サッカーで「あと一歩が届かない」と感じたことのある方も多いのではないでしょうか。この壁を越えるカギとなる動きが「遅れて入るラン」、いわゆるセカンドランです。意図的にタイミングをずらしてスペースを生み出すこのスキルは、見落とされがちですが得点やチャンスメイクに直結する非常に重要なプレーです。本記事では、セカンドランの判断基準やその鍛え方、失敗しないためのヒントなどを徹底解説します。高校生以上でサッカーを楽しんでいる男性はもちろん、お子さんを支える保護者の方にも役立つ内容となっています。
目次
はじめに:なぜ『遅れて入るラン』がサッカーで重要なのか
セカンドランとは何か
サッカーでよく耳にする「セカンドラン」とは、ボールが動き出した後で最初の動きに続いて行う、二度目・三度目のランニングのことを指します。特に「遅れて入る動き」と表現される場合、ボールホルダーの近くにいる選手やマークを外す動き出しの選手が、あえて一呼吸遅らせて相手ディフェンスの背後やスペースへ飛び込むことが挙げられます。一見地味ですが、相手の視線や注意が別のところへ向けられる“隙”を利用する、高度な判断が求められるプレーです。
遅れて入る動きの有効性
サッカーはスペースや時間の奪い合い。DFは常に攻撃側の選手をマークしようとしていますが、全ての動きを同時に追うのは難しいもの。そこで「遅れて入る」ことで血眼になった守備組織の一瞬のほころびを突くことができます。例えばクロスに合わせて走り込む際、味方がニアで引き付けるのを見てファーで遅れて飛び込む、ボールが逆サイドに渡ったタイミングを逃さない…こういったプレーは得点やアシストの確率を大きく高めます。
現代サッカーにおける活用事例
欧州サッカーのトップレベルでも、ミッドフィルダーやサイドバックが「遅れて中央に入る」プレーが数多く見られます。特にポゼッションサッカーやショートカウンターのチームでは、ボールに寄り過ぎずスペースに侵入する動きが勝敗を左右します。Jリーグでも多くの得点シーンで遅れて飛び出す選手の存在が結果を生んでおり、今やどのポジションでも欠かせないスキルとなっています。
サッカーのセカンドラン判断基準とは
判断が求められる代表的な場面
セカンドランが特に求められるシチュエーションにはいくつか傾向があります。
- 味方がサイドで仕掛けている時、ボールがペナルティエリアに入る瞬間
- 中央でFWがポストプレーをした直後の二次攻撃
- クロスやセットプレーなど相手DFがボールに集中しやすい時
こうした場面で動き出しの「タイミング」と「コース」を自ら判断できるかどうかがセカンドランの質を左右します。
遅れて入るタイミングの重要性
なぜ「遅れて入る」のか――それは味方の“最初の動き”と被らず、相手DFの意識が分散されるのを狙うからです。先に動き出すとマークされやすく、早すぎてもオフサイドやスペース消失につながります。
主観的には「ここだ」と感じる一瞬を信じる決断力、客観的には「味方や相手の視線・動き」を観察し、“今まだ自分に注目が集まっていない”とわかる瞬間が理想です。いわば「ワンテンポ後」の積極的なリアクションが求められます。
正しい判断のために考慮すべきポイント
- 味方と敵の位置関係:自分が動き出すことで誰かのスペースを潰さないか? 相手マークを引き離しているか?
- ボールの動き:パサーの顔や体の向きで通したいコースは読めているか?
- 自分の走力やタイミング:どのスピードで入れば一番効果的か? 狙い通りの位置に間に合うか?
- サインの有無:アイコンタクトやジェスチャーで味方と意思疎通できているか?
細かな状況判断の集積が、結果的にゴール前の「後出しジャンケン」で勝つカギとなります。
遅れて入る動きを成功させるための実践的な鍛え方
実戦形式トレーニング(パターン練習)
セカンドランを身につけるためには、ただダッシュやアジリティを鍛えるだけでなく「実際に起こりうる試合場面」を意識した練習が効果的です。
- サイドからのクロス&突入
2人組でサイドを突破→1人目がニア、2人目がファーへ遅れて飛び込む。あえて2人目が出遅れたフリをして一気に加速するなど、「目立たない動き」から「急加速」を繰り返す。 - 中央での2列目ラン
ミッドフィルダーがボールを持った瞬間、FWへの楔(くさび)、サイド展開と同時に2列目の選手が「遅れて」ボックス内へ。パスの出し手とのコンビネーション、タイミングのずらし方を重点的に。 - リバウンドボールへの反応
シュート練習と合わせ、こぼれ球に誰が「遅れて」詰めるか決めておき、一拍おいてから侵入。相手DFのクリアやGKのこぼし球への“遅れた反応”も実戦の大事な要素です。
試合分析から学ぶ遅れて入るランの特徴
自分やプロ選手の試合映像で「なぜこの選手はここでフリーになれたのか?」を確認することは非常に有効です。特徴的なのは、セカンドランのうまい選手は常にボールの動きよりワンテンポ遅らせています。そして「動き出す前に一度後方を確認」し、「スペースを確信した瞬間に加速」しています。
映像を早送りせず、プレーごとに一時停止して「相手DFの視線や身体がどこに向いていたか?」を追うと、新しい発見が得られるはずです。
周囲との連携とチーム戦術との関係
セカンドランは個人技術の範疇を超え、チーム全体の意思疎通とも密接に関わります。例えば、ボールサイドとは逆の選手にも「どこで入って欲しい」というサインは共有できているか? また、遅れて入ることで他の味方の動きやスペースが生きる場合も多く、「あえて最初に動かない選択」が重要となることもしばしばです。
チーム練習で迷った時は、監督やコーチに「セカンドランの役割分担」を改めて確認したり、練習中に“全員の動き”を図式化してみると理解が深まります。
認知力と判断力を鍛えるための具体的アプローチ
プレー予測力を高めるメニュー
遅れて入るランには予測力=「これから何が起こるか?」をイメージする力が不可欠です。おすすめは「ノンストップ常変化トレーニング」。状況をサイン一つでコロコロ変え、どこへ動き出すべきか、味方の意図や相手のクセを瞬時につかむメニューです。例えば
- 3対2のボール回し-ランダムに攻守交代やエリア変更を行う
- コーチが突然笛や合図を出して“全員配置変更”→即座に自分の役割を判断してポジションを取る
瞬間的な判断力を鍛え、どんなシーンでも情報収集&即対応できる頭の回転を身に着けましょう。
状況認知を向上させるトレーニング例
目先のボールのみを追うのではなく、広い視野でフィールド全体を捉える認知力は、セカンドラン成功の下地です。以下はその改善トレーニング例です。
- 「背中の数字」ゲーム:選手の背中に数字やマークを貼り、走りながら互いの情報を伝え合う
- トライアングルパス&リアクション:パス練習時に、受け手・出し手・サポート役それぞれが「一つ後ろにいるDFの動き」まで確認しながらプレー
- 3方向同時指示トレーニング:コーチが指示を同時に出し、どの行動が一番チャンスにつながるか即判断してランニング
頭とカラダを同時に使い、認知領域を意識できる選手は、一歩抜けた存在になれます。
メンタル面の鍛え方と集中力維持
「遅れて入る」には一瞬の迷いや遠慮がつきもの。強いメンタルも必要です。具体的には
- あらかじめ「自分が入るエリアやタイミング」をイメージトレーニングしておく
- 失敗や空振りも“いいチャレンジ”だったとチーム内で認め合う習慣を作る
- 大事な場面ほど一度深呼吸し、ミスを恐れないマインドセットを持つ
集中力を切らさずにチャンスの到来を待つためには、日常のルーティンやコンディション管理もとても大切です。
セカンドラン失敗の原因と対策
よくある失敗例とその理由
せっかくタイミングよくランニングしたはずが、上手くいかないこともしばしば。失敗例とその理由を整理すると、
- 早すぎる動き出しでオフサイド、もしくはDFに詰められる
- ボールウォッチャーになり、周囲の選手同士で動きが重複する
- 動きの意図が味方と共有できていなかった
- ラストパスの質が合わずタイミングがズレる
これらはいずれも「先読み」「コミュニケーション」「認知の速さ」が不足している結果とも言えます。
自分のプレーを客観視する方法
セカンドランを上達させるには、「なぜ上手くいった・いかなかったのか?」を客観的にふり返る作業が重要です。そのためには
- 可能な限り試合や練習を動画撮影し、動き出しのタイミングや他選手との位置関係を確認
- 第三者やチームメイトに「今の動きどう見えた?」と客観的な感想をもらう
- ベストの場面だけでなく、“あえて失敗シーン”を重点的に観察
数字やデータだけではわからない、動きの微妙なズレに気づくことができれば修正も早くなります。
シミュレーショントレーニングのすゝめ
イメージトレーニングやドリル(反復練習)も有効ですが、もっと実戦に近づけたいなら「シミュレーショントレーニング」がおすすめです。
- 仲間同士で状況を設定(例:サイド突破→マイナスボール→2列目から遅れて入る)し、本番さながらに何パターンもシュミレーション
- GKやDF役もつけ、毎回パターンを微妙に変え「事前決め打ち」ではなく、その場で判断
- 練習後は「なぜこのタイミングで動いたか?」など、声に出して解説し合う
本番でも動きが“習慣化”され迷いなく選ぶことができるようになります。
ポジション別・遅れて入るランの使い方
MF(ミッドフィルダー)の場合
ミッドフィルダー(特にインサイドハーフやボランチ)は、2列目から「遅れてボックス内に入る」役割が最重要です。サイドやFWが牽制したスペースに、徐々に加速しつつ進入し、ボールが出た“瞬間”にフィニッシュ・シュート体勢を取れれば理想形です。
攻守の切り替えで相手DFの注意が緩んだタイミングが最大の狙い目。
また、守備時は相手の「遅れて入る動き」を見逃さないよう、背後のマーク確認も手を抜けません。
DF(ディフェンダー)の場合
DFは守備面だけでなく、攻撃参加時(たとえばセットプレーやサイドバックのオーバーラップ)でも遅れて入る動きが有効です。自分が最初から前線へ張り付かず、プレーが一段落したタイミングでスペースへ“追加の攻撃要員”として侵入することで、相手のマークを混乱させられます。
特にコーナーキックでは最初はペナルティエリア外に立っておき、味方のヘディングやクリアボールへのセカンドボール対応も意識しましょう。
FW(フォワード)の場合
フォワードは「最初からゴール前にいる」だけでなく、「一度下がって相手DFの視線から消え、そこから遅れて飛び込む」という動きが大事です。偽9番やシャドーストライカー、サイドからカットインできるタイプなら特に、他の味方とのタイミングを合わせてDFの裏へ抜け出す工夫をしましょう。
要は最初に引っ張る係・本命で入る係・あえて遅れる係など、「役割分担」と「駆け引き」を繰り返すのが得点への近道です。
保護者・指導者のためのサポートポイント
子どもの判断力を育てる声かけ例
プレーヤー本人に「自分で考えて動く」経験を積ませることは、セカンドランでも重要な要素となります。保護者や指導者の方は、次のような声かけでお子さんの自発性と判断力を促してみてください。
- 「今、どのスペースが空いてたと思う?」「ほかの選手はどこを狙ってたように見えた?」
- 「次は君が遅れて入るタイミングを自分で決めてみよう」
- 「失敗してもすぐ切り替えられるところが良かったよ」と前向きに評価
結果だけでなく「どう考えて動こうとしたか?」に注目し、その主体性を尊重する態度が、判断力アップの後押しになります。
練習環境の整え方
セカンドランを磨くには、「自由にタイミングやコースを選んでいい場面」をトレーニングにしっかり組み込むことが大切です。パターンが決まった反復練習だけでは、実戦での応用につながりません。
また仲間同士で「どんな意図だったか」を振り返る習慣や、時々立ち止まり全員で俯瞰する時間(ミニ講義や動画観察など)を設けることも効果的です。
保護者目線での観点とサポート
お子さんの試合や練習を観るときは、“ゴール前の派手なシーン”だけでなく「どこで・どんなタイミングで動き出しかけていたか」を観察してみてください。
練習の帰り道に「今日はどんな工夫を試したの?」と尋ねるのも、挑戦する気持ちや創意工夫への後押しになります。うまくいかなくても長い目で見て見守ってあげる姿勢が、結果的に自信や粘り強さにつながります。
まとめ:一歩先の選手になるために
サッカーのセカンドラン=遅れて入る動きは、一見地味ながら“勝負を決める一手”となる場面が多数あります。だからこそ、普段から「どの場面で有効か?」「今、誰がどこで動くべきか?」を自分自身で考え、チームと共有しながら経験を積んでいくことが大切です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、実践的なトレーニングと日頃の振り返り、そして周囲の支えや声かけが必ず力になります。カッコいいゴールやアシストの裏には、こうした“遅れて入る”小さな工夫と決断が隠れています。「自分がもう一歩先に成長したい!」――その気持ちを大切に、ぜひチャレンジし続けてください。