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サッカー サポート角度 具体例:三角形維持の最適角

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攻撃でも守備でも「三角形」を途切れさせないチームは、パスコースが複数生まれ、ボール保持の安定と前進の両立がしやすくなります。本稿では、サッカーのサポート角度にフォーカスし、三角形維持のための「最適角」を状況別にどう捉えるか、練習でどう身につけるかを、具体例とドリルで徹底解説します。対象は高校生以上の選手、指導者、そしてサッカー少年・少女を支える保護者の方です。数値は万能ではありませんが、現場で使いやすい“目安”として提示します。

目次

導入:三角形サポートとは何か

三角形サポートの定義と重要性

三角形サポートとは、ボール保持者と少なくとも2人の味方でトライアングル(三角形)の関係を保ちながら、常に2つ以上のパスコースを確保する配置・動きのことです。三角形が維持されると、相手の「カバーシャドウ(守備者の背後にできるパス遮断の影)」を回避しやすく、縦・横・斜めの選択肢が同時に用意できます。結果として、奪われにくく、前進やスイッチ(サイドチェンジ)がスムーズになります。

この記事の対象読者と目的(高校生以上・保護者向け)

本記事は、戦術の言語化をこれから進めたい高校生・大学生、現場でコーチングの言葉を磨きたい指導者、そして子どもの練習をサポートしたい保護者の方に向けて、三角形維持の「角度」の考え方を、現実的な数値目安と練習メニューで落とし込みます。

三角形維持がもたらす攻守両面の効果(簡潔な概説)

  • 攻撃:選択肢が増え、プレッシャー下でも前向きや後方リセットが両立。第3の選手を使った前進(サードマン)が起こしやすい。
  • 守備:奪われた瞬間のカウンタープレスが効きやすい(近距離・適角の配置は即時奪回の陣形にもなる)。
  • ゲームスピード:判断時間が伸び、ボール保持者が落ち着ける(体の向き・視野の確保)。

三角形維持の「角度」基礎理論

サポート角度の定義(ボール保持者を中心に考える視点)

サポート角度は「ボール保持者から見た、味方が位置取る方向の角度」を指します。基準線を“進行方向(ゴール方向)”とすると、左右の斜めに現れるサポートが何度の位置にあるか、という考え方です。数値は計測環境でばらつくため、現場では「直進(0°)」「斜め(30~60°)」「横(90°)」「後斜め(100~140°)」のゾーンで捉えると実用的です。

角度と視野・パスコースの関係

  • 斜め45°前方のサポート:前進と背後を同時に脅かせる。受け手は半身で前を見やすく、第3者へのワンタッチも通しやすい。
  • 90~110°(横~やや後方)のサポート:安全なリセット先。相手の圧に対しボール保持者の体を開きやすい角度。
  • 同一線上(0°/180°)の味方:パスラインが1本になり、カバーシャドウで消されやすい。

距離と角度の相互作用(近距離・中距離・長距離での違い)

  • 近距離(6~12m):角度は30~60°の「鋭い斜め」を推奨。ワンツー、サードマンを起動しやすい。
  • 中距離(13~22m):角度は40~80°で受け手の視野を確保。トラップ方向と次のパスの“扇”が広がる。
  • 長距離(23m以上):角度は大きく取りすぎると距離も増えて精度低下。60~90°でライン間や逆サイドへの展開を狙う。

数値は目安であり、相手のプレッシャー速度・技術レベル・ピッチサイズにより調整が必要です。

プレーモデル別の最適角の考え方

ビルドアップ/保持時に有効な角度の狙い方

  • 後方の安全角:100~140°でCB⇔SB⇔アンカーの三角形。相手1stラインを外す。
  • 前進の起点角:30~60°でIH(インサイドハーフ)やWGが内側にサポート。縦パスからの落とし・前進を加速。
  • 等辺の意識:三角の辺の長さを近似(10~18m)にするとテンポが安定。等辺は「目安」で絶対ではない。

カウンター/速攻時の角度と支持位置

  • 縦の矢印+斜め45°:運ぶ選手に対し、片側は45°前方、もう片側はやや後ろの45~70°で三角を維持。
  • 幅の確保:1人はタッチライン方向に広げ、相手CBを横に割く。
  • 距離短縮:初動は8~12mで近距離三角を作り、テンポを上げる。

プレッシャー下(狭いスペース)での角度調整

  • 被圧時は角を広げる:横寄り(80~110°)の逃げ道を作る。
  • 背後を取るダミー:一方が背後(20~40°先)へ走り、もう一方が逆方向で受ける“逆サポート”。
  • 体の向き:受け手は半身で、遠い足のインサイドで前へ置く準備。

具体例:使える三角形の型と角度イメージ

サイドチェンジを意図した三角形(幅と角度)

SB-IH-アンカーの三角で、IHはSBから見て60~80°の位置、アンカーはSBから見て100~120°の位置。SB→アンカー→逆IH(またはWB)と斜め→斜めの連鎖で一気に逆サイドへ。

中央突破を誘う三角形の作り方

CBからIHへの縦差しを通すため、CFが30~45°の角度でIHの前方に“受ける影”を作り、第3の選手(逆IHやSB)が60°付近で落としの出口になる。守備を内側に寄せたら、次は外へ。

サイドアタックでの縦・斜めパスに強い角度

WGが外、SBが内側のレーンで45~60°の関係、IHが90°近辺のサポート。WG→SB(内)→IH(中央)→WG(裏)と三角の頂点を回すと、縦と内を使い分けやすい。

ドリル&練習メニュー(角度を身体で覚える)

3人パスの基本ドリル:角度認知とポジション交換

  • 配置:コーンで10~12mの等辺三角形。
  • 内容:1タッチ or 2タッチで回し、受け手は常に半身。3周ごとに全員が時計回りにポジション交換。
  • バリエーション:1辺だけ距離を15mに伸ばし、角度の取り直しを体感。

4人+守備1人で行う応用ドリル:動きながら角度を整える

  • 配置:長方形グリッド(20×15m)。攻撃3+フリーマン1、守備1。
  • ルール:常に三角形を維持(ボール保持者に対して2サポート)。同一ライン禁止。3本連続パスで1点。
  • コーチング:角度が潰れたら“ストップ”で位置を微調整→再開。

スモールサイドゲームで角度を課題化する設定例

  • 4対4+2フリーマン(30×25m)。得点以外に「三角形成ボーナス」を付与(例:サードマンで前進=+1)。
  • ルール追加:縦パス後に斜め落とし→逆サイド展開で加点。角度を作ったプレーを評価する。

コーチングポイントとフィードバック方法

観察すべき角度シグナル(判別しやすい目安)

  • 同一線の回避:保持者と受け手が相手のカバーシャドウから外れているか。
  • 体の向き:受け手が2方向(前・逆サイド)にボールを通せる半身か。
  • 距離:近すぎて圧縮されていないか(6m未満)、遠すぎて精度が落ちていないか(25m超)。

声かけ・指示の具体フレーズ(現場で使える例)

  • 「角度つくって!45!」(斜めにサポートする合図)
  • 「同じ線やめよう!」(同一ラインの修正)
  • 「半身で」「遠い足で受けよう」
  • 「逃げ道100°!」(安全なリセット先の角度指示)
  • 「距離10!」(おおよその間合い調整)

録画や数値化を使ったフィードバックの簡易手順

  1. スマホで上から斜め撮影(可能なら三脚)。
  2. 静止画にして、保持者→味方のラインを2本引く。
  3. 無料の角度計測アプリや描画機能で角度を概算(±5~10°の誤差は許容)。
  4. 良い場面の“角度・距離”をメモし、練習の合言葉に落とす(例:「前45・逃げ100・距離12」)。

年齢・技術レベル別のアプローチ

高校生向け:基礎習得の優先順位と練習強度

  • 優先:半身の受け、遠い足トラップ、6~15mのパス精度。
  • 強度:反復多め(3人組ドリル→SSG)。最後は試合形式で角度のチェック項目を共有。

大学・社会人レベル:戦術適用と細かな角度調整

  • 相手の守備方式別に角度を最適化(マンツーかゾーンか)。
  • ライン間での前進(30~50°)とリセット(100~120°)の切替速度を上げる。

子どもを持つ保護者向け:家庭で出来る簡易練習

  • 三角コーン3つで2~3mの小三角。親子でパス→ポジション交換。
  • 声かけは「半身」「斜めに動こう」。数字ではなく感覚でOK。

よくあるミスとその改善策

同一ラインに並んでしまう(立ち位置の修正法)

  • 改善:保持者から見て左右どちらかに“1歩+半身”。それでも消されるなら角度をさらに10~20°外へ。

距離が遠すぎる/近すぎる問題と具体的解決策

  • 遠すぎ:辺を15m以内に縮め、2タッチ限定でテンポを上げる。
  • 近すぎ:最低6~8mを確保。相手の足が届かない距離感を共有。

タイミングのズレ(動き出しとパスの同期)

  • 改善:パサーの視線が上がった瞬間に角度を作る“予備動作”。コール(例:「はい」「今」)を短く統一。

角度を可視化・測定する簡単な方法

現場で使える手作りツール(角度シート等)の作成法

  • 厚紙に中心点と放射状の線を描き、30°刻みで印をつける。
  • 練習後、写真の上に重ねて角度のゾーンを確認(0~30、30~60、…)。

スマホ動画を使った角度計測の基本手順

  1. 真横や真後ろからの撮影は遠近で歪むので、斜め上からが理想(可能なら観客席や高台)。
  2. スクリーンショット→描画で2本のラインを引き、角度アプリで概算。
  3. 3~5シーンだけでも傾向は掴める(前は30~60°が多いか、逃げ道は100°以上があるか)。

測定データを練習に落とし込む運用のアイデア

  • チーム合言葉を数値化:「前45・逃げ110・距離12」。
  • 週ごとに1項目だけ改善(例:逃げ道の角度を90→110°へ)。

サンプル練習プラン(週別・レベル別)

初級(週1):角度認知を高める反復メニュー

  • ウォームアップ:三角形キープ(10m、2タッチ)10分。
  • 技術:3人パス+ポジション交換(角度コール)20分。
  • SSG:4対4、同一ライン禁止ルール 20分。
  • 振り返り:良い角度の写真共有。

中級(週2):攻撃パターンと角度の組み合わせ練習

  • 技術:近距離(8~12m)でのワンツー→サードマン 15分。
  • 戦術:サイドでの内外三角→逆サイドスイッチ 20分。
  • ゲーム:5対5+フリーマン、三角形成で加点 25分。

上級(週3):試合想定での角度維持と調整練習

  • 戦術ゲーム:6対6+GK、プレッシャー強度高め 2本×12分。
  • 条件付き:敵陣侵入は「縦→斜め→縦」の連続でのみ得点可。
  • レビュー:動画で角度分布を確認し、次週のテーマ決定。

ケーススタディ:試合での具体的な場面解説

ゴール前での三角形維持(得点に繋がる局面)

右サイドでWGがボール保持。SBが内側45~60°、IHがペナルティアーク外で90°近辺。WG→SBへ内パス、SBはワンタッチでIHへ落とし、IHは逆サイドのWGへスルー。三角の頂点が回転し、守備の重心をズラしてフィニッシュへ。

相手プレッシャーを誘導して角度を作る実例

CBがわざと縦を見せ、相手CFを中央に引き込む。直後にアンカーが100~120°の位置で受け、逆IH(45°)に刺す。意図的にプレスを誘い、逆側の角度を確保する手順です。

観戦時に学べるチェックポイント(選手・保護者向け)

  • ボール保持者に対し、常に“2つの斜め”があるか。
  • 受け手が半身で、次の選択肢を2方向以上に持てているか。
  • 角度が潰れた瞬間に、誰がどちらへ動いて三角を再生したか。

まとめと次のステップ

重要ポイントの再確認(実践で優先すべき点)

  • 前進の斜め:30~60°。安全の逃げ:100~140°。
  • 距離の基本線:近距離6~12m、中距離13~22m(目安)。
  • 同一ラインを避け、半身で受ける。

トレーニングの優先順位と継続方法

  • まずは3人ドリルで角度と距離を固定→SSGで可変化。
  • 動画で“良い角度”を蓄積し、合言葉を数値で共有。
  • 1週1テーマの微調整(例:逃げ道の角度を10°広げる)。

参考資料・さらに学ぶためのリソース案内

各種コーチングライセンス教材、技術・戦術の基礎書、試合映像のセルフ分析、手元のスマホ計測アプリなど、身近なツールで十分学べます。重要なのは“角度・距離・体の向き”を同時に観る習慣づくりです。チームで共通言語(例:「前45・逃げ110・距離12」)を持つと、練習から試合への移行がスムーズになります。

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