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サッカーで攻撃時に2-3-5へ可変する原則を理解する

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ピッチで主導権を握るチームは、守備の陣形から攻撃の形へ滑らかに「可変」します。この記事では、攻撃時に2-3-5へ変形する原則を、高校生以上の選手や保護者の方にもわかる言葉で整理。幅と高さの確保、スペース管理、トランジションの実践方法、練習メニューまで一気通貫で解説します。図や画像は使えませんが、実戦でそのまま使える言語化にこだわりました。今日の練習から取り入れられるチェックポイントも多数用意しています。

導入:この記事の目的と対象

この記事で学べること(高校生以上の選手と保護者向け)

本記事では、攻撃時に2-3-5へ可変する際の原則と、実戦で使える手順・練習方法を具体的に学べます。対象は以下の通りです。

  • 高校生以上のサッカー選手(部活・クラブ問わず)
  • サッカーをするお子さんを支える保護者の方
  • 指導者や学生コーチとして原則を整理したい方

「なぜ2-3-5なのか」「どのタイミングで誰が動くのか」を、主観だけでなく客観的な原理に基づいて掘り下げます。

「攻撃時2-3-5へ可変する」とは何か(簡潔な定義)

守備時の陣形(例:4-4-2や4-3-3)から、ボールを保持して攻撃に移った際に、ピッチ上の配置が「2(最終ライン)-3(中盤)-5(前線)」の構造になるようにポジションを調整することです。目的は、ピッチの幅と高さを最大限に使い、相手の守備を横にも縦にも引き伸ばすことです。

読み進め方と本記事の構成

前半は概念と原則、後半はポジション別の役割、トランジション、練習とチェックリストです。自分に必要な箇所から読んでもOKですが、初見の方は順番に読み進めると理解がスムーズです。

サッカーで攻撃時に2-3-5へ可変するとは?──基本概念と意義

2-3-5への可変の基本イメージ(守備時との違い)

守備時は横スライドやコンパクトネスを優先し、中央を締めます。攻撃時の2-3-5はその逆で、幅と高さを広く取り、相手のライン間・背後・サイドの3方向に同時にプレッシャーをかけます。2枚の最終ライン(多くはセンターバック2人)がビルドアップの基点となり、その前に3人(アンカー+インサイド系)が「つなぎ」と「カバー」を担い、前線5人が相手の最終ラインと中盤の間を占有します。

なぜチームは可変を採用するのか(攻撃的利点)

  • 幅の最大化:サイドの1対1を作りやすく、クロスやカットインの脅威を両立できる。
  • ライン間の占有:5レーン(左右ワイド、ハーフスペース2つ、中央)を埋めやすく、縦パスの差し込みが増える。
  • 再奪取の安定(リストディフェンス):後方2+中盤3の形が残るため、ロスト後の即時奪回がしやすい。
  • スイッチの多様化:縦、斜め、横の3方向にパス角が確保され、相手の予測を外せる。

現代サッカーでの採用例と適用条件(チーム特性・選手層)

ハイレベルの試合では、ポジショナルな原則を用いて攻撃時に2-3-5(または3-2-5)へ可変するチームが数多く見られます。適用には以下の条件が噛み合うと機能しやすいです。

  • 後方のビルドアップ能力(CB・アンカーの技術と判断)
  • ウイングとインサイドの機動力(幅と内側の出し入れ)
  • チームとしての約束事(誰が外に張り、誰が内に入るかの明確化)
  • 即時奪回への意識(ロスト後3~5秒の反応)

攻撃時2-3-5に変形するための原則

幅(横)と高さ(縦)の同時確保

「幅」だけでも「高さ」だけでも相手は崩れにくいです。2-3-5では、左右ワイドがタッチライン近くで幅を張り、中央とハーフスペースの選手は相手の背後とライン間を交互に取り、縦の深みを常に示します。これにより、相手の横スライドと背後警戒を同時に強要します。

人数バランスの原則(オーバーロードとカバーの両立)

ボールサイドで数的優位(オーバーロード)を作る一方、逆サイドと後方には必ずカバーを残します。目安は「前線5+中盤2が関与、後方3はリスク管理」。ただしスコアや時間帯に応じて前線6に増やす、後方を3→4に厚くするなど調整します。

ボールサイドと反対サイドの動き(サポートと縦パスコースの確保)

  • ボールサイド:三角形または菱形のサポート角度を作る。最短・最安全・最破壊的(縦)の3択を常に用意。
  • 反対サイド:ワイドは最大幅で張り、インサイドは相手の視野外で背後を狙う準備。サイドチェンジの受け皿を切らさない。

スペース管理の原則(ポジショニングで空間を作る)

人がボールに寄るほどスペースは消えます。2-3-5の狙いは「占有」と「空ける」の両立。例えば、片側のハーフスペースに人を集めて相手を誘い、逆サイドのワイドレーンを解放するなど、意図的に空間を作っておくことが鍵です。

タイミングと意思表示(走り出し・ポジションチェンジの合図)

  • ファーストタッチの方向=次の狙いの合図
  • 受け手の腕や体の向き=背後狙いか足元かのシグナル
  • 3人目の動きはパスが出る瞬間ではなく出る「前」にスタート

合図をチーム内で統一し、遅れても早すぎても崩れる「秒」を合わせます。

ポジション別の具体的役割(2バック/3中盤/5前線)

2バック(センターバック2人)の役割と注意点

  • 役割:前進を開始する基点。縦パスと斜め通しの判断、相手の1stラインを外す誘い。
  • 注意点:背後の管理とカバーの優先。片方が前進したら、もう片方はリスク管理で残る。
  • 技術:対角の速いサイドチェンジ、運ぶドリブル、プレッシャー下での体の向き。

3中盤の役割分担(ボランチ、インサイドミッドフィルダーの違い)

  • アンカー(中央):縦横のスイッチ役。前向きで受けて前進、ロスト時は即時奪回の起点。
  • インサイド2枚:ライン間の受け手と前進ドリブラー。片方は降りる、片方は背後を狙うなど高低差を作る。
  • 共通:守備転換での内側圧縮、ファウルマネジメント(必要な場面での戦術的ファウルの判断)。

5前線の内訳と役割(ウイング、インサイドフォワード、中央FW)

  • ウイング(左右):幅の維持と1対1の突破。逆足・利き足の使い分けでカットインと縦突破を両立。
  • インサイドフォワード(左右):ハーフスペースを占有。背後のランと足元での壁役を切り替える。
  • 中央FW:基準点。楔で前を向く、流れて数的優位を作る、ファーでの得点狙いを状況で選択。

連携のルール(誰がボールホルダーの第一サポートか)

原則は「最短距離の内側が第一サポート、外側が幅の維持、背後が脅威の提示」。二人目は支持(足元か背後か)を明確に、三人目は空いたスペースへ走り込む。これを固定化しすぎず、ボールの位置と相手の圧力で役割を柔軟にスイッチします。

守備→攻撃のトランジションで2-3-5へ移行する手順

ボール奪取直後の優先順位(前方へ送るか保持するか)

  • 前が空いている:最短で前進。背後ランに即座に合わせる。
  • 前が詰まっている:いったん保持して形を作る。2-3-5の幅と高さを整える。
  • 判断基準:ボール保持者から見て2秒以内に「縦・斜め・戻し」の優先順位を決める。

ビルドアップ時の最短経路とリスク管理

最終ライン2人とアンカーで菱形を作り、プレッシャーの薄いサイドへ素早く運ぶ。中央が閉じていれば、外→内→背後の三段階で相手をずらす。ロスト時に即時奪回できる距離感(10~15m)を保つことがリスク管理になります。

中盤から前線へ人数を掛けるタイミングと具体的動作

  • ウイングが前向きで受けた瞬間に、同サイドのインサイドが背後へスプリント。
  • 中央FWが降りたら、逆サイドのインサイドが裏抜けでバランスを取る。
  • アンカーは出て行く人数を数え、必要なら自分は止まってカバーに残る。

不測のカウンターに備えた最低限のカバー配置

最低基準は「後方2+中盤1の三角」。サイドバックが内側化して3の一角を担うやり方もあります。相手の速いFWがいる場合はアンカーを含めて後方3~4を確保し、前線の5から1人削ってバランスを取ります。

攻撃パターンと実践例(2-3-5の活用法)

サイドを起点にする攻撃(ウイングの使い方)

  • 外→内の三角形:ウイングが足元、インサイドが落とし、オーバーラップで縦突破。
  • 内→外のフェイク:インサイドが内側で引きつけ、ウイングへ速いスイッチで1対1を作る。
  • ニアゾーン侵入:ハーフスペースからペナルティエリア角へ進入し、折り返しを狙う。

中央寄りの連動で崩す方法(3中盤と2トップの関係)

中央FW+片側インサイドで「擬似2トップ」を作り、アンカー→楔→落とし→3人目の背後で一気に突破。相手のアンカー脇を突くと効果的です。

速攻(カウンター)での2-3-5活用法

奪って3本以内でフィニッシュを狙う時も、幅と高さの原則は有効です。片側に寄せたら、逆サイドのワイドが最終ラインと同じ高さへダッシュし、最後は横パス1本で押し込むイメージを共有しておきます。

セットプレーやサイドチェンジでの応用

  • リスタート:ショートコーナーで2-3-5の配置に素早く移行、逆サイドのワイドをフリーで待機。
  • 大きなサイドチェンジ:CBからウイングへ対角のロング。着弾点の手前で減速し、トラップの質を担保する。

練習メニューとドリル(高校生向け/家庭でできる補助)

ポジショニングと連動を身につける小規模ゲーム

設定:5対5+フリーマン2(内1人はアンカー固定)。コートを縦5レーンに仮想分割し、同一レーンに2人以上長時間滞在しないルールでプレー。目的はレーンの占有と入れ替わりの自動化。

スペース認識を高めるパス&ムーブドリル

  • 三角形ロンド:1タッチ制限で、受け手は必ず「空いているレーン」へ移動してから受ける。
  • 楔→落とし→3人目:受け手は背後ランと足元受けを交互に選択。コーチは選択理由を口頭で説明させる。

ハイテンポでのトランジション練習(守→攻)

7対7で、奪ったら5秒以内にシュートで終えるルール。失敗したら次は保持優先で2-3-5の形を作る。速攻と遅攻の切り替え判断を磨きます。

保護者がサポートできる自宅トレーニング(技術・判断力)

  • ファーストタッチの方向付け:壁当て→左右45度に前進→再パス。1分×3本。
  • スキャン習慣:パスを受ける前に左右後方を1回ずつ見る「見る回数チャレンジ」。
  • 短時間インターバル走:20秒全力+40秒ジョグ×8本。再奪回の反復力を養う。

よくあるミスと改善方法(実戦で起きやすい失敗例)

人が集まりすぎて数的優位を失う場合の修正

原因は「ボールに寄る癖」。解決策は「同レーン滞在は2秒以内」「ボールサイド3人まで」のチームルールを設定。逆サイドのワイドは最大幅で待機。

タイミングが合わずラインが崩れるケースと改善手順

  • 合図の統一:出し手の見る方向・受け手の手のサインを決める。
  • 数的管理:前線が5を超えたらアンカーかCBが声掛けでブレーキ。
  • 動画確認:自チーム映像で「パスが離れたフレーム」でそれぞれの足が動いているかチェック。

ボール保持優先でカバーを怠る問題の対策

原則は「最後尾の三角」。誰が残るかを事前に指名し、攻撃参加は「残りが成立したら」の条件付きで許可します。

コミュニケーション不足を補うルール設定

  • コールワード:背後「ライン」、足元「サポ」、縦行く「ゴー」を全員で統一。
  • 責任区分:同一レーンに2人入ったら「後から入った方」が外れる。

フィジカル・技術・判断力の評価指標と育成法

2-3-5を機能させるための身体的条件(持久力・スプリントなど)

  • 反復スプリント能力(RSA):10~30mの往復を短いレストで継続できるか。
  • 方向転換耐性:減速→再加速の質。切り返し後の2歩目の速さ。
  • 有酸素土台:Yo-Yoテストやシャトルランでベース確認。

必要な技術スキル(トラップ・パス・ドリブル・シュート)

  • トラップ:ファーストタッチで圧力から遠い足へ置く。
  • パス:対角の高速パス、縦のスルー、足裏やアウトの柔軟な使い分け。
  • ドリブル:運ぶドリブルで角度を変え、パスコースを開く。
  • シュート:ニア・ファーの使い分けと逆足の実用化。

判断力を鍛える練習(視野を広げる・選択肢を増やす)

「受ける前に2回見る」を定着させ、ボールホルダーから見える三択(最短・安全・破壊)を常に作る。ゲーム形式では「1タッチ制限」「方向限定」「フリーマン増設」などルールで判断を促します。

年間トレーニング計画に落とすポイント

  • 前期:基礎技術とポジショニング原則の理解
  • 中期:トランジション強化とセットプレー応用
  • 後期:試合モデルの固定化と対策別プラン(相手のブロック高さに応じた可変)

コーチングと保護者向けの指示・声かけ例

試合中に短く伝えるべき指示(選手へ)

  • 「幅、保って!」(ウイングの位置修正)
  • 「三角作る!」(近距離のサポート角度)
  • 「残り3!」(後方の人数確認)

練習中の具体的なフィードバック例(改善を促す言い回し)

  • 「いま背後を見てから受けられた?」(スキャン促進)
  • 「次の一歩が前向きになる置き所を探そう」(ファーストタッチの質)
  • 「逆サイドの準備が1テンポ早ければ通せたね」(サイドチェンジの準備)

保護者がやるべき支援と避けるべき言動

  • 支援:睡眠と食事の習慣づくり、練習への送迎と時間管理のサポート。
  • 避ける言動:試合直後の過度な技術指摘や当日の戦術批判。振り返りは落ち着いてから。

選手の自主性を育てる関わり方

「今日の狙いは何だった?何がうまくいった?」と問いかけ、選手自身の言葉で原則を再説明させる。自己説明は戦術の定着に有効です。

実戦チェックリスト(試合前・試合中・試合後)

試合前の確認事項(役割・ルールの最終確認)

  • 2-3-5への可変で「誰が外、誰が内、誰が残る」かの確認
  • セットプレー後の配置(即時に形へ戻る導線)
  • 相手の強み(快速FW、中央圧力)に応じたリスク管理

ハーフタイムに見るべき改善ポイント

  • 幅は十分か?逆サイドのワイドは機能しているか?
  • ライン間への差し込み回数と成功率
  • ロスト後5秒の再奪回が「距離」と「人数」で成立しているか

試合後の振り返り項目(個人とチーム双方)

  • 個人:ファーストタッチの向き、スキャン回数、背後ランの本数
  • チーム:可変にかかった秒数、サイドチェンジの回数、再奪回までの秒数

次の練習への落とし込み方

課題を1~2点に絞り、翌週のドリルに反映。例えば「逆サイドの準備が遅い」なら対角スイッチの制限ゲームを増やす、など具体化します。

まとめと次のステップ(サッカーで攻撃時に2-3-5へ可変する原則を理解する)

重要ポイントの要約(すぐ実践できるチェックリスト)

  • 幅と高さを同時に提示(5レーンを意識)
  • 前線5・中盤2・後方3のバランス管理
  • 三角のサポートと3人目の動きの同期
  • ロスト後5秒の即時奪回(残りの配置が前提)
  • サイドチェンジの受け皿を常に準備

よくあるFAQ(短い回答)

  • Q:SBは必ず内側化(偽SB)すべき?
    A:必須ではありません。選手特性と相手の守り方で、外に張る/内側化を使い分けます。
  • Q:2バックで不安。どう補う?
    A:アンカーの残りと逆サイドのインサイドの戻りで「2+1~2」を常に確保します。
  • Q:背後ランが合わない。
    A:出し手の準備タッチに合わせて「前」に走り出す。合図をチームで統一しましょう。

さらに学ぶための参考トピックと推奨練習

  • トピック:ポジショナルプレーの5レーン理論、リストディフェンスの設計
  • 推奨練習:7対7の可変ゲーム(得点後・ロスト後の再配置タイムを計測)

最後に。2-3-5へ可変する狙いは「相手を広げ、自分たちの選択肢を増やす」ことです。配置は目的のための手段。原則を共有し、合図を統一し、日々の練習で判断のスピードを磨いていけば、チームの「攻撃の説得力」が一段上がります。今日の練習から、まずは幅と高さ、そして残りの三角。この3つを徹底してみてください。

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