キックオフ直前でも読める、サッカーの基本ルールまとめ。テレビ中継やスタジアム観戦で「今、何が起きた?」を即座に理解できるよう、必要なポイントだけをやさしく整理しました。専門用語は最小限、でも実戦で役に立つ観点はしっかり盛り込みます。この記事だけで、試合を何倍もおもしろく観られるはずです。
目次
3分でつかむサッカーの全体像
何人でどう戦うのか(人数・交代・用具の基本)
サッカーは1チーム11人(うち1人はゴールキーパー)でプレーします。控え選手との交代は大会規定によって異なりますが、近年の多くの大会では最大5人まで(交代できる回数の「機会」は制限あり)です。退場者が出ても基本は続行し、最少7人を下回ると試合は成立しません。
用具はユニフォーム(同色の上衣・短パン・ソックス)、すね当て、スパイク。ゴールキーパーは色が他の選手と明確に区別できるウェアが必要です。アクセサリーや危険物の着用は不可。ボールは主に5号球を使用します(育成年代はサイズが異なる場合あり)。
勝敗の決まり方と試合時間(90分+アディショナルタイム)
通常は前半45分・後半45分の計90分。時間内の得点が多いチームが勝ちです。プレーが止まった分は「アディショナルタイム(AT)」として各ハーフの終わりに追加。交代・負傷処置・VARチェックなどで増えます。トーナメントでは規定により延長戦(15分×2)やPK方式になる場合があります。
コート(ピッチ)の基本とラインの意味
四角いピッチの外周はタッチライン(長辺)とゴールライン(短辺)。すべてのラインは「その内側」に含まれます。ボールが完全にラインを越えたときだけアウト。ペナルティーエリアは守備側ゴール前の大きな四角で、ここで守備側の直接FKファウルが起きるとPKです。コーナーアークはCKの置き場所を示します。
開始から終了までの流れ
キックオフと陣地選択の手順
コイントスで陣地かキックオフの権利を選びます。キックオフはセンターマークから。今はボールを後ろに下げてもOK。得点後もキックオフで再開します。
ボールがイン/アウトになる瞬間と再開の原則
ボールがラインを「完全に」越えるとアウト。誰に当たったか、どこから出たかで再開方法が変わります。タッチラインから出たらスローイン、守備側が最後に触れて自陣ゴールラインを越えたらCK、攻撃側が最後に触れて越えたらGKです。ファウルやオフサイドはフリーキックで再開します。
アディショナルタイム・延長戦・PK方式の違い
ATは主審の裁量で決定し、第4の審判が掲示します。90分で決着しない場合、競技会規定に従い延長戦→PK方式の順で実施されることが多いですが、リーグ戦では引き分けのまま終了するケースもあります。
これだけは押さえる主要ルール
オフサイドを感覚で理解する(最後の2人目・パスの瞬間)
オフサイドは「相手ゴールに近すぎる位置取りで有利を得るのを禁止する」ルール。基準は2つ。
- 位置:攻撃側選手の体の一部(手・腕以外)が、ボールと相手の「2人目の選手(通常は最終DF+GK)」よりも相手ゴールに近い場所にある。
- タイミング:味方がボールを「蹴った(触れた)」瞬間にその位置にいた。
この2条件を満たし、かつプレーに関与したら反則。ラインと同一線はオン(反則なし)。スローイン、ゴールキック、コーナーキックからはオフサイドになりません。
ファウルと危険なプレー(直接/間接FKの違い)
相手を蹴る、突く、押す、足をかける、無謀に突進する、ホールディング(つかむ)、ハンドなどは「直接フリーキック(DFK)」対象。守備側の自陣PA内でこれが起きるとPKです。
「間接フリーキック(IFK)」は、危険なプレー(相手を怖がらせるだけで接触なし)、キーパーの6秒オーバー、オフサイド、妨害(進路妨害)など。主審は腕を上げたまま示します。IFKはボールが味方・相手の誰かに触れて初めて得点が認められます。
ハンドの基準と「不自然な手の位置」
ハンドは「手や腕で意図的にボールに触れる」行為、または「体を不自然に大きくする手の位置」で有利を得た場合に取られます。肩の付け根より下の腕が対象。至近距離で避けられない接触や、自然な支え手は状況次第でノーファウルになることがあります。攻撃側の偶発的な手/腕使用が直後の得点に直結した場合は反則になります。
ペナルティーエリアとペナルティーキックの関係
守備側のPA内でのDFKファウルはPK。キッカーはゴールへ1回で蹴ります。キーパーは蹴られる瞬間、少なくとも片足の一部がゴールライン上(またはその線上)にある必要があります。味方・相手選手はPA内とペナルティーマークから一定距離外に退き、早く侵入するとやり直し(または無効)になることがあります。
スローイン/ゴールキック/コーナーキックの再開方法
- スローイン:両手で後頭部より後ろから頭上を通して投げ、両足はタッチライン上か外側に接地。直接得点は不可。
- ゴールキック:ボールはゴールエリア内に静止させ、蹴って明確に動いた瞬間にインプレー。相手はPA外へ退く義務があります。
- コーナーキック:コーナーアーク内に静止。蹴って明確に動いたらインプレー。直接得点も可能です。
審判・VAR・カードの見方
主審・副審・第4の審判の役割
主審は試合の全決定権を持ち、ファウル・得点・試合時間を管理。副審(両タッチライン)はオフサイドやボールアウトを補助。第4の審判は交代手続き、表示板、テクニカルエリアの管理を担当します。VARが導入される試合では、映像審判が重大な事象をチェックします。
イエロー/レッドカードの基準と累積の考え方
イエローカードは警告(遅延行為、反スポーツ的行為、繰り返しの反則など)。レッドカードは退場(乱暴な行為、得点機会の阻止、暴言など、もしくは2枚目のイエロー)。累積警告による出場停止の基準は大会規定によります。
VARで何がレビュー対象になるか(得点/PK/一発退場/人違い)
VARは「明白で重大な間違い」を是正するために限定運用。対象は①得点かどうか、②PKの可否、③一発退場の可否、④人違いのカード。主審は耳に手を当てて通信し、必要に応じてオンフィールドレビュー(モニター確認)を行います。
ポジションと役割の超入門
GK/DF/MF/FWの基本タスクと連携
- GK:最後の砦。シュートストップ、ハイボール処理、ビルドアップの起点。
- DF:ゴール前を守る。マークとカバー、ラインコントロール。
- MF:攻守のつなぎ。ボール運びと配給、セカンドボール回収。
- FW:得点と前線からの守備。裏抜けとポストプレーを使い分けます。
連携のキモは「距離」と「角度」。三角形を作る意識でパスコースを確保しましょう。
フォーメーションの読み方(例:4-4-2/4-3-3/3-5-2)
数字は後ろから並びの人数。4-4-2はバランスがよく、4-3-3はウイングを生かす攻撃型、3-5-2は中央を厚く守りつつ両WBが幅を作ります。同じ並びでもタスクはチーム方針で大きく変わる点に注目を。
セットプレー時の配置と狙い(ニア/ファー/混戦)
ニアは早いボールで先触り、ファーは流れてくる軌道を叩く、混戦はセカンド狙い。スクリーンやブロックでマークを外す工夫も見どころです。
反則になりがちなシーンを観戦で見分ける
守備のチャージとホールディングの境界
肩と肩の合法的なチャージはOK。ただし背後や横からの突進、腕で相手をつかむ・引くのはホールディングで反則です。ボールにチャレンジできる位置関係かが判断材料。
スライディングタックルの安全基準
ボールに先に触れても、相手を危険に晒す無謀さがあれば反則。裏からのタックル、足裏を見せる突入、遅れての接触はカード対象になりやすいです。
オフサイドラインと最終DFの駆け引き
守備側はラインを上げてコンパクトに、攻撃側は最終DFの背後を狙って同一線で飛び出す。パスが出る「瞬間」を意識すると、判定が腹落ちします。
1分でわかるセットプレー必勝チェック
コーナーキックの基本パターン(インスイング/アウトスイング/ショート)
- インスイング:ゴール方向に曲がる。ニアでのそらしやゴール前混戦を作りやすい。
- アウトスイング:ゴールから遠ざかる。走り込みで当てやすくクリアされにくい。
- ショート:数的優位を作って角度を変える。クロスブロック回避に有効。
直接FKの壁の距離とキッカーの選択肢
壁はボールから9.15m。主審の合図後にキック。狙いは「越す・曲げる・ズドンと割る・低く抜く」。GKの死角とバウンドを使う工夫に注目です。
スローインからのチャンスづくりのコツ
近くに戻すだけでなく、サイドでの三角形形成、ロングスローでの混戦、スロー→ワンツーで前進など。相手の視線が途切れる一瞬を突きましょう。
テレビ中継・スタジアムで役立つ表示の読み方
スコアボードと試合時間(時計の進み方・AT表記)
多くの中継は前半「◯◯’」、ATは「+◯」。例:45+2’は前半ATの2分。掲示板の緑・赤の数字は交代(IN/OUT)を示します。
スタッツの意味(支配率・xG・シュート・パス成功率)
- 支配率:ボール保持の割合。高くても有効攻撃とは限りません。
- xG:シュート位置や状況から算出した得点期待値。質の指標。
- シュート:枠内・枠外・ブロックに分類。決定機の数と質を併読。
- パス成功率:安全な横パスは上がりやすい。前進の難度も意識を。
交代・カード・VAR表示の読み解き
交代はボードの番号で表示、イエローは黄、レッドは赤で示されます。VAR中は「チェック中」→「オンフィールドレビュー」などの表記やジェスチャーに注目。
よくある誤解と正しい理解
「ボールがラインにかかったらアウト?」の真実
いいえ。ボールの全体がラインを越えたらアウト。少しでもラインに触れていればインプレーです。
「キーパーは6秒以上持てる?」保持時間のルール
キーパーが手でボールをコントロールできる状態は原則6秒以内。超過はIFK対象ですが、実際には試合状況に応じて注意→反則適用の順で運用されることが多いです。
「接触は全部ファウル?」許容されるコンタクト
肩同士のチャージやボールをめぐる合理的な接触は許容範囲。乱暴さ、危険性、ボールへの挑戦があるかが重要な判断材料です。
初心者でもすぐ楽しめる観戦のコツ
ボールではなくスペースを見る
ボール保持者だけでなく、空いているスペースとそこへ走る選手を見ると、次の一手が見えてきます。
プレスの合図とトランジションに注目
合図はトラップミス、バックパス、タッチ際など。奪った直後・失った直後(トランジション)の10秒はゴールが生まれやすい時間帯です。
審判の笛のタイミングとアドバンテージ
ファウルでも攻撃側に有利な展開なら「アドバンテージ」で流すことがあります。主審が両腕を前に出すジェスチャーが合図。直後に不利なら戻してFKにします。
観戦マナーと安全に楽しむポイント
応援・写真撮影・持ち込みの基本
席種やスタジアムごとにルールが異なります。立見可否、太鼓や鳴り物、フラッシュ撮影、飲食持ち込みなどは事前確認を。通路の滞留を避け、周囲への配慮を忘れずに。
雨天・ナイター・混雑時の準備
雨はカッパ推奨(傘は後方の視界を遮るためNGが多い)。防寒具、モバイルバッテリー、現金・キャッシュレス両方あると安心。帰りの動線も事前にチェックしましょう。
子ども連れ観戦の注意点
通路に近い席、トイレ位置の確認、音量が大きい応援席を避ける配慮も。耳栓やヘッドフォンを用意すると安心です。
ルールが微妙に違うケース
大会ごとの交代枠・延長方式の違い
近年は多くの大会で交代枠5人(実施回数は3回+ハーフタイム)を採用。延長の有無、PKの実施、ベンチ入り人数や交代回数は大会規定で変わります。
育成年代や女子の主な競技規則差の概要
育成年代は試合時間が短い、交代の再出場可などのローカルルールがあり得ます。女子の競技規則は基本的に同一ですが、カテゴリーごとに細部の運用が異なる場合があります。
室内や小規模サッカー(フットサル等)の基本差分
フットサルは5人制、オフサイドなし、キックイン、4秒ルール、累積ファウルなど独自規則。ピッチが小さいため、切り替えの速さと個の技術がより重要です。
用語ミニ辞典(観戦前の30語)
用語A–H(アドバンテージ/インターセプト/カバーリング ほか)
- アドバンテージ:ファウル後も攻撃有利なら続行。
- アーリークロス:早めに入れるクロス。
- アンカー:中盤底の守備的MF。
- インターセプト:パスのカット。
- インスイング:ゴールへ曲がるクロス/CK。
- ウイング:サイドの攻撃的選手。
- オーバーラップ:外側を追い越す走り。
- カバーリング:味方の背後を守る動き。
- カウンター:奪って速攻。
- キーパー(GK):守護神。
用語I–Q(インテンシティ/xG/キルゾーン ほか)
- コンパクト:陣形の間隔を詰めること。
- スイッチ:攻撃の方向転換。
- セカンドボール:こぼれ球。
- ゾーンディフェンス:エリアを守る守備法。
- タイトマーク:密着マーク。
- トランジション:攻守の切り替え。
- ニア/ファー:近い/遠いポスト側。
- ハーフスペース:サイドと中央の間の通路。
- プレス:ボール保持者への圧力。
- xG:得点期待値(シュート質の指標)。
用語R–Z(リトリート/ロングボール/ワイド ほか)
- ビルドアップ:後方から組み立て。
- ピン止め:DFを引きつけて動けなくすること。
- ブロック:守備の隊形。
- ペナルティーアーク:PA外の半円。
- ホールディング:つかむ反則。
- マーク:相手の監視・抑え。
- リトリート:下がって守る。
- レイオフ:落としのパス。
- ロングボール:長いボールを前線へ。
- ワイド:幅を取る配置。
まとめ:今日の試合はここを見よう
試合前チェックリスト(対戦カード/主審/天候)
- 対戦カードの相性:前回対戦、得点源。
- 主審の傾向:流すタイプか厳格か。
- 天候とピッチ:雨ならロングボールとセットプレーが増えがち。
前半で見るべき3ポイント(プレス/ビルドアップ/セットプレー)
- プレスの強度とトリガー(どこで狙う?)。
- ビルドアップの形(3枚化・偽SB・アンカー経由)。
- セットプレーの質(キッカーと狙いの傾向)。
後半で流れが変わるサイン(交代/疲労/戦術修正)
- 交代のカード:サイドのフレッシュ投入で局面一変。
- 疲労の表れ:戻りが遅くなる、間延び。
- 戦術修正:3バック化、プレスの高さ変更、ロングボール多用。
後書き
ルールを「大枠」でつかむと、細かな判定も筋道立てて理解できます。難しく感じるオフサイドやハンドも、位置・タイミング・安全性という3つの軸で見るとスッと入ってきます。今日の試合は、ボールと同じくらい「スペース」と「合図」に注目してみてください。きっと、プレーの意図が立体的に見えてくるはずです。さあ、準備は整いました。キックオフを楽しみましょう。