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サッカー反則はどこまで許される?判定基準を実例解説

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試合の熱が上がるほど、「いまのはファウル?それとも正当?」という境界は曖昧になります。ここを読み解けるかどうかは、失点を防ぎ、カードを減らし、決定機をつかむうえで大きな差になります。この記事では、競技規則(IFABのサッカー競技規則)に沿いながら、実戦で起こりやすいグレーゾーンを具体例で整理します。審判の運用差や大会・年代の違いも踏まえ、選手・指導者・保護者が同じ目線で「どこからが反則か」を共有できるようにまとめました。

この記事の趣旨と前提

なぜ『どこからがファウルか』が勝敗を左右するか

反則の境界は、守備の強度と安全性のバランスを決めます。許容される接触の幅を正しく把握できれば、余計なPKやカードを避けつつ、相手のリズムを崩す寄せやボディコンタクトが可能になります。逆に境界を誤ると、ゴール前のホールディングや不用意なチャージが即失点に直結します。

この記事の読み方と用語の扱い(客観と主観)

本記事では、客観的事実として競技規則に基づく定義・基準を明示し、主観に触れる部分(「こう見られやすい」「この運用が多い」など)は、現場の傾向として紹介します。大会・審判により解釈が揺れる場面は「グレーゾーン」と明記します。

競技規則に基づきつつ大会ごとの運用差に配慮する

トップカテゴリではVARが基準の厳格化を促し、育成年代や地域大会では安全重視で接触が早めにファウルになることがあります。この記事は一般的な基準を示しますが、最終判断はその試合の主審の基準に従ってください。

サッカーの『反則』を決める3つの軸

接触の質:不用意・無謀・過剰な力の違い

  • 不用意:注意を欠いた、慎重さに欠ける接触(ファウルの範囲)
  • 無謀:相手の安全を顧みないチャレンジ(ファウル+警告)
  • 過剰な力:相手を傷つけかねない力・方法(退場の対象)

相手への影響:妨害・危険・利点の消失

  • ボール奪取ではなく相手を妨げる目的・結果になっているか
  • 相手を危険に晒す動作や角度になっていないか
  • 相手の明確な利点(前進、シュート、パスライン)を違反で消していないか

試合状況:位置・方向・人数・ボール管理の有無

同じ接触でも、ゴールに近い、相手が前向き、周囲の守備人数が少ない、相手が明確にボールをコントロールしている、といった条件が重なるほど重い判定(PK、警告、退場)になりやすくなります。

反則の基本:競技規則が定めるファウルと反スポーツ行為

直接フリーキックの対象となる行為の全体像

  • キック、トリッピング(つまずかせる)、チャージ、打撃・肘打ち、押す、タックル
  • ホールディング(つかむ/引く)、スパイティング(唾を吐く)、ハンド
  • 原則として接触を伴う、または相手を物理的に妨げるもの

間接フリーキックの対象(危険なプレー・インピーディング・GK関連)

  • 危険なプレー(高足、かぶせキックなど接触未発生でも相手を怖がらせる)
  • インピーディング(接触なしで進路を妨害)。接触があれば直接FKの対象へ
  • GK:6秒以上保持、リリース後の再手使用、味方の意図的なキックやスローインを手で触る等

警告(イエロー)と退場(レッド)の代表的基準

  • 警告:無謀なチャレンジ、SPA(有望な攻撃の阻止)、異議、遅延、継続的な違反
  • 退場:過剰な力・危険なタックル、暴力行為、スパイティング、DOGSO(決定機の阻止)など

『どこからがファウル?』接触プレーのグレーゾーン実例

ショルダーチャージ:肩と肩・ボールへの距離・速度差

  • 正当:肩と肩、ボール可触距離、両者の速度差が小さい
  • 反則になりやすい:背中側への体当たり、ボールから離れすぎ、全力での横からの吹き飛ばし

腕の使い方:バランス維持と押し・打撃の線引き

走行中の軽いタッチは許容されますが、伸ばした腕で押す、振り抜いて当てる、顔まわりへの接触は反則・懲戒の対象です。腕は身体近く、外側45度以内が安全目安です。

背後からのチャレンジ:視野外の危険と基準の厳しさ

背後からは相手の視認性が低く、わずかな接触でも危険評価が上がります。かかとへの接触、体の入れ替え狙いの押しは笛になりやすいです。

ボールに先に触れても反則になりうるケース

「先にボールに触れた=常に正当」ではありません。ボール後に相手を強く刈る、足裏を見せる、遅れて突っ込むなどはファウル・カードの対象です。

接触は軽いが相手の明確な利点を消す行為

高速の抜け出しで腰を軽く押さえる、ライン際で腕で進路を塞ぐなど、僅かな接触でも利点消失が明確ならSPAで警告となりやすいです。

ハンドの判定基準を整理(最新の考え方)

意図的な手/腕の使用

手や腕でボールを扱おうとする、広げてブロックする、方向を変えるなどは明確な反則です。

不自然に体を大きくする行為の評価軸

  • 体の輪郭から大きく外に腕を広げる
  • プレーの状況から見て必要以上の腕位置
  • 結果としてボールの通過を不自然に阻害した

腕が肩より上にある場合のリスク

シュートブロックなどで腕が肩より上にあると、意図がなくても反則判定のリスクが高くなります。

転倒時の支え手の扱いと例外

転倒中、体を支えるための手が体と地面の間にあり、体を支える目的の自然な位置ならハンドではないとされやすいですが、ボールを遮る方向へ腕を伸ばすと反則になり得ます。

攻撃側の偶発的ハンドと得点の取り消し

得点者自身が偶発的に手/腕に当て、その直後に得点した場合は原則反則です。一方、チームメイトの偶発的ハンドが直後に得点に繋がっても、現在は多くの大会で反則とはされません(運用差あり)。

スライディングタックルと危険なプレーの境界

ボールへのチャレンジの正当性:タイミング・方向・足裏の見せ方

  • 正面からボールへ、足の側面・甲を使い、相手の軸足に当てない
  • レイト(遅れ)や足裏先行、膝伸展は危険評価が高い

無謀・過剰な力の具体例(両足・膝伸展・レイト)

両足での飛び込み、伸び切った膝、相手が先に触れた後の遅れた突入は、警告〜退場の対象になりやすい典型例です。

相手を危険に晒す可能性が高い状況の回避

死角からのスライディング、タッチライン外へ押し出すような体勢は避けましょう。止めるなら減速と角度変更で。

グラウンド状態・スパイク・速度が与える影響

濡れた芝や凍結、硬い土は滑走距離が延びます。スパイクのスタッド形状と速度が同じ接触でも危険度を上げます。

ホールディング・プッシング:ユニフォーム・腕・体の使い方

ユニフォームを引く/掴むは原則反則

目立つ・目立たないに関係なく反則です。特にエリア内はリスクが大きいので厳禁。

継続的な捕縛と一瞬の接触の評価

一瞬の触れは流されても、継続的な引きや抱え込みは笛とカードの対象になりやすいです。

攻防ともに『同程度のつかみ合い』の扱い

互いに同程度なら流れることもありますが、先に優位を得た側の保持行為は取られやすいです。主審の早期傾向把握が重要。

接触が小さくても相手の前進を止める行為は反則

腰や肩を手で押さえ、スピードを殺す行為はSPAの典型です。

シールド(ボールを隠す)とインピーディングの線引き

ボール可触距離にあることが前提

シールドが認められるのは、常にボールに触れられる距離にある場合のみ。離れればインピーディングの対象です。

体の入れ方:進路を塞ぐのは可、押し退けるのは不可

体でラインを作るのは可。ただし腕や背中で押し退けるとホールディング/プッシングです。

腕を広げての妨害・脚の張り出しの評価

腕を広げて進路を広範に遮る、脚を外へ張り出して引っかけるのは反則リスクが高いです。

ゴールキーパーへの妨害(接触の有無で変わる)

GKのキャッチ動作を接触なく妨げるのはインピーディング、接触があれば直接FKの対象です。エリア内でのGKへの接触は特に厳しく見られます。

守備で許される腕の使い方とボディコンタクト

片腕の軽いタッチとプッシュの違い

肩甲骨付近に添える程度はOK。肘が伸びて押す、連続的に押し続けるとNGです。

上半身の当て方:胸・肩・腰の安全な接触

胸〜肩で並走しながら圧をかけ、腰を当てすぎない。骨盤で弾く動作はプッシングと見られやすいです。

前を向かせない“寄せ”の技術と反則回避

  • 半身で寄せ、利き足側のコースを切る
  • 足は小刻み、腕は外45度以内、常にボールと体の三角形を保つ

身体を当てる位置取り:相手の軸足・背中・脇の管理

軸足側に体を入れすぎるとトリッピングに見えます。背中の中央よりやや斜め前に位置取り、脇を締めて接触を制御しましょう。

セットプレーの取り合い:CK/FKでのホールディングと対処

VAR対象大会での基準が厳しくなる理由

エリア内の引っ張り・押しは映像で明確化されやすく、介入対象(PK・一発退場)に絡むため厳格化します。

ボールイン前の接触と主審の警告手順

主審はキッカー合図前に両者へ口頭警告を行うことがあります。注意後も続けば笛・カードの可能性が高まります。

ゾーン守備/マンマークごとのリスク管理

  • ゾーン:ブロックの角度を限定、視野確保を優先
  • マンマーク:手を使わない密着、ステップで前進を遅らせる

攻撃側のブロック(スクリーン)の可否

相手に接触して進路を塞げば反則。コース取りで味方をフリーにする「動きの交差」は可ですが、腕や体で止めるのはNGです。

戦術的ファウル、SPAとDOGSOの違い

SPA(有望な攻撃の阻止)と警告の基準

カウンターを軽く引っ張って止める、背後からの小さな押しで前進を妨げるなどが該当。ファウル+警告が基本です。

DOGSO(決定的得点機会の阻止)を判断する4要素

  • 距離:ゴールとの距離
  • 方向:攻撃方向(ゴールへ向かっているか)
  • 守備人数:他に守備者がいるか
  • ボール:コントロール可能性

PKエリア内のDOGSOにおける『二重罰軽減』の考え方

エリア内でボールへの正当なチャレンジを試みた結果のファウルでDOGSOとなった場合、退場ではなく警告に軽減されることがあります。引っ張り・押し・手での阻止などプレーの試みがない場合は退場の対象になり得ます。

ユニフォームを引く戦術ファウルの典型例

カウンター時に肩口を引いて進路を止める行為はSPAの代表例。位置と状況次第でDOGSOに発展します。

アドバンテージの考え方と選手のふるまい

主審が数秒評価して適用・不適用を決める仕組み

ファウル発生から約2〜3秒で、継続した方が有利かを判断します。不適用なら元の反則地点に戻ります。

アドバンテージ後の懲戒:プレーが止まってからの警告

プレー続行後でも、次のアウトオブプレーでSPAや無謀な行為に対する警告が示されます。

選手側の最適解:止まらない・切り替える・余計なアピールをしない

アピールで足を止めると損です。続行しつつ、止まった時にキャプテンが事実確認を行いましょう。

シミュレーション(わざと倒れる)と正当な転倒の見分け

接触があっても反則ではないケースがある

軽微でプレーに影響しない接触は流されます。接触=即ファウルではありません。

誇張・遅延の倒れ込み・顔を押さえる仕草の評価

遅れて倒れる、過剰な回転、顔へ当たっていないのに顔を押さえるなどはシミュレーションとして警告の対象です。

接触角度・速度・足の運びから見える整合性

審判は接触方向と転倒方向の一致、歩幅の乱れ、次のプレー可能性を総合評価します。

得点機会周辺での厳格な審査

エリア内や決定機周辺では特に厳格。過剰な演技は逆効果です。

反則の罰則:直接FK・間接FK・PK・警告・退場

直接FK/PKになる代表的行為(キック・チャージ・ホールディング等)

エリア内で守備側が直接FK対象のファウルを犯すとPKです。ホールディング、プッシング、トリッピング、ハンドなどが該当します。

間接FKになる行為(危険なプレー・インピーディング・GK関連)

接触なしの妨害やGKの取り扱い違反が中心です。間接FKの合図は腕を上げ続けるシグナル。

警告の主な類型(反スポ・異議・遅延・継続的違反)

  • 反スポーツ的行為(SPA、無謀など)
  • 異議(身振りや言動による抗議)
  • プレーの再開遅延
  • 継続的な違反の累積

退場となる類型(著しい反則行為・暴力行為・DOGSO等)

過剰な力のタックル、暴力、スパイティング、DOGSO(条件次第)などが該当します。

年代・カテゴリー差と審判の傾向

安全重視で『無謀』判定が早まる場面

育成年代・学生大会は安全最優先。足裏や背後からは特に早い段階で警告に達しやすいです。

フィジカル水準が高い試合での許容接触の幅

プロや上位カテゴリでは肩同士の強い当たりが流れることも。とはいえ、危険・利点消失はどの年代でも基準は変わりません。

大会規定でスライディングを制限するケースへの対応

一部の育成大会・交流戦で安全目的の限定ルールがある場合は、その規定に従ってください。

VARがある試合/ない試合で変わること

介入対象(得点・PK・一発退場・人違い)の整理

VARは「得点」「PK」「一発退場」「人違い」に関わる明白な誤りのみ介入します。

『明白かつ明白な誤り』のハードルと主審の基準維持

軽微な接触は介入対象外。主審のオンフィールド基準が基本で、VARは補助です。

リプレー前提のリスク管理:ペナルティエリア内の手・腕・引っ張り

エリア内での腕の位置、シャツの引きは映像で明確化されます。特に守備者は腕を畳み、体で勝つ意識を。

抗議を減らすコミュニケーション術とキャプテンの役割

短く事実確認:『どの行為が?』の聞き方

「どの行為で?」と要点だけ確認。感情を乗せないのが得策です。

主審の基準を早期に把握してチーム内に共有

前半早い時間の判定で基準を読み取り、給水・ハーフタイムに共有しましょう。

不要な異議と遅延行為を回避する実務

カードを増やす最大要因は異議と遅延です。キャプテンが整理役となり、声掛けで抑えましょう。

トレーニングで身につける『ファウルしない強さ』

ヒップ・トゥ・ヒップの当て方ドリル

並走→腰の横を軽く当てる→肩を入れ替える→ボール奪取、の段階ドリル。腕は外45度以内を徹底。

減速とステップワークでレイトを消す

最後の3歩を小刻みに。減速→角度変更→一瞬のストップで、遅れ突入を防ぎます。

腕位置コントロール:外側45度の“安全ゾーン”

鏡・動画でチェックし、走行中も肘が開きすぎない習慣を作る。相手接触時に自動で畳めるまで反復。

正面を切る寄せとカーブランの角度付け

利き足外へ曲線で寄せてコース限定。正対しすぎると抜かれ、後追いの反則を誘発します。

スライディングの可否判断を養う状況トレ

距離・角度・相手のタッチ数・サポート人数で可否を即断するゲーム形式。迷うなら立って奪うを原則に。

よくある質問(Q&A)

肩で相手を弾いたがファウル?判断の3条件

肩と肩、ボール可触距離、速度差が小さい。いずれか欠けるとファウルになりやすいです。

ボールに触れたのに笛が鳴るのはなぜ?

その後に相手へ危険・過剰な接触が発生している、またはレイトで突入したためです。

相手が自分にぶつかってきた時の自己防衛の限界

腕で押し返すのはNG。胸・肩で衝撃を吸収し、腕は体側へ。相手を振り払う動作は反則になりやすいです。

至近距離で手に当たったハンドの扱い

距離が極端に近く避けられない場合は不問になりやすいですが、腕位置が不自然に広がっていれば反則の可能性があります。

GKへのチャージとセーフティの優先順位

空中でのGKへの接触は厳格。ボールに行く意図があっても、腕・体での接触はファウルになりやすいです。

まとめ:今日から意識するチェックリスト

接触前の減速・角度・腕位置の3点確認

  • 最後の3歩で減速できているか
  • 相手の利き足外へ角度を取れているか
  • 腕は外45度以内か

ペナルティエリア内の『リスク3倍』ルール

エリア内の引っ張り・手の広がり・レイトは即失点級。体で止める、腕は畳む、足裏は見せない、を徹底。

主審基準の早期把握とチーム全体の順応

立ち上がり数プレーで基準を観察。情報はピッチ内で即共有し、不要な抗議は避ける。

勝負所で反則に依存しない守備の型を持つ

寄せの角度・ステップ・体の入れ替えの型を練習で固める。迷いが減れば反則も減ります。

あとがき

ファウルの線引きは、ルールの文字だけでは測れない「文脈」を含みます。接触の質、相手への影響、場所と状況。ここを丁寧に積み上げるほど、あなたの守備は強く、クリーンになります。今日の練習から「腕は畳む」「最後の3歩を整える」「相手の利点を消す」を合言葉に、勝負どころで笛を吹かれない強さを身につけていきましょう。

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