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サッカー スタッツシート 自作テンプレで90分を1枚に整理する

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サッカー スタッツシート 自作テンプレで90分を1枚に整理する

試合の流れを正しくつかみ、次に活かす。これを最短距離で実現するのが「90分を1枚で収める」スタッツシートです。この記事では、サッカーのスタッツシートを自作テンプレで運用するための考え方と具体的な設計手順を、現場でそのまま使えるレベルまで落とし込みます。スマホアプリや動画分析がなくても、紙1枚で十分に価値ある示唆は得られます。まずは作って回す、そして2週間ごとに改良する。そのための土台をまとめました。

90分を1枚に収める狙いとメリット

なぜ「1枚」なのか:判断速度と共有性

1枚にまとめる最大の価値は、判断が速くなることと、共有が簡単になることです。視線移動が少なく、必要情報が一望できるため、ハーフタイムの短時間でも要点を抽出しやすくなります。さらに、試合後はそのまま配布・掲示・撮影共有が可能。ページをめくる手間や、複数ファイル管理の煩雑さを避けられます。

紙テンプレの強みと限界(スマホ記録との違い)

  • 強み:同時多発的な出来事を「書き飛ばし」で拾いやすい、電池切れなし、ペンの色や矢印で状況を即表現できる。
  • 限界:数値化や集計は手作業、書き損じ・判読性のリスク、複製や検索性はデジタルに劣る。

よって「現場での即時判断」は紙、「試合後の深掘り」はデジタルに連携するのがベストです。

現場別の使い所:高校・社会人・保護者観戦

  • 高校・大学・社会人:ハーフタイムの戦術共有、出場競争の客観材料づくりに最適。
  • 保護者観戦:感想ではなく「事実のメモ」を残せる。選手へのフィードバックも角が立ちにくい。

スタッツシート設計の原則

目的→指標→レイアウトの順で決める

まず「何を良くしたいのか」を明確にします(例:シュートまでの前進効率、セットプレー効率、守備の回収速度)。次に目的に直結する指標を選び、最後に記入しやすい配置を考えます。順番を逆にしないことが重要です。

記録負荷と情報価値のバランス設計

全部は書けません。1試合で無理なく回るのは「必須指標+優先拡張2〜3カテゴリ」が目安。書く価値が高いのは「意思決定に影響する数字」「次の練習メニューに直結する数字」です。

再現性を高めるための定義づくり

同じ出来事を同じルールで記録するために、「何をもってチャンスとするか」「プレス成功の定義はなにか」など、用語の定義を短文でテンプレ上に記載しておきます。定義は10行以内の簡潔さで十分。

サッカー スタッツシート:90分を1枚に整理する全体構成

上段:メタ情報(大会名・相手・天候・フォーメーション)

  • 試合名/節/会場/ピッチ状態/天候/気温/風
  • 相手チーム名/自チーム名/主審名(任意)
  • フォーメーション(開始時/変更後)、主なマッチアップ

中段:分単位タイムライン(イベントログ)

1分刻み or イベント刻みで、時間・イベントコード・選手番号・ゾーン・成否・簡易メモを記録します。最も紙面を使うので中央に広く確保します。

下段:集計枠とポジション別KPI

チーム集計(シュート、被シュート、CK、FKなど)と、ポジション別のミニKPI枠を配置。ハーフタイムで合計が見えると意思決定が速くなります。

余白の使い方:メモ、修正、ハーフタイム用

右下や左端に、気づきメモ・修正ポイント・ベンチ伝達用の短文スペースを用意。印をつけて見返しやすくします。

記録する指標の選定(必須と拡張)

チーム必須指標:得点・被得点・シュート・被シュート

最小構成はこれだけでも機能します。枠内/枠外/ブロックの内訳を加えると質の判断がしやすくなります。

攻撃拡張:チャンス創出、最終パス、クロス、ペナルティエリア侵入

  • チャンス創出(決定機相当):定義を「シュート期待度が高い局面」として事前合意。
  • 最終パス(KP):シュートに直結するパス。
  • クロス(C):成否と帯域(左/中央/右)を簡易記録。
  • ペナ侵入(PA):侵入回数と経路(中央/サイド)。

守備拡張:ボール奪取、インターセプト、プレス成功、クリア

「奪取」は相手からの明確な奪回、「インターセプト」はパスカット、「プレス成功」は前進を止めた/奪い切ったのどちらかに区分。「クリア」は危険除去として重要度を付記(!)。

セットプレー:CK・FK・ロングスローの扱い

発生数、キッカー、配球ゾーン、結果(シュート、二次攻撃、相手ボール)を最低限。短いFKのリスタートは「早い再開」として別記しても有用です。

GK関連:セーブ、キャッチ、パンチング、配球

セーブの難易度(高/中/低)は主観ですが、チーム内の統一ルールで。配球(スロー/キック)の成功は保持継続か前進成功で評価。

反則:ファウル、カード、被ファウル

どのゾーンでの反則かを記録すると、守備の課題(不用意なファウルの傾向)が見えます。

略記と符号化のルールづくり

イベントコード一覧と書き方(例:S=シュート、C=クロス)

  • S=シュート(So枠外/Son枠内/Sbブロック)
  • KP=最終パス、C=クロス、PA=ペナ侵入
  • INT=インターセプト、DU=デュエル勝、RCV=奪回
  • CK/FK/LS=ロングスロー、SV=セーブ
  • F=ファウル、Y/R=イエロー/レッド

書式例:35′ KP(10→9 右) → Son(9 中央)。

成否表記(○/×/△)と重要度マーク(!)

基本は○/×、判断が分かれるときは△。危険度や価値の高い事象には!を付け、ハーフタイムで優先的に確認します。

フィールドゾーニング:番号/座標の簡易ルール

9分割(左-中-右 × 自陣-中盤-敵陣)を「L/M/R × D/M/A」で略記(例:R-A=右・敵陣)。慣れてきたら縦横を1〜5の数字で座標化してもOK。

チームカラーとペンの使い分け

自チーム=黒、相手=青、重要=赤、セットプレー=緑などの色分けが有効。色は2〜3色に抑えると可読性が上がります。

タイムライン欄の作り方

1分刻みvs.イベント刻みの選択基準

取り逃しが多い場合は1分刻みが安心。記録者が慣れているならイベント刻みで省スペース化。迷ったら前半は1分刻み、後半はイベント刻みに分ける方法もあります。

前半/後半・アディショナルタイムの記法

45+2のように「+」で表記。用紙上に「前半」「後半」を区切るラインを引き、再開時に時刻を明確にします。

選手交代・フォーメーション変更の記録方法

交代は「IN 18 / OUT 9(60’)」のように枠で明示。フォーメーション変更は矢印や記号(4-4-2→4-3-3)をメタ情報欄にも追記。

ポジション別ミニKPIパック

FW向け:得点・決定機関与・枠内率・ペナ侵入

決定機関与は「最終アクションの一つ前まで」を含めると貢献度が見える。枠内率と合わせてシュート選択の質を評価。

MF向け:前進回数・ライン間受け・プレス回避・キーパス

前進回数は相手1列を超えた回数。ライン間受けが多い選手は前進の起点。プレス回避はファーストタッチの質とも相関しやすい。

DF向け:デュエル勝率・奪回・ライン統率・危険除去

空中/地上を分けてデュエルを記録。ライン統率はオフサイド誘発や背後ケアの声掛けメモで補完。

GK向け:セーブ率・ハイボール処理・配球成功・スイーパー行動

配球成功は前進成功か保持継続で評価。スイーパー行動は裏抜け対応やカバー範囲の広さの指標になります。

紙面デザインの実践(A4で90分を1枚)

A4縦横の選び方と余白・罫線設計

縦はタイムライン重視、横はポジションKPIやメモ重視。左右10mm、上下10mm程度の余白にして、誤記の逃げ場を作ると運用が安定します。

フォントサイズと手書き可読性の基準

見出しは12〜14pt、本文は9〜10pt相当のマス目。行間は最低5mm。手袋着用や雨天時でも読める太さが目安。

片面印刷で収めるための比率・ブロック配置

上段20%:メタ情報/中段55%:タイムライン/下段25%:集計とKPI。試合後の写真共有を想定して余白にページ名と日付を小さく記載。

雨天・湿気対策:紙質、クリップボード、筆記具

  • 耐水紙または上質紙+クリアポケット
  • 油性ボールペン or 鉛筆2B(にじみにくい)
  • バネが強いクリップボード、簡易屋根になるファイルカバー

自作テンプレをExcel/Googleスプレッドシートで作る

列・行のサイズと固定ルール(見出し・タイムライン)

列幅:タイム(6)/イベント(10)/選手(6)/ゾーン(6)/成否(4)/メモ(20)など。上行を固定、タイム列は左固定でスクロール時も視認。

データ検証でコード表をドロップダウン化

イベントコード、ゾーン、成否をデータ検証で選択式に。打鍵ミスを抑制し、印刷後の統一感を保ちます。

印刷設定:拡大縮小・改ページ・余白ゼロ・ヘッダー固定

1ページに収める設定(印刷倍率80〜95%)でA4に最適化。ヘッダーに試合情報を自動反映して使い回しを楽にします。

PDF化と共有の手順(配布/更新管理)

版数(v1.0, v1.1…)をファイル名に付与。PDFで配布し、元データは共有ドライブで権限管理。更新履歴を1文で残します。

試合前の準備と役割分担

担当割り:記録者・タイムキーパー・ベンチ連絡

最小2名で安定。記録者が迷ったらタイムキーパーが口頭で補助。ベンチ連絡はハーフタイムの要点整理を担当。

必要ツール:ペン2色・タイマー・養生テープ・クリップボード

風が強い日は用紙固定用のテープ必須。予備ペンと替芯も携行しましょう。

相手情報・スタメン枠の事前記入

相手の傾向(左攻め/ロングボール多い等)をメモ欄に先書き。スタメン・背番号はキックオフ前に埋めると混乱が減ります。

試合中の運用オペレーション

記入の優先順位と取り逃し時の対処

優先順位は「スコア関連>シュート関連>守備の危険除去>前進の起点」。取り逃したら時間だけ先に書き、後から埋める。曖昧なものは△で仮置きし、ハーフで確認。

ハーフタイム:即時集計と共有コメントの作り方

  • 数値:シュート(枠内/外)、PA侵入、被シュート
  • 要点:どこから前進できているか、どこで詰まっているか
  • アクション:前半の成功パターンを再現、リスクの芽を一本

ベンチへの伝達メモ:簡潔な要点の書式

「前進R-S2(右から中盤2)→C多いが精度×。中→PA少。守備:二列目背後△。」のように短文+コードで。

試合後の集計・分析・活用

合計値と割合で見るチームの傾向

シュート数よりも「枠内率」「被シュートの枠内率」「セットプレー比率」で質を把握。ペナ侵入1回当たりのシュート発生率も有効です。

チャンスの質評価:シュート地点/前進回数/セットプレー効率

遠距離中心なら選択の見直し、前進はできるがPA侵入に至らないなら最終局面の連携を重点練習に。

個人リポートの作成手順(強み・改善点・次アクション)

  • 強み:客観指標+具体例(KP2、PA侵入3など)
  • 改善:定義に沿った指摘(プレスの寄せ角度、体の向き)
  • 次アクション:練習メニューへの橋渡し

練習メニューへの落とし込み(KPI逆算)

例:クロス成功率を高めたい→サイドでの数的優位創出→クロス前の準備(視野確保・助走角)→ペナ内の枚数確保ドリル。

紙→デジタル連携のベストプラクティス

スキャンとOCRのコツ(解像度・傾き補正)

解像度は300dpi、真上から撮影。台形補正アプリで歪みを直すとOCR精度が向上します。濃いペンのほうが認識しやすいです。

スプレッドシート集計テンプレの作り方

入力シート(試合単位)→集計シート(ピボット)→ダッシュボード(グラフ)。コードはプルダウン、ゾーンはデータ整形で集約。

シーズン管理台帳:試合別・選手別ダッシュボード

試合シートをコピー増殖し、台帳でVLOOKUP/QUERYを活用。選手別の傾向(枠内率、奪回数、パス前進)を時系列で可視化します。

3種類のテンプレ例(自作の指針)

ベーシック版:初めてでも回る最小構成

  • 上段:メタ情報
  • 中段:1分刻みタイムライン(S/KP/C/PA/F)
  • 下段:チーム集計(S、枠内、被S、CK、FK)、簡易KPI

拡張版:分析重視の多指標型(イベントコード拡張)

INT、DU、RCV、SV、配球成功、セットプレー結果まで網羅。ゾーン座標を5×5で管理し、ハーフタイムのヒート感覚を掴む。

保護者観戦版:観戦メモ+重要イベント記録

「得点/被得点」「決定機(自/相)」と短文メモ中心。選手番号を事前印刷しておけば記入が楽になります。

よくある失敗と対策

書き切れない問題:優先順位と省略ルール

「スコアに直結するものだけは絶対書く」「攻撃はKPとPA侵入、守備は被シュートだけ」など、切り捨て基準を決めておく。

定義ブレによる比較不能:用語集と事前共有

テンプレの余白にミニ用語集を印字。担当者が変わっても解釈がズレにくくなります。

記入者依存を減らす二人体制・ローテーション

2人記録+月ごとのローテで属人化を緩和。大きな試合では3人体制(攻撃/守備/タイム)も有効です。

品質管理と信頼性の確保

観察者間一致の簡易チェック方法

同じ試合の前半10分だけ、別々に記録して差分を確認。差が大きい項目は定義や記入方法を修正します。

試行錯誤ログの残し方(版管理)

テンプレの余白に「変更点」を1行で残す。オンライン台帳にも版履歴を残して、過去との比較を可能にします。

改定のタイミングと影響範囲の把握

「2週間または2試合で1回」のペースが現実的。指標を増やすときは、記録負荷の増加を必ず試合で検証。

参考値とベンチマークの考え方

目安作成の注意点:相手強度・スコア状況・天候補正

相手が強いと被シュートが増えるのは自然。スコアが先行/劣勢でもデータは歪みます。天候やピッチも変数です。条件メモを併記しましょう。

自チームのKPIツリー化と優先順位

チームの勝ち筋(例:奪って速く刺す、サイドから厚み)に合わせてKPIを階層化。最上位KPIに直結しないものは後回し。

短期と長期の基準値運用(試合単位/シーズン)

短期は「次戦で改善したい1〜2項目」。長期はトレンドを見る(10試合移動平均など)。両輪で運用します。

FAQ(よくある質問)

記録者が一人でも運用できる?

可能です。ベーシック版に絞り、1分刻みで最重要だけ記録。後から思い出せるようメモ欄を広めにします。

選手別に全員分は書けない?

全員分は難しいので「注目選手2名+全体指標」で十分。ローテで対象を変え、数試合で全員をカバーします。

動画がないと意味がない?

動画がなくても、紙のスタッツは傾向把握に役立ちます。動画があれば検証が深まる、という位置づけです。

ユースと社会人で指標は同じでいい?

基本は同じでOK。ただしユースは育成目的で個人KPIを厚め、社会人は勝点直結のチームKPIを優先に。

すぐに使えるチェックリスト

印刷物と持ち物リスト

  • テンプレ(2〜3枚/試合)、クリップボード、ペン2〜3色、タイマー、テープ、予備電池、ハンドタオル、クリアポケット

当日のフロー(開始60分前〜試合後24時間)

  • 60分前:テンプレ記入(相手/天候/スタメン)
  • キックオフ:タイムライン運用開始
  • HT:集計→要点3つ→ベンチ共有
  • 試合後60分:写真化/スキャン→スプレッド入力
  • 24時間:個人/チームリポート下書き、練習メニュー案提示

見直しポイント:テンプレ更新の基準

「書き切れなかった欄」「空欄が多い欄」「HTに役立たなかった指標」を削る。逆に、HTで欲しかった情報を1つだけ追加。

まとめ:サッカースタッツシートを自作テンプレで回す

まずは1枚テンプレを作成→試合で検証

完成形を目指しすぎず、ベーシック版で即運用。1試合で「役立ったところ/不要だったところ」を明確化します。

2週間サイクルで改良する

版管理しながら少しずつアップデート。記録負荷と意思決定の速さが両立するポイントを探りましょう。

チームに定着させるコツと次のアクション

定義の共有、記録者のローテ、紙→デジタルの連携を仕組み化。次の一歩は「自チーム版コード表の作成」と「A4片面テンプレを印刷」すること。サッカー スタッツシート 自作テンプレで90分を1枚に整理する。この小さな習慣が、試合の理解と成長を着実に加速させます。

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