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ゴールキックの基本とルール:反則回避と狙い別の蹴り方

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ゴールキックは、ただの「やり直しのキック」ではありません。最新ルールを正しく理解し、反則を避けながら、狙いに応じて蹴り分けることで、チームの最初の一手がそのまま攻撃の起点になります。本記事では、現行の競技規則に基づくゴールキックの定義と反則回避のポイント、狙い別の戦術とフォーム、練習方法までを一気に整理します。読後には、試合で迷わず選べる“型”が増えているはずです。

ゴールキックの定義と最新ルールの要点

ゴールキックとは何か(再開の種類と発生条件)

ゴールキックは、自軍が守るゴールラインをボールが完全に越え、攻撃側(相手チーム)に最後に触れていた場合に与えられる守備側の再開です。キッカーは自チームの任意の選手で構いません(GKである必要はありません)。

ボールがインプレーになる瞬間:『蹴られて明確に動いたとき』

現在は、ボールが「蹴られて明確に動いた瞬間」にインプレーになります。ペナルティーエリアを出る必要はありません。いわゆる“コロがしてから”でも構いませんが、静止から明確に動いていないとやり直しの対象です。

ボールの設置位置:ゴールエリア内ならどこでも可

ボールは自陣ゴールエリア(6ヤード)内であれば、左右どこに置いてもOKです。風向き、相手の配置、狙うコースに応じて、置く位置を使い分けましょう。

味方・相手の位置制限:ペナルティーエリア内外の扱い

  • 味方(守備側)は、ペナルティーエリア内にいて受けてもOK(現行ルール)。
  • 相手(攻撃側)は、ボールがインプレーになるまでペナルティーエリア外にいなければなりません。
  • 相手が「出る時間がなくて」エリア内に残ってしまった場合、干渉がなければプレー続行が認められます。

やり直しが発生するケースの基本

  • ボールが静止していない状態で蹴った。
  • 相手がエリア内に残り、インプレー直後に干渉・奪取した。
  • 規定の位置(ゴールエリア内)から再開していない。

いずれも原則は「やり直し」。ただし、繰り返す・意図的な遅延は警告の対象になります。

反則を回避するためのルール確認

ダブルタッチの禁止と罰則(間接FK)

キッカーは、ボールが他の選手に触れる前に2度目の接触をしてはいけません。違反した場合、違反地点から相手に間接フリーキック(GKが手で二度目に触れた場合、ペナルティーエリア内なら間接FK、エリア外なら直接FK)となります。

ボールが静止していない状態での再開

ゴールキックは静止球からの再開です。転がりながら蹴ったり、置き直す途中で蹴るのはNG。主審が確認すればやり直しになります。

相手選手の侵入と許容される『時間的に出られない』例外

相手はエリア外にいなければいけませんが、直前のプレーの流れで「出る時間がなかった」場合は、干渉しない限り続行されます。ボールにチャレンジしたりコースを妨げた場合はやり直しです。

過度な時間稼ぎの取り扱い

再開を不当に遅らせる行為は警告の対象です。交代や得点後、スコア状況に関わらず、明らかな遅延は避けましょう。主審の管理下での注意→警告の流れが一般的です。

キッカーの手による2度目の接触(GK含む)の扱い

キッカーがGKであっても、ゴールキック後に他者へ触れる前に手でボールに触れると二度目の接触となり、間接FKが与えられます。外で手に触れれば直接FKの対象です。

意図別のゴールキック戦略

ショートゴールキックでビルドアップする

CBやアンカーに近距離でつけ、前進の型を作る方法です。相手1stラインの出方を見て、縦(アンカー)と横(SB/CB)の二択を提示。GK→CB→GKのやり直しで相手を誘い、背後のスペースを生むのも有効です。

ミディアムレンジでライン間を刺す

相手中盤の脇やライン間のレシーバーに、縦回転の速いボールを差し込む。インフロントで軽く曲げて相手の背中側に落とすと、受け手が前を向きやすくなります。受け手の体の向きと同時に、落とし先(逆サイドのIHなど)まで絵を共有しておきましょう。

ロングでセカンドボールを回収する設計

1st競り合い(ターゲット)、2nd回収(周辺の2人)、3rdサポート(こぼれの出口)を三角でセット。落下点を5〜8mずらすバリエーションと、風向きに合わせた回転選択(ドライブ/ドロップ)で優位を取ります。

サイドチェンジでプレスを外す

片側に相手を寄せてから、対角のSB/ウイングへ。ミディアム〜ロングを混ぜることで読みを外しやすくなります。GK以外(CB)が蹴ると、GKが中盤化して数的優位を作れるのもメリット。

クイックリスタートで速攻を狙う

ボールを素早く静止させ、相手が整う前に背後へ。特に相手が抗議気味で戻りが遅い時はチャンス。主審が止める合図(カードや負傷対応など)があれば再開できない点のみ注意。

キックテクニックの基本フォーム

助走角度と歩幅の作り方

  • ショート:助走は短く、角度は軽い斜め(10〜20度)。
  • ミディアム:2〜3歩の流れる助走、20〜30度で体を開きすぎない。
  • ロング:30〜45度で助走距離を確保し、最後の2歩をやや大きく。

支持足の置き位置と体の向き

支持足はボールの横5〜10cm、進行方向を指す。遠くに飛ばすほど、支持足はボールの横〜やや後ろ。体はやや前傾で、胸と骨盤を狙う方向に合わせるとミートが安定します。

インステップ・インフロントのミートポイント

  • インステップ(足の甲):距離と直進性。ボールの中心やや下をミート。
  • インフロント(甲の内側):軽いカーブでコースを外す/落とす。中心の少し右(右足)を薄く。

弾道コントロール:ライナー/ドライブ/浮き球

  • ライナー:足首を固め、フォロースルーを低く。向かい風に強い。
  • ドライブ:やや下を叩き、フォローを高く抜く。落ちてくる軌道でセカンドが拾いやすい。
  • 浮き球:中心下を薄く当て、体を起こし気味。味方頭上のターゲットに最適。

再現性を高めるルーティン化

置き位置→スキャン→助走→視線→ミートの順を固定。外したら「どの工程が崩れたか」を言語化し、同じチェックリストで次も確認できるようにします。

配球精度を上げるための視野と判断

キッカーの事前スキャンとトリガーの見極め

ボールを置く前・助走前・蹴る直前の3回スキャンが基本。相手の最前線の距離、味方の支持の手振り、サイドの空き、風向きまで短時間で拾います。「相手2枚がGKに寄ったらCBへ」のようなトリガーを事前に共有しておくと即断可能です。

相手のプレス合図を読む(体の向き・合図・隊形)

  • 体の向き:内切りか外切りかで、空くレーンが決まる。
  • 合図:指差し・掛け声・最前線のスプリントが同時に出たらハイプレス合図。
  • 隊形:1-2の三角で来る相手には逆三角のサポートを作って外す。

味方の動き出しとタイミングの合わせ方

足元派と裏抜け派でトリガーを変える。足元派は「助走2歩目でスタート→前に出す」、裏抜け派は「軸足着地に合わせて背後へ」。角度と距離が合うと成功率が跳ね上がります。

味方の配置パターンと再現性のある形

2CBワイド化+アンカー落ちの三角形成

CBを広げ、アンカーが間に落ちて三角。相手の1stライン2枚に対し数的優位を作れます。SBは一列高く取り、相手のウイングを押し下げるのがポイント。

SB内側化(偽SB)と中盤数的優位

SBが内側レーンに入り、中盤の+1を作る形。CB→偽SB→IHで縦パスを刺しやすく、相手のアンカー脇を攻略可能。外はウイングが幅を確保します。

ロング狙い時の三角回収(1st・2nd・3rd)

ターゲットの近くにIHとSB(またはCF)を配置し、落下点周辺に三角をセット。1stは潰す、2ndは拾う、3rdは前向きで展開、の役割分担を明確に。

GK以外が蹴る選択肢とメリット・デメリット

  • メリット:GKが中盤に関与できる/蹴れるFPがいればコースの自由度が高い。
  • デメリット:カウンター即時対応が弱くなる可能性/蹴り手が固定だと読みやすい。

相手の守備ブロック別の対応

ハイプレス相手:幅と縦を同時に見せる二択の提示

GK→CBのショートと、同時にアンカーor裏へのミディアムを見せ、最初の一手で二択を迫る。内を切られたら外、外を切られたら縦。躊躇せず決断するのがコツです。

ミドルブロック相手:ライン間と背後の使い分け

ライン間のレシーバーに入れて前進しつつ、押し上がった瞬間に背後へ。片側で時間を作って逆サイドへ振る「一呼吸入れてからの対角」も効きます。

ローブロック相手:前進の起点を確保する工夫

自陣での数的優位を最大化し、IHやSBが頻繁にポジションを入れ替えてズレを作る。相手が出てきた瞬間が次の縦パスのタイミングです。

マンツーマン気味の対応を外す動き方

縦の入れ替わり(CBが持ち出し、アンカーが背後へ)、横の入れ替わり(SBとIHのローテーション)でマークの基準を崩します。スクリーンの反則にならない範囲で相手の進路を妨げない動き方を徹底。

よくある誤解とグレーゾーンの整理

オフサイドは適用される?(直接は不可の整理)

ゴールキックから直接受ける場合、オフサイドの罰則は適用されません。ただし、いったん他の選手に触れた後は通常のオフサイド判定が適用されます。

エリア内での味方受けはOKか?

OKです。味方はペナルティーエリア内で受けられます。相手はボールがインプレーになるまでエリア外で待機が必要です。

相手がエリア内にいた場合の判定の考え方

出る時間がなかっただけなら、干渉がなければ続行可。干渉・奪取があればやり直し。主審は“影響があったか”を基準に判断します。

再開位置の厳密性と審判の実務

ゴールエリア内なら左右の選択自由。極端なズレや意図的な遅延でなければ、実務上はスムーズな再開が優先されます。迷ったら主審の指示に従いましょう。

天候・ピッチ条件への適応

強風下の弾道最適化と風上・風下の発想転換

  • 向かい風:ライナー/低いドライブ。落下点が手前になる分、助走強め。
  • 追い風:ボールが伸びる。浮き球は流されやすいので、狙いより内側へ。
  • 横風:インフロントで風下側に曲げて帳尻を合わせる。

雨天・ぬかるみでのバウンド管理

濡れた芝は滑る・止まるの両方が出ます。ショートは強めの“通す”パス。ロングはドライブで落とし、セカンド回収を前向きで。踏み込みはスタッドを長めにし、支持足のズレに注意。

人工芝と天然芝でのミート調整

  • 人工芝:反発が一定で速い。ミートを薄くしすぎると伸びすぎるため、面を安定させる。
  • 天然芝:芝丈と湿度で転がりが変化。試合前のボールスピード確認は必須。

練習メニュー:狙い別に精度を鍛える

距離×方向のターゲットドリル(定量化の指標)

  • 10・20・30・40mにマーカー。左右5m幅のゾーンヒット率を計測。
  • 指標例:30mで左右ゾーンヒット70%/左右の誤差平均3m以下。

ショート〜ミディアムのビルドアップ連動ドリル

GK→CB→アンカー→SB→IHの5本連動を左右対称で反復。トリガー(相手のプレス誘発)を声掛けで再現し、選択の速さを評価します。

ロング後のセカンド回収リピートドリル

ターゲットへのロング→落下点に三角配置→前向きの3本目でフィニッシュまで。1セット45秒、心拍を上げた状態での精度を鍛えます。

疲労下での再現性テスト(プレッシャー付与)

シャトルラン直後に10本連続ゴールキック。成功基準(指定ゾーン命中)を数値化し、翌週と比較。メンタルとフォーム維持の双方を評価します。

キッカー選定と役割分担

GKが蹴るかFPが蹴るかの判断基準

  • ショート主体:GK視点の全体把握が活きるためGK優先。
  • ロング精度が高いFPがいる:FPキッカー+GK中盤化も選択肢。
  • 相手の狙い:ハイプレスなら手数の少ない決断力を重視。

キャプテン/コーチとの合図と意思統一

「手を上げたらロング」「指差し2回でサイドチェンジ」など、試合前にシンプルな合図を決めておくとミスコミュニケーションを減らせます。

交代直後・終盤の運用とリスク管理

交代直後はポジションの基準がズレやすい時間。終盤は時間帯・スコアに応じて、リスク許容度を共有しましょう(例:同点終盤はロング基調で陣形リスクを抑える)。

年代・大会ごとのルール差異に注意

小中学生・8人制での主な相違点の確認

ピッチサイズやゴールサイズ、キック再開の細部に大会ごとのローカル変更がある場合があります。8人制ではビルドアップを促すための独自ルールが採用される例もあるため、必ず大会要項で確認してください。

学校部活動・地域リーグのローカルルール

用具・ピッチ条件・選手交代・再開方法などで追加規定があることがあります。主催者配布の資料を事前に共有しておくのが安全です。

国際基準(競技規則)との整合性チェック

基本は競技規則に準拠しますが、ローカル差異がある場合は大会要項が優先されます。疑問点は試合前ミーティングや主審に確認を。

審判の視点:笛が鳴る瞬間を知る

やり直し・間接FKの典型例

  • やり直し:相手の早期侵入による干渉、ボール非静止、位置不備。
  • 間接FK:キッカーの二度触り(GKの手を含む)。

アドバンテージの考え方が及ぶ範囲

ボールがインプレーになる前の手続き的違反は原則やり直し。インプレー後の反則はアドバンテージが適用され得ます。審判は「試合の流れ」と「明白な機会」を天秤にかけて判断します。

抗議で流れを失わないためのセルフマネジメント

判定は変わりません。抗議より次の一手。合図(ショート/ロング)を即時に切り替え、相手の混乱を突くのが得策です。

FAQ:一問一答で要点整理

ゴールキックから直接得点は可能か?

相手ゴールへの直接得点は可能です。自軍ゴールへ直接入った場合は得点にならず、相手のコーナーキックとなります。

味方へのバックパス後に手で触れるのは?

味方が意図的に足でキックしたボールをGKが手で扱うのは反則(間接FK)。ヘディングや胸など足以外や、相手に当たった後であれば扱えます。

時間稼ぎと注意・警告の境界

主審の再開合図後に過度に遅らせる、何度も置き直す、意図的に迷う仕草を繰り返すなどは警告の対象。合理的な準備の範囲は問題ありません。

相手がエリア内に残っていたらどうなる?

出る時間がなかっただけなら続行可。ただしボールに関与すればやり直しです。主審の判断に従いましょう。

チェックリスト:試合前・試合中・試合後

試合前:風・芝・審判の傾向の確認

  • 風向きと強さのチェック(前後半の使い分け)。
  • ボールの転がり・跳ね(人工/天然・湿度)。
  • 主審の再開基準(素早い再開を許容するか)をウォームアップ時に観察。

試合中:相手の修正に応じたプランB・C

  • ショートが詰まる→ミディアムの差し込みへ。
  • ミディアムを読まれる→対角ロングとセカンド回収へ。
  • ロング偏重→ショートで相手を釣り出し、背後へ。

試合後:数値化と映像での振り返り項目

  • 成功率(狙いゾーン到達)と次のパス成功まで含めた“二次成功率”。
  • 奪われ方のパターン(正面・読まれ・技術ミス)。
  • 相手ブロック別の期待値(xThreat的にどこで前進できたか)。

まとめ:ルール理解×型の共有で、ゴールキックは武器になる

ゴールキックは「ボールが蹴られて明確に動いた瞬間にインプレー」「味方はエリア内で受けられる」「相手はエリア外」という3点を押さえれば、反則はほぼ回避できます。そのうえで、ショート・ミディアム・ロング・サイドチェンジ・クイックの5つの型をチームで共有し、天候や相手のブロックに応じて使い分けましょう。フォームの再現性はルーティンで高め、練習では“距離×方向”を数値化。試合前の環境チェックと試合後の振り返りまでセットにすることで、ゴールキックは確かな得点起点に育ちます。次の試合から、最初の一手をアップグレードしていきましょう。

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