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サードマンランの中高生向け解説で得点を生む走り方

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サードマンランの中高生向け解説で得点を生む走り方

「最後にゴール前へ飛び込んだ人が、いちばんフリーだった。」そんな場面を作る鍵がサードマンランです。個のスピードや体格に頼らず、味方3人の連動で守備の予測を外し、高確率のシュートに直結させます。本記事では、中高生でも今日から使える実践ポイントを、わかりやすく丁寧に解説します。図は使わず、言葉でイメージできるように工夫しました。練習メニュー、試合での評価方法、よくある失敗の直し方まで、一本で完結する「保存版」です。

サードマンランとは何か—30秒で要点

定義:3人目の走りで守備の予測を外す

サードマンランは、ボール保持者(1人目)→受け手(2人目)→走る人(3人目)の三段連動で、守備の視野から外れて突然フリーを作る動きです。3人目は直接ボールを持っていないところから加速して、相手の“死角”に入ります。

目的:ゴール前の時間と空間を生むための連動

目的は、PA(ペナルティエリア)周辺で「半歩の余裕」を作ること。ボールが動くタイミングと、人が走るタイミングを合わせて、相手の重心と注意をズラします。

得点との関係:PA侵入と高確率シュートの創出

3人目が背後やライン間へ侵入することで、フリーで受ける回数が増え、シュートの質(距離・角度・体勢)が改善します。結果として、決定機の回数と成功率の両方に好影響が期待できます。

サードマンランの仕組みと3人の役割

ファーストマン:ボール保持者の引きつけと角度作り

  • 相手を引きつけて守備の重心を固定する。
  • 次に渡す2人目へ“通る角度”を作る(斜め、縦、内外の選択)。
  • 強弱のあるパススピードで守備のスライドを遅らせる。

セカンドマン:受け手の壁役・針の穴パス・落とし

  • ワンタッチで落とす・はたく・スルーするの判断を最速で。
  • 体を“壁”にして相手を背負い、3人目の走路を隠す。
  • 次の角度(内・外・裏)に最短のパス面を作る。

サードマン:ブラインドサイドへの侵入と決定機の創出

  • 相手の背中(視界外)からダイアゴナルに出る。
  • 受けた瞬間にシュート・折り返し・運ぶの3択を用意。
  • オフサイドラインを意識し、曲線的に走ってタイミングを合わせる。

連続性:1→2→3のテンポが崩れの鍵

「止まらない」「触りすぎない」「遅らせすぎない」。三つの“ない”がテンポを保ちます。1→2→3の間隔は、目安で0.5〜1.0秒。迷ったら、ボールは触数少なめ、人は動き多めです。

得点を生む走り方の原則(角度・タイミング・スピード・視野)

角度:ボールとゴールと相手の三角を最短にしない

一直線は読まれます。少し外から内へ、内から外へと“曲線”で入ると、パスラインと走路がクロスして守備が対応しづらくなります。

タイミング:最終タッチの直前に動き出す

2人目が触る、その直前が合図。早すぎればオフサイド・遅すぎれば閉じられます。スタッター(小刻み減速)からの再加速が効果的です。

スピード:0→100%でなく60→95%の可変速

最初から全力はブレーキが効きません。60%で忍び寄り、ボールが動いた瞬間に95%へ。最後の5%はインパクト(シュート/クロス)用に残す意識で。

体の向き:開きすぎず半身で受ける

腰と肩を半身にして、進行方向とボールの両方を見られる角度に。初速の一歩目がスムーズになり、選択肢が増えます。

視野:首振りで背後とボールの両立

走る前に2回、走りながら1回、受けてから1回。背後のDF、味方、スペース、ボールの順で確認。見た情報で走りを微修正します。

サードマンランのトリガーを見極める

ボール由来のトリガー:縦への前向きコントロール・強い横パス

  • 保持者が前を向いた瞬間。
  • 強い横ズレのパスで相手の重心が動いた瞬間。
  • 浮き球の落下点が決まった瞬間。

相手由来のトリガー:重心のズレ・視線の外・数的不均衡

  • マーカーがボールを見て足が止まったとき。
  • サイドに数が寄って中央が薄いとき。
  • CB同士の間隔が広がったとき。

味方由来のトリガー:壁役の準備・ボディシェイプ

  • 2人目が半身で「落とし」面を作った瞬間。
  • ポスト役が背中でDFをロックした瞬間。

スペース由来のトリガー:ライン間の空白・裏のスペース出現

トップ下の位置が空いている、SBの背後が広い等、“空白が見えたら合図”。空白が消える前に走り出せるかが勝負です。

サイドと中央での使い分け

サイド崩し:オーバーラップとアンダーラップの選択

ウイングが幅、SBが内側(アンダー)に入ると、相手は視野外からの侵入に弱くなります。逆にSBが外(オーバー)で、ウイングが内へ刺す形も有効。相手のSBの足向きで決めましょう。

中央崩し:ポスト→落とし→裏抜けの直線的連動

FWが楔を受けて落とし、IHが裏へ。シンプルですが速度が命。ポストのファーストタッチと落としの正確さが全てです。

逆サイド展開:走る人と釣る人の役割分担

一方を密集させてから、逆大外に展開。逆サイドでは、1人が釣り役としてCB/SBを縛り、もう1人がブラインドからPAへ斜めに入ります。

ポジション別の実践ポイント

FW:背負う→落とす→裏へ流れるスイッチ

  • 落とす面はゴール方向ではなく、3人目の走路方向へ。
  • 落とした直後に相手の死角へ流れる(足を止めない)。

インサイドハーフ:レーン跨ぎと背後タッチ

  • 外→内、内→外へとレーンを跨いで視野をズラす。
  • 背中で受ける準備(半身)とワンタッチで裏へ流す技術。

サイドハーフ/ウイング:縦への牽制から内側の刺し

  • 縦に行くと見せて、足一本内側のダイアゴナル。
  • クロスだけでなく、マイナス折り返しの選択も常備。

SB/WB:アンダーラップでPA内に侵入

  • ウイングを外で縛ってもらい、内側からPAへ侵入。
  • カットバックの到達点(ペナ角〜PKスポット)を共有。

CB/アンカー:縦パスの質と次の角度作り

  • “刺す”縦パスと“置く”縦パスの使い分け。
  • 出した後は即サポート位置へ移動し、2→3を助ける角度に。

サードマンランの中高生向け解説を図で理解

三角形の配置と言葉で描く矢印(パス→走路)

左サイドで想像してください。SB(1)がボール保持、ウイング(2)が内側で受けてワンタッチ落とし、その瞬間にIH(3)がペナ角へ斜めに走り込む。矢印は「SB→ウイング(足元)」「ウイング→IH(前方)」「IH→シュート/折り返し」。

ブラインドサイドへのダイアゴナルランのイメージ

相手SBの背中から、CBとSBの間へ“斜め45度”で侵入。DFの顔がボールに向いた瞬間、背後に音もなく現れるイメージです。

ペナルティエリアへの侵入動線を文章で可視化

タッチライン沿い→ハーフスペース→ペナ角→PKスポット手前。この順で曲線的に走ると、受けたあとの選択(シュート/ワンモア/マイナス)が最大化されます。

典型パターン10選と崩しの流れ

P1:ポストプレー→落とし→逆足側へ裏抜け

FWが右足で落としたら、3人目はFWの左肩側背後へ。守備は落とし側に寄るため、逆足側の裏が空きます。

P2:縦パス→ワンタッチ落とし→サイドハーフのインナーラン

IHが壁役、SHが内へ。落としが強すぎるとズレるので、足裏/インサイドの面の作りが肝です。

P3:外→内→外の三角でサイドを破る

SB→IH→SB(オーバー)で突破。3人目は大外のSB。最後は折り返しを狙う。

P4:内→外→内のアンダーラップでPA侵入

IH→SH→IHの連動。3人目はIHがアンダーでPAへ。相手の視界外から現れます。

P5:楔→リターン→斜め背後のダイアゴナルラン

FWの楔をIHへリターン、その直後にFWが斜め背後へ。止まらないことがコツ。

P6:スイッチ→逆サイド大外→インナー折返し

密集を作って逆へ。3人目は逆ウイングのインナーラン。大外の幅取りがスイッチの合図です。

P7:ショートカウンターでの3人目直進ラン

奪ったら縦→落とし→縦。3人目は一直線でもOK。加速と最短距離で勝負。

P8:ミドルサードでの連続ワンツー+3人目

2回のワンツーで相手を前に引き出し、3回目で裏へ。テンポが命。

P9:釣って空けて差す(釣り出し→差し込み)

ボールサイドに3人寄せ、逆IHが背後へ。差し込みはグラウンダー優先。

P10:セカンドボール回収後の即時縦刺し

こぼれ球をIHが拾う→FWへ縦→落とし→もう一人のIHが裏。回収直後は守備が整っていないので最短で。

守備を動かす3つの工夫(釣る・隠れる・入る)

釣る:ボールサイドで数的同数の錯覚を作る

あえて密集に人を集め、相手を引き寄せます。逆サイドや背後に空白を作るための“釣り”です。

隠れる:DFの背中で待ち、視界外から出る

背中で静止→小刻み減速→再加速。この三段で視界から消え、突然現れます。

入る:ライン間→最終ライン背後へ連続で貫く

一度ライン間に顔を出し、受けるフリだけして背後へ。二段階で守備のラインを食い破ります。

オフサイドとリスク管理

オフサイドラインの管理と曲線ラン

真っ直ぐより、外→内の弧。最後の一歩でオンに保ち、ボールが出た瞬間に裏へ。

ラストタッチの認知と走り出しの同期

「出す人の最終タッチ=スタート合図」。タッチが伸びたら遅らせる勇気も必要。

最前線の待ちすぎを避ける戻り動作(チェックラン)

背後待機は読まれがち。2〜3歩下がるチェックランでDFを手前に引き出し、背後を再獲得します。

ボール保持から喪失への切り替え準備

残す人・行く人の役割分担

3人目がPAに入るなら、後方に1人残す。バランスが崩れるとカウンターを受けます。

背後カバーと即時奪回の初速

失った瞬間、最寄り2人が1秒だけ圧力。後方は中央を締める優先。

PA周辺でのセカンドボール体勢

マイナスとこぼれ球の回収位置を事前に決めておくと、二次攻撃が続きます。

身体操作と走法(加減速・方向転換・体の向き)

減速→再加速でDFの重心を外す

2歩の減速+1歩のタメ→3歩の爆発。重心の上下動を小さく保つとブレません。

チェックランとスタッター・ステップ

足幅を狭めた小刻みステップでスピードを隠し、出る直前に重心を前へ。

半身の受けとファーストタッチの置き所

ファーストタッチは“次の一歩の前”。外置きでシュート角度を作るか、内置きでDFを外すかを選ぶ。

接触への準備(肩入れ・スクリーン)

接触が来る前に肩を先に入れて、自分の進路を作る。腕は体幹に近く、反則にならない範囲で。

スキャン(首振り)と情報の取り方

頻度:受ける前2回・受けた後1回

走る前に左右1回ずつ。受けてからは最短で次の味方/ゴール方向を確認。

優先順位:相手→スペース→味方→ボール

相手の位置と姿勢を先に見れば、スペースは自動的に見えます。ボールばかり見ない習慣を。

偽情報の提示(視線と体の向きで騙す)

見るフリで相手を寄せ、逆を刺す。視線は外、体は内、のようにズレを作ると効果大。

コミュニケーションと合図(言語/非言語)

コールワードの共通化と短縮(例:ワンツー、裏、待て)

言葉は短く、意味は明確に。「裏」「落ち」「待て」「スルー」など3〜4語をチームで統一。

手のジェスチャーと目線の同期

手で方向を示し、目線でタイミングを合わせる。2人目と3人目の“視線の合意”が質を上げます。

走る前の合意形成:事前のパターン共有

試合前に「今日はP2とP4多めで」と決めるだけで通じやすくなります。

練習メニュー:個人→グループ→ゲームへの段階設計

個人ドリル:加減速・半身・ファーストタッチ

  • 10mで60%→95%の可変速走×6本。
  • 半身で受けてワンタッチ前進×左右各10回。

2人組:壁パスと落としの質、角度の微調整

  • 1m、3m、5mの距離でワンタッチ落とし精度。
  • 落とす面の角度を声に出して確認(内/外/前)。

3人組:トライアングルでの連続ワンタッチ

  • 三角形10m間隔。1→2→3をワンタッチで連続。
  • 合図は2人目の最終タッチ直前。3人目が裏へ。

4人以上:方向転換を含む連動と仕上げ

  • ミニゲームで「3人目関与の得点2点ルール」。
  • 左右入れ替え、逆サイド展開を必ず1回挟む。

制約付きゲームで自動化する方法

得点は3人目の関与からのみ有効

「3人目が関与した得点は2点、そうでない得点は1点 or 無効」など、狙いを明確にします。

タッチ制限とレーン制限の使い分け

2タッチ以内+3レーンに区切る。走路とパス角が自然と整います。

片側優位の設定でトリガーを増やす

片側サイドで数的優位を与えると、逆サイドの3人目侵入が起こりやすくなります。

年代別のポイント:中学生・高校生・保護者の関わり方

中学生:基本フォームと反復で習慣化

半身・可変速・ワンタッチの3つに絞って反復。距離は短く、テンポ重視で。

高校生:速度と判断の両立、相手強度での再現

実戦速度での判断。接触がある中でも落としの質を落とさない練習を増やす。

保護者:練習サポートと映像振り返りの手伝い

短い映像クリップを一緒に見て、「動き出しの合図」を言葉にするサポートが効果的です。

よくある失敗と即修正のコーチング

早すぎる/遅すぎる動き出しの調整

合図は「2人目の最終タッチ直前」。声で「今!」と固定し、全員でタイミングを統一。

一直線の走りで読まれる問題の解消

外→内の曲線、チェックラン2歩→再加速のセットで読みを外す。

ボールばかり見て背後が見えない癖の改善

自主ルール「受ける前に2回首振り」。できなければパス禁止などの制約で矯正。

役割の重複とレーン被りの回避

レーン名(外/中/内中/内)を口に出して宣言。被ったら内側優先・外が譲るなどチームルールを明確に。

試合での評価指標とチェックリスト

KPI:3人目関与回数・PA侵入数・シュート創出

  • 3人目関与回数(試合あたり)
  • PA侵入数(ボールあり/なし)
  • 3人目起点のシュート数

成功率:縦パス→落とし→裏への連結成功割合

三段連動の完遂数 ÷ 試行回数。練習では60%超、試合で40%超を一つの目安に。

質:パススピード・受ける向き・トリガー一致度

同じタイミングで全員が動けたか、パスの速さは守備を動かす強度だったかを確認します。

自己チェック:試合前後に確認する3項目

  • 今日合わせるトリガーは何か(1つ)
  • 自分の得意走路(外→内 or 内→外)はどちらか
  • 合図の言葉はチームで統一できたか

試合映像の見方とリサーチ方法

クリップ化のコツ:開始2秒前から保存

動き出しは直前の準備にヒントがあるため、2秒前から切り取ると原因が見えます。

観るべき瞬間:最終タッチ直前の動き出し

2人目の最終タッチ直前に3人目がどう準備しているか(減速/角度/視線)をチェック。

メモの取り方:トリガー・角度・結果の3行記録

「合図(ボール/相手/味方/スペース)」「走路(外→内など)」「結果(受けた/受けられず/次の一手)」の3行で十分です。

質問と回答(FAQ)

体力に自信がないときの走り方の工夫

常時全力より「必要な3秒だけ最大化」。可変速と曲線で効率よくフリーを作りましょう。

小柄でも通用するための角度とタイミング

接触前に角度を取る、ワンタッチで前向きに。体の使い方と先手で十分に戦えます。

相手が5バックの時の狙い所

WBの背後とCB-WBの間。サイドで釣って、内側へアンダーラップが効果的です。

人数が少ない練習での代替メニュー

マーカー2本を“壁役”に見立て、パス角と走路を再現。2人+マーカーでも十分に反復可能です。

まとめ:今日から始める3ステップ

チームで合図と言葉を1つ決める

「裏!」など、誰でも即反応できる合図を統一。

トリガーを1種類だけ徹底して合わせる

まずは「2人目の最終タッチ直前」で全員の時計を揃える。

週2回の短時間ドリルで可視化→自動化

10〜15分の制約ゲームを継続。3週間で習慣化が体感できます。

おわりに

サードマンランは、足の速さや体格差を埋め、チーム全員を“得点に近い選手”へ変える武器です。角度・タイミング・可変速・半身・首振りという小さな技術の積み重ねが、ゴール前の「半歩の余裕」を生みます。まずは合図の統一と、たった1つのトリガーの共有から。明日の練習で3人並べて、10回だけテンポよく繰り返してください。試合での「フリーで受けた!」が、少しずつ増えていきます。

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