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筋トレメニュー中高生が安全に伸びる実践法

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サッカーで差がつくのは、技術と同じくらい「安全に積み上げる力」です。この記事では、成長期の体に過度な負担をかけず、着実に競技力を上げるための筋トレの実践法をまとめました。現場で使えるメニュー、週単位の進め方、ケガを防ぐコツまでセットで解説します。特別な施設がなくてもOK。自宅・学校・グラウンドで実行できます。

筋トレメニュー中高生が安全に伸びる実践法の全体像

この記事で得られること

・成長期でも安全にできる筋トレの設計図が手に入る
・自重からダンベル・バンドまでの段階的な進め方がわかる
・サッカーに直結する動作(加速・減速・方向転換)を強くするコツがわかる
・回復、栄養、睡眠を含めた「トータルで伸びる」仕組みを作れる

安全と効果を両立する考え方

重さより「技術と質」を優先します。低〜中強度で正確に反復し、痛みゼロを守る。小さく始めて、少しずつ前進する。これが最短距離です。

競技力と健康の両立というゴール

スプリント、キレのある方向転換、当たり負けしない体幹。これらを手に入れつつ、ケガの確率を下げる。試合に「継続して出続けられる」状態が最強です。

成長期のカラダと筋トレの関係を正しく理解する

骨端線と負荷の扱い方

成長期は骨の端に「骨端線(成長板)」があります。フォームが崩れたまま高重量を扱うと、ここにストレスが集中しやすくケガの原因に。逆に、適切なフォーム・強度・回数で行えば、筋力・骨密度・運動神経の発達に好影響が期待できます。

身長スパート期(PHV)の見極め方

身長の伸びが一時的に最大になる時期がPHV。月ごとの身長記録をつけ、数カ月連続で大きく伸びる(例:月1cm以上が続く)ならスパート中の可能性が高め。この期間は疲労が抜けにくいことも多いので、強度を控えめにし、フォーム練習や可動性づくりに比重を置きます。

神経系の適応を優先する理由

成長期は「動きの巧さ」が伸びるチャンス。重さで無理をするより、正確で速い動きを反復するほうがゲームに直結しやすい。まず神経系(タイミング・協調性)を鍛え、その上に筋力を少しずつ載せます。

安全に伸びるための5原則

フォーム最優先(技術が重量に勝る)

膝・腰・肩に負担が集中しないポジションを徹底。毎回の最初の1〜2セットは「フォーム確認セット」に使いましょう。

低〜中強度・高品質反復の徹底

目安は8〜15回できる重さ。2〜3回余力を残す(RIR2–3)か、RPE6–7程度。反復速度はコントロール重視です。

漸進性と最小有効量の設計

最初は各種目2セットから。できたら回数を+1、次にセットを+1、最後に負荷を少しだけ上げる。小さな前進を積み重ねます。

回復ファースト(睡眠・栄養・休息)

睡眠不足とエネルギー不足はケガの最大要因。練習で削る前に、まず回復を確保します。

痛みゼロルールと中止基準の明確化

動作中の鋭い痛み、しびれ、違和感の増悪は即中止。翌日痛みが残る場合は種目・量を見直します。

事前チェックと準備

既往歴・痛みのスクリーニング

過去の捻挫、膝痛、腰痛を確認。痛みがある日は下肢の高負荷を避け、代替の体幹・上半身中心に切り替えます。

可動性・安定性の簡易チェック

・足首:壁に向かって膝タッチ(つま先10cmで膝が壁に届けばOK目安)
・股関節:片脚立ちで10秒静止(骨盤が大きく揺れないか)
・肩:手のひら外向きで頭上まで挙上できるか

主観的運動強度(RPE)の使い方

10段階でキツさを自己評価。メインはRPE6–7、フォーム練習はRPE4–5、スピード重視は疲労が溜まらないRPE5–6で行います。

ウォームアップは“動ける体”の練習

5分でできる一般ウォームアップ

軽いジョグ1分→ジャンプロープorその場スキップ1分→ダイナミックストレッチ(股関節回し、ハム・もも前、ふくらはぎ)→呼吸3回(長めの息を吐く)。

サッカー向けの動的ドリル

Aスキップ、アンカリング(足首は硬く、接地短く)、ラテラルシャッフル、前後ランジ。各20〜30mまたは10回。

技術リハーサル(フォーム練習)の組み込み

その日に行う種目の軽い版を10回×1セット。スクワット、ヒンジ、プッシュ、プル、ブレースを1周。

技術の基礎:5つの主要動作パターン

スクワット(しゃがむ)

足圧は母指球・小指球・かかとの三点。膝はつま先と同じ向き。胸は張りすぎず、背骨は中立。

ヒンジ(股関節主導の前屈・デッドリフト系)

「お尻を後ろへ」。背中は丸めず、肋骨と骨盤を重ねるイメージ。ハムとお尻で受け止めます。

プッシュ(押す:縦・横)

腕立てやオーバーヘッド系。肩甲骨を軽く下げて後ろにスライド。首は長く、あごは引く。

プル(引く:縦・横)

ローイング、懸垂系。肘で引き、肩をすくめない。胸が先、腕は後。

キャリー/ブレース(運ぶ・体幹の安定)

ファーマーズキャリー、プランク、デッドバグ。体幹で「動かない」を作るとプレーの安定感が増します。

中高生向け安全メニュー設計(自重→ダンベル→バンド)

週2回の全身メニュー(自重版)

・スクワット 10–15回×2–3(RPE6)
・ヒップヒンジ(グッドモーニング自重)10–12回×2–3
・腕立て(膝つき可)8–12回×2–3
・テーブルトップロウ(机にタオルで懸垂代用)8–12回×2–3
・サイドプランク 20–30秒×2/側
・カーフレイズ 12–15回×2

週3回の全身メニュー(ダンベル・バンド版)

・ゴブレットスクワット 8–12回×3(RPE6–7)
・ダンベルRDL 8–12回×3
・ダンベルベンチプレスorフロアプレス 8–12回×3
・ワンハンドロー 8–12回×3/側
・パロフプレス(バンド)10–12回×2/側
・フェイスプル(バンド)12–15回×2

自宅・学校どちらでもできる代替案

水入りペットボトルでダンベル代用、バンドはドアアンカーで固定。懸垂代わりにイス2脚でテーブルロウ風。環境に合わせて選びます。

8週間の漸進プラン

1–2週:フォーム固めと容量構築

各種目2セット、RPE6、回数の上限は余力2–3回残し。動画でフォーム確認できるとベター。

3–4週:軽負荷での漸進と速度意識

回数を+1ずつ、合計ボリュームを増やす。コンセントリック(持ち上げ)をやや速く、戻しはコントロール。

5–6週:中強度への移行と片脚強化

分割スクワットやステップアップを導入。セットは3、RPE7程度。NHE(ノルディックハム)を5–8回×2で追加。

7–8週:デロード・再評価・個別最適化

ボリュームを2/3に落としてフォーム精度を再確認。体力テストで弱点を特定し、次周期の重点を決めます。

サッカー選手のための重点強化ポイント

膝・足首の傷害予防(着地・片脚・方向転換)

ドロップランディング(20–30cmから着地、膝が内に入らない)×5、片脚スクワット浅め8回×2/側、ラテラルランジ10回×2。

ハムストリング・股関節の強化(加速・減速)

NHE 5–8回×2、ヒップスラスト10–12回×3。減速ドリル(5m全力→3mでスムーズに止まる)を3–5本。

コア・回旋耐性とコンタクト対策

パロフプレス、デッドバグ、コペンハーゲンプランク(内転筋)20–30秒×2/側。接触時の姿勢安定に効きます。

スプリントとアジリティの補強ドリル

アンカリング、Aスキップ、20m加速×4–6、5-5チェンジ(5m→切返し→5m)×4–6。疲労でフォームが崩れたら打ち切り。

学校行事・部活と両立する週間スケジュール

練習量が多い週の調整法

筋トレはセット数を1/2に。RPEを5–6へ。可動性と体幹中心に切替えます。

試合前後のメニュー変更ガイド

試合2日前:ボリューム軽め、スピードの感触出し。前日:筋トレは休み。試合翌日:軽いリカバリー(サイクリング、ストレッチ、プランク)。

期末テスト・成長痛への対応

時間がない週は「15分ショート」を2回でOK。成長痛が出るときはジャンプ・走る量を減らし、ヒンジ・上半身に置換します。

ケガを避けるためのコーチングキュー

スクワットの3点セット(足圧・膝軌道・背骨)

「足裏3点に均等」「膝はつま先と同じ向きで前にスライド」「背骨は長く中立」。

ヒンジの合図(ヒップバック・脊柱ニュートラル)

「お尻を壁へ」「みぞおちと骨盤を正面で向かい合わせ」。背中を反りすぎない。

プッシュ/プルの肩甲帯セットと頸部ポジション

「肩を下げてポケットに入れる」「首は長く、あごは軽く引く」。肩すくめ厳禁。

よくある誤解と失敗の回避

「筋トレで背は伸びない」は誤解

適切な指導のもと、正しいフォームと強度で行う筋トレは成長を止めるという証拠は確認されていません。むしろ骨密度や運動技能の向上が期待できます。危険なのは「誤ったフォームでの高負荷」です。

限界まで追い込む文化の副作用

毎回限界までやると回復が追いつかず、技術が乱れ、ケガが増えます。7割の余力で継続が結果的に最短です。

種目過多・新奇性依存の落とし穴

次々に新しい種目へ移るより、基本5動作を深掘り。フォーム精度と小さな漸進を優先しましょう。

栄養・睡眠・回復の基本

成長期のエネルギー・たんぱく質の目安

活動量に応じて十分なエネルギーを確保。体重1kgあたりたんぱく質は1.2–1.6g/日を目安に、3–4回に分けて摂取します。

トレ前後の補食と水分戦略

トレ前2–3時間に炭水化物中心の食事。直前はバナナなど消化の良い補食を。水分は2–3時間前に体重1kgあたり5–7mL、運動中は15–20分ごとにこまめに。

睡眠のゴールデンルールと昼寝の活用

中高生は8–10時間の就寝が目安。就寝前はスマホを控え、日中に20分以内の仮眠を上手に使いましょう。

家庭・指導者の関わり方

安全ルールと合図の共有

「痛みゼロ」「フォーム優先」「疲れたら中止」を共通言語に。合図は短く具体的に。

観察ポイントと声かけ例

膝が内側に入らないか、背中が反りすぎていないか。声かけは「いい角度!そのまま」など肯定形で。

医療機関に相談すべきサイン

夜間痛、腫れ・熱感、関節が引っかかる感覚、しびれ、強い腰痛、繰り返す捻挫。迷ったら早めに受診を。

効果測定と記録の付け方

シンプルな体力テスト(例:片脚バランス・プランク・5-0-5)

・片脚バランス:目を開けて30秒キープ
・プランク:60秒安定
・5-0-5チェンジ:方向転換のタイムを記録(同条件で比較)

トレーニングログのテンプレ要素

日付/睡眠時間/主観疲労(1–10)/種目・回数・RPE/痛みの有無/一言メモ。週ごとに見返します。

成長スパート期の比較で気をつける点

身長・体重の変化でタイムや回数が揺れます。短期の凹みに惑わされず、フォームと健康指標を優先。

具体的メニュー例(種目・回数レンジの指針)

初心者向け15分ショートプログラム

1周×2セット(休憩最小)
・ゴブレットスクワット or 自重 12回
・腕立て(膝つき可)10回
・ヒップヒンジ 12回
・ワンハンドバンドロウ 12回/側
・プランク 30秒

標準30–40分フルボディプログラム

・スクワット系 8–12回×3(RPE6–7)
・ヒンジ系 8–12回×3
・プッシュ 8–12回×3
・プル 8–12回×3
・体幹(パロフ、プランク)2–3セット
・仕上げにNHE 5–8回×2

オフ期の補強60分プログラム

上記に片脚種目(分割スクワット、ステップアップ)、キャリー(ファーマーズ)、ジャンプの技術練習(低回数・高品質)を追加。

よくある質問(FAQ)

ダンベルは何kgから始めるべき?

フォームが崩れずに8–12回できる最小の重さから。迷ったら2–4kgでテストし、RPE6–7に収まる重さを選びます。

筋トレで身長の伸びが止まるのでは?

適切なフォーム・強度・監督のもとでは、その心配は一般的に支持されていません。無理な高重量や雑なフォームがリスクです。

部活の筋トレとどう併用する?

同じ部位で高強度が重ならないよう調整。部活で下半身を強くやった日は自宅では体幹・上半身中心に。週合計のセット数で管理しましょう。

まとめと次の一歩

今日から始める3つのアクション

1) 身長と練習ログをつける。2) 週2回、基本5動作を各2セット。3) 痛みゼロと睡眠8時間以上を最優先。

安全に続けるためのチェックリスト

・フォーム動画を月1で見直す
・RPE6–7を守る(余力2–3回)
・週あたりのセット数を少しずつ増やす(または回数+1)
・痛み・違和感が出たら種目変更または中止
・試合週はボリュームを半分に

後書き

筋トレは「やるかやらないか」ではなく「どう積み上げるか」。成長期の体を守りながら、プレーの質を底上げするための道具です。小さな一歩の積み重ねが、シーズン終盤の爆発力になります。今日の1セットが、数カ月後の自信になります。安全第一で、着実にいきましょう。

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