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サッカー 甜菜ジュースの硝酸塩効果で持久力UP—飲む量とタイミング

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「試合の後半で脚が止まる」をどうにかしたい——そんな時に耳にするのが、甜菜(ビート)ジュースの硝酸塩。実際のところ、どのくらい飲めばいいの?いつ飲めば効くの?未成年でも大丈夫?この記事は、科学的な知見と現場での使い方を橋渡しする実践ガイドです。効果の“盛り過ぎ”や不確かな表現は避け、量・タイミング・安全性を中心に、サッカー選手がすぐ使える形でまとめました。

甜菜ジュースの硝酸塩で持久力は上がるのか—結論とこの記事の使い方

先に結論:試合後半の走力維持に“効く可能性”がある栄養戦略

甜菜ジュースに多く含まれる「硝酸塩」は、体内で一酸化窒素(NO)に変わり、血流や筋効率をサポートします。研究では、5〜30分程度の持久系パフォーマンスで平均1〜3%ほどの改善が示されることがあります。サッカーのような反復的な高強度運動では結果にばらつきはあるものの、「後半の失速を少しでも遅らせる」目的には検討の価値がある戦略です。

この記事でわかること(量・タイミング・安全性)

  • 試合当日の飲む量とベストタイミング(2〜3時間前)
  • ローディング(数日継続)での上乗せ効果とやり方
  • 体重別の考え方、天然ジュースと濃縮ショットの換算
  • 副作用や注意点、マウスウォッシュが効きを落とす理由
  • 練習への組み込み方、効果測定のシンプルな方法

誰に向いているか/向いていないかの目安

  • 向いている:後半の走力維持を狙いたい選手、持久系に課題がある選手、サブエリート〜中級者層
  • 向いていない:胃腸が弱く本番で新しい食品を試したことがない人、低血圧や腎疾患など持病のある人(医師相談が先)

なぜ硝酸塩が持久力に効くのか

硝酸塩→亜硝酸塩→一酸化窒素(NO)の経路

摂取した硝酸塩は血中に吸収され、唾液に再分泌。口腔内の細菌が「亜硝酸塩」に還元し、飲み込み後に体内で「一酸化窒素(NO)」へ。NOは血管を広げたり、筋肉やミトコンドリアの働きを調整します。この“口腔内細菌の助け”がカギなので、殺菌系マウスウォッシュを多用すると変換効率が落ちます。

NOがもたらす生理学的効果:血流改善・筋効率・エネルギーコスト低減

  • 血流改善:筋肉や脳への酸素・栄養供給がスムーズに
  • 筋効率UP:同じ出力を“少ない酸素消費”で出しやすくなる傾向
  • エネルギーコスト低減:長時間運動の“燃費”がわずかに良くなる

これらは「走り続ける」競技と相性が良く、特に持久要素の比率が高い場面で期待が持てます。

サッカー特有の反復ダッシュと後半失速への影響

サッカーはジョグ・スプリント・方向転換が混在します。後半に乳酸がたまって失速しやすい場面で、NOによる血流・筋効率のわずかな改善が、ハイインテンシティの反復耐性にプラスに働く可能性があります。ただし“全員が速くなる”わけではありません。

エビデンス概観:研究で示されていること

持久系(5〜30分目安)のパフォーマンス改善幅の目安

タイムトライアルや一定負荷走で、平均1〜3%の改善が報告されることがあります。数%でも競技では大きい差ですが、個人差が大きく、効果が出ない人もいます。

チームスポーツ/反復スプリントでの結果

インターミッテント走(Yo-Yoテストなど)では改善がみられる報告がある一方、繰り返しスプリントの最高速度やピーク出力の改善は一貫しません。「平均的な走行量」「後半のパフォーマンス維持」に寄与する可能性が中心です。

効果が出やすい人・出にくい人(トレーニング歴や食習慣の影響)

  • 出やすい傾向:中級者、ふだんの野菜摂取(特に葉物)が少ない人
  • 出にくい傾向:高度に鍛えられたエリート、もともと野菜摂取が多い人

これは、既に高いNO利用効率を持っている/日常から硝酸塩が十分の可能性があるためと考えられます。

未成年アスリートに関する知見の現状

未成年での高用量サプリ研究は多くありません。野菜やジュースからの摂取は一般的に安全とされますが、長期の高用量継続は避け、まずは少量から試すこと、保護者が成分と用量を把握することが大切です。

飲む量とタイミングの実践ガイド

試合当日の急性摂取:ベストは“2〜3時間前”

血中の亜硝酸塩がピークになるのはおおむね摂取後2〜3時間。試合のキックオフに合わせて、この時間帯に合わせるのが基本です。直前に飲むより前倒しが有利です。

ローディング(3〜7日)での上乗せ効果とやり方

3〜7日間、毎日規定量を続けると、酸素効率などの改善が上乗せされる可能性があります。大事なのは「試合当日も欠かさない」こと。毎日同じ時間帯に分割してもOKです。

練習日と試合日の使い分け

  • 強度の高い対人練習・ゲーム形式:本番同様のタイミングでテスト
  • 軽めの技術練習の日:量を半分にするか、飲まない日を作ってもOK

ウォームアップ前の最終摂取タイミング

最終摂取はアップ開始の30〜60分前までに終えるのが無難。直前だと胃が重く感じる人がいます。小分けにするなら、2.5時間前と1.5時間前に分ける方法もあります。

具体的な摂取量の目安と換算

一回あたりの硝酸塩量の目安(mg基準)

一般的な目安は「300〜600mgの硝酸塩」。研究でよく使われるのはおよそ6〜8mmol(約370〜500mg)です。まずは400mg前後から始め、体調と効果で微調整しましょう。

体重別の考え方と微調整

体重1kgあたり約6mg(=0.1mmol/kg)を目安に。例:60kgなら約360mg、75kgなら約450mg。胃腸が弱い人はやや少なめから。

天然ジュースと濃縮ショットの換算方法

  • 濃縮ショット:1本で硝酸塩約300〜500mgが一般的(ラベルで“硝酸塩mg”を要確認)
  • ストレートジュース:500mlで約250〜500mgと幅あり。原料や季節で変動します
  • 野菜:生のビート100gでおおむね100mg前後、ルッコラやホウレン草は100gで200〜400mg程度になることも

重要:ラベルに「ビートエキス◯mg」と書かれていても“硝酸塩mg”とは限りません。硝酸塩の実量表示がある製品を選びましょう。

一日の上限・分割摂取のポイント

長期の過剰摂取は推奨できません。日常的には食事由来を基本に、試合・強度の高い練習日に限定して400〜600mgを狙うのが現実的。胃腸が気になる人は半量×2回(2.5時間前と1.5時間前)で分割を。

高校生・大学生・社会人での使い分け

成長期への配慮と保護者が確認すべき点

  • 初回は練習日でテスト。本番でいきなりは避ける
  • 成分表に“硝酸塩mg”の表示があるか、カフェイン・砂糖の量も確認
  • 既往症(腎・心血管・低血圧など)がある場合は医師に相談

学校・部活での運用(ルール・保管・共有)

部のルールや学校の持ち込み規定に従い、個包装の濃縮タイプは保管しやすいです。共有利用の場合は誰が何mg摂るかを明確にしましょう。

朝練・テスト期間のスケジューリングとカフェイン併用の考え方

朝練では起床直後の摂取だとピークが合いにくいので、練習開始の2時間前に軽食と一緒に。カフェイン(約3mg/kg, 60分前)は併用可能ですが、胃腸刺激や睡眠への影響に注意。夜の試合ではカフェイン量を控えめに。

安全性とリスク管理

想定される副作用(胃腸症状/尿・便の色の変化)

人によっては胃もたれ、軽い吐き気、下痢。ビート由来の尿・便の赤色化(ビート尿)は無害です。初回は少量から。

既往症・服薬との相性(特に降圧薬など)

硝酸塩は血圧を下げる方向に働くため、降圧薬を服用中、低血圧、腎疾患、尿路結石歴(ビートはシュウ酸が多め)などがある場合は医師に相談。成人でPDE5阻害薬など血管作動薬との併用にも注意。

殺菌系マウスウォッシュが効果を落とす理由と口腔ケア

口腔内細菌が硝酸塩を亜硝酸塩に変えるため、強力な殺菌マウスウォッシュは変換を阻害します。摂取の前後6〜12時間は使用を控えるのが無難。歯磨き自体はOKですが、直後の殺菌性濃厚うがい薬は避けましょう。

アンチ・ドーピング規程と表示の確認ポイント

硝酸塩やビートジュース自体は一般に禁止物質ではありません。ただしサプリは意図せぬ混入リスクがゼロではないため、第三者認証(例:インフォームドスポーツ等)の有無を確認し、ロット番号やラベルを保管しましょう。

食事から摂る場合の選択肢

甜菜以外で硝酸塩が多い食品(葉物野菜など)

  • ルッコラ、ホウレン草、レタス(品種で幅あり)
  • セロリ、ビーツ、赤かぶなど

日頃から葉物野菜をしっかり摂ると、試合日に必要量が少なくて済む可能性があります。

食物繊維・ポリフェノールとの相乗効果の可能性

野菜と果物に含まれる抗酸化成分は、運動ストレスからの回復を後押しすることがあります。甜菜ジュースだけに頼らず、カラフルな野菜を組み合わせましょう。

調理法と吸収:茹で汁・スムージー活用

硝酸塩は水に溶けやすいので、茹でると茹で汁に移ります。スープにして飲む、スムージーで丸ごと活用するなどが効率的です。

ナトリウム・水分補給とのバランス

発汗が多いサッカーでは電解質と水分が基本。甜菜ジュースは水分にはなるものの、汗で失うナトリウムは別途スポドリや塩分で補いましょう。

プロダクトの選び方

“mg硝酸塩”の濃度表示を見極める

「ビートエキス◯mg」ではなく「硝酸塩◯mg」の明記があるかを最重視。ばらつきが少ないブランドを選ぶと再現性が高まります。

砂糖・酸味料・カフェインの有無と用途別選択

  • 短時間で飲み切る濃縮ショット:試合向き
  • 糖質を同時に入れたい:ストレートジュースやジェル併用
  • 夜試合で睡眠を優先:ノンカフェインタイプ

保存・持ち運び・賞味期限の実務

未開封は冷暗所、開封後は冷蔵で早めに消費。遠征時は常温保管可能な小瓶・パウチが便利です。

コストと継続性の判断軸

毎日高価なショットを使う必要はありません。強度の高い練習と試合に絞る、普段は食事から、が現実的です。

競技日スケジュール例(前日〜試合後)

前日夜:ローディングと食事の組み立て

炭水化物中心の夕食+葉物サラダ。ローディング中なら硝酸塩200〜400mgを夕食時に。水分と電解質も忘れずに。

試合3時間前〜直前:摂取とアップの順序

キックオフ2.5時間前に硝酸塩400mg目安。1.5時間前に軽食。アップは通常通り。直前の追加摂取は胃腸負担になりやすいので基本は不要。

ハーフタイム:再摂取はすべきか

亜硝酸塩の効果は数時間持つため、ハーフでの追加は通常不要。代わりに水分・電解質・炭水化物(ジェル等)を優先。

試合後:回復と次戦準備へのつなぎ方

回復食(炭水化物+たんぱく質)を30分以内に。次戦が近い場合は、夜に葉物野菜やスープで食事由来の硝酸塩を取り入れましょう。

トレーニングへの組み込みと検証

インターバル走・Yo-Yoテストでの評価法

Yo-Yo IR1/IR2、30-15IFT、4〜6分のタイムトライアルで「有り/無し」を比較。タイム・距離・心拍のほか、終盤のRPE(きつさ)が下がるかを見ます。

週単位の周期化(負荷週・調整週)

負荷週:強度の高い日だけ使う。調整週:試合前に急性摂取で仕上げる。これで胃腸負担とコストを抑えつつ、効果を拾いやすくなります。

個人差の把握:RPE・心拍・GPS走行距離・スプリント回数

GPSの総走行距離、20km/h超の走行時間、スプリント回数、平均・最大心拍、主観RPEを記録。3回以上の比較で傾向を判断します。

よくある誤解と事実

“飲めば誰でも速くなる”の誤解

効果は平均で小〜中程度。個人差が大きく、無効の人もいます。練習の質と睡眠のほうが優先度は高いです。

“高強度スプリントには効かない?”の整理

単発のピークスプリントを伸ばす目的では一貫した効果は出にくいです。ただし「繰り返し局面の維持」に寄与する可能性はあります。

“野菜なら何でも同じ”の誤解

硝酸塩含有量は野菜で大きく異なります。ルッコラやホウレン草、ビーツは多め。トマトやきゅうりは少なめです。

“ミント味ならOK”ではない—マウスウォッシュ問題

香りではなく“殺菌作用”が問題。強力な殺菌成分はNO経路を阻害します。

トラブルシューティング

胃がもたれる・気持ち悪い時の対処

  • 量を20〜30%減らす、分割する
  • 炭水化物の軽食と一緒に
  • 酸味が強い製品は避ける

試合中の腹部不調を避ける工夫

本番前に必ず練習で試す。直前摂取を避け、繊維が多い固形物は2時間前までに。

飲み忘れた場合の代替案と判断

キックオフ90分前を切っていれば、無理に高用量を入れず見送る判断も。気持ちを切らさず、炭水化物・水分に集中。

味が苦手な場合の実用テクニック

冷やして一気に、柑橘系ジュースで割る、ショット後に水をひと口。粉末タイプはヨーグルトに混ぜる手も。

代替・補完戦略

土台は食事:炭水化物・鉄・ビタミンCの最適化

試合前の炭水化物充填、鉄不足のチェック(特に持久力低下時)、ビタミンCで鉄吸収をサポート。ここが整ってこそサプリが生きます。

カフェイン・重炭酸塩との併用注意点

カフェインは集中と知覚疲労低下に有効なケースが多いですが、過量はNG。重炭酸塩は繰り返しスプリントに効く可能性がありますが、胃腸リスクが高いので事前テスト必須。併用は総合的な胃腸負担を見ながら。

高温多湿・高地環境での戦略調整

暑熱下では脱水対策が最優先。高地では呼吸対策・鉄状態の管理が重要。硝酸塩は補助的に位置づけましょう。

睡眠・回復との相乗効果を狙う

就寝前の画面オフ、ルーティン化、軽いストレッチ。回復の質が上がれば、同じ摂取でも結果が変わります。

自分に合うプロトコルを見つける

4週間テストプラン(急性→ローディング→比較)

  1. 週1(ベース):何も摂らずYo-YoやTTで基準値を取る
  2. 週2(急性):試合想定の2.5時間前に400mgで再テスト
  3. 週3(ローディング):3〜5日間毎日200〜400mg+当日400mgでテスト
  4. 週4(比較):良かった条件を再現して確認

主観・客観の記録テンプレート

  • 主観:脚の軽さ(1〜10)、後半の粘り、胃腸状態
  • 客観:タイム/距離、スプリント回数、平均・最大心拍、RPE

試合優先での微調整のコツ

「効くけど胃が重い」なら量を10〜20%減、「効きが薄い」なら50〜100mg上げる。直前の追加は基本しない、が原則です。

まとめと次のアクション

最重要ポイントの再確認(量・タイミング・安全)

  • 量:一回300〜600mg(体重×約6mg目安)。まずは400mg前後から
  • タイミング:キックオフ2〜3時間前。ローディングは3〜7日で上乗せ可
  • 安全:胃腸テストは練習で。持病・服薬がある場合は医師へ。殺菌マウスウォッシュは直前に使わない

今日から始める3ステップ

  1. 練習日で半量(200〜300mg)をテストし、胃腸の反応を確認
  2. 2.5時間前400mgでインターミッテント走を計測、主観も記録
  3. 本番に向けて量とタイミングを微調整、製品は“硝酸塩mg表示”で選ぶ

医療的相談が必要なケースの目安

低血圧、腎・心血管系の既往、結石歴、服薬中(特に降圧薬など)、強い胃腸症状が出る場合は、必ず医師に相談してください。

最後に——甜菜ジュースは“魔法”ではありませんが、丁寧に試し、あなたの体に合うポイントを見つければ、試合の後半に小さな違いを積み上げる強い味方になります。練習と睡眠、食事という土台の上に、賢く一滴を重ねていきましょう。

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