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持久力を上げる インターバル走で試合90分を走り切る戦略

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持久力を上げる インターバル走で試合90分を走り切る戦略

持久力を上げる インターバル走で試合90分を走り切る戦略

最後の笛まで足が動くかどうかは、技術や戦術を引き出せるかの分かれ目。ここでは「インターバル走」を軸に、90分間の走力を現実的に底上げする方法をまとめます。難しい理屈は最小限に、今日から使えるメニューとテスト、週の組み立て、回復まで一気通貫で整理しました。嘘や誇張は避け、一般的に使われている考え方や現場での運用をベースにしています。

序章:持久力を上げる——インターバル走で90分を走り切る理由

サッカー特有の持久力(有酸素×高強度反復)とは

サッカーの「持久力」は、マラソンのように一定ペースを保つ力とは少し違います。ゆっくり走る、止まる、速く走る、また止まる——この高低差を何度も繰り返す力です。土台は有酸素能力(長く動ける力)。そこに、短い高強度のダッシュや切り返しを何度もこなせる反復力が乗ります。つまり「長く動き続けられる+素早く回復できる」がセットになっているのがサッカー特有の持久力です。

インターバル走がサッカーに適する科学的背景

インターバル走は、速く走る区間(ワーク)とゆるく走る・歩く区間(レスト)を交互に行います。これにより、心拍や呼吸を高いゾーンに何度も出し入れし、酸素を使う力(有酸素)と、素早く力を出す力(無酸素)の両方に刺激を与えられます。レストを完全に休みにしないため、回復しながらまた動くという、試合に近い状態を練習で再現できます。

この記事の使い方と成果を引き出す読み方

  • まずは「現状把握→ペース設定→週の配置」の順で読み進めて実行。
  • メニューは「目的別の型」から選び、2〜4週間ごとにテストで更新。
  • 疲労・睡眠・ケガの兆候は都度調整。無理に続けないことが結局の近道です。

試合で走り切る体づくりの前提

90分の試合で求められる運動様式を言語化する

  • 低〜中強度のラン・ジョグ・歩きが大部分を占める。
  • 短い高強度のスプリントや加速・減速が数十回以上入る。
  • プレー間の回復を素早くし、次のアクションに移る能力が重要。

ポジション別の走行・加減速の違いを理解する

  • サイドバック/ウイング:中〜長距離の高速走行とオーバーラップが多い。
  • センターミッド:方向転換と加減速の回数が多い。途切れない動き。
  • センターバック/フォワード:短い高強度のダッシュを狙いどころで繰り返す。

「疲れにくさ」ではなく「回復の早さ」を鍛える

試合では完全休息はありません。走って止まって、また走る——この「不完全回復」でどれだけパフォーマンスを保てるかが鍵です。レストをあえて短くするインターバル走は、この回復能力に直接効きます。

エネルギー供給の基礎:有酸素・無酸素とサッカーの関係

有酸素が土台、無酸素が切り返しの推進力

有酸素は長く動く力の基盤で、無酸素は瞬間的な加速やスプリントの原動力。両者は対立ではなく補完関係です。土台が大きいほど、高強度の反復も持ちやすくなります。

乳酸は敵か味方か:疲労の誤解を解く

乳酸(ラクタート)は疲労物質と誤解されがちですが、体にとってはエネルギー源の一つでもあります。溜まり過ぎが動作を乱しますが、適切なトレーニングで処理能力は上がります。目的に応じて「少しキツい」をコントロールするのがコツです。

回復局面(レスト)を鍛える意義

レスト中の心拍低下や呼吸の整い方はトレーニングで改善します。レストを完全休息にせず、ゆるいジョグで繋ぐことで、試合に近い回復力を伸ばせます。

インターバル走の設計図

目的別に分ける:有酸素強化・閾値・スピード持久・反復スプリント

  • 有酸素強化:中強度を長めに保つ。例)3〜6分の反復。
  • 閾値(しきい値):「安定して苦しい」を維持。例)6〜12分の反復。
  • スピード持久:高強度を短く何本も。例)30秒〜1分。
  • 反復スプリント(RSA):全力に近い短距離+短いレストをセットで。

強度指標の選び方:RPE・心拍・MAS・vVO2max

  • RPE(主観的運動強度):10段階で「キツさ」を自己評価。実戦的で便利。
  • 心拍:ゾーン管理に有効。遅れて反応する点は理解して使う。
  • MAS/vVO2max:最大有酸素速度。テストで数値化し、%でペース設定できる。

ワーク:レスト比とセット数の決め方

  • 有酸素強化:ワーク>レスト(例:3分走/1分ジョグ)×4〜6本。
  • スピード持久:ワーク=レスト or ややレスト長め(例:30秒/30〜45秒)。
  • RSA:ワーク短く(10〜30秒)+レスト短め、数本を1セットで複数セット。
  • 全体で15〜30分の「質的ボリューム」を目安に、徐々に増やす。

設定ペースの決め方:現状把握とテスト

Yo-Yo Intermittent Recoveryテスト(IR1/IR2)の活用

20m往復のビープテストに10秒のレストが入る形式。記録距離から試合向けの反復力を推測しやすく、チームでも個人でも実施しやすいのが長所です。IR1は基礎〜中級者、IR2は上級者向け。

MAS(最大有酸素速度)テストと速度設定の手順

  • 6分間全力走 or 1500〜2000mタイムトライアルを実施。
  • 6分で走った距離(m)÷360でm/s、×3.6でkm/hが目安のMAS。
  • インターバルはMASの%で設定(例:有酸素強化=90〜100%、VO2系=100〜110%)。

タイムトライアル(3km/5km)・Cooperテストの使い分け

  • 3km/5kmTT:継続ペースの把握に便利。閾値の参考に。
  • Cooper(12分走):総距離から推定VO2maxやMASの目安を得られる。
  • 屋外の風や路面の影響を受けるため、同条件で継続測定すると精度が上がります。

代表的なインターバル走メニュー集

30-30(オンオフ)で鍛える高強度有酸素

30秒速め(90〜105%MAS)+30秒ゆるジョグを10〜20本。心拍が上下しつつ高止まりするため、効率よく有酸素上限を刺激できます。

4×4分インターバルで上限を押し上げる

4分(RPE7〜8/心拍高め)+3分ゆるジョグを4本。各本の後半で息が弾む程度。平均で高い強度を保ちやすい定番です。

10-20-30法:疲労を溜め過ぎないスピード持久

ゆっくり10秒→中速20秒→速め30秒を1分セットで5回、間に2分レスト。テンポよくスピード持久を積み上げられます。

反復スプリントトレーニング(RSA)で切り返し力を強化

20〜30m全力に近いスプリント×6〜10本(レスト20〜30秒)を2〜3セット。セット間は3〜4分休む。フォームの乱れが出たら打ち切りが安全です。

サッカー現場で使えるフィールド型インターバル

シャトル走(折り返し)で加減速と方向転換を統合

10m/20m/30mの折り返しを組み合わせて、20〜40秒のワークを作る。加減速を盛り込み、ゲーム動作に近づけます。

ピッチを使ったコーナーtoコーナー/ボックス走

コーナーからコーナーを速め、タッチラインはゆるジョグで戻るなど、ピッチ形状を生かしたオンオフ。視覚的で実践的です。

ボールを使う小規模ゲームでのインターバル化(ルール設計)

  • 3対3+フリーマン、制限時間短め(45〜60秒)+レスト同等。
  • タッチ制限や得点後の即再開で強度を調整。
  • 心拍が上がり過ぎる場合は人数を増やすかコート拡大で調整。

週次プランニング:試合週に合わせたマイクロサイクル

MD-4〜MD+1の配置と強度の波(ハイ・ロー)

  • MD-4:VO2/スピード持久(高強度・短時間)。
  • MD-3:技術・戦術中心+有酸素ベース(中強度)。
  • MD-2:閾値〜短い刺激を軽く(量は控えめ)。
  • MD-1:テンポ確認、流し、セットプレー。強度も量も軽く。
  • MD+1:軽いリカバリー(出場時間に応じて調整)。

技術・筋力トレと干渉しない順序設計

高強度インターバルと下肢の高重量筋トレは同日にまとめ、翌日は回復重視にすると干渉を減らせます。細かい技術練習は疲労の少ない日に。

連戦時の最小限刺激(ミニマム・エフェクティブ・ドーズ)

30-30を8〜10本など短時間で心肺を刺激し、疲労を残さない量に抑えます。質を落とさず量を絞るのがコツです。

シーズンを通したピリオダイゼーション

オフ期・プレシーズン・インシーズンの狙いの違い

  • オフ期:有酸素土台と基礎筋力。量を確保。
  • プレシーズン:VO2/閾値/スプリントのバランス調整。
  • インシーズン:維持と微増。試合に合わせた微調整が主。

漸進性・バリエーション・デロードの三本柱

同じ刺激は慣れます。2〜4週で少しずつ強度・本数を上げ、4週目にボリュームを落とすなど波を作ると伸びが続きやすいです。

停滞打破:ボリュームか強度か、レストか

進歩が止まったら、(1)本数を増やす、(2)ペースを少し上げる、(3)休む——のいずれか。体調に合わせて一つだけ変えるのが安全です。

具体メニュー:目的別インターバル設計テンプレート

有酸素基盤強化:長めのワーク×短めのレスト

テンプレ1

  • 3分(90〜95%MAS)/1分ジョグ ×5〜6本
  • RPE6〜7。最後までフォームを保てる範囲で。

テンプレ2

  • 6分(RPE6)/2分ジョグ ×3〜4本
  • 会話が少し途切れる程度のきつさ。

閾値向上:安定して苦しいを保つ設計

テンプレ1

  • 8分(RPE7〜8)/2分ジョグ ×3本
  • 心拍は高めだが制御可能。後半も落ちにくい。

テンプレ2

  • 12分(やや速め)/3分ジョグ ×2本
  • 総時間での質を重視。無理なら10分に短縮。

スピード持久:高強度短時間を反復する

テンプレ1

  • 45秒速め/45秒ジョグ ×8〜12本
  • 後半もスピードが大きく落ちない設定で。

テンプレ2

  • 30-30 ×12〜20本(前半は抑えめ、後半に近づける)

RSA:スプリントと不完全回復の組み合わせ

テンプレ1

  • 25m全力に近いスプリント ×8本(レスト25秒)×2セット
  • セット間3〜4分休息。フォームが崩れたら終了。

テンプレ2(シャトル型)

  • 15m+15m折り返し ×6〜10本(レスト20〜30秒)×2セット

フォームと呼吸:効率よく走る技術

サッカーの動きに適したランニングフォームの要点

  • 目線は遠く、上体はやや前傾で固め過ぎない。
  • 肘は軽く曲げ、後ろへ引く意識で腕振り。
  • 接地は体の真下寄り。ブレーキにならない位置で。

呼吸パターンとリズムでペースを守る

「吸う2歩+吐く2歩」など一定リズムを決めると強度が安定。苦しくなったら吐く時間を少し長くしてリセットします。

コーディネーションとドリルで崩れを防ぐ

  • スキップ、ハイニ―、バットキックを各20m×2〜3本。
  • 流し(60〜80m)を2〜4本。神経を起こし、ケガ予防にも。

回復と栄養:疲労管理が持久力を伸ばす

睡眠・ストレス管理が最優先の理由

睡眠は回復の土台。寝不足はパフォーマンス低下やケガのリスクと関連します。まずは起床・就寝時刻の安定化から。

糖質戦略と鉄状態への注意(食事とチェックの考え方)

  • インターバル前後は炭水化物をしっかり。前:バナナ+パン/おにぎり、後:主食+たんぱく質。
  • 息切れや疲れやすさが続く場合、鉄不足の可能性に注意。自己判断せず必要なら医療機関で確認を。

水分・電解質・暑熱対策の基本

  • 体重の2%以上の脱水はパフォーマンス低下に繋がりやすい。
  • トレーニング前後の体重で汗量を把握。長時間や高温時は電解質も補給。

ウォームアップとクールダウン

インターバル前の段階的ウォームアップ

  • 5〜10分のジョグ→動的ストレッチ→ドリル→流し2〜3本。
  • 徐々に心拍を上げ、本メニューの1本目から動ける状態へ。

終わった直後のクールダウンと翌日の回復

  • 5〜10分のゆるジョグ→ストレッチ。呼吸を整える。
  • 翌日は軽い有酸素やストレッチで血流を促すと回復が進みます。

可動性・腱組織への配慮(ふくらはぎ・ハムのケア)

カーフやハムの張りはケガの前兆になりやすい部位。ふくらはぎのエキセントリック(かかと落とし)やハムのヒップヒンジ系を習慣化しましょう。

ケガ予防とリスク管理

急激なボリューム増加を避ける目安

週のランボリュームは前週比+10〜20%以内を目安に。セット数や本数をいきなり増やさないこと。

痛みが出たときの中断基準と相談先

  • 鋭い痛み、片足だけの違和感が増す、走法が崩れる→中断。
  • 続く場合はトレーナーや医療機関に相談。早めが結果的に復帰を早めます。

シューズ・路面・環境による負担の違い

  • 固い路面は衝撃大、芝は関節に優しいがスリップに注意。
  • 薄底は反応が良いが疲労時は厚めを使い分けるなど調整を。

レベル・年齢・コンディション別の調整

基礎体力段階での漸進(初心者〜中級)

  • 本数を少なく、レスト長めから。週2回を安定させてから強度アップ。
  • まずは「止めずに最後まで」完遂を優先。

高校生・成人の留意点(回復と学業・仕事の両立)

睡眠が削られる日は強度を落とすか時間を短縮。週の山を1〜2日に絞ると両立しやすいです。

疲労度・睡眠状態に応じた当日修正

  • 睡眠不足/体温が低い/重だるい→本数2割減、ペース1段階下げ。
  • 逆に調子が良い日は「質を少し上げ、量は据え置き」が安全。

環境への適応と現実解

暑さ・寒さ・標高での調整ポイント

  • 暑熱:開始ペースを控えめに、レスト延長、給水を増やす。
  • 寒冷:ウォームアップ長め、最初の2本は慎重に。
  • 標高:ペースは落ちやすいのでRPE中心で管理。

屋外・トラック・トレッドミルの違いと使い分け

トレッドミルは設定が正確で安全。屋外は方向転換や風で実戦的。両方使い分けると良いです。

天然芝・人工芝・固い路面の負担管理

人工芝はグリップが高く筋腱に負担がかかる場合あり。人工芝の日は本数を少し抑えるなど調整しましょう。

モニタリング:データと体感で賢く管理

RPE・心拍・GPS・距離ログの基本

  • セッションRPE×運動時間=当日の負荷指標として便利。
  • 心拍は強度ゾーン確認に。GPSや距離はボリューム管理に。

体重変動・尿色で見る水分状態

トレ前後の体重差と尿色は簡易で有用。1%以上減っていれば水分補給を見直しましょう。

週当たり負荷の波(週内/週間の変動を可視化)

高日と低日を作る、3週上げて1週落とす。シンプルな波でも効果は十分です。

12週間の導入モデル(骨子)

基礎期(週1〜4):有酸素土台と技術の両立

  • 週2回:有酸素インターバル(3分/1分×4〜6)+技術。
  • 週1回:軽いRSAまたは30-30少本数。

発展期(週5〜8):閾値とスピード持久の二本立て

  • 週1回:8分×3の閾値系。
  • 週1回:30-30×14〜18本、または4×4分。
  • 状況に応じてRSAを2週に1回挿入。

試合期(週9〜12):維持と鋭さを両立する微調整

  • 試合間隔に合わせて30-30短時間や4×3分で刺激を維持。
  • 疲労が強い週はボリュームを半減し、質を保つ。

試合当週の微調整と当日の運用

MD-2〜MD-1の刺激とボリューム管理

MD-2に短い刺激(流しや短いインターバル)。MD-1は軽く汗をかく程度で止めます。眠気が残るほどの負荷は避ける。

試合前の補食・水分とアップ設計

  • キックオフ3〜4時間前に主食中心、1時間前に軽い補食。
  • アップは心拍を段階的に上げ、試合で使う動きを確認。

試合後のクールダウンと48時間の回復計画

  • 10〜15分のジョグとストレッチ、糖質とたんぱく質の補給。
  • 翌日は軽い有酸素とモビリティで血流を促進。

ポジション別ケーススタディ

サイドバック:オーバーラップが多い選手の設計

30-30の本数をやや多めにし、コーナーtoコーナーのフィールド型を週1で追加。ロングランの維持と切り返しの両立を狙う。

センターミッドフィルダー:高頻度の反復で耐える

シャトル走や8分×3の閾値で「途切れない中強度」を強化。RSAは短い本数で素早い回復を鍛える。

フォワード/センターバック:短時間高強度の反復最適化

RSA中心(短距離×短レスト)+30-30少本数で心肺を刺激。初速と再加速の質を落とさないことを最優先。

よくある誤解と失敗を避けるチェックリスト

「毎回限界まで追い込む」必要はない

限界トレはリスクが高く継続が難しい。7〜8割の強度を積み重ねる方が結果が出やすいです。

レストを軽視しない(短すぎ・長すぎの目安)

短すぎると質が崩れ、長すぎると刺激が薄れる。ワーク同等〜7割程度を基本に、目的で調整。

テストと設定ペースの更新をサボらない

2〜4週ごとに簡易テストで見直し。伸びているのにペース据え置きは機会損失、逆に高すぎる設定はケガのもと。

まとめ:今日から始める第一歩

最小構成メニューと実行手順

  • ウォームアップ(10分)→30-30×10〜12→クールダウン(10分)。
  • 2週間継続→6分走で距離を測り→MAS更新→本数またはペースを微調整。

1〜2週間で感じる変化と評価方法

  • 同じ本数で呼吸が整いやすくなる、後半の失速が減る。
  • RPEと心拍、完遂感をメモ。主観と客観の両方で成長を確認。

継続の仕組み化(時間割・記録・フィードバック)

  • 固定曜日・固定時間にスケジューリング。
  • ランログ(距離・本数・RPE)を残し、2週ごとに見直す。
  • 疲れが強い日は量を2割カットの「逃げ道」を用意。

インターバル走は、少ない時間で試合に直結する心肺と回復力を磨ける実戦的な方法です。大事なのは、正しいペース設定と、無理のない継続。今日の一歩を積み重ねて、90分のラストまで足が止まらない自分を作っていきましょう。

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