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インナーラップの基本を図解級に直感で理解

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「インナーラップの基本を図解級に直感で理解」へようこそ。この記事は、図や画像がなくても頭の中にプレーの線と角度が浮かぶよう、言葉でプレーを描き出すことにこだわっています。サイドで渋滞しがちな攻撃を、内側の斜め走りで一気に解放する——それがインナーラップ。今日から意識ひとつで再現できるよう、角度・距離・タイミングを“言語の図”にしてお届けします。

インナーラップはなぜ現代サッカーで武器になるのか

サイド攻撃の渋滞を解消する内側ルート

サイドでの崩しは、相手SB(サイドバック)とWG(ウイング)が縦に並ぶと行き止まりになりがちです。ここで外を重ねるとスペースが被り、守備側のヘルプも寄せやすい。そこで有効なのが、外でボールを引き付けてから内側へ“追い越す”インナーラップ。視覚的には、タッチライン沿いの直線に対して、内側へ斜めの矢印を重ねるイメージ。相手の注意が外へ引っ張られている瞬間を使い、ライン間へスッと入り込みます。

決定機に直結する「縦パス→斜め走り→折り返し」の黄金ライン

ボックス脇のニアゾーンに斜めで侵入し、ゴール前へ折り返す。この一連は、幅を使っただけのクロスよりもシュートに直結しやすく、守備側にとっては最も対応が難しい場面の一つ。流れの基本形は「縦パス→斜め走り→折り返し」。縦パスで相手を前に引き出し、走りは背中側へ、ラストはマイナスかニア前へ。矢印が三本重なると、ゴール前に“フリーマン”が生まれやすくなります。

再現性と個の爆発力を両立する理由

インナーラップは、チームとしての型(再現性)と、走る選手のスピード・足元の質(個の爆発力)を同時に引き出します。仕組みはシンプルですが、ラスト5〜10mの加速やファーストタッチ次第で一気に決定機化。つまり、同じ形で何度でも試行でき、かつ一回ごとの破壊力も高いのが強みです。

定義と用語整理:インナーラップとオーバーラップの違い

インナーラップの定義(内側から追い越す走り)

ボール保持者の内側(中央寄り)を通って追い越す走りを指します。サイドで起点を作り、走者がペナルティエリアに向かう“斜めの内側”のレーンを突破する形が典型例です。

オーバーラップ(外側から追い越す)との比較

オーバーラップは外側(タッチライン側)から追い越してクロスへ。インナーラップは内側を通過し、ライン間やニアゾーンへ。外は幅の創出、内は深さと角度の創出という違いがあります。

混同しやすい概念(インバート、アンダーラップ、ハーフスペース侵入)

  • インバート(偽SBなど):ビルドアップ局面で内側に立つ配置の話。
  • アンダーラップ:インナーラップとほぼ同義で使われる場合が多いです。
  • ハーフスペース侵入:レーンの名称。インナーラップはその侵入方法の一つ。

エリア設計を言葉で図解:3レーンと2ライン

タッチラインレーン・ハーフスペース・中央レーン

ピッチを縦に三分割して考えます。外は「タッチラインレーン」、内側の斜め通路が「ハーフスペース」、ど真ん中が「中央レーン」。インナーラップの走路は、主にハーフスペースの中に引く斜め線です。

最終ラインとミドルラインの“隙間”を可視化する

守備の二段構え(前線と最終ライン)の間にできる“空白の帯”が狙い目。外で数秒ボールを動かすと、その帯に穴が開きます。内側への矢印はこの帯を通過して、CBとSBの間に落ちるのが理想。

背後の直線と斜線:走路とパスコースの重ね方

背後取りは直線、パスは斜線。これを重ねると合流点がゴール前に生まれます。走者はゴールに向けて直線的、出し手は足元かスペースへ斜めに。線が交わる地点をニアゾーンに設定すると、折り返しの選択肢が最大化します。

直感で掴むインナーラップ:角度・距離・視野の言語図解

45度のドアを開ける(受ける角度)

受ける体の向きは、タッチラインに対して約45度。ドアを半開きにしておくと、前にも後ろにも出られます。正面向きだと詰まり、背中向きだと視野が閉じます。

背中のドア(相手の死角)をノックする

相手SBの肩のラインの後ろに入ると、視界から消えます。横並びではなく、半身一枚ぶん背中側へ。死角に入ってから一歩“間”を置くと、縦パスの瞬間に同時スタートできます。

二段加速の矢印(スロー→スプリント)

走り出し前に0.5秒の減速→見せて→一気に刺す。加速の矢印は短く鋭く。長い助走より、スタートの瞬発力を優先します。

味方と相手の“糸”をずらす運び方

出し手と走者を繋ぐ一本の糸を想像し、相手のカバーの糸と交差させます。交差点はできるだけゴールに近く、かつ相手の背後。ずらすのは走りの角度か、ボールの置き所のどちらか一方で十分です。

成功の5原則

タイミング(味方の触球に同期)

合図は味方の“次のタッチ”。トラップかキックの瞬間に腰が落ちたら、同時に動き出す。走り出しが早すぎると相手に連動され、遅すぎるとレーンが閉じます。

角度(縦ではなく斜め)

縦一直線は読まれやすい。内側45度の斜めが基本。ライン間を経由して背後に抜ける“くの字”を描きます。

速度変化(止める→見せる→刺す)

最初は歩く→半歩止まる→一気に刺す。速度の段差が、相手の重心にブレーキをかけます。

体の向き(開く・隠す・誘う)

受ける前に胸を45度開く。ボールは体で隠す。相手には外を誘って内に入る。“三拍子”が整うと接触でも負けにくい。

視野とスキャン(2回見る)

走る前に一度、走り出し後に一度。視線はゴール前と出し手、そして相手CBの位置。二度見ることで、最後の一歩を調整できます。

役割別インナーラップ:誰がいつ走るか

サイドバック(WGを外に押し出す内側侵入)

WGが幅を取り、SBは内側へ。相手WGの背中を踏み台に、SBがIH化して斜めに刺す。戻りの守備も考え、アンカーのカバーと連動させます。

ウイング(SBを外に釣って内側アタック)

外へ持ち出してSBを引っ張り、足元で作ってから内側へスイッチ。味方SBが外に立つと二択が成立します。

インサイドハーフ(3人目として裏抜け)

出し手に背中を見せず、最初は相手の視野に入っておく。ワンツーで壁になってから3人目で裏へ。ライン間→背後の二段抜けが得意領域。

センターフォワード(押し下げと壁役からの内側ギャップ)

CFがCBを押し下げると、SBとCBの間に継ぎ目ができます。落としの壁役→IHやSBのインナーラップを通す展開が強力。

ボランチ(前進の“差し込み”後の追い越し)

差し込んでから止まらない。パス後の一歩で相手の背中に回り込むと、フリーマン化しやすい。リスク管理のため、反対側のボランチは残ります。

試合フェーズ別の使い方

ビルドアップ:サイド圧縮からの内側解放

同サイドに人数を集め、相手を圧縮。そこから内側へ一本差すと、インナーラップの走路が開通します。内側の起点はIHかSB。

敵陣押し込み:ボックス幅の回しとニアゾーン侵入

ペナルティエリアの角を基準に、内外を“L字”で回しながらニアゾーンへ斜め侵入。折り返しの三点(マイナス、ニア前、中央)を意識。

トランジション直後:整う前に内側を突く

奪って3秒以内は守備が整っていません。外に見せて内に通す。走りは最短距離、パスは相手の重心と逆方向へ。

トリガー(合図)とコミュニケーション

味方の体の向き・視線・タッチの方向

出し手の腰がゴール向き→深いパスの準備。視線が斜め内→インナーラップ合図。トラップが内側に流れた瞬間が最適です。

相手SBの肩の向き・重心・ボールウォッチ

肩が外へ向いたら内側が空きます。つま先立ちで前がかりなら背後が狙い目。ボールウォッチで首が止まった瞬間に刺す。

音と言葉の合図(ワンワード・コール)

  • 「イン!」内側に来い/出す
  • 「壁!」ワンツーで返す
  • 「スルー!」足元に見せて裏へ

手のジェスチャーと事前取り決め

人差し指で内側を指す、手の平で“待て”の合図など、事前に共通言語を決めておくと精度が上がります。

受け方の技術:最初の2タッチで勝負が決まる

ファーストタッチの置き所(縦・内・外)

ニアゾーンの斜め侵入では、ファーストタッチは“内”へ半歩。相手とボールの間に体を入れ、二タッチ目で折り返しまたはシュート。縦に置くと角度が失われ、外だと詰まります。

インサイド/アウトサイド/足裏の使い分け

  • インサイド:方向転換と安定。
  • アウトサイド:速度維持のまま内へ切り込む。
  • 足裏:密集地での減速と角度調整。

背中で守るターンと半身の作り方

相手の進行方向に背中を差し込み、半身で受ける。腰と肩をずらしておくと、接触でもラインを保てます。

コンビネーション大全:3人目までを逆算する

ワンツーと壁パスで内側を開通

外→内→外のリズムで壁を作り、最後は内へ。壁役は一歩引いて角度を作ると、ライン間パスが通りやすくなります。

三人目の動き(潜る→出る→受ける)

視界から一度“潜り”、出し手の触球に合わせて“出る”。受ける位置はCBとSBの継ぎ目。三人目の遅れて出る動きが決定機のスイッチです。

カットバックの3スポット(マイナス/ニア前/ゴール前中央)

  • マイナス:ペナルティアーク付近の落ち着きどころ。
  • ニア前:ニアに飛び込むFWと合わせる。
  • 中央:最後列の押し込み。精度優先。

逆サイドスイッチと“釣って外”の理屈

内側で釣って、逆サイドへ一発。相手が縮んだタイミングのスイッチは、逆WB/WGがフリーになりやすい。

ニアゾーン侵入からのシュート/折り返し選択

GKの前足がニアに寄ったら折り返し、ファー寄りならシュート。身体の向きとつま先の角度で選択を偽装します。

相手を崩すメカニズム

数的優位:サイドで2対1→内側3対2へ

外で2対1を作り、内側へ三人目を足して3対2。数の優位はライン間で作ると効果的です。

位置的優位:ライン間・背中の死角

相手の視界外で受けること自体がアドバンテージ。死角で受け、前を向ければ一気にゴールへ近づきます。

質的優位:利き足とスピード差の活用

逆足サイドのWGが内に持ちながら、同足SBが内側で追い越すなど、利き足の組み合わせで優位を作れます。

ピン留めと解放(CFの役割と逆サイドの脅威)

CFがCBをピン留めして最後列を下げると、内側のレーンに余白が生まれる。逆サイドのWGが高い位置を取ることで、守備の横幅を広げ続けます。

よくある失敗と即効修正

早すぎる走り出しで越えられない

修正:出し手の次のタッチに同期。足を小刻みにして“待てる速度”を作る。

遅すぎてオフサイドラインに飲まれる

修正:一歩手前で止まる“間”を作り、カットインのフェイクからスプリント。

一直線すぎて読まれる(フェイクと折れ)

修正:二歩だけ外へ見せてから内へ“折る”。角度の変化を入れる。

視野が閉じて接触でロスト

修正:半身と腕の使い方を意識。受ける前後で2回スキャン。

ロスト後の背後ケアと即時奪回

修正:内側で失ったら、三角形の即時奪回配置へ。ファウルに頼らず、進行方向を限定。

段階式トレーニング計画

個人ドリル(角度・視野・二段加速)

  • コーンを45度に配置し、半身で受ける→二段加速→折り返し。
  • 受ける直前に左右・前方のスキャンを声出しで確認。

ペアドリル(見せて通す→刺す)

  • 出し手は外へドリブルで見せ、内へ斜めパス。
  • 走者は減速→加速の段差で裏へ。2タッチ以内で完結。

三人ドリル(三人目の逆算ラン)

  • 外の壁→内の差し込み→三人目が斜めへ。
  • 折り返しスポットをコーンで可視化(マイナス/ニア/中央)。

局所ゲーム(サイド帯2対2+フリーマン)

サイド帯に制限を設け、内側だけ出入り自由のフリーマンを置く。得点は「ニアゾーン侵入+折り返し」にボーナス。

ゲーム形式へのブリッジと負荷管理

5分×6本、強度と質を交互に。ラスト2本は試合同様の幅と深さで、KPI(試行回数・侵入回数)をカウント。

チーム設計との相性と配置

4-3-3のWG幅取り×SB内側走り

WGが幅を最大化、SBが内側を活用。IHは三人目で背後を突く役割に集中。

4-4-2の片側圧縮とIHの縦関係

片側に寄せてから、逆IHがライン間で受ける形を作る。SH(サイドハーフ)とSBが外で相手を釣ります。

3バックのウイングバック活用

WBが内外を自由に往来。ストッパーが幅を取る時間を作ると、内側の通路が開きます。

可変システム(偽SB/偽WG)との連動

偽SBで中盤数的優位→WGが内で受ける→SBがインナーラップ。配置変化で相手の基準を崩します。

年代・レベル別アレンジ

初級者:言葉の図解と2メニュー固定

「45度」「二段加速」「マイナス折り返し」の3語に絞り、メニューは“ペアドリル+三人ドリル”の2本柱で反復。

高校・大学:強度と再現性の両立

ゲーム強度で5〜8回/試合の試行を目安に。KPIを共有し、ビデオで角度とタイミングを検証。

社会人・アマ:時間制約下の効率設計

15〜20分の短時間サーキットで、ドリル→局所ゲーム→セットの一往復。声出しの合図を固定。

キッズ:合図の言語化と安全な接触回避

「イン!」「まいなす!」など短い言葉で共通化。接触は側面からではなく、体の前で受ける練習を優先。

左右・利き足別のコツ

右SB×右WGの内外入れ替え

右WGが幅取り、右SBが内へ。折り返しはインサイドでマイナスが基本。

右SB×左利きWGのカットイン連動

左利きWGが内へ運ぶ→SBがさらに内側を斜め。逆足シュートの脅威で守備を釣れます。

左サイドでのアウトサイドタッチ活用

左足のアウトで内に運ぶと、速度を落とさずに角度を確保可能。ファーへの折り返しが増えます。

逆足シュートとカットバックの使い分け

GKの位置とCBの足の向きで決定。中央が閉まればマイナス、ファーが空けば逆足で狙う。

試合前の準備とチェックリスト

相手SBの特徴スカウティング

  • 足の向き:内を切るか外を切るか。
  • 重心:前がかりか待つタイプか。
  • 視線:ボールウォッチ傾向。

チーム内の合言葉と役割確認

「外に見せて内」「45度」「三人目」。この3語を共有。誰が外、誰が内、誰が三人目かを明確に。

キーフレーズ3つの共有

  • 同時スタート(出し手の触球に同期)。
  • 二段加速(減速→刺す)。
  • マイナス優先(折り返しはまずマイナス)。

当日のKPI(試行回数・侵入回数・決定機創出)

目安:試行5回以上、ニアゾーン侵入3回以上、決定機1回以上。数えることで再現性が上がります。

リスク管理と守備移行

バランスを取るアンカー/逆SBの位置

内側に走る分、後方は三角形でバランス。アンカーは中央、逆SBは一列下げてカバー。

カバーシャドウで中央通路を閉じる

失った瞬間、前向きに奪い返せない場合は、内側への縦パスコースを背中で遮断。外へ誘導します。

即時奪回の三角形配置

ボール保持者の進行方向に一人、ボールサイド内側に一人、背後に一人。三角形で挟む形を即座に再現。

必要な戦術的ファウルの判断

危険なカウンターのみ、相手の進行を止めるための軽い接触でプレーを切る選択肢があります。位置・人数・時間帯を考慮し、反則やカードのリスクを理解したうえで冷静に判断します。

ミニQ&A:現場の疑問に短答で応える

どの合図で走り出す?

出し手の次のタッチに同期。トラップの向きが内、または視線が斜め内でスタート。

パスが来なかった時の次の一手は?

走り切って最終ラインを押し下げ、リセットのパスコースを作る。戻りの角度でセカンドボールに備える。

相手がブロックを固めた時は?

逆サイドスイッチを挟むか、折り返しを“マイナス優先”に切り替え。ゴール前でなくアーク付近で勝負。

疲労時に機能させる代替アクションは?

歩き→刺すの二段加速だけ残す。距離を短く、角度とタイミングで勝つ。

まとめ:言葉で描いた図をピッチで再現する

今日から意識する3ポイント

  • 45度の半身で受ける。
  • 減速→刺すの二段加速。
  • 折り返しはまずマイナスを選ぶ。

練習→試合→振り返りのループ

ドリルで角度と二段加速を固め、局所ゲームで圧力下の判断を磨き、試合でKPIを記録。映像やメモで振り返り、次の練習に反映します。

上達を加速させる記録とフィードバック

「試行数」「侵入回数」「決定機」を簡単にメモ。数が増えれば自信になり、質も上がります。インナーラップは外の見せ方と内の刺し方——この二枚のカードを、あなたの武器にしていきましょう。

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