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サッカーPPDA指標とは?プレス強度を数値で正しく理解する方法

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サッカーの戦術を語るうえで「プレスの強度」は現代に欠かせないキーワードです。その強度を公平かつ客観的に測る新しい指標が「PPDA(ピーピーディーエー)」です。しかし実際にその意味や計算方法、活用法まで丁寧に説明された記事は意外と多くありません。この記事では、特に高校生や大人のサッカー選手、そしてサッカーに取り組むお子さんを持つご家庭向けに、PPDA指標って何?どう使うとサッカーが上手くなるの?という疑問に、具体的な活用例や成長戦略とともに分かりやすくお伝えします。

PPDA指標とは何か?サッカー用語の基礎知識

PPDAの正式名称と意味

PPDAとは「Passes Allowed Per Defensive Action」の略語で、日本語に直訳すると「守備アクション1回あたりに許したパス数」を意味します。端的に言えば、自分たちが相手からボールを奪いに行っているゾーンで、どれだけ相手にパスをつながれてしまっているかを数値化するものです。
読み方は「ピーピーディーエー」。サッカーデータ界隈ではおなじみですが、まだ浸透しきってはいません。この数値で、自分たちがどれだけアグレッシブにプレスや守備を仕掛けているかが分かる仕組みです。

他のサッカー指標との関係

サッカーの指標には、シュート数やパス成功率、被シュート数など様々なものがあります。しかし、ほとんどが「攻撃の質」を測定するものでした。
PPDAは、これまで「主観」によって語られがちだった守備(特にボールを積極的に奪いに行く“プレス”の強度)を、数字で捉える画期的な指標です。

PPDAが生まれた背景と必要性

なぜプレス強度を数値化したのか

近年、サッカー界では「データ活用」が急速に進んでいます。しかし守備やプレスの質を、チームや選手別に客観的に比べる手段は長らくありませんでした。
1990年代まで、多くのデータはゴールや被ゴール、パスの本数などが中心。けれど「前からガツガツいっているチーム」と「下がってブロックを作るチーム」、どちらがどのくらいの強度でプレッシャーをかけているかを同じ土俵で表したかった、というニーズが世界中にありました。

現代サッカーにおけるプレスの重要性

グアルディオラ監督時代のバルセロナや、クロップ監督のリヴァプールが見せたハイプレス戦術によって、「相手に自由なパス回しをさせないこと」の大切さがより強調されるようになりました。
単純な「守備力」だけでなく、どれだけ組織的・戦術的に相手のパスを分断できるか——その可視化こそがPPDAだったのです。

PPDAの計算方法をわかりやすく解説

計算式と各要素の定義

PPDAの計算式はとてもシンプルです。

  • 「自陣のゴールから40メートル以内(もしくはハーフウェイラインより前)」で
  • 相手が行ったパス数(A)
  • 自チームが行った守備アクション数(B)
    ・ここで言う守備アクションとは、「インターセプト」「タックル」「ボールを奪うためのプレッシャー」など相手のボール保持時に行った守備行動を指します。

PPDA=相手パス数A ÷ 守備アクション数B
例えば、相手に20本パスをつながれ、自分たちは10回守備アクションを行った場合、PPDAは2.0。より数値が低いほど「厳しいプレスをかけている」ことになります。

実際の試合データの例

例として、ある高校サッカーの試合での計測イメージを挙げます。

  • <前半15分間>
    ・相手陣内でパス数25回
    ・自チーム守備アクション15回
    →PPDA=25÷15=約1.67
  • <後半25分間>
    ・相手陣内でパス数36回
    ・自チーム守備アクション9回
    →PPDA=36÷9=4.0

この場合、前半のほうがよりアグレッシブにプレスをかけていて、後半はプレス強度が下がっていたことが読み取れます。

PPDAが示すプレス強度とは

数値が低い/高いとはどういうことか

PPDAの最大の特徴は、「低ければ低いほど激しく前から守備に行けている」ということです。数値が低い=パス数に対し、それだけ多くの守備アクションを起こしている、すなわち「積極的なプレス」ができていると解釈できます。
逆に数値が高い場合は「積極的に奪いに行かずに、パスを許している(やや受け身な守備)」状態。例えばハイプレスのチームはPPDAが7以下、ブロックを作る守備のチームでは10前後になるケースが多いです。

サッカー戦術とPPDAの関係

高い位置からボールを奪いにいく戦術(いわゆるゲーゲンプレスや全員守備)を徹底すればPPDAは自然と下がります。反対に、わざと相手に持たせて自陣付近できっちり守るスタイルなら、数値は上がりがちです。
つまり、PPDAだけで「どちらが優れているか」決まるわけではなく、どんなスタイルを志向するかで数値の意味も変わってくる点が重要です。

プロやアマチュアでのPPDA活用事例

海外クラブの活用例

イングランド・プレミアリーグやドイツ・ブンデスリーガのクラブチームは、PPDAをクラブの戦術評価や選手スカウトなど様々な目的で使っています。たとえばリヴァプールはクロップ監督就任後、PPDAを明確なチーム目標に据え、毎試合スタッフがデータを報告して改善に活かしたというエピソードもあります。

また、スペインの一部クラブでは「トレーニングゲーム中に動画+データ分析担当がPPDA値を随時チェックし、リアルタイムにベンチにフィードバックを返す」という運用をしていることもあります。

日本のチームや指導現場での活用

日本のJリーグや、大学・高校サッカーでも近年PPDAが導入され始めました。
プロクラブではどの選手がプレスの起点になっているかや、戦術変更による効果測定のために利用。
高校生の部活動やジュニア世代でも、指導者が練習試合後に「今日は後半になってPPDAの数値が段々下がってきてたよ。前プレの意識が高まってた証拠だね」など数値に基づいたフィードバックが増えつつあります。

特に「なんとなく前からいこう」「後半疲れてプレスが弱くなった」というような、あいまいなイメージを明確に数値で振り返れることが大きな強みです。

PPDA指標のメリット・デメリット

指標の分かりやすさと問題点

メリットとしては、

  • プレスの強度を一目で定量化できる
  • 自チームや相手との比較が簡単
  • 時間帯や選手ごとの守備傾向も追える

などが挙げられます。
一方で、PPDAの問題点・デメリットも理解が必要です。

  • 「プレスの質」までは数値化できない(連携のずれ/個々の読みや迫力など)
  • 環境や戦術によって最適値が変わる(下げて守る戦術のほうが数値は高くなる傾向)
  • あくまで“量”の指標(どれだけ攻撃の選手を止めたか)なので「どれだけピンチを防げたか」までは示しきれない

つまりPPDAは、守備の全てを表す万能指標ではないことも忘れてはいけません。

PPDAで測れないプレスの要素

具体的には「守備アクションの有効性」、たとえば相手のミスを誘う質の高い連携やカバーリング、「一発奪取」のインテンシティ(強さ・迫力)は数値化できません。また、戦術的な“だまし合い”(あえてプレスをかけさせて裏を取るなど)はPPDAでは現れにくい部分です。

他のプレス指標との違いと使い分け

PPDAとデュエル・インテンシティの比較

サッカーのプレッシャー指標には、PPDAのほか「デュエル」(1対1のボール奪取勝率)や「インテンシティ」(運動量×守備強度)といったデータも用意されています。
PPDAは「組織全体でどれだけ前から追っているか」を表す指標。一方、デュエルは「1対1強度」、インテンシティは「走った量」や「スプリント回数」の側面が強くなります。

例えば「今日のチームはPPDAが低かったけど、デュエル勝率が悪くてピンチが多かった」
「インテンシティは高いけど、PPDAは高止まり=走っているけど追い切れていない」など、複数指標を組み合わせて使うのが本来のおススメです。

場合による適切な指標選び

守備の狙いが「前線からの連続プレス」ならPPDA、「1対1の勝負」ならデュエル率、「走る量が武器」ならインテンシティやスプリント数が適当です。自分たちのスタイルや試合中の戦術目的に合わせ、「どの指標でどのポイントを測りたいのか」を指導者や選手同士で共有することが大切です。

高校生・指導者・保護者がPPDAをどう活用すればよいか

部活動や家庭での具体的な活用例

部活動の現場では、「今日は新しいプレスの練習をしてみたけど、数値で変化が出たか見てみよう」というふうに、練習や試合内容とセットで使いましょう。試合ごとのPPDA推移を記録して、「暑い日の後半は集中がきれて数値が落ちやすい」など、具体的な傾向も見えてきます。

保護者にとっても、お子さんのクラブや部活が「どれくらい前からプレスをかけることに注力しているのか」確認材料になります。チームや年代別に「今年はどんな守備スタイルか」「数値上どう変化しているか」見守るのも成長応援の一つです。

注意したい落とし穴とアドバイス

PPDAは分かりやすい反面、その「数値の良し悪し」はチームのスタイルや意図、対戦相手によっても大きく変動します。
たとえば「とにかくPPDAを下げよう!」と走りすぎて守備ラインが乱れたり、全員で前から追いすぎて裏を取られ失点が増える、なんて本末転倒のケースも少なくありません。
数値より「自分たちらしい守備ができているか」「なぜこの数値になったのか」を一緒に考えて使いましょう。

PPDAから導くチーム・個人の成長戦略

データを使った振り返り方法

試合や練習のあと、PPDAを記録してみましょう。そのうえで「前半と後半でどう変化したか」「強豪相手だと数値がどう動くか」「主力メンバーを変えたらどうなったか」など、“数字→映像→実感”の流れで振り返るのがおすすめです。

例えばコーチや監督が、「今回はPPDAがいつもより高かったよ。前からの追い込みがやや甘かったかな?」と声をかけてくれるだけでも、選手の守備意識は大きく変わってきます。

目標の立て方とステップアップ

目標設定としては「ハイプレスを志向するならPPDAを2.5以下に保つ」「強豪相手でも前半10分間だけは数値を意識」「相手ごとの傾向を掴む」など、具体的な時間帯や状況に絞った目標がおすすめです。
また、個人の視点でも「自分はどこで守備のギアを上げられるか」「試合の局面ごとに変化をつける」など、数値から逆算したプレー改善にも応用できます。

大事なのは、「数値ありき」になりすぎないこと。数値を『自分たちで選べる戦術の引き出し』として上手く活用し、大切な判断材料のひとつにしてください。

まとめ:PPDAを理解してサッカーの上達に活かそう

PPDAは、サッカーにおけるプレス(守備の強度)を分かりやすく表す頼もしい指標です。
単なる数字としてとらえるのではなく、「なぜこの数値だったのか」をチームや個人でちゃんと振り返ることで、自分たちらしい“強い守備”に一歩ずつ近づいていけます。
特に高校サッカーや社会人サッカー・ジュニア世代では、成長のきっかけや弱点克服・チャレンジ目標の明確化にも役立ちます。
今後、サッカー界はどんどんデータ活用が進んでいきます。その第一歩としてPPDAを理解し、「数字」と「自分の感覚・実戦」を結ぶトレーニングを、皆さんの上達にぜひ活かしてみてください。

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