トップ » 体調管理 » サッカー クレアチン 摂取 サッカー向けで反復ダッシュと爆発力を伸ばす

サッカー クレアチン 摂取 サッカー向けで反復ダッシュと爆発力を伸ばす

カテゴリ:

90分を通して繰り返されるスプリント、最初の一歩の速さ、空中戦での滞空、切り返しのキレ。サッカーの勝敗を分けるのは、技術や戦術だけでなく「反復ダッシュ」と「爆発力」をどれだけ安定して出し続けられるかです。この記事では、サッカー向けにクレアチン摂取をどう活用すれば、その2つを底上げできるのかを、エビデンスと実践の両輪でまとめました。嘘や誇張は避け、実際に使える用量・タイミング・トレーニング連動まで具体的に解説します。

サッカーとクレアチン:反復ダッシュと爆発力の関係

反復ダッシュ能力(RSA)の定義と試合での重要性

反復ダッシュ能力(Repeated Sprint Ability; RSA)は、短い全力スプリントを短い休息で何度も繰り返す能力のことです。試合では、ボールロスト後の即時プレス、裏への抜け出し、切り返し後の再加速、CK/守備からの切り替えなど、10~40mの高強度走を何度も要求されます。RSAが高い選手は、スプリントの終盤や延長でもスピード低下が少なく、意思決定の質も落ちにくくなります。

爆発的パワー(スタートダッシュ・ジャンプ・方向転換)を支えるエネルギー系

スタートダッシュやジャンプ、鋭い方向転換は、主に「ATP-PCr系(ホスファゲン系)」という超短時間のエネルギー供給に依存します。これは筋内にあるATP(アデノシン三リン酸)とPCr(フォスファクリエチン)をその場で使って力を発揮する仕組みで、0~10秒ほどの全力動作で主役になります。PCrは休息中に再合成され、約30秒で半分ほど戻るとされますが、試合中に完全回復の時間が取れることは少ないため、筋内PCrの「貯金」を厚くしておくことが、爆発力の安定につながります。

クレアチンとATP-PCr系:前半〜延長でも切れない瞬発力のメカニズム

クレアチン摂取により、筋内の総クレアチン量(特にPCr)が増えることが報告されています。PCrが増えると、全力動作の最初の数秒でエネルギーを素早く供給でき、休息中の回復も効率が上がります。結果として、1本目の出足の鋭さ、2本目以降の落ち幅の小ささ、後半の粘りにプラスになる可能性があります。効果の大きさには個人差がありますが、適切なトレーニングと組み合わせることで、RSAやジャンプなどの高強度パフォーマンスで小さくない差を生むことが期待できます。

クレアチンのエビデンス:サッカーへの効果はあるのか

研究サマリー:反復スプリント、ジャンプ、最大筋力への影響

  • 反復スプリント(RSA):サッカー選手やチームスポーツ選手を対象に、総仕事量の増加や疲労指数の改善(落ち幅の軽減)を示した研究があります。すべての研究で一貫ではありませんが、短い休息での繰り返しダッシュにプラスの傾向が見られます。
  • ジャンプ・爆発力:クレアチン単独では小~中程度の改善、ストレングスやプライオメトリクスと併用すると向上幅が大きくなる傾向があります。垂直跳びで数%の改善が報告されることがあります。
  • 最大筋力・パワー:レジスタンストレーニングと併用で、1RM(最大挙上重量)やピークパワーの向上が多数報告されています。サッカーではスクワットやヒンジ系の伸長がダッシュ初速の底上げに寄与します。

全体として、クレアチンはサッカーで重要な高強度反復・瞬発系のパフォーマンスを支えるサプリメントのひとつとして妥当性があり、特にトレーニングとセットで使うと効果が見えやすくなります。

効果が出やすい選手像(ポジション・体組成・トレーニング歴)

  • ポジション:ウイング、サイドバック、CFなどスプリント回数が多いポジションは体感しやすい傾向。
  • 体組成:筋量が少ない、または日常の肉・魚摂取が少なく筋内クレアチンが低めの選手は、伸びしろが大きい可能性。
  • トレーニング歴:レジスタンスやプライオを計画的に行っている選手ほど、クレアチンの上乗せ効果が出やすいです。

有効性に個人差が出る理由と限界(トレーニング依存性・プラトー)

  • 筋内クレアチンの初期値差:もともと高い選手は伸び幅が小さいことがあります。
  • 消化・吸収の個人差:胃腸の弱い選手は用量・タイミングの工夫が必要。
  • トレーニング依存性:クレアチンは「魔法」ではなく、質の高いRSA・パワートレが前提。練習の質が伴わないと頭打ち(プラトー)になります。

摂取方法の基本:用量・タイミング・期間

ローディング有り/無しの2パターンと選び方

  • ローディング有り:0.3g/体重kg/日を5~7日(例:体重70kgなら約20g/日を4回に分ける)。その後0.03g/体重kg/日(約3~5g/日)で維持。短期間で筋内PCrを満たしたい時(キャンプ前、テスト前)に有効。
  • ローディング無し:1日3~5gを継続。3~4週間で筋内レベルが飽和に近づく。胃腸への負担が少なく、シーズン中に導入しやすい。

1日の摂取量の目安(体重あたり)と分割摂取

  • 目安:0.03g/体重kg/日(目標は3~5g/日)。体格が大きい選手や消耗が大きい時期は上限寄りで。
  • 分割:胃腸が弱い場合は1~2gを数回に分け、食後に。ローディング時は4~5回に分けると安定。

タイミング(トレ前/トレ後/食後)の考え方

  • 原則:1日の総量を継続できることが最優先。タイミング差は小さいとされます。
  • おすすめ:トレ後または食後(炭水化物・タンパク質と一緒)だと取り込みがスムーズ。
  • トレ前:合う選手もいますが、胃もたれがあるなら避けましょう。

オフ期・試合期・合宿期での使い分け

  • オフ期(基礎作り):ローディング→維持で素早く飽和。筋トレ・プライオの伸びを狙う。
  • 試合期(インシーズン):胃腸に優先。ローディング無しで3~5g/日を習慣化。
  • 合宿・連戦期:試合間隔が詰まるほど回復が鍵。水分・電解質と併用し、摂取タイミングは練習後/食後に固定。

サッカー向け実践プラン:反復ダッシュと爆発力を伸ばす

4週間の導入プログラム例(クレアチン摂取×RSAトレ×プライオ)

前提:週5回の練習環境を想定。クレアチンは毎日3~5g(導入初週はローディング可)。

  • 週1~2:基礎づくり
    • RSA(1):20mスプリント×6本×2セット(レスト20秒/セット間3分)。
    • プライオ(1):ボックスジャンプ 3×5、連続ホップ 3×10m、スキップA/B。
    • ストレングス(下半身):フロントスクワット 4×4~6、RDL 3×6、ヒップスラスト 3×6。
    • 技術練習に加速・減速の意図的な挿入(受けて即スプリント)。
  • 週3:負荷漸増
    • RSA(2):30m×8本×2セット(レスト25秒/セット間3分)。
    • プライオ(2):デプスジャンプ 3×4、バウンディング 3×20m、ラテラルホップ 3×8/側。
    • CODドリル:5-10-5アジリティ 4~6本、プロアジリティ 4本。
    • ストレングス:スクワット 5×3(高重量・スピード意識)、クリーン/ハイプル 4×3。
  • 週4:ピーク化とテーパー
    • RSA(3):20m×10本×1~2セット(レスト20秒、フォーム維持優先)。
    • プライオ(軽め):ボックスジャンプ 3×3、反応スタート 6~8本。
    • ストレングス:メンテナンス 2~3種目×2~3セット(疲労を残さない)。
    • スピードテスト:10m/30m測定、垂直跳び、Yo-Yoテスト簡易版。

試合週のマイクロサイクルにおける配置と調整

試合を土曜想定:

  • 日曜(+1):回復走、モビリティ。クレアチンは通常通り。
  • 火曜(-4):RSAメイン日(負荷高)。プライオ+短い高強度。クレアチンはトレ後/食後。
  • 水曜(-3):技術・戦術+下半身ストレングス(中強度)。
  • 木曜(-2):加速・反応スタート中心(低~中容量)。
  • 金曜(-1):セットプレー確認・軽いスプリント(短時間)。
  • 土曜:試合。胃腸が敏感な選手はキックオフ直前の摂取を避け、朝食後に。

夏場・連戦時の留意点(脱水・痙攣・体重変動への対応)

  • 体重管理:練習前後の体重差をチェック(2%以上の減少は要対策)。
  • 水分・電解質:水+ナトリウム(塩)を意識。発汗が多い日は経口補水やスポーツドリンクも併用。
  • 痙攣:クレアチン自体が痙攣を増やす根拠は乏しい一方、脱水や電解質不足はリスク。塩分・水分・冷却で予防。
  • 体重増加:初期に0.5~1.5kgほど増えることがあります(筋内水分・筋量)。スパイクの紐を一段締めるなど微調整を。

食事との組み合わせと吸収を高める工夫

糖質・タンパク質との同時摂取での取り込み促進

  • 実務例:練習直後に牛乳+プロテイン+バナナにクレアチンを混ぜる/食事の白米・パスタ・丼ものと一緒に。
  • 目的:インスリンの働きで筋細胞への取り込みを助け、胃腸の負担も軽減しやすい。

水分・電解質戦略:吸収とパフォーマンスの両立

  • 1日の水分目安:体重×35~40ml+発汗量。練習前後の体重差で上乗せ量を調整。
  • ナトリウム:汗で失われやすい。塩分を怖がらず、食事で適切に補う。
  • 練習直前は大量一気飲みを避け、少量をこまめに。

カフェインとの併用に関する知見と実務上の工夫

  • 併用の研究結果は混在。高用量カフェインがクレアチンの一部効果を弱める可能性を示した報告もあります。
  • 実務:高容量(体重×3~6mg)のカフェインを使う選手は、クレアチン摂取タイミングを別時間帯にずらす、またはカフェイン量を調整して自分の反応を記録し最適化しましょう。

安全性と留意点

一般的な安全性と想定される副作用(胃腸症状・体重増加など)

  • 安全性:推奨量内(3~5g/日)での長期摂取は、健常者では概ね安全とされます。
  • 副作用:胃のむかつき、下痢、腹部不快感。対策は分割摂取・食後摂取・十分な水分。
  • 体重増加:初期の体重増は筋内水分や筋量増の影響が中心。パフォーマンス低下と直結しません。

腎機能・検査値への配慮と医療者への相談タイミング

  • 腎疾患の既往・家族歴がある場合、摂取前に医療者へ相談。
  • 健康診断で腎機能に懸念が出た場合は一時中止し、専門家の評価を。
  • 薬を服用中の選手は相互作用の可能性を医療者に確認。

年少アスリート(中高生)の判断材料と親のサポート

  • 基本は食事・睡眠・トレーニングが優先。サプリは「足し算」。
  • 使用する場合は用量を守り、親や指導者が摂取タイミング・体調を見守る。
  • 第三者認証を受けた製品を選び、ラベル表記を一緒に確認する習慣を。

アンチドーピングと競技規約

クレアチンの禁止表リスト上の扱いについての確認ポイント

  • クレアチンは一般的に禁止表リストには含まれていません。
  • ただし、各競技団体・大会の最新規約は定期的に確認しましょう。

サプリメント汚染リスクと第三者認証の活用

  • 製造工程での混入リスクはゼロではありません。
  • Informed Sport、NSF Certified for Sportなど第三者認証の製品を選ぶとリスク低減に役立ちます。

クレアチンの種類と選び方

モノハイドレートと他形態(HClなど)の違い

  • クレアチン・モノハイドレート:研究量・実績が最も豊富。コスト効率が高い。
  • HClなど他形態:溶解性は高いとされますが、パフォーマンス優位性は一貫しません。価格が高めなことが多いです。

品質確認:原材料、純度、第三者検査、表示の読み方

  • 原材料と原産国、クレアチン含有量(1回量あたり)を確認。
  • 不必要な添加物が少ないものを選ぶ。
  • 第三者認証・ロット検査の有無をチェック。ロット番号の追跡ができると安心。

パウダーvsカプセル:利便性とコストの比較

  • パウダー:コスパ良好、ドリンクに混ぜやすい。持ち運びはやや不便。
  • カプセル:手軽で計量不要。大量摂取時はカプセル数が増え、コスト高になりやすい。

トレーニング連動で効果を引き出す

反復スプリント(RSA)メニュー例と進め方

  • 例1:20mオールアウト×10本(レスト20秒)×2セット。セット間3分。
  • 例2:30mシャトル(15m往復)×6本(レスト25秒)×3セット。
  • 進め方:タイムが大きく落ちたら即終了。フォームを崩してまで続けない。

下肢・股関節のパワー育成(スクワット/ヒンジ/ランジ)

  • スクワット系(前後):高重量低回数(3~5回×3~5セット)で出力を狙う。
  • ヒンジ系(RDL/クリーンプル):地面反力を素早く伝える練習に。
  • ランジ系(前・後・側):片脚支持・安定性を高め、方向転換の土台を作る。

プライオメトリクスと方向転換ドリルの組み合わせ

  • プライオ:デプスジャンプ→反応スタート→加速10mの複合セット。
  • 方向転換:5-0-5(5mダッシュ→停止→反転→5m)、コーンドリルで左右差をチェック。
  • 原則:量より質。接地時間を短く、体幹と股関節の連動を意識。

データで効果を可視化:計測とフィードバック

RSAテスト・スプリントタイム・リカバリー指数のトラッキング

  • RSAテスト例:30m×6~10本(レスト20~30秒)。ベスト・ワースト・平均と疲労指数(落ち幅)を記録。
  • スプリント:10m/30mを月1回、同条件で計測。
  • 回復度:心拍回復、レスト中の主観呼吸の戻りをメモ。

GPS/加速度計の指標(高強度走行・スプリント回数・加減速)

  • 高強度走行距離(例:19.8km/h以上)とスプリント回数。
  • 加速・減速イベント数(高しきい値)とピーク速度。
  • 週ごとの推移で、負荷の上げ過ぎを避ける。

主観的指標(RPE、脚の張り、睡眠)の記録フォーマット

  • RPE(10段階)と睡眠時間、脚の張り(10段階)を毎日。
  • クレアチン摂取有無・時間・胃腸状態を一言メモ。
  • 2~4週で「合う・合わない」の判断材料に。

よくある質問(FAQ)

体重増加でスピードは落ちないか?

初期の体重増は主に筋内水分によるものです。多くの選手で初速やRSAがむしろ安定します。重さをネガティブに捉えず、10m/30mの実測で判断しましょう。

どのくらいの期間で実感できるのか?

ローディングありなら1週間前後、ローディングなしなら3~4週間で実感する選手が多いです。トレーニングの質が高いほど体感は早まります。

オフシーズン/インシーズン、始めるベストタイミングは?

ベストはオフ~プレシーズン。新しいサプリの導入は重要試合の直前を避け、体調・胃腸の反応を確認できる時期に。

やめたら効果はどうなる?サイクルの組み方は?

摂取をやめると数週間で筋内クレアチンは徐々に元へ戻ります。急にパフォーマンスが落ちるわけではありませんが、RSAや高強度の持続はわずかに下がる可能性があります。年間を通して3~5g/日の継続が手堅い方法です。

まとめと次のアクション

反復ダッシュと爆発力向上の要点チェックリスト

  • 目的:サッカー向けに反復ダッシュ(RSA)と爆発力を伸ばす。
  • 用量:ローディング0.3g/kg/日→維持0.03g/kg/日、または3~5g/日を継続。
  • タイミング:総量の継続が最優先。トレ後/食後が扱いやすい。
  • 栄養:糖質・タンパク質と一緒に。水分・電解質を計画的に。
  • トレ連動:RSA+プライオ+下肢パワーで相乗効果。
  • 安全:胃腸対策と腎機能の配慮。第三者認証の製品を。
  • 可視化:10m/30m、RSA、主観指標を記録し調整。

最初の2週間スタートガイド(小さく始めて継続する)

  1. 3~5g/日を食後に。胃腸に違和感があれば1~2gを分割。
  2. 練習は週1~2回のRSA(短距離×本数少なめ)+プライオ少量。
  3. 水分は体重×35~40mlを目安に。塩分も忘れずに。
  4. 10m/30mを同条件で測ってログ化。RPE/睡眠/脚の張りも一緒に。
  5. 問題なければ週3から負荷を段階的に追加。

あとがき

クレアチンは「一発逆転の魔法」ではありません。ただ、正しい摂取とトレーニングのかけ算で、あなたの反復ダッシュと爆発力を支える確かな土台になります。自分の体で試し、データで確かめ、必要に応じて微調整。シンプルなことを、ブレずに。次の90分で、その積み重ねが効いてきます。

サッカーIQを育む

RSS