目次
- サードマンランの中高生向け解説で得点を生む走り方
- サードマンランとは何か—30秒で要点
- サードマンランの仕組みと3人の役割
- 得点を生む走り方の原則(角度・タイミング・スピード・視野)
- サードマンランのトリガーを見極める
- サイドと中央での使い分け
- ポジション別の実践ポイント
- サードマンランの中高生向け解説を図で理解
- 典型パターン10選と崩しの流れ
- 守備を動かす3つの工夫(釣る・隠れる・入る)
- オフサイドとリスク管理
- ボール保持から喪失への切り替え準備
- 身体操作と走法(加減速・方向転換・体の向き)
- スキャン(首振り)と情報の取り方
- コミュニケーションと合図(言語/非言語)
- 練習メニュー:個人→グループ→ゲームへの段階設計
- 制約付きゲームで自動化する方法
- 年代別のポイント:中学生・高校生・保護者の関わり方
- よくある失敗と即修正のコーチング
- 試合での評価指標とチェックリスト
- 試合映像の見方とリサーチ方法
- 質問と回答(FAQ)
- まとめ:今日から始める3ステップ
- おわりに
サードマンランの中高生向け解説で得点を生む走り方
「最後にゴール前へ飛び込んだ人が、いちばんフリーだった。」そんな場面を作る鍵がサードマンランです。個のスピードや体格に頼らず、味方3人の連動で守備の予測を外し、高確率のシュートに直結させます。本記事では、中高生でも今日から使える実践ポイントを、わかりやすく丁寧に解説します。図は使わず、言葉でイメージできるように工夫しました。練習メニュー、試合での評価方法、よくある失敗の直し方まで、一本で完結する「保存版」です。
サードマンランとは何か—30秒で要点
定義:3人目の走りで守備の予測を外す
サードマンランは、ボール保持者(1人目)→受け手(2人目)→走る人(3人目)の三段連動で、守備の視野から外れて突然フリーを作る動きです。3人目は直接ボールを持っていないところから加速して、相手の“死角”に入ります。
目的:ゴール前の時間と空間を生むための連動
目的は、PA(ペナルティエリア)周辺で「半歩の余裕」を作ること。ボールが動くタイミングと、人が走るタイミングを合わせて、相手の重心と注意をズラします。
得点との関係:PA侵入と高確率シュートの創出
3人目が背後やライン間へ侵入することで、フリーで受ける回数が増え、シュートの質(距離・角度・体勢)が改善します。結果として、決定機の回数と成功率の両方に好影響が期待できます。
サードマンランの仕組みと3人の役割
ファーストマン:ボール保持者の引きつけと角度作り
- 相手を引きつけて守備の重心を固定する。
- 次に渡す2人目へ“通る角度”を作る(斜め、縦、内外の選択)。
- 強弱のあるパススピードで守備のスライドを遅らせる。
セカンドマン:受け手の壁役・針の穴パス・落とし
- ワンタッチで落とす・はたく・スルーするの判断を最速で。
- 体を“壁”にして相手を背負い、3人目の走路を隠す。
- 次の角度(内・外・裏)に最短のパス面を作る。
サードマン:ブラインドサイドへの侵入と決定機の創出
- 相手の背中(視界外)からダイアゴナルに出る。
- 受けた瞬間にシュート・折り返し・運ぶの3択を用意。
- オフサイドラインを意識し、曲線的に走ってタイミングを合わせる。
連続性:1→2→3のテンポが崩れの鍵
「止まらない」「触りすぎない」「遅らせすぎない」。三つの“ない”がテンポを保ちます。1→2→3の間隔は、目安で0.5〜1.0秒。迷ったら、ボールは触数少なめ、人は動き多めです。
得点を生む走り方の原則(角度・タイミング・スピード・視野)
角度:ボールとゴールと相手の三角を最短にしない
一直線は読まれます。少し外から内へ、内から外へと“曲線”で入ると、パスラインと走路がクロスして守備が対応しづらくなります。
タイミング:最終タッチの直前に動き出す
2人目が触る、その直前が合図。早すぎればオフサイド・遅すぎれば閉じられます。スタッター(小刻み減速)からの再加速が効果的です。
スピード:0→100%でなく60→95%の可変速
最初から全力はブレーキが効きません。60%で忍び寄り、ボールが動いた瞬間に95%へ。最後の5%はインパクト(シュート/クロス)用に残す意識で。
体の向き:開きすぎず半身で受ける
腰と肩を半身にして、進行方向とボールの両方を見られる角度に。初速の一歩目がスムーズになり、選択肢が増えます。
視野:首振りで背後とボールの両立
走る前に2回、走りながら1回、受けてから1回。背後のDF、味方、スペース、ボールの順で確認。見た情報で走りを微修正します。
サードマンランのトリガーを見極める
ボール由来のトリガー:縦への前向きコントロール・強い横パス
- 保持者が前を向いた瞬間。
- 強い横ズレのパスで相手の重心が動いた瞬間。
- 浮き球の落下点が決まった瞬間。
相手由来のトリガー:重心のズレ・視線の外・数的不均衡
- マーカーがボールを見て足が止まったとき。
- サイドに数が寄って中央が薄いとき。
- CB同士の間隔が広がったとき。
味方由来のトリガー:壁役の準備・ボディシェイプ
- 2人目が半身で「落とし」面を作った瞬間。
- ポスト役が背中でDFをロックした瞬間。
スペース由来のトリガー:ライン間の空白・裏のスペース出現
トップ下の位置が空いている、SBの背後が広い等、“空白が見えたら合図”。空白が消える前に走り出せるかが勝負です。
サイドと中央での使い分け
サイド崩し:オーバーラップとアンダーラップの選択
ウイングが幅、SBが内側(アンダー)に入ると、相手は視野外からの侵入に弱くなります。逆にSBが外(オーバー)で、ウイングが内へ刺す形も有効。相手のSBの足向きで決めましょう。
中央崩し:ポスト→落とし→裏抜けの直線的連動
FWが楔を受けて落とし、IHが裏へ。シンプルですが速度が命。ポストのファーストタッチと落としの正確さが全てです。
逆サイド展開:走る人と釣る人の役割分担
一方を密集させてから、逆大外に展開。逆サイドでは、1人が釣り役としてCB/SBを縛り、もう1人がブラインドからPAへ斜めに入ります。
ポジション別の実践ポイント
FW:背負う→落とす→裏へ流れるスイッチ
- 落とす面はゴール方向ではなく、3人目の走路方向へ。
- 落とした直後に相手の死角へ流れる(足を止めない)。
インサイドハーフ:レーン跨ぎと背後タッチ
- 外→内、内→外へとレーンを跨いで視野をズラす。
- 背中で受ける準備(半身)とワンタッチで裏へ流す技術。
サイドハーフ/ウイング:縦への牽制から内側の刺し
- 縦に行くと見せて、足一本内側のダイアゴナル。
- クロスだけでなく、マイナス折り返しの選択も常備。
SB/WB:アンダーラップでPA内に侵入
- ウイングを外で縛ってもらい、内側からPAへ侵入。
- カットバックの到達点(ペナ角〜PKスポット)を共有。
CB/アンカー:縦パスの質と次の角度作り
- “刺す”縦パスと“置く”縦パスの使い分け。
- 出した後は即サポート位置へ移動し、2→3を助ける角度に。
サードマンランの中高生向け解説を図で理解
三角形の配置と言葉で描く矢印(パス→走路)
左サイドで想像してください。SB(1)がボール保持、ウイング(2)が内側で受けてワンタッチ落とし、その瞬間にIH(3)がペナ角へ斜めに走り込む。矢印は「SB→ウイング(足元)」「ウイング→IH(前方)」「IH→シュート/折り返し」。
ブラインドサイドへのダイアゴナルランのイメージ
相手SBの背中から、CBとSBの間へ“斜め45度”で侵入。DFの顔がボールに向いた瞬間、背後に音もなく現れるイメージです。
ペナルティエリアへの侵入動線を文章で可視化
タッチライン沿い→ハーフスペース→ペナ角→PKスポット手前。この順で曲線的に走ると、受けたあとの選択(シュート/ワンモア/マイナス)が最大化されます。
典型パターン10選と崩しの流れ
P1:ポストプレー→落とし→逆足側へ裏抜け
FWが右足で落としたら、3人目はFWの左肩側背後へ。守備は落とし側に寄るため、逆足側の裏が空きます。
P2:縦パス→ワンタッチ落とし→サイドハーフのインナーラン
IHが壁役、SHが内へ。落としが強すぎるとズレるので、足裏/インサイドの面の作りが肝です。
P3:外→内→外の三角でサイドを破る
SB→IH→SB(オーバー)で突破。3人目は大外のSB。最後は折り返しを狙う。
P4:内→外→内のアンダーラップでPA侵入
IH→SH→IHの連動。3人目はIHがアンダーでPAへ。相手の視界外から現れます。
P5:楔→リターン→斜め背後のダイアゴナルラン
FWの楔をIHへリターン、その直後にFWが斜め背後へ。止まらないことがコツ。
P6:スイッチ→逆サイド大外→インナー折返し
密集を作って逆へ。3人目は逆ウイングのインナーラン。大外の幅取りがスイッチの合図です。
P7:ショートカウンターでの3人目直進ラン
奪ったら縦→落とし→縦。3人目は一直線でもOK。加速と最短距離で勝負。
P8:ミドルサードでの連続ワンツー+3人目
2回のワンツーで相手を前に引き出し、3回目で裏へ。テンポが命。
P9:釣って空けて差す(釣り出し→差し込み)
ボールサイドに3人寄せ、逆IHが背後へ。差し込みはグラウンダー優先。
P10:セカンドボール回収後の即時縦刺し
こぼれ球をIHが拾う→FWへ縦→落とし→もう一人のIHが裏。回収直後は守備が整っていないので最短で。
守備を動かす3つの工夫(釣る・隠れる・入る)
釣る:ボールサイドで数的同数の錯覚を作る
あえて密集に人を集め、相手を引き寄せます。逆サイドや背後に空白を作るための“釣り”です。
隠れる:DFの背中で待ち、視界外から出る
背中で静止→小刻み減速→再加速。この三段で視界から消え、突然現れます。
入る:ライン間→最終ライン背後へ連続で貫く
一度ライン間に顔を出し、受けるフリだけして背後へ。二段階で守備のラインを食い破ります。
オフサイドとリスク管理
オフサイドラインの管理と曲線ラン
真っ直ぐより、外→内の弧。最後の一歩でオンに保ち、ボールが出た瞬間に裏へ。
ラストタッチの認知と走り出しの同期
「出す人の最終タッチ=スタート合図」。タッチが伸びたら遅らせる勇気も必要。
最前線の待ちすぎを避ける戻り動作(チェックラン)
背後待機は読まれがち。2〜3歩下がるチェックランでDFを手前に引き出し、背後を再獲得します。
ボール保持から喪失への切り替え準備
残す人・行く人の役割分担
3人目がPAに入るなら、後方に1人残す。バランスが崩れるとカウンターを受けます。
背後カバーと即時奪回の初速
失った瞬間、最寄り2人が1秒だけ圧力。後方は中央を締める優先。
PA周辺でのセカンドボール体勢
マイナスとこぼれ球の回収位置を事前に決めておくと、二次攻撃が続きます。
身体操作と走法(加減速・方向転換・体の向き)
減速→再加速でDFの重心を外す
2歩の減速+1歩のタメ→3歩の爆発。重心の上下動を小さく保つとブレません。
チェックランとスタッター・ステップ
足幅を狭めた小刻みステップでスピードを隠し、出る直前に重心を前へ。
半身の受けとファーストタッチの置き所
ファーストタッチは“次の一歩の前”。外置きでシュート角度を作るか、内置きでDFを外すかを選ぶ。
接触への準備(肩入れ・スクリーン)
接触が来る前に肩を先に入れて、自分の進路を作る。腕は体幹に近く、反則にならない範囲で。
スキャン(首振り)と情報の取り方
頻度:受ける前2回・受けた後1回
走る前に左右1回ずつ。受けてからは最短で次の味方/ゴール方向を確認。
優先順位:相手→スペース→味方→ボール
相手の位置と姿勢を先に見れば、スペースは自動的に見えます。ボールばかり見ない習慣を。
偽情報の提示(視線と体の向きで騙す)
見るフリで相手を寄せ、逆を刺す。視線は外、体は内、のようにズレを作ると効果大。
コミュニケーションと合図(言語/非言語)
コールワードの共通化と短縮(例:ワンツー、裏、待て)
言葉は短く、意味は明確に。「裏」「落ち」「待て」「スルー」など3〜4語をチームで統一。
手のジェスチャーと目線の同期
手で方向を示し、目線でタイミングを合わせる。2人目と3人目の“視線の合意”が質を上げます。
走る前の合意形成:事前のパターン共有
試合前に「今日はP2とP4多めで」と決めるだけで通じやすくなります。
練習メニュー:個人→グループ→ゲームへの段階設計
個人ドリル:加減速・半身・ファーストタッチ
- 10mで60%→95%の可変速走×6本。
- 半身で受けてワンタッチ前進×左右各10回。
2人組:壁パスと落としの質、角度の微調整
- 1m、3m、5mの距離でワンタッチ落とし精度。
- 落とす面の角度を声に出して確認(内/外/前)。
3人組:トライアングルでの連続ワンタッチ
- 三角形10m間隔。1→2→3をワンタッチで連続。
- 合図は2人目の最終タッチ直前。3人目が裏へ。
4人以上:方向転換を含む連動と仕上げ
- ミニゲームで「3人目関与の得点2点ルール」。
- 左右入れ替え、逆サイド展開を必ず1回挟む。
制約付きゲームで自動化する方法
得点は3人目の関与からのみ有効
「3人目が関与した得点は2点、そうでない得点は1点 or 無効」など、狙いを明確にします。
タッチ制限とレーン制限の使い分け
2タッチ以内+3レーンに区切る。走路とパス角が自然と整います。
片側優位の設定でトリガーを増やす
片側サイドで数的優位を与えると、逆サイドの3人目侵入が起こりやすくなります。
年代別のポイント:中学生・高校生・保護者の関わり方
中学生:基本フォームと反復で習慣化
半身・可変速・ワンタッチの3つに絞って反復。距離は短く、テンポ重視で。
高校生:速度と判断の両立、相手強度での再現
実戦速度での判断。接触がある中でも落としの質を落とさない練習を増やす。
保護者:練習サポートと映像振り返りの手伝い
短い映像クリップを一緒に見て、「動き出しの合図」を言葉にするサポートが効果的です。
よくある失敗と即修正のコーチング
早すぎる/遅すぎる動き出しの調整
合図は「2人目の最終タッチ直前」。声で「今!」と固定し、全員でタイミングを統一。
一直線の走りで読まれる問題の解消
外→内の曲線、チェックラン2歩→再加速のセットで読みを外す。
ボールばかり見て背後が見えない癖の改善
自主ルール「受ける前に2回首振り」。できなければパス禁止などの制約で矯正。
役割の重複とレーン被りの回避
レーン名(外/中/内中/内)を口に出して宣言。被ったら内側優先・外が譲るなどチームルールを明確に。
試合での評価指標とチェックリスト
KPI:3人目関与回数・PA侵入数・シュート創出
- 3人目関与回数(試合あたり)
- PA侵入数(ボールあり/なし)
- 3人目起点のシュート数
成功率:縦パス→落とし→裏への連結成功割合
三段連動の完遂数 ÷ 試行回数。練習では60%超、試合で40%超を一つの目安に。
質:パススピード・受ける向き・トリガー一致度
同じタイミングで全員が動けたか、パスの速さは守備を動かす強度だったかを確認します。
自己チェック:試合前後に確認する3項目
- 今日合わせるトリガーは何か(1つ)
- 自分の得意走路(外→内 or 内→外)はどちらか
- 合図の言葉はチームで統一できたか
試合映像の見方とリサーチ方法
クリップ化のコツ:開始2秒前から保存
動き出しは直前の準備にヒントがあるため、2秒前から切り取ると原因が見えます。
観るべき瞬間:最終タッチ直前の動き出し
2人目の最終タッチ直前に3人目がどう準備しているか(減速/角度/視線)をチェック。
メモの取り方:トリガー・角度・結果の3行記録
「合図(ボール/相手/味方/スペース)」「走路(外→内など)」「結果(受けた/受けられず/次の一手)」の3行で十分です。
質問と回答(FAQ)
体力に自信がないときの走り方の工夫
常時全力より「必要な3秒だけ最大化」。可変速と曲線で効率よくフリーを作りましょう。
小柄でも通用するための角度とタイミング
接触前に角度を取る、ワンタッチで前向きに。体の使い方と先手で十分に戦えます。
相手が5バックの時の狙い所
WBの背後とCB-WBの間。サイドで釣って、内側へアンダーラップが効果的です。
人数が少ない練習での代替メニュー
マーカー2本を“壁役”に見立て、パス角と走路を再現。2人+マーカーでも十分に反復可能です。
まとめ:今日から始める3ステップ
チームで合図と言葉を1つ決める
「裏!」など、誰でも即反応できる合図を統一。
トリガーを1種類だけ徹底して合わせる
まずは「2人目の最終タッチ直前」で全員の時計を揃える。
週2回の短時間ドリルで可視化→自動化
10〜15分の制約ゲームを継続。3週間で習慣化が体感できます。
