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サッカーのフリーキック間合いルール:壁は9.15mの根拠と例外

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フリーキックは、ルールを正しく理解しているかどうかで得点期待値が大きく変わります。特に「壁は9.15m(10ヤード)離れる」という有名な基準は、どこから測るのか、いつ例外が発生するのか、クイックで再開できるのかなど、細かい運用を知っているかが勝敗を左右します。本記事では、IFAB競技規則(Law 13)に基づく客観的事実を土台に、実戦で役立つ考え方・判断基準・トレーニング方法までを一気に整理。壁の距離の根拠と例外、クイックとセレモニアルの使い分け、そして現場のグレーゾーンへの向き合い方まで、ピッチで即使える内容に落とし込みます。

フリーキックの「間合い」を知らないと損をする理由

セットプレーの期待値を最大化するための前提知識

フリーキックで勝つチームは、ルールを攻めの設計図に変えています。9.15mという距離をただ覚えるだけでなく、壁の高さ・人数・角度、GKの構え、キッカーの助走やフェイント、セカンドプレーまでを一体でデザインすることで、ゴール前の「静止画」を自分たちに有利な「動画」へと変換できます。

反則を避けて余計な警告・失点リスクを減らす

守備側の距離不履行(FRD)や遅延、攻撃側の1m離隔義務違反など、知らないままやってしまう反則は意外に多いもの。不要な警告は試合の流れを悪化させ、流れ弾の失点にもつながります。ルールを理解しているだけで、リスクを一段と抑えられます。

クイック/セレモニアルの選択がゲームの流れを左右する

相手が整う前に素早く始めるのか、主審に距離を管理してもらって確実な一撃を狙うのか。状況判断ひとつでチャンスの大きさが変わるため、どちらを選ぶべき局面かを共有しておくことが重要です。

9.15mの根拠:IFAB競技規則と“10ヤード”の由来

競技規則(Law 13)に定められた最小距離

IFAB競技規則(Law 13:フリーキック)では、相手競技者はボールから少なくとも10ヤード(=約9.15m)離れなければならないと明記されています。これは直接・間接フリーキックのいずれにも適用される基本ルールです。

10ヤード=約9.15mという換算と表記の背景

「10ヤード」はサッカー発祥時のヤード法に基づく表現で、メートル換算で約9.15mとなります。競技規則の本文は10ヤードで書かれますが、日本では実務上「9.15m」と表現されることが多い、というだけの話です。

ピッチ上の目印:センターサークル半径・ペナルティアークも9.15m

センターサークルの半径やペナルティアークの半径が9.15mで描かれているのは、キックオフやPK時に「10ヤード離れる」ための視覚的目印として機能させるため。実戦では、これらのライン感覚が距離イメージの基準になります。

9.15mはどこから測る?距離の測り方と基準点

基点はボールの位置:最短距離(半径)で測る

距離は「ボールの位置」を中心に測ります。ボールの外周から相手選手までの最短距離(半径)が10ヤード以上になることが求められます。

直線ではなく円周上での等距離という考え方

9.15mはボールを中心に円を描いたときの「円周上のどこでも同じ距離」。壁も単純な一直線ではなく、ボールから等距離に並べる意識が正確です。

主審の管理手順とバニシングスプレーの役割

主審が介入(セレモニアル)する場合、ボール位置の確定→壁位置の指示→必要に応じてスプレーでマーキング→笛の合図、という流れが一般的。バニシングスプレーは視覚的な補助であり、使用の有無は競技会規定や審判の判断によります。

風・傾斜・マーキングの誤差と実務上の許容範囲

芝の摩耗やラインの微妙なズレ、強風などで完全な“9.15mジャスト”は難しいことも。審判は歩幅や感覚、スプレーを組み合わせて公平性を保ちます。選手は「明確に詰めない・邪魔しない」を守ることが最重要です。

守備側の壁:ルールと実務

壁の人数と構成は守備側の自由(ただし距離義務あり)

壁の枚数・形は守備側が決めます。2枚でも5枚でもOK。ただしボールから10ヤードを守る義務は常にあります。

9.15m未満の位置取りは違反(FRD)

キックの再開を妨げる形で距離を守らない行為は「距離不履行(FRD)」で警告対象。故意にボールの前に立ち続ける、蹴る直前に詰めるなどはNGです。

GKの視野確保と壁の位置関係

GKは壁でシュートコースを消しつつ、ボールの見え方を確保したい。壁で「ニアを消す」のか「ファーを限定する」のか、事前の取り決めで迷いをなくしましょう。

審判が壁を整える場面と整えない場面

攻撃側が距離確保を求めた、警告・退場や負傷処置が入った、混雑で危険がある、といった場合は主審が介入して「笛待ち」にします。ボールが正しく止まり、危険もなく、攻撃側が急いで再開したいときは主審は介入せずプレー続行を認めることが多いです。

攻撃側の権利と制限:クイックと1mルール

クイックリスタートの権利:相手が9.15m未満でも続行可能な条件

主審が「笛待ち」を示していない限り、攻撃側はクイックで再開できます。相手が十分に下がっていなくても、攻撃側が自分の選択で蹴るなら、ボールが相手に当たっても通常はプレー続行です(相手が意図的に妨害した場合は警告対象)。

セレモニアルFKの合図:主審の笛が必要なケース

攻撃側が距離確保を要請した、懲戒・負傷・交代の処置がある、再開方法にリスクがある場合は「笛で再開」。主審が明確に合図するまで蹴ってはいけません。

3人以上の壁に対する攻撃側の1m離隔義務

守備側の壁が3人以上の場合、攻撃側は壁から少なくとも1m離れる必要があります。紛れや押し合いによる危険を防ぐ目的で、違反は間接FKの対象になり得ます。

相手の退避動作中に当てた場合の扱いとグレーゾーン

クイックで蹴って退避中の相手に当たった場合は概ねそのままプレー続行。ただし相手が明らかにボール前に立って妨害していたなら警告の可能性が高い、という運用が一般的です。

例外と特例:9.15mがそのまま当てはまらないケース

守備側の自陣ペナルティエリア内のFK(相手はPA外/ボールは動けばインプレー)

守備側のフリーキックが自陣ペナルティエリア内のとき、相手はエリア外に退避。ボールは「蹴られて明確に動いた時」にインプレーとなります(エリア外に出る必要はありません)。

攻撃側の間接FKが守備側PA内(守備側はゴールライン上で9.15m未満でも可)

攻撃側の間接FKが守備側のペナルティエリア内で与えられた場合、守備側選手はゴールライン上(ゴールポスト間)に位置することができ、その距離が9.15m未満でも問題ありません。

守備側FKが自陣ゴールエリア内:どこから蹴れるか

守備側に与えられたフリーキックが自陣ゴールエリア内なら、ゴールエリア内のどこからでも蹴ることができます。相手はペナルティエリア外に退避し、ボールが動けばインプレーです。

競技会規定・年代別(小学生・8人制等)での距離変更の可能性

小学生や8人制などのカテゴリーでは、競技会規定で距離や運用が調整される場合があります。事前に大会要項を必ず確認しましょう。

負傷・交代・懲戒の処置中は再開を遅らせる(笛待ち)

安全確保や説明が必要な局面は、主審の笛でしか再開できません。クイックの権利よりも安全が優先されます。

再開の合図と反則・懲戒の基準

ボールがインプレーになる瞬間:「蹴られて明確に動いた時」

フリーキックは、ボールが止まった状態から「蹴られて明確に動いた時」にインプレー。小さなタッチで位置をずらすだけでは再開とはみなされませんが、明確に動けばプレー続行です。

距離不履行(FRD)と遅延行為:警告の基準

再開を妨げる目的でボールの前に立ち続ける、壁形成を口実に過度に遅らせるなどは警告の対象。フェアな退避は迅速に行いましょう。

エンローチメント(進入)の判断と再開方法

セレモニアルで笛が吹かれた後、距離内に進入してボールに干渉した場合は原則として警告+やり直しが選択肢。クイックを攻撃側が選んだ場面では、意図的妨害でなければ流すこともあります。

セットプレーにおけるオフサイド適用の基本

フリーキックには通常どおりオフサイドが適用されます(適用除外はスローイン・コーナーキック・ゴールキック)。配置とタイミングの設計が重要です。

実戦での使い方(守備):壁・GK・周辺の連携

壁の枚数と角度の決め方(コース消しの優先順位)

距離・角度・相手の利き足から「消したいコース」を明確化。ニア上を消すのか、ファーを限定するのか、チームの原則を決めておくと迷いが減ります。

ニア/ファーと第2守備者の配置

壁の外側に第2守備者を置いてファーのこぼれを回収、ニア側には素早く寄せる選手を配置。役割を固定化しておくと反応が速くなります。

ジャンプとグラウンダー対策(伏せ人の可否と注意点)

壁が跳ぶ場合は足元のグラウンダーが怖い。壁後方の「伏せ人(裏どり)」配置は認められていますが、安全面やオフサイドラインの乱れに注意し、GKと連携して実施しましょう。

リバウンド対応とラインコントロール

セカンドボールの回収役、クリアの方向、再ラインアップの合図を事前に統一。クリア後の一歩目で相手の二次波を止められます。

実戦での使い方(攻撃):9.15mを攻めに変える

クイックかセレモニアルかの判断基準

相手が背中を向けている、GKが指示で外を見ている、味方の準備が整っている—この3条件がそろえばクイックの価値が高い。逆に、距離と壁を整えさせて確実に狙いたいならセレモニアルを選択します。

壁から1mルールを踏まえたスクリーンとランの設計

3人以上の壁に近づきすぎない範囲で、GKの視界を切るランや後方からの抜け出しを設計。1m離隔を守りつつ、壁の端でオフサイドラインをうまく利用しましょう。

間接FKの合図と二人目の関与

主審は間接FKを片手上げで示します。誰がボールをわずかに動かすのか、二人目がいつ蹴るのか、合図を簡潔に共有しておくとミスが減ります。

コース作り:壁外/壁上/ニア叩きの使い分け

壁外はカーブとスピード、壁上は落ちと精度、ニア叩きはタイミング勝負。GKの立ち位置と壁のジャンプ傾向から、狙いを素早く切り替えましょう。

シーン別の具体例と判定の考え方

相手がボール前に立ち続ける時:再開の可否と懲戒

クイックを選ぶなら、相手が距離内でも蹴ってOK。ただし相手が意図的に妨害していると見なされれば警告対象。セレモニアルに切り替えると主審が距離を確保します。

主審が笛を待つと示したのに蹴った場合

「笛で再開」と明示された状況で蹴ってしまった場合はやり直し。状況によっては遅延・不適切な再開として注意や警告を受けることもあります。

ボールが審判員に当たったときの再開

ボールが審判員に当たって、明確な攻撃機会が生じた/ボール保持が入れ替わった/ゴールに入った、のいずれかが起きたらドロップボールで再開。それ以外はそのまま続行です。

マーカーずらし・フェイントの合法/非合法

フェイントはフリーキックでは基本的に認められます。ボールの位置調整は再開前に行い、ボールは静止させるのがルール。笛待ちの状況では、主審の合図前に「明確に動かす」と再開と見なされる恐れがあるので注意しましょう。

よくある誤解の訂正

「壁は必ず9.15mジャストで止める」わけではない

原則は10ヤード以上。安全や視認性のために、実務上はやや余裕を持たせることもあります。

「ボールに寄せてブロックすればOK」ではない

距離不履行や遅延は警告対象。退避は迅速・明確に。

「フリーキックはオフサイドにならない」わけではない

オフサイドの適用除外はスローイン・CK・ゴールキックのみ。フリーキックでは通常どおり適用されます。

「スプレーがない試合は距離が曖昧」ではない

スプレーは補助ツール。使用がなくても距離義務は同じで、審判は別手段で管理します。

トレーニングメニュー:9.15m前提のセットプレー設計

壁越えキックとGKの位置取り読み

  • フリーキックのスポットを複数設定し、壁の高さとGKの立ち位置に応じてコース選択を反復。
  • 壁上・壁外・ニア叩きの3パターンを連続で実行し、判断の切り替え速度を養う。

クイックFKの発動タイミング反復

  • 主審役を置き、「笛待ち/笛不要」をコール。合図に応じてクイック or セレモニアルを即選択。
  • 相手役は退避と妨害の境界を学ぶ。意図的妨害の振る舞いを再現し、判断基準を共有。

間接FKの二人一組パターン練習

  • 一人目がわずかに触れてボールを動かし、二人目が即シュート/展開。主審の間接合図も再現。
  • 壁3人以上の想定で「1m離隔」を守りつつスクリーン&ランの導線を最適化。

守備側の退避・壁形成のルーティン化

  • 犯したファウルの位置と角度で、壁枚数・基準の声かけをテンプレート化。
  • 退避ルートと第2守備者の配置、リバウンド回収の担当をセットで習慣化。

実戦チェックリスト:ピッチで即使える要点まとめ

FK発生直後の役割分担(主審とのコミュニケーション含む)

  • 攻撃側:キッカー決定/クイック可否の即断/主審へ距離要請の意思表示。
  • 守備側:GKが基準をコール/最短ルートで退避/壁枚数と角度の即断。

攻守共通の距離・位置・合図の確認項目

  • ボールは静止しているか、主審は笛待ちを示していないか。
  • 攻撃側の1m離隔、守備側の9.15m、GKの視野確保。
  • 二次攻撃・セカンド回収の配置はOKか。

競技会規定(距離・スプレー・ボールインプレー条件)の事前確認

  • カテゴリーや大会により細部運用が異なる場合あり。要項を事前チェック。
  • バニシングスプレーの有無、審判団の運用方針も試合前ミーティングで共有。

まとめ

9.15m(10ヤード)は、単なる暗記ではなく「どう測るか」「いつ例外があるか」「どの再開方法を選ぶか」まで含めて理解してこそ武器になります。攻撃側はクイックとセレモニアルを状況で使い分け、1m離隔や間接FKの合図を前提にパターンを磨く。守備側は退避・壁・GK・二次対応までをワンセットでルーティン化する。最後に、競技会規定と主審の合図を尊重すること。これだけで、フリーキックの期待値と安全性は確実に上がります。今日のトレーニングから、9.15mを味方につけましょう。

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