目次
- 目標設定 SMARTの考え方でサッカー上達90日計画
- はじめに:90日で成果を出す「SMART目標」の力
- SMARTとは何か:サッカーに落とし込む5要素
- 現状把握:最初の60分でできるセルフ診断
- 90日計画の全体像:3フェーズ設計
- SMART目標の作り方:ステップバイステップ
- ポジション別SMART目標サンプル
- 週次・日次ルーティン設計:忙しくても続く仕組み
- ドリル集:測定可能なメニューと基準値
- フィジカル基盤とリカバリー:怪我を防ぎパフォーマンスを保つ
- データの取り方と振り返り:数字で上達を見える化
- 親子で取り組む場合のポイント
- よくあるつまずきと対処法
- 安全に練習するための注意事項
- 90日チェックリストと達成判定
- 参考リソースと用語ミニ解説
- まとめ:SMARTで積み上げる、90日後の自分へ
目標設定 SMARTの考え方でサッカー上達90日計画
やみくもに練習しても、成果は積み上がりにくい。上達を「狙って」起こすなら、目標設定が要になります。本記事では、SMARTの考え方を使って、90日で実感できる変化をつくるための具体的な手順とメニューをまとめました。キーワードは、具体性・計測・現実性・関連性・期限。シンプルな道具と記録だけで、再現可能な仕組みを組み立てていきましょう。
はじめに:90日で成果を出す「SMART目標」の力
90日は、身体が適応し、技術が安定し、試合で再現しやすくなるのに十分な長さです。とはいえ、ただ続けるだけでは伸びにくい。だからこそ「何を、どれくらい、いつまでに」達成するかを明確にするSMARTが有効です。SMARTは、練習の優先順位をはっきりさせ、進捗を数字で見える化し、迷わず修正できるフレームになります。
SMARTとは何か:サッカーに落とし込む5要素
Specific(具体的):何を、どの場面で、どの技術を
例:「右45度エリアからのインステップシュートの枠内率」「自陣ビルドアップ時、対面プレッシャー下での短距離パス成功率」など、プレー状況まで明確にします。「キックを上手くする」では漠然としすぎです。
Measurable(計測可能):数値・回数・割合で管理する
「枠内率70%」「10m×ゲートドリブルの平均タイム7.0秒」「Yo-YoテストIR1でレベル15.1」など、結果が“数”で残るものに。カウント方法(本数、時間、成功/失敗の判定)を先に決めておきます。
Achievable(達成可能):現在地と資源に基づく現実的な設定
今のデータ、使える時間、練習環境で実現できるラインを見積もります。例えば枠内率が50%なら、90日で+15〜20ポイントは現実的。+40ポイントは過剰です。達成可能な幅で設定しましょう。
Relevant(関連性):自分のポジションと役割に直結させる
FWなら「フィニッシュ」と「動き出し」、MFなら「スキャン(首振り)と前進パス」、DFなら「1対1対応とラインコントロール」、GKなら「コーチングとビルドアップ」。試合の役割から逆算して決めます。
Time-bound(期限):90日→月→週→日へブレイクダウン
90日のゴールを、30日ごとの中間目標、1週間のKPI(測定項目)、1日のタスクに落とします。毎週レビューし、翌週のタスクを微調整。期限は調整のためにも必要です。
現状把握:最初の60分でできるセルフ診断
技術チェック:キック・トラップ・ドリブルの精度測定
- シュート精度:ゴールを縦3×横3の9ゾーンに分け、左右各10本×計20本。枠内本数と狙いゾーン命中数を記録。
- パス精度:壁当て3m/5m/8m、各30本。ワンタッチ/ツータッチの成功数(狙った位置30cm枠内)。
- トラップ:胸・足で10mのロングフィードを受け、コーン直径1mサークル内に止められた回数/10本。
- ドリブル:5ゲート(幅1m、間隔3m)スラローム10m往復の平均タイム×3本。
フィジカル測定:スプリント・持久力・俊敏性・可動域
- スプリント:10m/20mのベストと平均(各3本)。
- 俊敏性:Tテスト(F型コーン)と505テスト(方向転換)。
- 持久力:Yo-Yo Intermittent Recovery Test Level 1(IR1)の到達レベル。
- 可動域:片脚スクワットの可動安定、ヒップヒンジ(股関節を曲げて前屈)の可動感、足首背屈(壁からつま先距離)を主観+動画で確認。
戦術理解:ポジショニング・視野・判断のセルフ評価
- スキャン頻度:味方からパスを受ける前の10秒間に首を振った回数(練習撮影で3回カウント)。
- ポジショニング:ビルドアップ時に味方3人の三角形が作れているかを静止画でチェック。
- 判断速度:受けてから最初の意思決定までの時間(動画のフレームで計測)。
メンタル状態:集中・セルフトーク・回復の自己観察
- 集中:練習開始〜終了の自己採点(10点満点)。
- セルフトーク:ミス後に発した言葉を記録(否定/修正/次に集中の3分類)。
- 回復:睡眠時間、起床時の主観疲労(10点)、筋肉痛の部位。
ベースライン記録テンプレートと記入例
【日付】2025/04/01【技術】シュート枠内率 12/20(60%)/ 右45度ゾーン命中 3/10【パス】壁当て5m ワンタッチ 22/30(73%)【ドリブル】ゲート10m往復 平均7.4秒(7.2/7.5/7.6)【スプリント】10m 1.86/1.88/1.90(平均1.88)【俊敏】505 2.54秒、Tテスト 10.8秒【持久】Yo-Yo IR1 レベル15.1【戦術】スキャン 7回/10秒(平均)、判断0.62秒【メンタル】集中7/10、セルフトーク=修正、睡眠7.5h【所感】右足インサイドの押し出し弱い。左足着地ブレる。
90日計画の全体像:3フェーズ設計
フェーズ1(Day1–30):基礎の精度×習慣化
狙い:技術のバラつきを減らし、測定と記録を習慣化。週4〜5回、1回30〜60分。
- 技術:壁パス、トラップ、ゲートドリブル、基本シュートフォーム。
- フィジカル:可動性/安定性→軽いスプリント基礎。
- 戦術/認知:スキャン回数の計測と増加。
- KPI例:枠内率+10ポイント、壁当て成功率+10ポイント、スキャン+2回/10秒。
フェーズ2(Day31–60):強みの伸長と弱点の是正
狙い:得意を伸ばしつつ、試合で足を引っ張る弱点を1〜2点修正。
- 技術:プレッシャー下のパス、ワンタッチ仕上げ、逆足の実戦化。
- フィジカル:俊敏性ドリル、反復スプリント、MAS走の導入。
- 戦術/認知:状況別の意思決定(前向き/背向き)。
- KPI例:10mスプリント-0.05秒、505-0.05秒、逆足パス成功率+15ポイント。
フェーズ3(Day61–90):試合で再現する落とし込み
狙い:ゲーム形式での再現性を上げ、KPIを試合データ/KSI(スキル過程)に接続。
- 技術:試合強度に近い連続フィニッシュ、トランジション下の判断。
- フィジカル:コンディショニング微調整、疲労管理。
- 戦術/認知:プレー前のスキャン→最初の選択の質を評価。
- KPI例:試合の枠内率、前進パス数、ボール奪取回数、スプリント回数。
SMART目標の作り方:ステップバイステップ
目的の明確化:なぜ上達したいのかを行動に変換
「スタメンを勝ち取る」→「ビルドアップで信頼される」→「5m〜10mのパス精度を30日で+10ポイント」。目的を行動に落とすと、練習が具体化します。
指標の設定:KPIとKSI(例:成功パス率、スプリント回数)
- KPI(結果指標):枠内率、成功パス率、スプリント回数、奪取数など。
- KSI(技能指標):スキャン回数、ファーストタッチの方向成功率、サポート角度の適切数など。
達成可能性の検証:現在地×リソース×時間で見積もる
週の確保時間、使える場所(屋内/屋外)、協力者の有無を整理し、30日ごとの到達ラインを設定。進みが早ければ上方修正、苦しければタスクを分解します。
関連性の確保:ポジション別の優先順位づけ
ポジションで最優先KPIを1〜2つに絞ります。欲張らず、確実に上げましょう。
期限設計:90日目標→月次→週次→日次タスク
- 90日:枠内率60%→75%。
- 30日:+7ポイント、60日:+12ポイント、90日:+15ポイント。
- 週次:シュートセッション2回×各60本、動画チェック1回。
- 日次:フォームドリル10分、ターゲットシュート30本、記録5分。
ポジション別SMART目標サンプル
フォワード:決定力・動き出し・プレス強度
- 90日目標:右45度エリアからのワンタッチシュート枠内率を58%→73%(計測:週2回、各40本)。
- 週次タスク:背後へのスプリント走×10本(15〜20m、RPE6〜7)、シュート連続30本×2セット。
- KSI:ラストステップのリズム一定化、ミート地点の再現(動画で足幅と支持足角度を確認)。
ミッドフィルダー:ビルドアップ・スキャン・運動量
- 90日目標:対人プレッシャー下5mパス成功率を70%→85%。スキャン頻度を10秒平均6→9回。
- 週次タスク:ワンタッチ/ツータッチの壁当て各30本×3セット、三方向スキャン→パスの連続ドリル10分。
- KPI:前進パス本数/試合、インターセプト数。
ディフェンダー:1v1対応・ラインコントロール・配球
- 90日目標:1v1での抜かれ率を30%→18%(練習内対人で記録)。ロングパス(斜め30m)の成功率を40%→60%。
- 週次タスク:後退→横移動→前進のフットワークドリル、ロングキック20本×2セット(着地点1.5m以内)。
- KSI:初動の距離と角度、相手の軸足観察→寄せタイミング。
ゴールキーパー:セービング・コーチング・ビルドアップ
- 90日目標:枠内シュートのセーブ率を練習で+10ポイント。ビルドアップのショートパス成功率を85%→92%。
- 週次タスク:コラプシング/ダイビングのフォーム10分、コーチング用キーワード練習5分、パス回し参加10分。
- KSI:準備姿勢の頻度、声のトリガー(「ターン」「マンオン」など)回数。
週次・日次ルーティン設計:忙しくても続く仕組み
週4〜6回の練習をどう配分するか(技術・戦術・フィジカル)
- 例A(週5):技術×2、戦術×1、フィジカル×1、ゲーム/試合×1。
- 例B(部活/クラブ有):オフ日を確保し、個人は30〜40分×2回に圧縮。
30〜60分でできる個人メニュー例(屋内/屋外)
- 屋内30分:モビリティ8分→壁当てインサイド/アウト各50本→スキャン→パス(壁の左右に番号付け、呼んだ番号へ)→クールダウン。
- 屋外45分:ゲートドリブル×5本→ターゲットシュート×60本→スプリント10m×6→505練習×4→クールダウン。
学校・仕事・部活・クラブとの両立と休息の確保
- 固定トリガーを設置(帰宅→10分後に開始)。
- 週1〜2回は完全休養か、関節に優しいアクティブリカバリー(散歩、軽いストレッチ)。
- 睡眠を最優先(目安:7〜9時間)。
ドリル集:測定可能なメニューと基準値
ボール技術:リフティング、ドリブルゲート、壁パス
- リフティング:左右交互100回を安定化。ミスまでの最大回数も記録。
- ゲートドリブル:10m往復×3本の平均。目標7.0秒切り→6.7秒へ。
- 壁パス:5mワンタッチ30本で25/30(83%)以上を目安に。
シュート精度:ゾーンターゲット、ワンタッチ仕上げ
- ゾーンターゲット:9ゾーンで狙いゾーン命中率30%→45%へ。
- ワンタッチ:左右各30本。フォームは支持足の位置と上体の向きを一定化。
俊敏性・スプリント:Tテスト、505、短距離反復
- Tテスト:10〜12秒台を目標に、週1で計測。
- 505テスト:方向転換のキレを測る。0.05〜0.10秒短縮を狙う。
- 反復短距離:10m×6〜10本、レストは1:6〜1:8。
持久力:Yo-Yoテスト、MAS走の導入
- Yo-Yo IR1:月1測定。前回比+0.5〜1.0レベルを目安。
- MAS走:最大有酸素速度の70〜90%でインターバル(例:15秒走/15秒レスト×10〜16本)。
認知・判断:スキャン頻度向上ドリルと数え方
- カウント方法:受ける10秒前の首振り回数を動画で確認。10秒で8〜10回を目安に増加。
- ドリル:背中に番号/色カード→コーチの提示を声で言い当て→即パス。1セット2分×3。
フィジカル基盤とリカバリー:怪我を防ぎパフォーマンスを保つ
可動性とウォームアップ:動的ストレッチと活性化
- 動的ストレッチ:レッグスイング、ヒップオープナー、世界一のストレッチなど5〜8分。
- 活性化:臀筋(モンスターバンドウォーク)、腸腰筋、足首のモビリティ。
筋力・パワー:自重と軽負荷での安全なプログレッション
- 下半身:スクワット、ランジ、カーフレイズ。8〜12回×2〜3セット。
- 体幹:プランク、サイドプランク、デッドバグ。30〜45秒×2。
- プログレッション:週あたり総ボリューム10%以内の増加を目安に。
睡眠・栄養の基本指針:回復の土台を作る
- 睡眠:毎日同じ時間帯で7〜9時間。昼寝は20分以内。
- 栄養:主食+たんぱく質+野菜を基本に、水分はこまめに。練習後30分以内に補食(例:牛乳とおにぎりなど)。
データの取り方と振り返り:数字で上達を見える化
記録テンプレート:スプレッドシート/ノート例
【週次サマリー】技術:枠内率 68%(先週+4)フィジカル:10m 1.86秒(-0.02)、Yo-Yo 15.6(+0.5)戦術/認知:スキャン 8.2回/10秒(+0.7)課題:逆足インサイドの押し出し次週フォーカス:逆足30本/日、505フォーム
動画分析の進め方:スマホでの撮影とチェック項目
- 撮影:横から/後方の2角度。60fps以上ならなお良い。
- チェック:支持足位置、上体角度、接触タイミング、目線、ファーストタッチ方向。
- 比較:ベースライン→30日→60日→90日で同一ドリルを比較。
週次レビュー:改善仮説→翌週の再設定手順
- 事実:数字と動画から「何が起きたか」。
- 原因:技術/認知/体力のどれかにラベル付け。
- 対策:翌週のタスク3つ以内に絞る(加える/減らす/置き換える)。
親子で取り組む場合のポイント
安全と動機づけのバランスをとる
- 無理をさせない。痛みや違和感が出たら中断して様子を見る。
- できたことを具体的に褒める(例:「支持足の向きが良かったね」)。
声かけと観察のコツ:行動に焦点を当てるフィードバック
- 行動→結果→次の行動の順で短く(例:「首振り8回できた→前向きに受けられた→次は受ける前に味方の位置も見よう」)。
家の中・公園でできるミニドリル例
- 壁当て番号ゲーム:保護者が番号をコール→子どもが瞬時にその面へ当てる。
- 色カードスキャン:背後の色をコール→トラップ→指定方向へパス。
よくあるつまずきと対処法
継続できない:トリガー設計と実行意図の活用
- 「もし19時に帰宅したら、19:10からゲートドリブルを5分やる」と具体化。
- 準備物(ボール、コーン、シューズ)は見える場所に固定配置。
痛みや違和感:中断ではなく修正と専門家相談
- フォームを撮影して再確認。負荷を10〜50%落として痛みのない範囲に調整。
- 長引く痛みは専門家へ相談。自己判断で無理しない。
伸びが止まる:負荷と刺激の変化で打開する
- レスト時間の操作、コーン間距離の変更、逆足割合の増加などで刺激を変える。
安全に練習するための注意事項
環境チェック:スペース・天候・用具
- 滑りやすい路面や障害物を避ける。靴紐・スタッド・空気圧を確認。
- 熱中症・寒暖差への対策(給水、ウェアの調整)。
段階的負荷:10%ルールと週次ボリューム管理
- 走行距離、総本数、セット数は週あたり+10%以内を目安に。
未成年者の留意点:指導者・保護者との連携
- 練習計画と疲労状況を共有。睡眠と食事のサポートを優先。
90日チェックリストと達成判定
技術・体力・戦術・メンタルの達成基準リスト
- 技術:設定したゾーンの枠内率・パス成功率が目標値±2ポイントに到達。
- 体力:10m/20m、505、Yo-Yoで30日ごとに右肩上がり。
- 戦術/認知:スキャン頻度の増加と、前向きで受ける回数の増加。
- メンタル:週次レビューの実施率80%以上、セルフトークが「修正/次へ」が主。
次の90日に引き継ぐ方法:目標の更新と新しい刺激
- 到達したKPIは維持メニュー(頻度半分)に。新たに1〜2項目を追加。
- 刺激の変更:距離、角度、スピード、意思決定の複雑性のいずれかを一段階上げる。
参考リソースと用語ミニ解説
無料計測ツール/アプリの活用ヒント
- タイマー/ストップウォッチ(スマホ標準機能)。
- スプレッドシートアプリ(Googleスプレッドシート、Numbersなど)。
- 動画撮影アプリ(スロー再生可能なもの)。三脚があると便利。
用語解説:SMART・KPI・Yo-Yo・MAS など
- SMART:Specific(具体)/Measurable(計測)/Achievable(達成可能)/Relevant(関連)/Time-bound(期限)。
- KPI:重要業績評価指標。結果としての数値。
- KSI:重要技能指標。過程の質を示す数値(例:スキャン回数)。
- Yo-Yoテスト:往復走で間欠的持久力を測るフィールドテスト。
- MAS:最大有酸素速度。持久系トレーニングの強度設定に使う基準。
まとめ:SMARTで積み上げる、90日後の自分へ
上達は「運」ではなく「設計」で起こせます。SMARTで目標を明確化し、60分の現状把握からスタート。90日を3フェーズに分け、週次・日次のタスクへ落とし込み、数字と動画で振り返る。小さな改善を毎週重ねれば、試合での一歩、一本、ひと声が確実に変わります。今日から最初の記録を取り、次の練習の一手を決めましょう。あなたの90日は、今、ここから動き出します。
