サッカーの魅力の一つは、相手の予想を裏切るクリエイティブなプレーです。その中でも「リバースパス」は、相手を一瞬で置き去りにできる高度な技術としてプロ・アマ問わず注目されています。前進しながらも進行方向と逆へパスを通し、相手ディフェンダーの意識の“死角”を突く――この一手が決まった時の快感は、一度味わうとやみつきになるでしょう。しかし、リバースパスは決して簡単に使いこなせる技術ではありません。この記事では、リバースパスの基本から練習法、そして実戦で活躍させるためのコツまで、体系的かつ分かりやすく解説していきます。高校生以上のサッカー経験者はもちろん、お子様のスキルアップに関心のある親御さんにも役立つ内容です。ぜひ参考にしてください。
目次
リバースパスとは? 基本概念とサッカーにおける役割
リバースパスの定義と特徴
「リバースパス」とは、プレーヤーが自分の進行方向とは反対側にボールを出すパスのことを指します。普通、ボールを持って前進する時には体ごとそちらへ向かいますが、リバースパスは体の向きや進行方向と反対に、急にボールを戻す、あるいはサイドへ流すイメージです。特に相手ディフェンダーが自分の進行方向を強く警戒して圧力をかけている時、意表を突いて予想外のスペースへボールを届ける手段として効果を発揮します。
例えば、ゴール方向へ突進してるドリブラーが急に後方や斜め後ろへパスを通す場面や、味方DFから来たボールを体の向きを変えずに逆サイドへ送る――こうしたプレーがリバースパスです。最大の特徴は、相手の“逆を突く”こと。これにより、局面を一気に変えるスイッチやチャンスメイクが可能になります。
リバースパスの歴史とプロサッカーでの活用事例
リバースパスという概念自体は、サッカー戦術の進化とともに徐々に注目されるようになりました。特に90年代以降、パスサッカーやポゼッション志向の高まりとともに、狭いスペースや高いプレッシャー下での駆け引きとして重宝されています。
プロの試合では、バルセロナやマンチェスター・シティ、レアル・マドリードといった名門チームがリバースパスを意図的に使い、守備ブロックを一瞬で崩しています。たとえば、イニエスタが相手のプレスを背負いつつ足元でこねて進行し、急に逆のサイドへスルーパスを出したシーン。また、エジルが左サイドでボールを持ち、相手DFが詰めてきた瞬間、右足アウトサイドで逆サイドへ“ノールック”に近いリバースパスを決めたことも世界中で話題になりました。
日本でも、技術のあるMFやSB(サイドバック)がリバースパスを交えて攻撃の起点とする場面は年々増えています。
リバースパスが有効なシチュエーション
リバースパスが特に効果を発揮するのは、相手DFが自分の進行方向に全神経を集中させている時です。例えば突進中のドリブラーに対し、DFや中盤の選手が前へのパスや自分の進行方向を封じに来た時、リバースパスを使えば一気にフリーの味方を活かせます。
また、ゴール前の混戦やサイドでボールを持っている場合でも、クロスや縦パスばかりを選ぶと読まれてしまいます。こうした時、意外性のあるリバースパスが相手の守備ブロックを崩す起点になります。
特に、
- 相手DFが密集して縦方向を意識している時
- 横または後方にフリーな味方が走り込んでいる時
- 攻撃の流れを一度“緩め”て再加速したい時
に、リバースパスは絶大な効果を発揮します。
なぜリバースパスは難しいのか? その理由と求められるスキル
身体の向きと視野の確保
リバースパスの最大の難しさは、「自分の体が向いていない方向」にボールを正確に通さなければならない点にあります。体の向きと異なる方向に蹴るには、正確なキック技術はもちろん、逆方向のスペースや味方を視野に入れ続ける必要があります。多くの選手は、視界と体の向きが揃った時に最もプレーしやすさを感じます。しかしリバースパスでは、首を振ったり、常に周囲を観察する習慣が求められます。
また、体が前を向いているため、視界が限定される傾向があり、予測や状況把握の力がよりシビアに問われます。
相手ディフェンダーとの駆け引き
リバースパスを通したい時、当然相手DFもパスコースを潰そうと寄せてきます。特に、自分の進行方向を予測し、それを封じる動きをしてくるため、“あえて逆を突く”発想と勇気が必要です。
さらに、リバースパスは“ノールックパス”のように一瞬隙を突いて使う場面も多く、フェイクやボディバランスといった駆け引き技術も必須です。相手を騙す余裕を持つためには、相応の基礎スキルと状況判断力も必要です。
パススピードと精度の重要性
リバースパスは、一瞬で相手ディフェンス網を切り裂く可能性を秘めていますが、その分ミスをすればカウンターに繋がったり、相手ボールになりやすいというリスクもあります。
確実に味方へ届けきる「パスの精度」と、相手DFに狙われない「適切なパススピード」はリバースパス成功の要です。特に守備意識の高い試合や、中盤での攻防では、数十センチの狂いがピンチやチャンスに直結するため、神経を使いたいポイントです。
リバースパス成功のための技術的ポイント
基本姿勢とボールの持ち方
リバースパスを出す時は“オープンな姿勢”を心がけます。股関節・腰回りを柔らかく使い、グッと腰を落として重心を低めに保ちます。ボールは自分の「すぐ蹴れる位置」、つまり足元よりやや前・中央線上に置き、様々な方向へ蹴り分けられるように用意しましょう。
また、進行方向を圧倒的に意識させる仕掛け(例えばドリブルや体の揺さぶり)を入れておくと、DFの重心を前・横方向へ誘導しやすくなります。
インサイド・アウトサイドの使い分け
リバースパスには大きく分けて2つの蹴り方があります。
- インサイドキック: 足の内側を使い、膝下の振りで正確に狙う。比較的安定しているが、読まれやすい。
- アウトサイドキック: 足の外側を使い、体の向きごと相手を騙しやすい。フェイント動作やノールックパスと組み合わせやすいが、慣れないうちは精度が落ちやすい。
使い分けのポイントは、
- 遠距離ならインサイドで正確さ重視
- 中・短距離やサイドチェンジ、意表を突く場面ではアウトサイドやヒールキックも選択肢に
です。状況によって“蹴り方の引き出し”を増やしましょう。
視線と体のフェイク技術
リバースパスを使う上で重要なのが、「いかに相手DFの意識を自分の進行方向に釘付けにできるか」。この時、視線と体の使い方に工夫が必要です。
例えば、あえてしっかり前(ゴール方向やサイドライン側)に顔と視線を送り、「今からここに出しますよ」と思わせておきながら、実際は逆方向にパスする。肩や腰の入れ方、首の振り方も変化を付けることで、DFを誘導できます。
相手をほんの一瞬だけでも“止まらせる”ことができれば、その隙にリバースパスを通すことができます。フェイクに自信が無い時は、「大きく蹴り足を振る」ことを意識すると良いでしょう。
正確な方向性を出す足の振り方
リバースパスの際に特に大切なのが“軸足の位置”と“蹴り足の振り抜き”です。
- 軸足: ボールのやや後方か横にしっかりセットし、体のバランスを崩さないよう安定させます。特に体が前を向いている時は、しっかり開いて膝を柔軟に使いましょう。
- 蹴り足: 足首をロックし、インサイドなら相手を欺くように流す・押し出すようなイメージ。アウトサイドでは鋭くスナップを効かせて、意表を突く鋭いボールを放つと効果的です。
蹴る瞬間に急に力を抜いたり足で「パチン」と弾くと、パススピードや精度が落ちやすいので注意しましょう。
リバースパスを成功させるための考え方と判断力
プレー前、プレー中の情報収集術
リバースパスは、ただ技術が上手いだけで通せるわけではありません。“逆方向”のスペースや味方の状況を、プレー前・プレー中にいかに正確に把握するかがカギを握ります。
常日頃から「首を振って情報を集める」癖をつけておきましょう。特にボールを受ける前に、後方・横方向を数回チェックし、誰がどこにいるのか、相手DFと味方の立ち位置、スペースの有無をイメージしておくことが理想です。
また、プレー中にも一瞬のスキを見つけたら即決断できるよう、視野を広げましょう。
味方とイメージを共有するためのコミュニケーション
どんなに上手いリバースパスでも、受け手の味方が予測していないとミスパスやカウンターの危険性が高まります。パス前には、声かけ(「逆いるよ!」、「サポート!」など)やジェスチャー(指差しや目配せ)でしっかり意図を伝えましょう。
また、「自分がリバースパスを狙っている」というクセやタイミングを、日頃の練習から味方と共有しておくのも効果的です。連携の精度を高めておくと、試合本番でもスムーズに意思疎通できます。
リバースパスを選択するタイミングの見極め
リバースパスばかりを多用していると、逆に相手チームに「この選手はすぐ逆に出す」と読まれてしまいます。リバースパスはあくまで“武器”の一つ。使いどころを絞ることで、その“意外性”と“破壊力”が何倍にもなります。
効果的なのは、相手DFが進行方向へのケアに集中し始めたタイミング、もしくは味方FWが逆方向へ抜け出そうとしている瞬間です。迷ったら、まず失わない判断を優先し、徐々に「ここぞ」の場面で使うクセをつけていきましょう。
実践練習メニュー:一人・複数でできるリバースパストレーニング
一人でできる基礎トレーニング
まずは壁(リバウンドボードやネット)を使い、インサイド・アウトサイドで逆方向にパスを当てる練習が基本です。
- 自分の進行方向を意識しながら、体を正面に向けたまま壁に向かって斜め後ろにパスを蹴る
- アウトサイドでノールック気味に壁打ちし、精度を高める
- スタート前に左右後方を首でチェックし、「誰かに出すイメージ」を持つ
この練習で、方向性・スピードのコントロール力が上がります。リバースパスで壁から返ってきたボールをワンタッチコントロールして、また逆方向に返す、といった連続プレーも有効です。
味方と行う応用トレーニング
2人組や3~4名での「パス・アンド・ゴー」「トライアングル」形式でのリバースパス練習もおすすめです。
- 2人組でジグザグに動き、お互いに進行方向を変えながらリバースパスを出し合う
- 1人がボール保持者役、もう1人はDF役になり、DFの位置や重心を誘導しながら逆方向へパス
- 「ノールックでのリバースパス」に挑戦して周囲の味方のリアクションを試す
ゲーム形式では、「パスを受けた直後に必ず一度逆方向を探してみる」ルールで実践し、感覚を養うのも効果的です。
練習の時に意識したいポイント
単に蹴る・受ける練習ではなく、方向感覚と味方の動きにアンテナを張ることが重要です。
また、最初から難しい技術を狙わず、「確実なインサイドからスタート→徐々にアウトサイドやフェイクを加える」とステップを踏むと失敗しにくくなります。できれば練習後に「何回成功したか」「なぜ成功/失敗したか」を振り返ると、上達スピードがアップします。
試合でリバースパスを使いこなすためのメンタルと失敗の克服
失敗を恐れずチャレンジする思考法
リバースパスは、華麗なプレーが決まる反面、失敗のリスクもゼロではありません。しかし、「ミスしたらどうしよう」と考えるほど、プレーが消極的になり失敗が増えがちです。
失敗を恐れず、まずは「チャレンジする自分」を褒めてあげる気持ちで臨みましょう。たとえパスが通らなくても、味方への新たなイメージ共有や相手へのプレッシャーとして十分な価値があります。
「今日は3回チャレンジした!」という“数”で評価するのもメンタル向上のコツです。
プレッシャー下でリバースパスをおこなうコツ
緊張感の高い試合や、相手の寄せが早い場面では、どうしても身体がこわばって動きがぎこちなくなります。その中でリバースパスを通すためには、「自然体で大胆に蹴る・時にはシンプルに逃げる」柔軟さが必須です。
特に、フェイク動作をもっと前準備に使う(=一回追いつめられてから冷静に逆を突くなど)とプレッシャー下での成功率が高まります。あらかじめ「このタイミングならリバースパスを狙って大丈夫」という自信(前述の情報収集や練習の成果)を持つことで、一歩踏み出せるでしょう。
実戦を通じて技術を定着させるために
リバースパスの技術は、頭で理解しているだけではなかなか定着しません。やはり大切なのは、「練習から実戦で繰り返し試すこと」です。最初はトレーニングの中や練習試合などで回数を重ねましょう。
実戦の中では予想外の状況やDFの反応がありますが、その分学びも多くなります。大事なのは、「上手くいった時の感覚」と「なぜ失敗したか」の両方を意識して、次に生かすこと。自分なりの“成功パターン集”を少しずつ貯めていく意識で、継続的にチャレンジしてください。
まとめ:自分らしいリバースパスを極めるために
リバースパスは、決して天才選手やプロにしか使いこなせないプレーではありません。進行方向と逆へボールを通すことで、サッカーのゲームを一変させる魔法のような武器となり得ます。
その極意は、「基礎技術」「状況判断」「大胆なチャレンジ精神」の3つを繰り返し磨いていくこと。最初はうまくいかなくて当然です。無駄に思える失敗の一つ一つが、自分だけのクリエイティブな発想への架け橋となります。
あなたらしいリバースパスで、仲間とピッチを楽しみましょう。誰もが驚くような“大胆なのに合理的な一手”を、ぜひ自分の得意技にしてください!