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ゾーン14の使い方を中高生向けに解説:動きで腑に落ちる決定機の作り方

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ゾーン14の使い方を中高生向けに解説:動きで腑に落ちる決定機の作り方

「ゾーン14」という言葉は聞いたことがあるけど、図がないとイメージしづらい。そんな人に向けて、この記事では“動き”を言葉で描き、頭の中にピッチを浮かべながら理解できるように整理します。難しい戦術用語よりも、明日からの練習と試合で役立つ具体的な動作に落とし込みます。自分のポジションやチームのやり方に合わせて、必要なところから読み進めてください。

導入:ゾーン14を「動き」で腑に落とす

この記事の狙いと学び方(図なしでも“動き”で理解)

狙いはシンプルです。ゾーン14に正しく人とボールを送り込み、決定機の回数を増やすこと。そのために必要な「体の向き」「動き出しのタイミング」「会話(合図)」を、試合の流れに沿って言語化します。行間を埋めるのは、あなたの想像力。文章の中で「右SBが外で釣って、IHが内へ」といった表現を見たら、自分のチームメイトの顔を思い浮かべ、名前に置き換えて読んでみてください。

今の自分のプレーにどうつながるかを先に知る

  • パスはつながるのに、最後の一押しが足りない → 受け手の向きと三人目の動きで解決
  • ボールを持てるが、相手のブロックを崩せない → レーンの出入りと同時多発の脅威を作る
  • スルーパスがカットされる → 相手の肩の向きと味方の減速で通り道を作る

ゾーン14とは何か:ピッチ分割と位置・役割

ピッチを“ゾーン”で考える基本(分割の考え方)

ピッチを縦横に分け、エリアの役割を言語化する考え方があります。難しい区分は不要で、ここでは「中央」「サイド」「その間(ハーフスペース)」の3本と、奥行き(自陣—中盤—敵陣—PA周辺)の層を意識すれば十分。狙いは、誰がどこに立ち、次にどこへ動くかを共有しやすくすることです。

ゾーン14の場所と特徴(中央・PA前/選択肢の多さ)

ゾーン14は、敵のペナルティエリア(PA)正面の外側、中央の一帯。ゴール正面で角度が良く、縦・斜め・横の全てにパスとシュートの選択肢が広がります。多くの試合で、このエリアに前向きで侵入できるかどうかが決定機の多さと直結する場面が目立ちます。

ゾーン14とハーフスペース/バイタルの違いと重なり

「ハーフスペース」は中央とサイドの間の縦レーン。「バイタル」は相手中盤と最終ラインの間の“急所”という意味合いで使われます。ゾーン14は“中央×PA前”に特化した呼び方。重なる部分は大きいですが、言葉の違いよりも、そこで何を起こすか(前向き化、三択の脅威)の再現性が大切です。

なぜゾーン14が決定機に直結するのか

前向き化で選択肢が最大化する角度と距離

前を向いた瞬間、ゴールまでの距離は最短になり、左右や裏へのパス角も最大になります。ワンタッチでシュート、ツータッチでスルーパス、三タッチ目で外へ展開と、相手にとって予測が難しい連続性が生まれます。

守備が嫌がる“同時多発の脅威”(縦・斜め・横)

中央で前を向かれると、CBは縦を消したい、SBは外を気にしたい、ボランチはスルーパスを警戒したい。守る側の優先順位が割れ、ひとりが迷うとライン全体が下がり、スペースが連鎖的に広がります。

ミドル/スルーパス/折り返しの三択が生む期待値

ゾーン14からは、ミドル、スルーパス、サイドへ出しての折り返し(カットバック)の三択が基本。相手がどれかを消しても、残りが生きます。どれを選ぶかは「相手の肩の向き」「味方のスピード」「自分のタッチの質」で決まります。

中高生が最初に身につけるべき3つの原則

体の向き(半身)と最初のタッチの置き所

  • 半身で受ける:つま先と胸をゴールへ45度。内向きでも外向きでも、次の一歩が前へ出る角度を作る。
  • 最初のタッチ:守備の届かない足で前へ置く。近すぎて詰まらない、遠すぎて逃げない距離感(約1.5歩先)。

タイミング(静から動)と列の出入り(5レーン意識)

  • 静から動:味方が背中を向けた時は止まり、顔が上がる瞬間に動き出す。
  • レーンの出入り:同じ縦レーンに居続けない。外→中、中央→外へ一度外し、背中を取る。

コミュニケーション(声・合図・事前の取り決め)

  • 合図の固定化:「ターン!」「置いて!」「裏!」の意味をチームで統一。
  • 事前取り決め:右で運んだら左IHがゾーン14、など“基本型”を作っておく。

具体的な“動き”で理解する5つの崩しパターン

アップ・バック・スルー(3人目の関与)

CFへ当て(アップ)、落として(バック)、3人目が裏へ(スルー)。

  • 手順:CB→CF(足元)→IH(落としを前向きで受ける)→WG/CF(斜め裏へ)
  • ポイント:IHは半身で待つ。CFは相手を背負いながら落とす位置をゾーン14の外側へ。

外→中→外のスイッチ(ハーフスペース活用)

サイドで相手を引きつけ、中で前向き化して、再び外の高い位置へ。

  • 手順:SB→WG(外)→IH(内へ斜め)→SBまたは逆サイドWG(外高い所へ)
  • ポイント:IHは受ける前にスキャンして前を向ける角度で入る。外へ出す瞬間に最後列が押し上げる。

ボックス脇からの折り返しとマイナス(カットバック)

PA脇の深い位置に差し込み、ゴール前のラインを崩す。

  • 手順:IH→WG(裏へ)→グラウンダーのマイナス→ゾーン14でシュート
  • ポイント:マイナスの受け手は減速してスペースに入る。シュートはワンタッチ前提でステップを早く。

斜めのワンツーとインサイドレーン侵入

縦ではなく斜めの角度で壁当て。CBの間を斜めに割る。

  • 手順:CF→IH(縦パス)→CF(楔→リターン)→IH(斜めにPA内へ)
  • ポイント:IHはボールに寄りすぎない。CFはワンタッチで角度を作る強度の落とし。

寄せてから逆サイド(オーバーロード&スイッチ)

片側に人数とボールを集め、相手を引き寄せてから逆側のゾーン14へ。

  • 手順:右で3対2を作る→相手が圧縮→ボランチ経由で左IHへ→前向きで加速
  • ポイント:スイッチの前に中央の選手が一列前へ押し上げ、受けた瞬間に選択肢を3つに増やす。

ポジション別の役割と動き方

CF(9番):引き出し・落とし・裏抜けの3本柱

  • 引き出し:CBの間か片方を外へ連れ出す。背中で押さえてパスコースを開く。
  • 落とし:ゾーン14に落とす時は、受け手が前を向ける角度へ。
  • 裏抜け:落として終わりにしない。すぐ斜めに背後へ。

WG(サイド):内外の立ち位置と裏表の使い分け

  • 外幅取り→内へ差す→再び外で受け直す。縦一辺倒にしない。
  • SBと高さをずらし、同じラインに並ばない。

インサイドハーフ/トップ下:間受けと前向き化

  • 相手の背後で視界から消え、受ける瞬間だけライン間へ。
  • 半身・ワンタッチ・体をぶつける準備を常にセットで。

SB/CB:供給の角度づくりと押し上げの判断

  • SBは外で相手を釣り、内へ斜めのパスコースを作る。
  • CBは縦パス後に5〜10m押し上げ、こぼれ球の回収とリスク管理。

ボランチ:幅と深さの調整・リサイクルの質

  • 詰まったら一度預かり、逆へ展開。速さよりも方向の選択。
  • ゾーン14への再侵入を設計する“やり直し”の質を上げる。

守備の形別に見る攻略法

4-4-2の2ラインを“裂く”方法

  • 片側サイドでSBとWGの2対1を作る→IHがライン間へ→CFが斜めに引き出す→IH前向き。
  • 縦パスが入る瞬間に逆サイドWGがファーに走り、CBを動かす。

4-1-4-1のアンカー脇を“刺す”方法

  • アンカーの横へIHが立ち、CFの落としを受ける形を繰り返す。
  • アンカーが食いついたら、背中へCF/WGが裏抜け。

5バックのローブロックを“動かす”仕掛け

  • 外で我慢して幅を最大化→逆サイドへ素早くスイッチ。
  • PA脇へスルーパス→カットバックのマイナスでゾーン14からシュート。

ハイプレス相手:速攻でゾーン14に到達するコース

  • GK→SB→CFへの楔→IHが一気に前向き。3本で到達を狙う。
  • ロングでWGへ→落とし→中央差し込みの逆パターンも有効。

トレーニングメニュー(中高生向け)

10分ウォームアップ:半身&視野の起動スイッチ

  • 対面パス:半身受け→ワンタッチで角度を作る→2タッチ目で前へ。
  • コーチの合図で首振り→色コーンの方向へパス。スキャンの習慣化。

2対1+フリーマン:前向き化ドリル(制限付き)

  • 条件:受け手は半身で受けないと得点無効。守備は背中からプレッシャー。
  • 狙い:背中からの圧に対して、最初のタッチで前を向く技術。

3対2:アップ・バック・スルー制限ゲーム

  • 条件:3本目は必ず裏へ。オフサイドラインを仮設定。
  • 狙い:3人目の動きのタイミングとパスの強度・コース。

6対6+2フリーマン:ゾーン14ボーナスゲーム

  • 条件:ゾーン14で前向き受け1点、そこから決定機(シュート)で+1点。
  • 狙い:チームとしてゾーン14侵入を“良いこと”にする共通認識。

個人練習:壁当て→半身ターン→スルーパス精度

  • 壁当てワンツーで半身ターン→マーカー間へ通す。左右各20本。
  • 着弾点を足元/スペースに打ち分け。スピン量を変えて試す。

判断を速くする“情報の取り方”

スキャンのタイミング(受ける前/触る前/出した後)

  • 受ける前:背中のDFと味方の位置。
  • 触る前:ゴール、GK、逆サイドの味方。
  • 出した後:次の受け直しと3人目の動きの確認。

視野の優先順位と“相手の肩の向き”の読み取り

  • 肩が外向き→内が通る。肩が内向き→外か背後が通る。
  • 守備の踏み込み足を見ると奪いに来るかがわかる。

共通キーフレーズで揃える合図と再現性

  • 「止まれ」=カットバック待ちの減速サイン。
  • 「縦切れ」=外をおとりにして内へ侵入の合図。

技術の細部:通るスルーパス、止まるマイナス

ボールの質(スピン・強度・着弾点)の選び方

  • スルーパス:相手より一歩先のスペースに、味方の進行方向へ薄くかけるスピン。
  • マイナス:ペナ外の手前で止まるボール。弱すぎず強すぎず、受け手が流し込める速度。

受け手の減速・進入角度・足元/スペースの使い分け

  • 減速は勇気。速さだけでなく“止まる”ことでマークを外す。
  • 二歩先で受ける角度を作ると、シュートコースが開きやすい。

シュート準備(ステップ・軸・視線フェイク)

  • ステップ:最後の2歩を短く、軸足はボールの横。
  • 視線:GKの逆を突くため、出す直前まで逆サイドを見せる。

よくあるミスと修正ポイント

間で受ける前に“前向き”を作りすぎて狩られる

  • 修正:最初は背中でもOK。落とし役を使い、二本目で前向き。

同じレーンに3人並ぶ(幅と深さの欠如)

  • 修正:一人は幅、一人は間、一人は裏。役割を会話で整理。

パス後に止まる(3人目の動きが消える)

  • 修正:出したら動くを徹底。特に落としの後は裏へ。

ゾーン14固執で外の脅威が消える(内外の往復)

  • 修正:内で詰まったら素早く外へ。外で相手を動かして再侵入。

計測と振り返り:上達を可視化する

KPI例:ゾーン14進入回数/前向き受け率/決定機数

  • 1試合あたりのゾーン14前向き受け:目標5回以上。
  • そこからの決定機(枠内・フリーでのシュート):目標2回以上。

練習・試合の書き出しノートと簡易タグ付け

  • 例:「Z14前向き」「カットバック」「3人目」など自分のタグでメモ。
  • 動画を見られる環境なら、時間とタグをセットで記録。

練習→試合のトランスファーを設計する

  • ドリルで成功→同じキーワードでミニゲーム→実戦で再現。
  • 言葉の統一が再現率を上げる近道。

保護者・指導者のサポート

声かけと映像の見方(問いで引き出す)

  • 「どの瞬間に前を向けた?」「相手の肩はどっち向きだった?」と問いかける。
  • 良かった場面を10秒で切り出し、同じ動きを言語化して共有。

成長期の怪我予防と負荷管理(強度と回復)

  • 爆発的な加速を増やす分、股関節とハムのケアを習慣に。
  • 強度の高い日→翌日は可動域づくりと技術の軽負荷に切り替え。

まとめ:今日から試せるチェックリスト

原則の再確認と明日の練習での着眼点

  • 半身で受け、最初のタッチで前向きの角度を作る。
  • 同じレーンに3人並ばない。幅・間・裏を分担。
  • アップ・バック・スルーは“出したら動く”で完成。
  • 内で詰まったら外、外で動かしてから再び内。

試合前のルーティンと合図の擦り合わせ

  • キーフレーズの意味統一(ターン/置いて/裏)。
  • セットプレー明けの最初の一手を決めておく(誰がゾーン14に入るか)。
  • 「最初の5分でゾーン14前向き1回」をチーム目標に。

おわりに

ゾーン14は“場所の名前”であり、“決定機の作り方の原則”でもあります。体の向き、タイミング、合図。この3つが揃えば、図がなくても再現できます。今日の練習で一つ、週末の試合で一つ、必ず試してみてください。小さな成功の積み重ねが、チーム全体の得点力を確実に押し上げます。

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