「オフサイドって、なんで反則なの?」「子どもにどう伝えればいい?」——そんな迷いを、一気に解消します。この記事では、むずかしい専門用語を最小限に、子どもにも伝わる言葉と身近なたとえで、オフサイドをすばやく理解できるように整理しました。家庭や公園でできる練習、試合で効く動き方、高校生向けの戦術の使い方まで、今日から使えるコツをまとめてお届けします。
目次
結論:オフサイドは『先回りしすぎ』を止めるルール
子どもに一言で言うなら「ゴールの近くで待ち伏せはダメ」
サッカーのオフサイドは、「ゴールの近くで先に待っていて、ずるい点の取り方をしないための約束」です。簡単に言うと「攻めている選手が、ボールよりも前で、相手の守備が2人より前にいる状態でパスをもらうと反則」。だから、ゴール前での“待ち伏せ”はダメ、が一言の答えです。
なぜオフサイドがあるのか(試合を公平で楽しくするため)
- ずっとゴール前で張り付く戦いにならないようにする
- 攻守の駆け引き(パス、動き直し、連携)を増やす
- 安全で流れのある試合を保つ
このルールがあるからこそ、ただ待つのではなく、走るタイミングや味方との連動が大切になります。
判定のカギは「味方がボールを蹴った瞬間」
オフサイドは「味方がボールをプレー(蹴る・ヘディング・触る)した瞬間」に位置を決めます。パスが出てから慌てて戻っても遅い、逆に、出る前に戻れればセーフ。この“瞬間”の意識がすべての出発点です。
子どもに刺さる例えで一発理解
鬼ごっこの“先回り禁止”ルールに置き換える
鬼ごっこで、鬼が来る道の先で待ってタッチするのはズルですよね。サッカーも同じ。「ゴールの前で先回りして待ってタッチ(=パスを受ける)」はダメ。追いかけっこは、ちゃんと走って勝とう、という考え方です。
かけっこでゴールテープより前に立っていたら反則
スタート前にゴールテープの向こうに立っていたら、そもそも走る意味がありません。オフサイドは「まだスタート(=パス)してないのに、ゴールテープの先(=ボールより前・守備2人目より前)にいる」イメージです。
レストランの順番待ちで抜かすのはNG(並び順=守備2人目)
順番待ちの列を守るのは公平さのため。列の基準は「前から2人目までの位置」。その2人よりも前に勝手に出るのがオフサイド。順番は守りましょう、ということです。
信号のスタート合図:合図より先に飛び出したらフライング
青になる前に渡るのは反則。同じく、味方が触るより先に前へ飛び出しても、タイミング次第で反則になります。「合図=味方が触る瞬間」と覚えましょう。
バス停のルール:バス(ボール)より先に行っても乗れない
バスより先に走って行っても、バスが来なければ乗れません。サッカーも「ボールより前で待っていても、合図(パス)前にそこにいるのはダメ」。ボールと一緒に進もう、がコツです。
ルールを正確に:ここまで分かれば十分
オフサイドの位置の条件(相手陣内・ボールより前・相手競技者2人目より前)
- 相手陣内にいる
- ボールより前にいる
- 相手競技者の“2人目”(最後尾から2番目の守備者)より前にいる
この3つがそろっていると「オフサイドポジション」です。腕・手は判定に含みません(腕で得点できないため)。
反則になるのは「位置」+「プレーへの関与」
オフサイドは「位置にいるだけ」では反則になりません。「味方がボールを触った瞬間にオフサイドポジション」かつ「その後のプレーに関与したら」反則です。
関与の3パターン(ボールをプレー・相手の妨害・その位置の利益を得る)
- ボールをプレーする(触る/受ける)
- 相手の妨害をする(視界をふさぐ、競り合う、明らかに動きを邪魔する等)
- その位置の利益を得る(ポストや相手からの跳ね返りをプレーする等)
審判が見る2つの瞬間(蹴った瞬間と関与した瞬間)
- 基準の瞬間:味方が触った瞬間にオフサイドポジションかどうか
- 関与の瞬間:その後に実際プレーや妨害が起きたかどうか
これはオフサイド?間違えやすい5つのケース
キーパーより前でもOKな場合がある(基準は“守備者2人目”)
キーパーが基準ではありません。「最後尾から2人目」の守備者が基準。極端に言うと、キーパーが前に出ていても、後方にいる2人目の守備者と同一線上か後ろならオンサイドです。
味方が蹴る前に戻ればセーフ(戻りオンサイドの考え方)
パスが出る前に、ボールより後ろ、または守備者2人目と同一線上まで戻ればオンサイド。大事なのは「戻るタイミング」。出てからではなく、出る前に戻ること。
相手が触れたらどうなる?(意図的プレーとディフレクション)
- 意図的プレー(相手がボールをコントロールしようとしてプレーした):多くの場合、オフサイドの基準がリセットされます。
- ディフレクション(意図せず当たっただけの跳ね返り)やセーブ(ゴールを防ぐプレー):基準はリセットされません。
例:相手DFがパスをトラップしようとしてミスキック→多くは「意図的プレー」。一方、至近距離のシュートが足に当たって跳ねた→「ディフレクション」。
同一線上はオンサイド(“同列はセーフ”を覚える)
守備者2人目やボールと「同じ列(同一線上)」はオンサイド。ほんの少しでも前に出ていればオフサイドになることがあります。
ゴールキック・スローイン・コーナーキックの例外
これらのリスタートから「直接」受けた場合、オフサイドは適用されません。ただし、いったん誰かが触れてからの2本目のプレーでは通常通りオフサイドが適用されます。
子どもに伝わる教え方の順序
ステップ1:まずは「位置」だけを体で覚える(線遊び)
- コーンや縄で“守備者2人目ライン”を作り、「この線より前は待っちゃダメ」ゲーム
- 合図なしで自由に動き、線の手前でストップできたら1ポイント
ステップ2:「タイミング」は“手拍子合図”で覚える
- 味方役が手を叩いた瞬間=パスの瞬間
- 合図の瞬間にオンサイド位置にいれば成功。少しでも前ならやり直し
ステップ3:「関与」は動いたら反則・止まったらセーフの簡易ルールから
最初は「オフサイド位置にいたら、ボールに向かわない(止まる)」でOK。慣れたら「妨害もしない」「コースに入らない」まで段階的に。
言い換えフレーズ集(短い言葉で伝えるコツ)
- 「合図まで待つ」
- 「同じ線ならOK」
- 「ボールより前にいない」
- 「2人目を見よう」
- 「触らない・邪魔しない」
家や公園でできるオフサイド練習ドリル
ロープ1本で作るオフサイドラインゲーム
ロープを地面に置き、そこを「守備者2人目ライン」に。パサー役の合図で、ラインのギリギリ手前にタイミングよく入る練習。ロープに触れたらアウト、ギリギリで止まれたら成功。
3人1組:合図の瞬間に止まれるかドリル(蹴った瞬間)
- A:パサー、B:受け手、C:副審役
- Aが合図→Bは一歩だけ前へ。この瞬間、副審役のCが「オフ」か「オン」をコール
- 合図の瞬間にどこにいたかを、全員で確認
ボールより後ろダッシュ競争(位置感覚を鍛える)
ボールを少し転がし、子どもは常にボールより後ろをキープして走る。ボールを追い越したらアウト。ゲーム感覚で「追い越さない感覚」を身につけます。
“守備者2人目”を探せチャレンジ(視野と判断)
味方1人・相手2人で簡単なラインを作り、「今の守備者2人目は誰?」「同一線どこ?」を瞬時に指さし。反復で判断スピードが上がります。
高校生向け:戦術とオフサイドの賢い使い方
最後の一歩を合わせる“斜めラン”と体の向き
- 外から内へ、内から外への斜めランで「同一線」を保ちやすくする
- 体を半身にして前進と減速を両立、合図で一気に加速
ライン駆け引き:寄せて離れるダブルムーブ
DFに近づいてから一瞬で背後へ。寄る動きでDFを止め、離れる動きで同一線を割らないギリギリの加速を作れます。
セカンドアクションでオンサイドに戻る動き方
一度オフサイド位置に入ってしまったら、ボールに関与せず、素早く「ボールより後ろ」や「2人目と同列」へ戻り、次のパスで関与する。切り替えの速さが鍵。
オフサイドトラップを外す方法(遅れて出る・幅を使う)
- 遅れて出る:パスの直前まで我慢し、合図でバースト
- 幅を使う:サイドで同一線を作りやすくし、背後へのタイミングを合わせる
- 相手の視線を分断:複数の斜めランで判定ラインを曖昧にしない
審判サインとVARの基本
副審の旗サインと無効ゴールの流れ
副審はオフサイドを確認すると旗を上げます。笛が鳴ればプレー中断、オフサイドの地点から間接フリーキックで再開。ゴールが入っても、オフサイドなら無効です。
なぜ旗を遅らせる?(ディレイドフラッグの理由)
明確なチャンスの場面では、関与が確認できるまで旗を遅らせることがあります。誤って好機を止めないための運用で、最近は特に徹底されています。
VARが関わる場面と注意点(最終判断は競技規則に基づく)
得点やペナルティに関わる重大な場面ではVARが介入し、映像でチェックします。最終判断は競技規則に基づき、オンフィールドの主審が下します。
よくある質問(Q&A)
ドリブル中にもオフサイドはある?
自分でボールを持って運ぶ行為自体ではオフサイドは起きません。ただし、オフサイド位置の味方が相手を妨害したり、リバウンドに関与すると反則になる場合があります。
横パスや後ろ向きのパスでもオフサイドになる?
パスの方向は関係ありません。基準は「その瞬間の位置」。後ろに出したパスでも、受け手がすでにオフサイドポジションなら反則になり得ます。
オフサイドの位置にいてもボールを触らなければOK?
触らなくても、相手の視界を妨げたり、明らかにプレーに影響を与えたら反則。完全に関与しない(動線・視界・競り合いに入らない)ことが必要です。
キーパーが攻め上がったときの“守備2人目”は誰?
常に「相手の最後尾から2人目」の選手が基準。キーパーである必要はありません。キーパーが前にいて、残り1人しか最終ラインにいなければ、非常にオフサイドになりやすくなります。
クイズで理解チェック
〇×クイズ:10問で要点確認
- 味方が蹴る前に戻れば、オンサイドになれる。…〇
- ゴールキックから直接受けても、オフサイドになる。…×(直接は適用外)
- 守備者1人目がキーパーなら、基準はいつもキーパーになる。…×(基準は最後尾から2人目の守備者)
- 同一線上はオフサイド。…×(同一線上はオンサイド)
- 相手に当たれば必ずリセットされる。…×(意図的プレーは多くがリセット、ディフレクションやセーブはリセットなし)
- 自分がドリブル中なら、味方のオフサイドは関係ない。…×(味方が相手を妨害すれば反則の可能性)
- 腕は判定に含まれない。…〇
- パスが後ろ向きならオフサイドはない。…×(方向でなく位置で判定)
- 関与しなければ、オフサイド位置でも反則ではない。…〇(妨害もなしが条件)
- 副審はいつでもすぐ旗を上げる。…×(状況で遅らせることがある)
場面別ミニシナリオ:どっちがオフサイド?
- パスの瞬間にDFと同一線上→受けて得点。答え:オンサイド。
- パスの瞬間はオフサイド位置、相手DFに当たって跳ね返り→受ける。答え:多くはオフサイド(ディフレクション)。
- パスの瞬間はオフサイド位置、DFがトラップを試みてミス→受ける。答え:リセットでオンサイドになることが多い(意図的プレー)。
- コーナーキックを直接ヘディングでゴール。答え:オフサイドなし(直接は適用外)。
- シュートの視界を遮った位置取り(ボールは触らず)。答え:オフサイドの可能性あり(妨害)。
年齢別の伝え方
小学校低学年:『先回りしない』だけに絞る
- 「合図まで待つ」「ゴール前で待たない」だけでOK
- 成否は“線ゲーム”で楽しく確認
中学年〜高学年:ラインとタイミングを加える
- 「2人目の守備者を見る」習慣作り
- 手拍子合図で「蹴った瞬間」を体得
中学生以上:関与と例外を整理して自分で説明させる
- 妨害・利益・プレーの3要素を言語化
- 例外(GK、スローイン等)を問答式で確認
最新の競技規則を確認するコツ
最新の公式ソースをチェックする方法
- IFAB(国際サッカー評議会)のLaws of the Game(最新版)
- 日本サッカー協会(JFA)の競技規則・通達
毎年更新されることがあるため、「最新版」を確認しましょう。
大会や地域での運用差に注意する
育成年代や大会規定で、運用方法や指導の優先項目が微調整される場合があります。事前に大会要項をチェックしましょう。
アップデート時に見直す“3つのチェックポイント”
- 「意図的プレー」と「ディフレクション」の境目
- 「妨害」に当たる具体例(視界、チャレンジ、明白なアクション)
- リスタート時の例外と再開方法
用語ミニ辞典(子どもにそのまま使える)
守備者2人目
相手の最後尾から数えて2番目にゴールに近い守備者。キーパーに限らない。
同一線上(同列)
相手守備者2人目、またはボールと、縦に見て同じ列。これはオンサイド。
意図的プレー/ディフレクション
意図的プレー:相手がコントロールやプレーを試みた触れ方。多くは基準がリセット。ディフレクション:偶然に当たっただけ。基準はリセットされない。
関与(プレー・妨害・利益)
触る/相手を邪魔する/跳ね返りを利用する。このいずれかで反則が成立する。
リスタート(ゴールキック・スローイン・CK)
プレー再開の方法。これらから「直接」受ける場合、オフサイドは適用されない。
まとめ:合言葉は『蹴った瞬間・2人目・関与』
一言で振り返るオフサイドの核
オフサイドは「先回りしすぎ」を止めるルール。見るのは「蹴った瞬間・2人目・関与」の3点だけ。ここが揃えば、迷いません。
今日から使える練習と声かけのチェックリスト
- 手拍子合図で「瞬間」を染み込ませる
- ロープの“同一線”でライン感覚を作る
- 迷ったら「止まる・関与しない」でリスク回避
- 高校生は「斜めラン」と「ダブルムーブ」で勝負
子どもが自分の言葉で説明できれば合格
最後は「自分の言葉で言い直せるか」。たとえ話を1つ選び、親やコーチに説明してみましょう。「ゴールの近くで待ち伏せはダメ」「合図まで同じ線で待つ」——この2つが自然に言えたら、理解は合格です。明日のピッチで、賢く、速く、そして公平に戦いましょう。