サッカーのパスワークにおいて、「トラヴィックパス」という言葉が注目されるようになってきました。特に高校生や社会人サッカーで戦術理解が求められる中、本記事では“GK→SB→WG”という流れのトラヴィックパスをテーマに、その定義や実践方法、成長ポイント、おすすめ練習まで徹底的に解説します。サッカーをさらに深く楽しみ、チームを勝利へ導くための知恵として、ぜひ参考にしてみてください。
目次
トラヴィックパスとは──現代サッカーにおける重要性
定義と語源
トラヴィックパス(Travic Pass)とは、ゴールキーパー(GK)からサイドバック(SB)、そしてウイング(WG)へと連続して行われる縦への展開パスの一連を指します。名称は“Triadic Pass(トリアディック=三者関係)”や“Traversing Pass(横断するパス)”に由来するとされ、日本語圏でも「トラヴィックパス」と表現されることが増えてきました。3つの異なるポジションを経由してサイド攻撃を活性化させる、現代的かつ効果的なビルドアップの手法です。
現代戦術における位置付け
現代サッカーは攻守の切り替えが激しく、相手のプレスをいかに剥がして数的優位を作るかが鍵となります。トラヴィックパスは、GKからビルドアップを始め、1列飛ばしてSB、さらに前線のWGへと繋ぐことで、中央の密集を回避しつつスムーズに攻撃へ転じる一手。バイタルエリア手前から両サイドへ展開するこのパターンは、相手チームの守備バランスを揺さぶる場面で大いに力を発揮します。
日本サッカー界での導入状況
Jリーグ各クラブや高校サッカー、ジュニア世代でも、トラヴィックパスを意識した取り組みが増えています。ただし、まだ実戦で精度高く活用できているチームは多くはありません。パスの精度、ポジショニング、味方との連携といった細かい要素を組み合わせる必要があるため、今後さらに普及・進化していくと期待されています。
GK→SB→WGのトラヴィックパスを理解する
各ポジションの役割と狙い
このパターンではそれぞれのポジションに明確な役割が求められます。
GK(ゴールキーパー)は、相手FWのプレスを観察し、どこにスペースがあるか判断してSBへパスを供給します。
SB(サイドバック)は、パスを受けることで相手のプレッシャーを引き寄せるとともに、素早い判断で前線や逆サイドへパスを送り出します。
WG(ウイング)は、SBからの展開を受けるため高い位置を取ったり、スペースに抜け出したりしてゴールへ直結するプレーを狙います。
トラヴィックパスが生まれる場面
典型的な場面は、相手の前線プレスに対して、GKがCBではなくSBへボールを出し、続けてWGへ縦パスまたは斜めのスルーパスを送る形です。この連続プレーによって中盤の密集ゾーンを経由せず、一気にサイドの高い位置を攻略でき、攻撃のリズムを生み出します。
なぜ重要なのか──相手プレス回避と攻撃のスイッチ
GK→SB→WGのトラヴィックパスの最大の利点は、相手の集中的なプレスをかわし、視野を広げて攻撃へスイッチできる点です。慌てて縦に蹴るだけではなく、リスクを管理しつつ、一つのプレーで2~3人のプレスを外せるため、攻守の切り替え時やピンチ脱出時にも有効。積極的な攻撃に転じるためのキーアクションといえるでしょう。
トラヴィックパスの実践コツ
GKが意識すべき視野と精度
GKはピッチ全体を俯瞰できる唯一の選手です。トラヴィックパスの起点となるため、相手のプレス位置を常に把握しながら正確なキックやスローでSBへボールを供給する技術が欠かせません。また、ワンテンポ早い判断と決断力、左右どちらにも展開できるキックレンジの練習を積みましょう。
SBの受け手としての動き方とパス選択
SBはGKからのボールを“足元”なのか“動きながら”なのか、状況次第で受け方を変えることがポイントです。マークを外すステップワーク、相手のプレスが強い場合にはワンタッチでさばく意識を持ちましょう。次に狙うWGへのパスも、縦に速く刺す・一度中へ預けてリターンを受けるなど、選択肢を広げてプレーすることが大切です。
WGへの的確な展開──タイミングとコース作り
WGはSBからのパスを受けるために、相手のSBや中盤の背後を突くようなタイミングで動き出します。自分の足元、またはスペースに抜け出す形を使い分けることで、相手の守備網にひっかからずに前を向いてプレー可能です。味方SBとどう連動して、スペースを作るかが成果を大きく左右します。
コミュニケーションと役割の共有
この連続パスは「合図」や声掛け、パスを呼び込むジェスチャーが非常に重要です。GK、SB、WGが互いの動きや狙いを理解し、同じビジョンを持つことで初めて成功します。プレー前後の話し合いや練習中の意識合わせを徹底しましょう。
成長ポイントと課題克服法
よくあるミスと改善方法
トラヴィックパスを狙う際によくあるエラーは「パススピード不足」「受け手の準備不足」「マークのズレ」です。
例: GKのキックが弱いと相手FWにカットされやすくなり、SBが寄せを受けすぎてボールロストにつながることも。
改善法: ボールが足元に入る瞬間の身体の向きを意識し、必ず周囲を見てからパスを出す習慣をつけましょう。また、パススピードは味方の受けやすさと相手の届きにくさを両立させる“速すぎず遅すぎない”加減が重要です。
判断力を磨くための工夫
トラヴィックパスは「いつ、どの方向へ、どのタイミングで出すか」の判断力が肝となります。練習中から「仮想敵」を設け、相手がどこからプレッシャーをかけて来ているか意識づけることで、試合に近い判断が培われます。さらに、動画で自分たちやプロのプレーを分析して、“なぜその選択だったのか”を考える時間も大切です。
体力・スキル・メンタル面の成長アプローチ
トラヴィックパスにはダッシュ力や持久力、瞬時の技術発揮といった体力・スキル両面が求められます。特にSBやWGは何度も上下動を繰り返すため、日頃からランニングや基本技術トレーニングで基礎体力を養うこと。
また、プレスの中でミスしてもすぐ切り替えられるメンタル、仲間と積極的に意見交換できる協調性も成長には欠かせません。
トラヴィックパス上達のためのおすすめ練習メニュー
基礎トレーニング例
まずはロンド(鳥かご)や2タッチパス練習など“ボールを失わない”基礎技術を徹底的に身につけましょう。2人1組でSBが受けて即WGに展開するシンプルな往復パスも効果的です。GKとのキック精度アップにはロングパスやスローインの反復練習が有効です。
実戦的なパターンドリル
GK→SB→WGの流れを模したトリオ形式のパターンドリルがおすすめです。GK役からパスをスタート、SBは移動しながら受けて、1~2タッチでWG方向へ縦パスを供給。
さらにコーチや選手が限定的な守備役としてプレスをかけることで、実戦に近いプレッシャー環境での判断力・精度の養成が期待できます。
チームで取り組むべき練習法
チーム練習では「攻撃の組み立て」や「ポゼッション」練習時に、意図的にトラヴィックパスの構造を導入しましょう。特定の時間帯を設けて“GKから始まるサイド展開”をタスク化し、全選手が役割とタイミングを理解できるように工夫すると、試合での連動性がアップします。
プロ選手・指導者の実例とアドバイス
世界のトップレベルの活用事例
海外トップクラブでは、リヴァプールやマンチェスター・シティなど、GKアリソンやエデルソンの足元技術・展開力を活かし、SB→WGへの縦パスを積極的に狙う戦術が浸透しています。単なるビルドアップの一手としてだけではなく、「一気にハーフラインを越える攻撃スイッチ」として機能しています。
国内での参考例
Jリーグでは、横浜F・マリノスや川崎フロンターレなど、最終ライン+両サイドの連動から鋭いサイド展開を生み出すクラブが増えています。特にSBの攻撃参加とWGの高い位置取り、GKの正確なフィードは、試合で数多く再現されています。
現場指導者からのアドバイス
現場で指導に携わるコーチ陣は、「一人だけの判断ではトラヴィックパスは成立しない」と口を揃えます。SBとWGの距離感、動き出すタイミング、GKの“攻撃の起点”という自覚など、多角的な視点を持つことが重要です。練習ごとに“失敗してもトライする姿勢”を評価し、成功体験を繰り返すことが大きな自信につながると語っています。
まとめ──トラヴィックパス習得でサッカーの視野を広げよう
上達のヒントと今後の一歩
トラヴィックパスは、技術・戦術・コミュニケーションが絡み合う現代サッカーの“成長装置”とも言えます。
・GK→SB→WGの動線を意識してパスの選択肢を増やす
・普段のトレーニングから役割理解と連動を意識する
・失敗を恐れず積極的にチャレンジする
この3点を大切にしながら一歩一歩成長を積み上げていけば、チームとしても、個人としても次なるステージへと羽ばたく土台となるはずです。
あなたのプレー、チームの戦術がさらに豊かになるよう、日々の練習にぜひ取り入れてください。