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【図解なし解説】サッカーのビルドアップで使うエルボーシェイプの組み方

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サッカーの「ビルドアップ」。この言葉は、現代サッカーを志す高校生以上のプレーヤーや、そんな選手を支える保護者の方々にとっても避けて通れないキーワードです。とくに近年注目されているのが「エルボーシェイプ」と呼ばれる配置や動き方。名前は知っていても、<どんな形なのか?どんな効果があるのか?>といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、図解や動画なしでもしっかり理解できるよう、エルボーシェイプの基礎から応用、トレーニング法やよくある失敗例までを徹底解説。周囲と差が付く知識と、実戦で役立つコツをお届けします。

はじめに:サッカーのビルドアップにおけるエルボーシェイプとは

エルボーシェイプの基本的な定義

エルボーシェイプとは、直訳すると「ひじ型」。サッカーでは守備ライン(DF)と中盤(MF)、またはMF同士が<L字型>のようにポジションを取る配置を指します。たとえば、左右どちらかのセンターバック(CB)とサイドバック(SB)、加えて近くにいるボランチ(MF)が、それぞれ斜め後ろや横方向へズレて立体的なL字の角を成す形が典型的です。この配置によって、複数のパスコースや斜めの角度が生まれ、相手のプレスを受けにくくなります。

現代サッカーにおける重要性

現代サッカーは「プレッシングの時代」と呼ばれるほど、前線からの守備が激しくなっています。そんな中、ただラインで並ぶだけでは簡単にパスが塞がれてしまいがちです。エルボーシェイプの原理は、守備の網をかわしつつ、ボール保持と前進のチャンスを増やすために非常に重要。プロでも多用され、ビルドアップの肝とも言える動きです。

ビルドアップを成功させるための基礎知識

ビルドアップの目的と戦術的背景

ビルドアップは、後方(DFやGK)から落ち着いてボールをつなぎつつ、前線へと攻撃の糸口を作るプロセスのこと。無理にロングボールを蹴らず、“地上戦”で前進したいときに必須になります。なぜこんな戦術が必要か?それは、相手の守備網を崩したり、スペースを作ってチャンスを生みやすくするから。特に格上との試合や、強度の高いプレスを受ける場面で有効です。

ポジショニングの重要性

ビルドアップでただパスを回すだけなら、大きな成果は得られません。本当に大切なのは「ポジショニング」、すなわちピッチ上で選手がどこに立つか、どのタイミングで移動するかという点です。エルボーシェイプはまさにこのポジショニングの応用例。自分と味方、相手の並びを見て斜めやL字の形を意識することで、パスの受け手になりやすくなり、相手の間を突けるようになります。

判断スピードが求められる理由

ビルドアップには「正しい判断」が必須です。なぜなら、相手の守備がいつどこから飛び出してくるか分からないため、選手は時々刻々と状況を見て、<今このパスが通るか><危険にならないか>を考えながら動く必要があります。エルボーシェイプを使いこなすにも、「よし、形を作ったからOK」と一歩遅れるのではなく、ボールの流れや相手の動きを先読みして素早く判断・実行できることが求められます。

エルボーシェイプの作り方と動き方

エルボーシェイプとはどのような形か

エルボーシェイプの基本は、二人または三人がピッチ上で「L字」または「ひじの折れ曲がった部分」の形を作ることです。たとえば自陣ゴール前から見て、縦(前後)関係にいるCBとMF、また横(左右)にいるCBとSBが「直線には並ばず、角を作る」。この時、CB−SB−MFが1メートルほどずつズレるイメージです。大事なのは「真横」「真後ろ」ではなく、少し斜めにずれてパスコースの幅と角度を広くすること。これにより単純な縦横関係より、はるかに多様なパスと回避コースが生まれます。

パスコースをつくる動きの原理

一般的なパスは「近い味方」や「一直線に並んだ味方」に出すもの。しかし、それでは敵も守りやすい。エルボーシェイプの特徴は、パスの出し手と受け手のあいだに「斜めの距離」を作り、相手選手にとって「2人同時に塞げない」位置取りをすることです。実際には、DFから横のSBへ、そこから前方向のMFへと斜めにボールを動かすことで、相手のプレスラインにゆがみが生まれます。この形は、時には一時的にMFやSBが中へ寄ったり、高めの位置を取ったりと流動的でもOK。

守備側のプレッシャー回避の仕組み

エルボーシェイプの最大の利点は、相手のプレッシャー(特にボランチが捕まえに来る守備)を”ズラす”ことができること。2列で直線的に並ぶと、相手が縦切りで一気にパスコースを塞げます。しかしL字型だと、多方向から斜めのコースができ、加えて「誰に出すか」を直前まで読ませません。また、ひじの角度をつけておくことで、味方が受けた瞬間に前を向きやすいのもポイント。これにより、預けて受け直し、再度前進、といった“逃げ道”も確保しやすくなります。

エルボーシェイプを実践するための具体的なトレーニング法

個人でできるポジショニング練習

一人でもエルボーシェイプの理解と習得は進められます。例えば、ピッチのラインや目印になるコーンを使い、「どの角度に立ったら最も多くのパスコースができるか」を歩いて試してみてください。壁に向かってボールを蹴って、反射したところを斜めに受ける、そこからどの方向へ動けば敵が届きにくいかをイメージするのもおすすめ。また、プロ試合の中継を見て、「この時MFはなぜここに立っている?」と意図を考えることも大きな成長につながります。

少人数グループでのビルドアップトレーニング

2~4人程度でのトレーニングなら、DF−SB−MFなど複数人によるパス回しを行いましょう。この時、「一直線に立たないこと」と「自分だけでなく、他の2人の関係も観察する」ことが重要です。先頭のDFからSBへ、SBからMFへ、その逆も含め3人による三角パスや、斜め後ろにパスを戻すことを繰り返すことで、体が自然とエルボーシェイプの動きを覚えていきます。負荷を上げる場合は、1人を守備役にしてプレッシャーをかけてもらい、限られたタッチ数でのパス回しにトライしてみてください。

実戦形式でのエルボーシェイプ活用例

試合形式のミニゲームや実際の練習試合では、コーチや仲間と声をかけ合い、「今、どこに立てばL字になれるか」を都度意識しましょう。重要なのは、“固定的に形を作る”のではなく、相手の守備の出方や味方との関係性を見て、その都度ポジションや角度を微妙に変えていくこと。最初は「感覚的に難しい」と感じやすいですが、数回成功体験を積むうち、自然とパスコースを”見つける”ことができるようになります。定期的に試合を撮影し、自分たちのエルボーシェイプがどのタイミングでできているか、動画で見返すのも効果的です。

よくある失敗例と改善方法

形はできているのにビルドアップが詰まる理由

エルボーシェイプの形自体は作れているのに、ボールが回らなくなる…。この原因は「形作り」に意識がいきすぎて、自分たちでパスコースを“読まれやすい”固定型になっているケースが多いです。また、受け手の体の向きが悪い(例えば前を向いて受けられない)、全員が足元で受けようとして動きが止まってしまう、といった「細部の質の低下」もよく見られます。形はあくまで「パス展開のきっかけ」であり、その後の<パス速度・体の向き・サポートのタイミング>との連動が大事なのです。

局面ごとの対応力の鍛え方

試合中は毎回同じ形、同じ状況にはなりません。ですから、エルボーシェイプにこだわりすぎて「臨機応変な判断」ができなくなるのも落とし穴です。改善のポイントは、「どこで2対1を作れるか」「次に狙うべきスペースはどこか」を、コーチや仲間と声を出しながら共有すること。トレーニング時に一つの形だけでなく、「パスが引っかかった場合どうするか」「縦パスを入れたい時にどう崩すか」など、シナリオ別の練習も行いましょう。

ミスから学ぶリスク管理のポイント

ビルドアップ中のエルボーシェイプで怖いのは、ミスからショートカウンターを受けるリスクです。これは「無理なパスを狙いすぎてしまう」「味方との距離が近すぎて一発で奪われやすい」ことなどが原因になりやすい。対策としては、

  • リスクが高ければ一度戻す・やり直す余裕を持つ
  • 常に全員が“味方を助けられる距離感”にいる
  • 身体の向きと周囲の確認でボール失わない工夫をする

などが大切です。ミスそのものを責めることはせず、「なぜ起きたか、どうすれば減らせるか」を振り返ることが成長への近道です。

プロでも使われる応用パターンと発展例

トップレベルのエルボーシェイプ活用事例

国内外のプロチームでも、エルボーシェイプは様々な場面で活用されています。例えば守備的MFが一度DFラインまで下がり、DFより少し外側・斜め後ろに立つことで、相手のフォワードを引きつけながらパスコースとプレー幅を作る場面。また、SBが内側に絞って中盤化する“偽サイドバック”の動きも広義のエルボーシェイプの発展型と言えます。代表レベルの試合では、CB−SB−MFの細かなズレやタイミングが、強豪相手のプレスを寸前でかわす鍵になっていることが多いです。

ポジション別エルボーシェイプの応用

エルボーシェイプはDF−MFだけでなく、ピッチ各所で応用されています。たとえば

  • トップ下(OMF)とウイング(WG)、サイドハーフがバイタルエリアで互いにズレてL字を作る
  • CB同士が一度横に開き、GKがL字の一角として加わってビルドアップを始める
  • 逆サイドのMFが意図的に内側に入り、パス回しに関与する

といったバリエーションです。それぞれのポジションで、相手守備の“間”を突けるような位置取りを意識し続けることが重要です。

状況に応じた可変フォーメーションとの関連性

エルボーシェイプは「フォーメーションを崩さず形だけ作る」ものではなく、むしろ状況によって可変的に形を変えるのが理想です。最近のトップチームでは、ビルドアップ時だけ一時的に3バック+中盤3枚というような“変則型”も当たり前。選手一人ひとりが「状況や相手の動き次第で、自分が次どの角度にポジションチェンジすべきか」まで把握できるようになると、戦術的な選択肢がグッと広がっていきます。

まとめ:エルボーシェイプ習得への道

ステップアップのためのアドバイス

エルボーシェイプという形は、ピッチ上の「ポジショニング」「相手との距離感」「味方との関係」を学ぶ上でとても良い教材です。まずは定義や基本の動きを頭と体で覚え、そのうえで実戦で「なぜ今この形なのか」を考え続けてください。大事なのは、最初は形にこだわりすぎず「試しながら学ぶ」意欲を持つことです。

今後の成長につなげるために

ビルドアップもエルボーシェイプも、1日2日でマスターできる技術・戦術ではありません。仲間と協力し、時にはミスを恐れずチャレンジを重ねることで、やがて一段上のサッカー理解やプレーの安定感につながります。自分の長所と短所、チームの特性を客観視しつつ、練習と振り返りを積み重ねていきましょう。ビルドアップやエルボーシェイプを自在に使いこなすことは、サッカーの面白さをさらに深め、次なる成長の扉を開くカギとなるはずです。

この記事を参考に、<図解や複雑な戦術ボードがなくても>自分の頭でイメージと理解を深め、仲間とともに実戦でエルボーシェイプを追求してみてください。自分たちのサッカーがさらに自由に、そして確実に進化していく手応えを、ぜひピッチで味わってもらえたら嬉しいです。

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