トップ » 戦術 » サッカーのピックアンドパス練習法:味方を盾にパス交換力を高める方法

サッカーのピックアンドパス練習法:味方を盾にパス交換力を高める方法

カテゴリ:

サッカーのピックアンドパス練習法:味方を盾にパス交換力を高める方法

サッカープレーヤーなら誰しも、「もっとスムーズにパス交換できたら」「相手選手をうまくかわしてボールを受けられたら」と考えたことがあるはず。近年、欧州やJリーグでも注目を集めているのが、「ピックアンドパス」という戦術です。ピックアンドパスは、味方選手の体を「盾」としてうまく活用しつつ、パス交換の精度と創造性を高めるトレーニングとして、高校生以上の選手や育成年代の子どもたち、そしてその保護者の間でも注目を集めています。この記事では、サッカーにおけるピックアンドパスの原理や具体的な練習法、そして家庭や日常のトレーニングに活かす工夫まで、実践的な情報を分かりやすくお届けします。

目次

はじめに:ピックアンドパスとは何か

サッカーにおける「ピック」と「パス」の基本

まず、「ピック」とは何かご存じでしょうか?バスケットボールの用語ではありますが、近年サッカーにも積極的に取り入れられています。ピックの本質は、味方選手が自分の身体を微妙な位置に置くことで、守備側の選手の動きを妨げたり、コースを制限することです。この“盾”の役割を活かして、ボールホルダーとその味方がうまく連携しパスを回す――これが「ピックアンドパス」の基本です。

バスケットボールから着想を得た戦術

ピックアンドパスは、もともとバスケットボールの「ピック&ロール」というプレーがルーツです。サッカーはコートが広く、バスケほど接近戦が多くないため、ピックの動きはこれまであまり重視されてきませんでした。しかし現代サッカーのスピード化・複雑化により、限られたスペースでの攻防が増え、バスケットボール的な戦術発想が注目されるように。サッカー流にアレンジされた「ピックアンドパス」は、数的優位を一瞬で作り出し、パス交換力を劇的に高めることができます。

ピックアンドパスが現代サッカーにもたらす価値

局面打開の新しい選択肢

「ピックアンドパス」は、相手守備の網を崩すための新たな武器です。細かいパス回しだけでは崩せないとき、味方選手の立ち位置一本で守備者のマークを一瞬外したり、周りの動きを混乱させることができます。ボールを持った選手が「ただパスの出し手と受け手」になるだけではなく、「味方を盾に、守備側の意識をズラす」という新しい選択肢を得ることで、局面打開能力が飛躍的に向上します。

パス交換力の重要性

サッカーにおいて正確なパス交換は攻撃の命です。しかし、相手の守備が組織的であったり、プレッシャーが厳しい場合、ただのパス交換では簡単にカットされてしまいます。ピックアンドパスを使いこなすことで、守備側が意図しないタイミングやコースでパスを出し入れできるようになり、自分たちが「主導権を持って」パス回しや崩しを展開できるようになります。これは、プロの世界でも重視されるスキルのひとつです。

プロ選手も活用するピックアンドパスの実例

世界のトップクラブや日本のプロリーグにも、ピックアンドパスを意識した連係プレーを実践している選手が少なくありません。例えば、攻撃的MFとサイドバックが織りなす”ワンツー”の場面で、MFが一瞬ディフェンダーの進路に入って味方サイドバックをフリーにする動きがあります。このような動きはまさにピックアンドパスの応用例。欧州クラブのトレーニングに詳しい指導者の間でも「現代サッカーらしい発想」として積極的に取り入れる動きが広がっています。

味方を盾にする―ピックアンドパスの原理と考え方

味方を「盾」にすることで得られる優位性

ピックアンドパスを理解するうえで大事なのは、味方の身体を「盾(バリア)」として空間を操ることです。単なるマーク外しではなく、味方と自分のポジショニングにより守備側のプレッシャーを意図的に遮る。この「数的優位」を、必ずしも数字(3対2、4対3など)で作るのではなく、“動き”と“位置取り”で作るのがピックアンドパスです。少し味方の背後に回り込むことで、守備選手がボールを奪いにくくなり、パス交換の安全性が高まります。

守備者の視界・動きを操作する

ピックアンドパスの本質は、守備者の「視界」と「進路」を操作することです。味方を盾にボールを出すことで、DFはボールと受け手の両方を同時に確認することが難しくなります。その一瞬のズレを突いてパスを通すことで、単なる足技やスピードでは得られない“知的優位”を生み出せます。プレースピードが速い現代サッカーでは、こうした細かな工夫が勝負を左右する場面が増えています。

状況の読みと判断力の養い方

ピックアンドパスを最大限に活かすには、状況判断力も不可欠です。「守備者はどこを狙っているか」「味方はどのタイミングで動くか」等、ピッチ全体の流れを“読む”こと。そのためには、日ごろから成功・失敗パターンを意識しつつ反復練習することが重要。プレッシャーや状況を作り出したなかで繰り返し行うことで、瞬時の判断が身に付いてきます。

ピックアンドパス練習法:ステップバイステップ解説

基礎トレーニング(2人1組、3人1組)

ピックアンドパスはシンプルな基礎練からスタートできます。まずは2人1組、3人1組の形で、守備者を想定しながらパス&ムーブを繰り返しましょう。

  • 2人1組の場合:片方がピック役になり、ボール保持者に対して守備側のDFを背負うイメージで立つ。パサー(出し手)はピック役の横を抜ける、またはピックの後ろにまわりこみパスを受ける。
  • 3人1組の場合:中央にピック役、両サイドにパサー/レシーバーを配置。中央のピック役が守備者を意識しながら壁になり、2人はピックを利用してパス交換。やり取りしながらピック役が立ち位置を調節します。

まずはスピードを落とし、正確な「位置取り」と「動き方」、「声かけ」に注意して反復。守備者(コーンやマーカーで代用可)が動くイメージを持てるとより効果的です。

応用練習(4人以上+DF)

基礎ができたら、4人以上+DFを加えてゲーム形式に近づけます。例えば2対2+フリーマン、または3対3で、相手DFが「ボールをカットしようとする」リアルな状況下でピックアンドパスを使います。ポイントはピック役とパサーだけでなく、全員が「盾になれる/使える」という意識を持つこと。パスコースや動きの選択肢も増え、実戦感覚を養えます。

実戦に近づけるポイント

  • フェイントやターンを加え、あえてDF側に仕掛けさせる
  • 片方の選手がピック役と見せて突然飛び出す“ダミー”も有効
  • 守備者の視界や進路を奪う意識を常に持つ
  • パス交換→即座のポジショニング移動を習慣づける

ゲームに近いスピード・判断力が求められてきます。仲間同士で「今の盾の使い方どうだった?」「パス出しのタイミングは?」とフィードバックし合うことも上達のカギです。

練習を効果的にするコツとよくある失敗例

意識すべき身体の使い方と声かけ

ピック役は体を大きく使い、「こちらに盾があるぞ」と相手に意識させるのが大事です。しかし、相手DFを押したり、わざと邪魔をするのはファウルにあたります。あくまで“合法的なポジショニング”が鉄則。パサー役は「ここ!」「今!」など的確な声かけを忘れず、互いの動きを常にシンクロさせましょう。

連携・タイミングアップのための反復練習

ピックとパスのタイミングがズレると、守備者にカットされてしまいます。何度も反復して呼吸を合わせ、「ピックを利用したパス→次のムーブ」を体に染み込ませていきましょう。最初はゆっくり、慣れてきたら徐々にスピードアップするのがおすすめです。

失敗パターンとその改善法

  • ピック役が「動かずに立ち止まりすぎ」:動きのあるピック(ポジション変化)が重要。微妙なステップや立ち位置修正を細かく入れるクセをつけましょう。
  • パス交換者が「盾」をうまく使えず、自力でマークを外そうとする:ピック役の背後や横を意図的に使う意識を強く持つことが必要です。
  • 声かけや目線の連携が足りない:「今だ!」のタイミングを伝え合う簡単なコミュニケーションが大切です。

ミスが出たら、すぐにフィードバック→微調整を行うことで効率よく成長できます。動画で動きを確認するのも有効です。

ピックアンドパスを試合で活かすための実践例

ポジション別の使いどころ

ピックアンドパスは、どのポジションの選手にも取り入れられます。例えばサイドでボールを持つウイングが味方サイドバックの前に入り、相手DFの進路を塞いでフリーに抜け出させる動き。あるいはFW同士のワンツー場面や、中盤でのパス回しでも効果を発揮します。また、CB(センターバック)が相方を盾にボールを受けるなど、守備陣でも使えるシーンが多いです。

セットプレーや局面転換での活用法

コーナーキックやフリーキック時、「味方を盾にして抜け出す」動きは非常に有効。また、ボールを奪ってすぐのカウンター時も、味方の体をうまく使えば一気に数的優位が作れます。守備の際も同じで、「盾」を使って相手ボールホルダーの進路を限定する守り方に応用できます。

チーム戦術への落とし込み方

ピックアンドパスは個人技術の範疇にとどまりません。チーム全体で「誰もが味方の盾を意識する」「盾を使う→次の動きに連動する」といった考え方が広まると、ピックアンドパスの威力は何倍にもなります。練習での小さな声かけやプレー意図の共有が、最終的に試合での大きな成果につながるはずです。

親ができるサポートと自主練習への取り入れ方

家庭でもできる簡単なピックアンドパス練習

親子で楽しみながらピックアンドパスの動きを体験できます。例えば、親がピック役となり、子どもが壁をうまく利用してボールを受け取る―というシンプルなパス交換から始めましょう。家の庭や公園でも安全にできるよう、ミニゴールや目印を使うのもおすすめです。コーンを使って“守備者役”を疑似体験するのも効果的です。

子どもへの声かけやフィードバックの工夫

ピック役になった時は「こっち側をうまく使ってみて」と具体的に伝えてあげる、パス交換がうまくできたら「今の動き良かったね」と即座に褒める。これが成功体験につながり、子ども自ら工夫する力が養われます。また、失敗を責めるより「どうしたらもっとやりやすくなるかな?」と質問し、自分で考えて気づくようサポートすることが重要です。

個人技術と連携力の両立を促すサポート方法

ピックアンドパスの練習は個人技術(コントロール、トラップ、パス精度)と、味方との連携力の両方を高めます。親御さんが一緒に楽しんだり、兄弟や友達と取り組む中で、「連携して動く=サッカーの面白さ」を自然に感じられるはずです。日常会話の中でも「今日はどんな盾の使い方をしてみたの?」と聞いてみるだけでもやる気アップにつながります。

まとめ:ピックアンドパスでサッカーの可能性を広げよう

ピックアンドパスは、サッカーのパスワークに小さな工夫と創造性をもたらす現代的なトレーニング法です。味方の身体をうまく「盾」として利用し、守備側に知的な優位性を築くことは、高校生や一般のプレーヤー、チームや親子のサッカー観をいっそう深めてくれるでしょう。個人の技術だけでなく、チームワークや創造力まで磨かれるのがこの練習の真価です。毎日の練習や試合、大切な自主トレや親子での触れ合いの中で、ぜひ「ピックアンドパス」を取り入れてみてください。あなたの日々の努力が、確かな成長とサッカーの新しい可能性につながることを願っています。

サッカーIQを育む

RSS