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ピッチサイズは世界共通?公式規格と年代別・地域差を解説

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「サッカーのピッチサイズって世界共通?」この素朴な疑問、実は選手や指導者の意思決定に直結します。サイズが違えば、走行量も、プレスの効き方も、セットプレーの狙いどころも変わるからです。この記事では、公式規格の根拠から年代別・地域差、戦術や運用への影響、そして実務の測り方までを一気通貫で整理します。数字の暗記ではなく、「なぜそうなっているか」を押さえれば、今日からの練習と試合がクリアになります。

結論:サッカーピッチのサイズは世界共通ではない

結論から言うと、サッカーのピッチサイズは世界共通ではありません。ルール上の許容範囲が示され、その中で大会や施設事情に応じてサイズが決まります。トップ大会では「105×68m」が事実上の標準として広く使われていますが、IFAB(国際サッカー評議会)が定める「ロウズ・オブ・ザ・ゲーム」では幅を持った範囲が許容されています。さらに、年少者向けや小人数制では各協会が独自にサイズを設定できます。つまり、「ルールで固定」ではなく「ルールの枠内で最適化」されています。

公式規格の全体像:IFABのルールとFIFAの大会基準

ロウズ・オブ・ザ・ゲームが定める範囲(一般試合/国際試合)

IFABのロウズ・オブ・ザ・ゲーム(競技規則)では、11人制サッカーのピッチ寸法に以下の幅があります。

  • 一般試合の範囲:長さ90〜120m、幅45〜90m
  • 国際試合の範囲:長さ100〜110m、幅64〜75m

この中で大会主催者やリーグが具体のサイズを指定します。設備や安全、放送、分析の要件に合わせて「幅のある許容」を与えているわけです。

105×68mが使われる背景(大会運営・放送・分析の標準化)

FIFAワールドカップや多くの主要リーグ/国際大会では「105×68m」が推奨・指定されることが一般的です。理由はシンプルで、

  • スタジアム設計・安全管理を標準化できる
  • テレビカメラの画角やトラッキング、オフサイド判定補助のキャリブレーションが安定する
  • パフォーマンス分析(走行量・ゾーン区分・期待値モデルなど)の比較可能性が高まる

統一は公平性と運営効率を上げ、観戦体験も一定化します。とはいえ、全世界のすべての公式戦が105×68mというわけではありません。

ライン幅・ゴール・ペナルティエリアなど共通寸法のポイント

  • タッチライン/ゴールラインの幅:同一幅で最大12cm
  • ゴールサイズ(11人制):幅7.32m×高さ2.44m(内側寸法)。ゴールポストとクロスバーは白色で、幅と奥行は同一
  • ペナルティエリア:ゴールラインから16.5m進入、両側はゴールポストの内側から16.5m
  • ゴールエリア:ゴールラインから5.5m進入、両側はゴールポストの内側から5.5m
  • ペナルティマーク:ゴールラインから11m
  • センターサークル半径:9.15m
  • コーナーアーク半径:1m(コーナーフラッグの高さは最低1.5m)

ピッチの絶対サイズに幅があっても、これらの「中の基準」は世界で共通です。

安全帯(ランオフ)とテクニカルエリアの考え方

プレーイングエリアの外側には、選手の転倒や接触に備える「安全帯(ランオフ)」を確保します。必要距離は大会・リーグ規定によりますが、実務上はタッチライン・ゴールライン外側に数メートルの余白を設ける運用が一般的です。また、チームベンチ前には「テクニカルエリア」を設け、境界を明示します。タッチラインから十分な距離を取り、スタッフがエリアを逸脱しないよう表示します(具体距離は大会要項に従う)。

年代別のピッチサイズ:U-12・U-15・高校・大学・社会人の考え方

IFABが認める年少者向けの変更と各協会の裁量

IFABは年少者・シニア・障がい者向けに、フィールドサイズやボール、競技人数などの「適応」を認めています。実際の寸法は各協会・大会が定め、成長段階や施設事情に合わせて調整されます。つまり、U-12やU-15で使うピッチは「その大会のルールが正解」です。

8人制・9人制など小人数制での一般的なサイズの考え方

  • 8人制(例:U-12):フルサイズより小さい専用ピッチを使用。多くの協会で11人制用より短く・狭く設定し、ゴールも小型化(例:5×2m前後が用いられることが多い)
  • 9人制:フルサイズ未満の中間サイズを使用。ゴールは中型を用いる地域もあります

いずれも「長辺:短辺の比(縦横比)をおおむね1.3〜1.5に保つ」とプレー感が大きく崩れにくい、というのが指導現場の実務知見です。ただし、正解は大会要項に従うこと。目安にしつつ、必ず規定を確認してください。

指導現場でのピッチ調整(強度・意図別の縦横比)

  • 縦長に設定:背後のスペースを強調。ロングボールやディフェンスラインの背後管理、移行局面(トランジション)の走力を鍛えやすい
  • 幅広に設定:サイドの1対1、ハーフスペースの創出、スイッチングと横ズレの守備練習に向く
  • コンパクトに設定:狭い局面での判断速度、サポート角度、即時奪回(5秒ルールなど)の強度を高めやすい

同じ人数でも、意図に合わせて5〜10m単位で縦横をいじると、トレーニングの質がガラッと変わります。

地域差と施設事情:なぜ国やリーグで違いが生まれるのか

陸上競技場併用とサッカー専用スタジアムの違い

陸上競技場併用のスタジアムはトラックのカーブやDゾーンの形状により、フルの「105×68m」が取れないケースがあります。幅をやや狭めたり、ランオフを調整したりといった運用が生まれやすく、地域差の一因になります。サッカー専用スタジアムは105×68mと十分な安全帯を設計段階から確保しやすいため、上位大会ほど標準化が進みます。

気候・芝種・メンテナンスとサイズ運用

気候や芝の種類、維持管理のリソースは、ピッチサイズの「現実的な選択」に影響します。高温多湿や降雨が多い地域では芝のダメージを抑えるために利用面積の運用を工夫することも。人工芝施設ではラインの耐久性や張り替え周期が考慮され、ラインレイアウトの自由度に差が出る場合があります。

学校・公共施設のラインマーキングと規約のすり合わせ

学校や公共施設は複数競技のラインが同居することが多く、色分けやサイズの折り合いが必要です。大会規約の要求を満たすラインに加えて、練習用のサブラインを用意し、当日は必要な線だけを活かすといった運営で整合を取るケースもあります。

競技パフォーマンスへの影響:ピッチの大きさが戦術をどう変えるか

縦長・幅広・コンパクト、それぞれのゲームモデル

  • 縦長:背後を突くカウンターやダイレクトプレーが効きやすい。守備は最終ラインの管理とGKのスウィーパー能力が重要
  • 幅広:サイドチェンジで相手の横スライドを遅らせやすい。ウイングの1対1やオーバーラップの価値が上がる
  • コンパクト:密度が高まり、即時奪回と素早いサポートがモノを言う。ビルドアップは細かな角度と身体の向きがより重要に

セットプレーとトランジションへの影響

  • セットプレー:ペナルティやゴールエリアの寸法は共通だが、全体が広いほど相手陣地へ運ぶ過程の難易度や配置の距離感が変化。コーナー付近のスペース量はクロスの助走やショートコーナーの角度選択に影響
  • トランジション:広いピッチではカバー距離が伸びるため、帰陣の基準とスプリントの閾値が変わる。狭いピッチではリバウンドボールの競り合い頻度が上がる

GPSデータ視点での走行量とスプリント本数(概念)

例えば100×64m(面積6,400㎡)と105×68m(7,140㎡)では面積が約11.5%違います。ゲームモデルにもよりますが、総走行距離・高強度走行・スプリント本数は広いピッチで増えやすい、という傾向が現場データでも一般的に見られます(あくまで傾向であり、必ずしも比例はしません)。

実務ガイド:自チームに適したサイズを選ぶ・測る・申請する

大会要項・リーグ規約の読み方

  • ピッチ寸法(長さ×幅)の許容範囲と推奨値
  • 安全帯(ランオフ)の必要距離と障害物の扱い
  • ゴールサイズ・ネット・固定方法(転倒防止ウェイトなど)
  • ライン色・幅、コーナーフラッグの仕様(高さ1.5m以上)
  • テクニカルエリアの表示方法とベンチ位置

「過去はOKだった」ではなく、毎季の最新要項を必ず確認しましょう。

実測と設営のチェックリスト(対角の一致=直角確認)

  • 巻尺で長さ・幅を実測。仮ピンで四隅を打つ
  • 対角線を測って左右の対角が同一か確認(長方形の条件)。3-4-5の直角三角形(例:6m-8m-10m)を用いて直角を作る方法も有効
  • センターマークから半径9.15mのサークル、コーナーアーク半径1mを紐やロープで描く
  • ペナルティマーク11m、ゴールエリア5.5m、ペナルティエリア16.5mをゴールの内側基準から測る
  • ライン幅は同一で最大12cm以内。にじみ・切れ目がないか目視でチェック
  • ゴールは転倒防止を確実に。ネットの破れ・固定具の突起に注意

主審・相手チームとの事前確認で避けるトラブル

  • 大会規定の範囲内であることを事前に共有(図面・寸法表を用意)
  • 施設の制約で推奨値に届かない場合は、主催者の承認と当事者間合意を早めに
  • ラインの色が多い会場では、当日使用するラインを明確化し、審判団と再確認

よくある質問(FAQ)

国際試合はすべて105×68mなの?

多くの主要国際大会で105×68mが指定・推奨されていますが、IFABの範囲(長さ100〜110m、幅64〜75m)内で運用されることもあります。大会規定とスタジアム事情に依存します。

高校生の公式戦で許される最小・最大は?

大会要項次第です。一般に、国内の多くの大会はIFABの一般試合の範囲(長さ90〜120m、幅45〜90m)または国際試合の範囲に準じて設定します。必ず主催団体の最新規程を確認してください。なお、ゴールやペナルティエリア等の内部寸法は大人と同一です。

フットサルやソサイチのサイズとどう違う?

  • フットサル(国際試合):長さ38〜42m、幅20〜25m。ゴールは幅3m×高さ2m
  • フットサル(非国際):長さ25〜42m、幅16〜25m
  • ソサイチ(7人制など):主催団体ごとのローカル規定。おおむねサッカーとフットサルの中間サイズが用いられます

名称が同じでも主催が違えばサイズも変わることがあるので、必ず要項をチェックしましょう。

ゴールサイズはどこでも同じ?

11人制の公式戦用ゴールは世界共通で「7.32m×2.44m」です(内側寸法)。年少者向け・小人数制では小型ゴールが使われます。ゴールポストとクロスバーの幅・奥行は同一で、色は白が原則です。

用語ミニガイド:タッチライン/ゴールライン/プレーイングエリア

ピッチとフィールド・オブ・プレーの違い

一般に「ピッチ」はサッカーの競技場全体を指す口語的な言い方です。ロウズ・オブ・ザ・ゲームでは、線の内側の「競技が行われる長方形」を「フィールド・オブ・プレー(プレーイングエリア)」と表現します。

ラインはエリアに含まれる

ルール上、すべてのラインはそれが示すエリアに含まれます。例えば、ボールがライン上に少しでも触れていればインプレー、ペナルティエリアライン上のファウルはペナルティとなります。

単位換算(mとヤード)の早見の考え方

  • 1ヤード=0.9144m(ざっくり「約0.91m」)
  • 100ヤード≒91.44m、120ヤード≒109.73m
  • 50ヤード≒45.72m

ヤード表記の資料を見たら、×0.91で概算すれば現場でも十分役立ちます。

まとめ:ピッチサイズを知れば練習も戦い方も変わる

サッカーピッチのサイズは世界共通ではありません。IFABが許容範囲を定め、その枠内で大会・施設・年齢に合わせて最適化されています。上位大会では105×68mが実質標準ですが、地域や会場による差は現実に存在します。だからこそ、

  • 大会要項を読み、現地の実寸を把握する
  • 目的に応じて縦横比を調整し、練習設計に落とし込む
  • 主審・相手と事前に共有し、当日の迷いをゼロにする

この3点を徹底するだけで、戦術のハマり方もコンディション管理も変わります。次の試合前に、まずは自分たちのホームグラウンドを実測し、数値で語れるチームになりましょう。

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