目次
- インナーラップを中高生向けに解説、図解なしでもわかる走り方
- インナーラップとは?用語の整理と基本イメージ
- インナーラップの狙いと効果:なぜ内側を走るのか
- 図解なしでも分かるインナーラップの走り方:3ステップの言語化
- タイミングの黄金則:ボール・相手・味方の3つの合図
- ポジション別の使い方:SB・WG・IH・CFのインナーラップ
- サイド別・利き足別のコツ:右利き左サイドは武器になる
- 守備を読む力:重心・視線・肩の向きで通れる道を見つける
- よくある失敗とその直し方
- 一人でもできる練習メニュー(図なしでも再現できる)
- チームで合わせるコミュニケーション設計
- 試合でのチェックリスト:前半と後半で変えること
- フィジカルと怪我予防:速く刺すための体づくり
- 上達の見える化:GPSがなくてもできる記録法
- 戦術的バリエーション:本物と偽物を織り交ぜる
- よくある質問(FAQ)
- まとめと7日間の練習プラン
- あとがき
インナーラップを中高生向けに解説、図解なしでもわかる走り方
「インナーラップって何?」を、図解なしでもスッと理解できるように言葉で分解して解説します。外から中へスッと差し込む“内側の駆け上がり”は、相手の視線と肩の向きを一瞬で狂わせ、ゴールへ最短で迫る強力な武器です。本記事では、意味と効果、走り方の3ステップ、タイミングの合図、ポジション別の使い方、個人練習メニュー、チームでの合わせ方までを一気に整理。インナーラップを中高生向けに解説、図解なしでもわかる走り方として、練習の現場でそのまま使える言語化にこだわりました。
インナーラップとは?用語の整理と基本イメージ
インナーラップ(アンダーラップ)の定義
インナーラップ(アンダーラップ)は、サイドにいる選手の「外側」ではなく「内側」を、後方や斜め後方から追い越していく走りのことです。ボール保持者の“内側の肩”を目印に、背後から前へスライドしていくイメージ。受けるためだけでなく、相手の注意を内側へ引き寄せる目的(デコイ)でも使われます。
外側のオーバーラップとの違い
- オーバーラップ:外を回る。縦の幅を使い、サイドで数的優位やクロスの角度を作る。
- インナーラップ:内を刺す。中へ最短で入り、ペナルティエリアやハーフスペースへ直通する。
外へ広げてから中へ入るのがオーバーラップ→カットイン。最初から内へえぐるのがインナーラップ。守備の「受け渡し」を発生させやすいのは後者です。
どんな状況で有効になるか(サイド/ハーフスペース)
- サイドに相手が寄っている(外は渋滞、中に穴がある)
- ボール保持者が外向きでプレッシャーを受けている(内側の援護が欲しい)
- 相手のSBとCBの間(ハーフスペース)が空いた瞬間
- 相手のボランチが横スライドで外を見ているとき(内に死角)
よく使われる関連用語:ハーフスペース・レーン・3人目の動き
- ハーフスペース:サイドと中央の間の縦の通り道。ゴールに直結しやすい。
- レーン:ピッチを縦に5分割した「航路」。同じレーンに重ならない配置が基本。
- 3人目の動き:パサーとレシーバー以外の選手が関与して、次の出口を作る動き。インナーラップはこの典型です。
インナーラップの狙いと効果:なぜ内側を走るのか
最短でゴールに向かう縦パスのルートを開く
内側はゴールまでの距離が短い“幹線道路”。外を見せて内へ入ることで、CBとSBの間やボランチの背中に縦パスのレーンが生まれます。シュート、ワンツー、スルーの選択肢が一気に増えます。
相手守備の基準(視線・肩の向き・受け渡し)を崩す
- 視線:外のドリブルに釣られた瞬間、内は死角。
- 肩の向き:外を向いた肩は内へ切り返せない。半歩の遅れを作れる。
- 受け渡し:SB→CBのマークチェンジの一瞬にパスを通す。
数的優位と優位なマッチアップを作る
外で2対1の形を作っておき、最後だけ内へ差すと、CBが迷ってギャップが生まれます。内に入る選手が走力や敏捷性で優れていれば、CB相手に有利な一対一も狙えます。
外→中のレーン移動でボール保持者の選択肢を増やす
外を見せつつ内に“裏メニュー”を用意すると、保持者は「縦ドリ・外スルー・内スルー・リターン」の4択になります。守備は全てに準備できず、どれかが必ず緩みます。
図解なしでも分かるインナーラップの走り方:3ステップの言語化
ステップ1:準備の立ち位置と体の向き(開きすぎない)
- 立ち位置:サイド高めor中盤の脇。味方より一列下がり、内側へ抜ける通路を確保。
- 体の向き:半身(内足が前、外足が後ろ)。胸はタッチラインとゴールの中間へ。
- 重心:拇指球の上。いつでも内へ一歩で切れるように。
ステップ2:誘いのフェイク(外を見せて内へ切る)
- 視線だけ外→相手の視線を外へ連れていく。
- 外足で小さく踏み、外周りを示してから内足で切り返す。
- 腕のスイングを先に出し、上半身で「外」をアピール。
ステップ3:斜めの加速と最後の2歩での減速・開き
- 加速:外足で地面を強く押し、内側斜め前へ。ストライドは最初長め。
- 最後の2歩:一瞬減速して視野を広げ、体を少し開く(パスの角度に合わせる)。
- 受ける面:前足のアウト/イン/足裏など、ボールの質で当て分ける。
ボール保持者との最適距離と通る角度(パスラインを重ねない)
- 距離:およそ5〜10m。近すぎると守備に挟まれ、遠すぎるとタイミングが合いにくい。
- 角度:やや内側を“縫う”斜め。保持者のドリブルコースを空け、別のパスラインを作る。
- 重ならない:同一レーンに入らず、半レーンずらして並走する。
タイミングの黄金則:ボール・相手・味方の3つの合図
ボールタッチの直前/直後にずらす
保持者が触る直前に動き出すと、足元→スペースの切り替えがスムーズ。直後なら相手の重心が確定して逆を突けます。合言葉は「触る前に動き出し、触った瞬間に加速」。
相手の視線と肩の向きが外へ流れた瞬間を刺す
相手がボールとタッチラインを同時に見たら外へ引っ張られています。肩が外へ開いた瞬間がGO。内へ切り返す余裕を消します。
味方の体の向きが内向きになったらGOのサイン
保持者のつま先と腰が内へ向いたら、内スルーや足元リターンの準備OKの合図。あなたは縦に差し込む走りで答えましょう。
オフサイドラインの管理と減速のコツ
- ラインは「最終ラインの肩」に合わせる。膝ではなく肩で見るとズレにくい。
- 早く出たら2歩の減速で“待てる体勢”を作る。完全停止はNG(再加速が遅い)。
- ボールより前に出るときは、出し手が蹴る瞬間にオンサイド位置にいること。
トランジション(奪った直後)での一撃
奪い返した瞬間は相手の陣形が崩れています。外へ広げるフェイクから、内へ最短ダッシュ。2タッチ以内の縦パスで一気にゴールへ。ここで決め切ると試合が一変します。
ポジション別の使い方:SB・WG・IH・CFのインナーラップ
サイドバック(SB)の内側侵入で中盤化する動き
WGが幅を取り、SBが内側へ。中盤の枚数が1枚増えることで、相手ボランチの脇に前向きの選手を作れます。ビルドアップでの“偽SB”としても有効。
ウイング(WG)の内側走で裏を取る/デコイになる
外ドリを見せてCBとSBの間へ斜めラン。パスが来なくてもデコイとしてCBを引き出し、SBやIHの侵入路を開ける働きをします。
インサイドハーフ(IH)の3人目ランでペナルティエリアへ
SB→WGの外パスに合わせ、IHが内を突く3人目。PAラインで受けて折り返し、もしくはワンタッチで流し込む形が増えます。
センターフォワード(CF)の降りる→刺すの連続動作
一度中盤へ降りて相手CBを前へ引き出し、すぐ背後の内側へ差し込む。味方IHやWGの外サポートが“カベ”となり、CFが内へ抜けやすくなります。
3バック/ウイングバック(WB)での適用
WBが幅を取りつつ、IHやシャドーが内側を連続で突く。外→内→外のリズムで相手の5バックをずらし、中央のライン間を開けましょう。
サイド別・利き足別のコツ:右利き左サイドは武器になる
右サイド/左サイドで角度がどう変わるか
- 右サイド:内へ入ると利き足(右)のアウトで受けやすい。スルーパスもアウト寄り。
- 左サイド:内へ入ると利き足インで前を向ける。シュートやワンツーが速い。
右利きが左サイドで受ける利点(インスイング/アウトスイング)
右利き左サイドは、内へ切り込めばインスイング気味のボールを蹴りやすく、PA二列目へのラストパスや巻いたクロスが武器になります。
左利きが右サイドで狙うファーストタッチの置き所
左利き右サイドは、内へ入って左足インで前に置く。触る方向はゴールへ45度。次のタッチでシュートかワンツーを選べる位置に置きましょう。
両足対応のための簡単な触れ方練習
- 壁当て→逆足ワンタッチで前へ置く→2歩で加速(10回×2セット)
- アウト→イン→足裏の3種連続タッチ(左右各10回)
守備を読む力:重心・視線・肩の向きで通れる道を見つける
足の向きと股関節の開きで裏を読む
相手のつま先がタッチラインを向いていれば外にしか出られません。股関節が外へ開いていると内の反転は遅い=内側が通りやすいサインです。
ボールウォッチャーを見抜く(目の焦点で判断)
ずっとボールを見ているDFは背中のスペース管理が甘い傾向。目が止まった瞬間に動き出しましょう。
5レーンの埋まり方から最短ルートを選ぶ
中央レーンが詰まっていれば、その隣のハーフスペースを優先。あなたと保持者で「隣り合う別レーン」に立つのが基本です。
同一レーンの渋滞を避ける位置取り
味方と縦に並ぶとパスが2人ごと消えます。半レーンずらし、縦関係でなく“斜め関係”を作るのがコツ。
よくある失敗とその直し方
早すぎる/遅すぎるスタート
早いとオフサイド、遅いと通路が閉じます。修正は「出し手のタッチ直前→最初の一歩」。メトロノームのように一定リズムで合図を掴みましょう。
味方と同じレーンで重なる(被り)
保持者と同レーンはNG。半レーン外から内へ斜めに入ることで、2本のパスラインを確保します。
相手の受け渡しを助けてしまう動きになる
真っ直ぐ入りすぎるとSB→CBが簡単に受け渡せます。最後の2歩で角度を変え、誰が見るのか曖昧にすること。
視野が狭くなる(ボールばかり見る)
走りながら「体だけ前、視線は斜め後ろ」。首振りを2回入れると、出し手とDFラインの両方を確認できます。
修正ドリル:メトロノームカウント/影DFコーン/角度マーカー
- メトロノームカウント:1・2・タッチ・GOのリズムで合図を固定。
- 影DFコーン:SB位置とCB位置にコーンを置き、その間を最後の2歩で角度変化。
- 角度マーカー:45度・30度の2本を用意し、走る角度を体に覚えさせる。
一人でもできる練習メニュー(図なしでも再現できる)
ストライドとピッチを切り替える斜め走
10mの斜め走で前半5mはストライド大、後半5mはピッチ(回転)速く。切替の瞬間を「最後の2歩」に見立てます。(6本)
壁当て→内側ファーストタッチ→2歩で加速
壁に強めのパス→内足インで前方45度へ置く→2歩で最高速へ。(左右各10回)
10m・15mの角度付きダッシュ反復
スタート地点からゴールに向かって45度→30度→15度の角度でダッシュ。角度ごとに最適な歩幅を探ります。(各3本×2セット)
減速→再加速のブレイクダウンステップ
8歩加速→2歩減速→3歩再加速。減速の2歩で首振りを入れるのがポイント。(6本)
呼吸と視線の使い方(吸って見る→吐いて刺す)
動き出し前に吸って視野確保、踏み込みで吐いて加速。呼吸でリズムを作ると動作が安定します。
チームで合わせるコミュニケーション設計
キーワード例:「インナー」「アンダー」「今」「待て」
短い言葉でOK。「インナー」=内に走る、「今」=即パス、「待て」=一拍置いてスルーの合図。
ハンドサインと体の向きでの合図
保持者の利き足側の手で“内”を指す、腰を内へ向けるなど、遠くても伝わる合図を共通化します。
事前ルール:誰が外・誰が内(役割の固定と可変)
原則はWGが幅、SBが内。可変は「押し込んだら入れ替えOK」など、ゾーンごとにルール化。
3人目の関与を前提にしたパススピードと角度
強いパス→足元or壁→内スルーの順。横パスは軽く、縦は強く。角度は45度を基本に。
逆サイドの連動(二次波の準備)
内で崩せなかった場合に備え、逆サイドは二列目がペナルティアーク付近へ詰める。こぼれ球と切り替えを同時に狙います。
試合でのチェックリスト:前半と後半で変えること
前半10分で相手SB/WBの癖を観察
外へ釣られやすいか、内へ付いてくるか。最初の3回で傾向を掴み、以降の選択に反映。
相手ボランチのスライド速度を基準にする
遅ければ内が空きやすい。速ければ外でためて、内はデコイに切替。
ハーフタイムの共有テンプレート
- 「内の通り道」有無(どこが空く?)
- 「誰が迷っているか」(SB?CB?ボランチ?)
- 「次に狙う角度と合図」(言葉・サイン)
後半の疲労時に効く省エネの刺し方
最初の5mだけ全開→残りは滑るように。最後の2歩の減速で確実に受ける。走る回数より質で勝負。
終盤のクロス局面でのインナーラップ活用
外クロスを見せて、ニア前の内側ランでグラウンダークロス。相手の足が止まる時間帯に刺さります。
フィジカルと怪我予防:速く刺すための体づくり
股関節の内旋・外旋モビリティ
90/90ストレッチ、ワールドグレーテストストレッチで可動域を確保。内へ切る角度が作りやすくなります。
ハムストリングと腸腰筋の連動性
ヒンジ系(RDL)+ニーリフト(Aスキップ)で前後の連携を強化。初速が上がります。
足首背屈と接地時間の短縮
カーフレイズ+シンアングル(すねの角度)ドリル。接地が短いと減速→再加速が速い。
体幹の回旋コントロールと腕振り
パロフプレス、メディシンボールの回旋スロー。腕振りは「肘後ろ長く、前は短く」。
ウォームアップ例:活性→動的→加速の順序
- 活性:臀筋・腸腰筋の活性化(各10回)
- 動的:ランジ回旋、スキップ系(各20m)
- 加速:10mビルドアップ×3→斜めダッシュ×3
上達の見える化:GPSがなくてもできる記録法
インナーラップ試行回数/受けた回数/シュートに至った回数
「試行→受け→決定機」の3指標を90分で集計。割合が上がれば質が上がっている証拠です。
手書きゾーンマップでの侵入位置の記録
ピッチを5レーン×3段に分け、侵入に成功したマスへチェック。成功パターンが見えてきます。
動画セルフレビューのチェックポイント
- 出し手のタッチの“前”に動けているか
- 最後の2歩で角度を変えているか
- 同レーンの被りがないか
KPI例と週次目標の立て方
KPI例:1試合あたりの有効インナーラップ3回以上、うち1回はシュートへ。週次で増やす数を+1に設定。
戦術的バリエーション:本物と偽物を織り交ぜる
デコイラン(フェイク)でスペースを空ける
あえて内へ走り、CBを引き出して背中に別の味方が差す。役割が入れ替わってもOK。
ワンツーでの内側貫通
保持者→内へ走るあなた→壁で落として別の選手へ。3人目前提で角度を作ると通りやすい。
外→内→外の連続レーンチェンジ
最初は外を見せ、内へ差し、最後に外へ抜ける。守備の基準が壊れ、どこかが必ず空きます。
リレー式の連続インナーラップ(二人三人で)
SBが内へ侵入→受けたIHがさらに内を突く。連続で刺すとCBの迷いが増幅します。
セットプレー後の流れで狙うアンダーラップ
CKやFKのセカンドボールはマークが曖昧。外に開いて見せて内へ一撃が効果的です。
よくある質問(FAQ)
スピードがなくても通用するか?
はい。大事なのは初速と角度、そしてタイミング。最後の2歩の工夫で十分通用します。
身長や体格が小さくても有利に働く場面
小柄な選手は方向転換が速く、死角に入るのが得意。インナーラップは相性抜群です。
狭いピッチや人工芝での注意点
パスが足元に速く来るので、受けの面作りを意識。角度は30〜45度の間で早めに決める。
対マンツーマン守備への対処
一度外へ連れていき、内へ切り返す“ジグザグ”。味方の壁(ワンツー)を積極的に使う。
小中学生への教え方に置き換えるには?
言葉は「外を見せて内へ早歩き→最後はゆっくり受ける」。難しい用語を使わずリズムで伝えます。
オフサイドの注意点(ボールより前・相手より前)
パスが出る瞬間、相手の最終ライン(正確には後ろから2人目の守備者)とボールの両方より前に出ていればオフサイドです。ラインの肩を見る習慣を。
まとめと7日間の練習プラン
要点の振り返り:角度・タイミング・合図
- 角度:半レーンずらしの斜め。最後の2歩で微調整。
- タイミング:出し手のタッチ直前/直後。相手の肩が外へ向いた瞬間。
- 合図:短い声+体の向き。みんなで共通化。
7日間プラン:個人→連携→試合適用
- Day1:斜め走(ストライド→ピッチ切替)+壁当て内タッチ
- Day2:10m/15m角度ダッシュ+減速→再加速ステップ
- Day3:動画セルフチェック(首振り・最後の2歩)+呼吸ドリル
- Day4:2人でワンツー内貫通+キーワード「インナー/今」練習
- Day5:3人目の動き連携(SB-WG-IH)+受け渡し破壊の角度
- Day6:ゲーム形式で「前半は観察→後半は狙い撃ち」の実験
- Day7:試行数・成功数・決定機の記録→次週KPI設定
インナーラップを中高生向けに解説、図解なしでもわかる走り方としてのキモは、言語化した“合図”と“最後の2歩”。ここが揃うだけで通る率は驚くほど上がります。
あとがき
インナーラップは、一流選手だけの特別な技ではありません。角度を決め、タイミングを合わせ、短い合図で揃える——この3つを丁寧に積み上げれば、誰でもチームの“内側の刺客”になれます。今日の練習から、まずは一度、意識して内へ。小さな成功の積み重ねが、試合の決定的な一歩になります。
