前を向くのが理想です。
タッチライン際:相手を外す切り返し
ライン側に逃げるスペースがないので、内側へ角度を作るインサイドカットやクライフターンが効きやすい。体で相手をブロックしながら、ボールを内側の足で守る意識を。
中盤:前向き化とプレス回避のコツ
中盤は360度から圧力が来ます。受ける前のスキャン回数を増やし、最短のハーフターンか、あえて一歩後ろに下がるドラッグバックで時間を作るのが安定。
フォワード:背負ってからの一撃ターン
DFを背負った場面では、アウトサイドカットで相手の外側を回るか、足裏ターンで相手との距離をずらす。相手の重心が前になった瞬間が決めどきです。
サイド:カットインと縦突破の選択基準
- 内側に味方が多い→縦へアウトサイドカットでスプリント。
- 縦が詰まる→クライフターンで内へ角度を作り、パスやシュートへ。
よくあるミスと直し方
減速不足でボールが流れる問題
原因は重心が高いこと。ターン前の二歩を小さくして膝を曲げる。合図を出して急停止→ターンの練習で改善。
視野が狭く奪われる問題
ボールウォッチになっているサイン。受ける前に背後を見る回数を「2回」決めておく。声で情報共有できるとさらに安定。
軸足の位置が近すぎ/遠すぎの調整
近すぎ→ボールをまたいでしまい遅い。遠すぎ→届かない。目安は10~20cm横、少し前。マーカーを置いて反復すると感覚が早く定着します。
フェイント不足で読まれるときの対策
肩・目線・踏み込みの「見せ」を大きく。走る速さは変えず、最後の一歩だけリズムを変えると効く。
ボールタッチが大きすぎ/小さすぎの最適化
大きすぎ→奪われる。小さすぎ→止まる。足1~2個分先へ出す距離を基準に、ピッチや相手との距離で微調整。
1人でできる練習メニュー
5分ウォームアップ(股関節・足首・ハムの準備)
- 足首回し30秒×左右、股関節サークル各10回。
- ランジツイスト10回、ヒップヒンジ10回。
- 軽いシャトルジョグ20m×4本。
コーン2個の反復ターンドリル
コーン間5~7m。往復しながら以下を1分×3セットずつ。
- 往路インサイドカット、復路アウトサイドカット。
- 往路ドラッグバック、復路足裏ターン。
- 最後は「自由ターン」でリズム変化を入れる。
壁当て→ハーフターン→前進の連続動作
- 壁にパス→戻りを半身で受ける。
- ワンタッチで前へ転がしながらハーフターン。
- 5mドリブル→ストップ→向きを変えて戻る。
ラダーやマーカーでの減速/加速トレーニング
小刻みステップで進み、合図で急停止→ターン→3歩加速。神経系のキレを作るのに効果的。
家の中での足裏タッチと方向転換
狭いスペースでも可能。足裏で前後左右へボールを転がし、5回に1回は180度ターンを入れる。音を立てずに静かに行うとコントロールが上達。
2人以上・チームでの練習メニュー
ミラードリル(合図に合わせて同時に向きを変える)
向かい合ってドリブル。コーチの合図またはリーダーの動きを「鏡」のようにまねてターン。反応速度と連動が磨かれます。
1v1制約ゲーム(背後プレッシャーを想定)
攻撃者は背中を相手に向けてスタート。合図でパスを受け、3秒以内に前を向けたら得点。短時間で判断を鍛える。
2v2+サーバーの前向き化ゲーム
外にサーバーを置き、受け手がターンして前を向けたら攻撃継続。向けなければ守備のボール。連携と角度作りが身につきます。
ポゼッションでの「前向きボーナス」ルール
1タッチで前を向いたら+1点などのルールを追加。ターンの意識が自然に高まります。
制限時間つきターンチャレンジで決断スピードを上げる
10秒間に指定ターンを何回成功できるか競う。フォームを崩さず回数を伸ばすことが目標。
ポジション別の使い分け
DF:安全第一での前向き化と逃げるターン
リスクを抑えるため、足裏ターンやドラッグバックで角度を作り、フリーの味方へ。ライン際では早めの判断を。
MF:角度づくりとスイッチのターン
中盤は攻守のつなぎ役。インサイドカットでパス角度を増やし、必要なら一歩後ろに運んで時間を作る。
FW:背負いからの一撃ターンで決定機を作る
相手の重心が来た瞬間のアウトサイドカットやクライフターンが決定的。最初の一歩の爆発力が勝負。
GK:安全な方向転換と配球の判断
プレッシャー回避が最優先。足裏ターンで角度を作り、強弱をつけた配球でビルドアップを助ける。
体づくりとケガ予防
足首・膝・股関節を守る可動域ドリル
- 足首ドーシフレクション(壁に膝をつける動き)左右10回。
- 股関節90/90回旋各10回。
- 股関節内外旋の軽いモビリティ。
ハムストリングスと臀筋の強化で減速を安定
- ヒップリフト20回×2、ノルディックの軽いバリエーション。
- スプリットスクワット10回×2で片脚の安定性を向上。
片足着地と方向転換の衝撃対策
30~50cmの軽いジャンプから片足着地→2歩で方向転換。膝が内側に入らないように注意。
シューズ選びとピッチコンディションの見極め
- 土:スタッドは多め/短めで引っかかりすぎを防ぐ。
- 人工芝:摩擦が高いので、膝と足首のひねりに注意。
- 濡れたピッチ:タッチを小さくし、減速を早めに。
上達を可視化するチェックリスト
KPI設定(成功率・所要時間・触球数)
- 成功率:1分間で指定ターンを何回ミスなく行えるか。
- 所要時間:背負い受け→前向きまでの秒数。
- 触球数:前向き化に必要なタッチ数(理想は1~2)。
自主撮影の見方(角度・タイミング・目線)
- 角度:正面と真横の2視点で撮影。
- タイミング:減速のタイミングが早すぎ/遅すぎになっていないか。
- 目線:ボールばかり見ていないか、首振りの回数を数える。
1週間トレーニング計画の例
- 月:可動域+基本ターン(20分)
- 火:1人ドリル+壁当て(25分)
- 水:休養/軽いモビリティ(10分)
- 木:1v1制約ゲーム(チーム練)
- 金:動画チェック+修正ポイント反復(20分)
- 土:試合形式(ターンの回数と成功率を記録)
- 日:リカバリー(ストレッチとフォーム確認)
親・指導者のサポート方法
声かけのコツ(結果より選択と姿勢を評価)
「抜けた/抜けない」より、「いつ・どのターンを選んだか」「前向きになる姿勢があったか」を褒めると、判断力が伸びます。
環境づくり(スペース・道具・時間の確保)
- コーン2個、マーカー数枚、壁当てできる場所があれば十分。
- 毎日10~15分の短い習慣化が効果的。
安全面の見守りポイントと負荷管理
- 成長期の膝・かかと痛は無理をしない(オスグッド等の配慮)。
- 痛みが出る方向転換は即中止し、フォーム確認へ切り替え。
よくある質問(Q&A)
どのターンから覚えるべき?
まずは「ハーフターン(受けながら前を向く)」と「インサイドカット」。次に「足裏ターン」と「アウトサイドカット」、最後に「クライフターン」の順が取り組みやすいです。
体が小さい/大きい場合のコツは?
小さい:重心が低い利点を活かし、タッチを細かく。大きい:減速を早めにして慣性をコントロール。どちらも「最初の二歩」を速く。
左利き/右利きで何が変わる?
得意足でのターンは速いが読まれやすい。苦手足でも基本ターンを練習し、どちらでも同じ質でできると相手は的を絞れません。
人工芝と土では何を調整する?
人工芝:引っかかりが強いので膝のねじれ注意、タッチを小さめに。土:滑るのでタッチはやや強め、減速を長めに。
相手に読まれた時はどうする?
同じフォームから別の方向へ。たとえばクライフの見せからアウトサイドで縦へ。リズム変化(速→遅→速)も有効です。
用語ミニ辞典
ターン/ハーフターン/オープンボディ
ターン:ボールをコントロールしながら方向を変える動き。ハーフターン:ボールを受ける瞬間、半身で自然に前を向く。オープンボディ:どちらにも動けるよう半身で構えること。
スキャン(首ふり)/認知/決断/実行
スキャン:首を振って情報を集める。認知→決断→実行はプレーの3段階。ターンは認知の質で成否が変わる。
軸足/重心/ステップ/タッチ幅
軸足:体重を乗せる足。重心:体のバランスの中心。ステップ:足運び。タッチ幅:ボールを運ぶ距離のこと。
まとめ:ターンは「準備」と「最初の二歩」で決まる
ターンは特別な人の技ではありません。受ける前のスキャンで準備し、減速→方向転換→再加速のリズムを守る。基本の5つ(インサイド/アウトサイド/ドラッグバック/足裏/クライフ)を状況に合わせて使い分ける。ミスは原因を分解すれば必ず直ります。今日の練習に「ターンの回数」「前向きまでの秒数」を1つだけ記録してみてください。数字が伸びるほど、試合での余裕が増えるはずです。明日のプレーを変えるのは、今の一歩です。
