目次
- ビルドアップ 練習方法 図が見える動きの言語化ガイド
- ビルドアップ 練習方法 図が見える動きの言語化ガイドの狙い
- ビルドアップの基本原則を言語化する
- 観る順番とスキャン習慣の作り方
- トライアングルとダイヤを言葉で描く
- レーンとライン:ピッチを言葉で区切る
- 役割別:GK/DF/MF/FWの前進パターン
- 相手守備別の攻略言語
- トリガーとチーム共通コール
- パス・運ぶ・保持の意思決定を数値で言う
- 基礎ロンド:言葉で質を上げる練習方法
- 位置的プレーの段階的メニュー
- 実戦形式:制約付きゲームで判断を固定化
- コーチングポイントと評価指標
- よくある失敗と修正フレーズ
- 少人数・雨天・狭小スペースの代替メニュー
- チームの共通言語を設計する
- 年代・レベル別の負荷と進度
- 身体準備とケガ予防を練習に組み込む
- 自宅でできる補助練と親のサポート
- 用語集と練習テンプレート
- まとめ:言葉でそろえ、テンポで勝つ
ビルドアップ 練習方法 図が見える動きの言語化ガイド
図がなくても、動きが頭に浮かぶ。ビルドアップの練習方法を「言葉の図解」に落とし込み、共通のフレームで共有できるようにまとめました。レーン、三角形、角度、首振り、トリガー。ピッチ上の判断を、短い合図と言葉の定義でつなぎ、再現性の高い前進を作ります。この記事は、現場でそのまま使えるコール、距離・角度の数値目安、制約付きメニュー、評価指標まで一気通貫で整理した実用ガイドです。
「図が見える言語化」を合言葉に、選手同士が同じイメージで動き、コーチは最小の言葉で最大の修正を。練習後も復習しやすいよう、短いフレーズと数字をキーワードに設計しています。
ビルドアップ 練習方法 図が見える動きの言語化ガイドの狙い
図の代わりに動きを言葉で再現するためのフレーム
「誰が・どこへ・何度の角度で・何mの距離を・何の目的で」。この5点で動きを言葉化します。短い文章でもイメージが一致しやすく、プレーの再現性が高まります。
- 例:「CBが外へ5m運ぶ→アンカーが30度で受け直し→WGへ矢印」
- 例:「SBが内へ寄る合図→IHが外へずれる→CFが背後を示す」
共通語彙(レーン・三角形・矢印・引きつけ)の定義
「レーン=縦の通路」「三角形=8〜15mの三人組」「矢印=前向きの受け手」「引きつけ=相手を2歩寄せる運び」。チームで言葉の意味を固定し、迷いを減らします。
判断の優先順位を文章化して共有する
「前進>保持>リセット」を原則に、個人判断をチームの順番に統一。「縦が通るなら通す、無ければ運ぶ、詰まれば戻す」を合言葉にします。
ビルドアップの基本原則を言語化する
幅・奥行き・角度の三原則を距離と角度で表す
- 幅:サイド間はフル幅を使用。隣の味方とは8〜15mを目安。
- 奥行き:1ライン先に最低1人。「背中の矢印」を常に用意。
- 角度:受け手は30〜60度の斜めを作る。真横・真後ろに並ばない。
数的・位置的・質的優位の見分け方
- 数的優位:2対1を作る。見えたら「数OK」。
- 位置的優位:相手の背中で受けられる位置。「背中見えた」。
- 質的優位:個で剥がせるマッチアップ。「質で勝つ」。
前進・保持・リセットの選択基準
前進条件は「縦の受け手が前向きor落とせる」。保持条件は「斜めの関係が2つ以上」。リセットは「縦の前に逃げ道」。この順に照合して選択します。
観る順番とスキャン習慣の作り方
首振りのタイミング(受ける前2回・受けた後1回)
受ける直前に左右1回ずつ、受けてから前方を1回。合図は「2前1後」。ボールが移動している間に実施し、止まってから見ないことがコツです。
時計法で空間を言語化する(2時・10時・6時)
身体の正面を12時として、受け手の位置を時刻で共有。「2時OK」「10時寄って」「6時支点」。角度のズレを即座に修正できます。
体の向き=次のパス方向の先取り
「向きは次のパス」。受ける前に上半身とつま先を次の矢印にセット。横向きの受けは、落とし専用の向きと理解して使い分けます。
トライアングルとダイヤを言葉で描く
斜めの関係を30〜60度で保つ目安
真横0度と真後ろ180度を避け、受け手は30〜60度の斜めに立つ。コールは「角度30」。角度が浅いとカットインされ、深すぎると距離が伸びます。
8〜15mの距離で三角形を維持する理由
短すぎると圧縮され、長すぎるとテンポが落ちます。8〜15mはワンタッチと二人での2対1を両立しやすい実用域です。
「寄る・ずれる・離れる」の三拍子で形を更新
ボールに対し一人が寄り、もう一人はずれ、最後に背後が離れる。この三拍子を1.5秒以内で回すと、三角形が常に前を向き続けます。
レーンとライン:ピッチを言葉で区切る
縦5レーン・横3ラインの簡易定義
縦は左外・左中・中央・右中・右外の5レーン。横は最終ライン・中盤ライン・前線ラインの3つ。自分の位置を「左中・中盤」などで即共有します。
同レーン被りを避けるための声掛けルール
同じレーンに2人入ったら、後方の選手が「外」or「中」を宣言して調整。原則は「背後の人が動いてレーンをずらす」。
逆サイド展開の合図と言語化(リターン→スイッチ)
近くで一度返して(リターン)、すぐスイッチ。「返し→逆!」の2語で展開。縦が閉じたら自動で発火させます。
役割別:GK/DF/MF/FWの前進パターン
GKとCBの三択(縦刺す・外す・戻す)
縦刺す:アンカーかIHの足元へ。外す:SBやWGへ角度を作って配球。戻す:圧力を引きつけたらGKへ一度リセット。「縦見て外、無ければ戻す」をルール化。
アンカー/インサイドの受け直し動作と言葉
アンカーはマークの“背中に隠れて→顔出し→背中に戻る”を3秒で。IHは縦の矢印を示しながら「落ちOK」。受け直しの合図は「もう一回」。
WG/CFの背後脅威と足元サポートの切替合図
WGは「背中」→ラインを割る動きでCBを下げ、止まって足元「支点」へ切替。CFは「固定」して落とすか、「流れ」で外へ数的優位を作る。
相手守備別の攻略言語
マンツーマン:引きつけ→空け渡し→背中取り
ボール保持者が1.5人分引きつける→マークを味方に“空け渡す”→空いた背中に差す。合図は「引きつけOK」「背中」。
4-4-2ゾーン:縦ズレ・横ズレを起こす手順
SB内寄り→IH外流れで横ズレ、縦刺し→落とし→逆IHの侵入で縦ズレ。「縦→落ち→逆」をテンポ良く。
ハイプレス:最短2本で脱出する原則
GK→外CB→即縦か、GK→アンカー落ち→外。原則は「最短2本」。長い持ち運びは1タッチで解放する準備を。
トリガーとチーム共通コール
「背中見えた」「縦差しOK」「返し」の意味合わせ
「背中見えた」=前向きが作れる。「縦差しOK」=リスク許容で通す。「返し」=保持優先で一度戻す。言葉の強度を揃えます。
ワンタッチ解放の合図と受け手の準備
「ワン!」の一声で受け手は軸足をセット、次の角度へ。出し手は体の向きで合図を重ねます。
サイドチェンジのトリガー(2人閉じ→逆1人)
同サイドに2人寄せられたら逆は1人フリー。「2人閉じ→逆1人」で即スイッチ。
パス・運ぶ・保持の意思決定を数値で言う
3手先の受け手を確保してから通す
出す前に「出し先→落とし→次」を口内で確認。「三手OK」で通すと、孤立を防げます。
運ぶ距離の目安(5〜8m)と引きつけ人数(1.5人)
運びは5〜8mで角度をずらし、1.5人(1人+もう1人が寄りかけ)を引きつけたら解放。目安として機能します。
リスク管理の言葉(ライン跨ぎ前に逃げ道)
縦にラインを跨ぐ前に「逃げ道」を確認。「跨ぐ前に逆or戻し」を合図化。通らないと判断した瞬間に保持へ切替。
基礎ロンド:言葉で質を上げる練習方法
3v1/4v2での角度・距離・体の向きコーチング
- 角度「30」:受け手は斜めへ、真横禁止。
- 距離「10」:約10mを維持、近づき過ぎたら「離れて」。
- 向き「矢印」:次のパス方向へ身体を先取り。
2v1+フリーマンで前進とリターンの使い分け
縦が空いたら「刺す」、閉じたら「返す」。フリーマンは常に背中の矢印を示し、選択の質を引き上げます。
片側制限ロンドで「縦→落ち→逆」の型を作る
片側のみ前方通過可。縦を通したらワンタッチで落ち、逆側へ展開。3手を一連で反復します。
位置的プレーの段階的メニュー
5v4+GK:出口(中or外)を事前に宣言して実施
開始前に「今日は外出口」など宣言し、狙いを固定。成功率と所要パス本数を記録します。
6v6+2フリーマン:サイド変換を最低2回入れる条件
得点条件に「2回スイッチ」を追加。自然と幅と角度の更新が起きます。
ウェーブドリル:背後→カットバック→再開始の連鎖
背後ラン→折返し→次の波がリスタート。切れ目なく役割交代し、体の向きを連続で整えます。
実戦形式:制約付きゲームで判断を固定化
3ゾーンゲーム:縦パス後はワンタッチ縛り
中ゾーンへの縦パス後、受け手はワンタッチ制限。落としの質を強化します。
レーン固定→条件解除で可変を学ぶ
前半はレーン固定、後半に解除。固定で原則を学び、解除で応用へ。
トランジション5秒ルールで即時奪回/逃がしを鍛える
失ったら5秒全員で即時奪回、奪ったら5秒で前進or保持を決定。切替の温度を揃えます。
コーチングポイントと評価指標
首振り回数/保持からの前進率/前進速度の記録
- 首振り:受ける前2回が実施できた割合。
- 前進率:保持から10秒以内にライン越えした割合。
- 速度:後方→中盤→前線の通過に要した秒数。
ライン間受け成功数と背後ランの呼応回数
ライン間で前向きに収まった回数、背後ランに対する出し手の反応回数をカウント。連動の質を可視化します。
ミスの原因分類(質・判断・配置)チェックリスト
- 質:トラップ/パスの技術ミス。
- 判断:前進/保持/リセットの選択ミス。
- 配置:角度・距離・レーン被り。
よくある失敗と修正フレーズ
横並び問題:一歩斜め後ろ・一人奥へ
「横並び禁止」。修正は「一歩斜め後ろ」「一人奥」。これで三角が復元します。
受け直し不足:出す前に動く→出しても動く
「出す前に動く、出しても動く」。止まった受け直しを習慣から排除します。
逃げパス依存:引きつけ2歩→逆足パスの導入
怖さがない保持は圧力を呼び込みます。「2歩引きつけ→逆足で外」。小さな負荷で打開を増やします。
少人数・雨天・狭小スペースの代替メニュー
2人練:引きつけ→離す→壁→縦差しの型
Aが2歩運んで引きつけ→Bが離れて壁役→Aへ返し→縦差し。角度30、距離8〜10mを維持。
室内用:コーンなしレーン言語ゲーム
床にレーンを想定し「中→外→中」など言葉だけで移動。声と向きの一致を鍛えます。
スペース最小化:1/4ピッチでの3色ポゼッション
3チームで回し、指定色からのプレス。色コールでスイッチの反射を作ります。
チームの共通言語を設計する
合図/略語リスト(縦・返し・逆・外・中)
- 縦:刺す合図。「縦!」
- 返し:一度戻す。「返し!」
- 逆:サイド変換。「逆!」
- 外/中:配置修正。「外!」「中!」
週次テーマ(外循環→中侵入→背後)の合わせ方
1週目は外循環、2週目は中侵入、3週目は背後。週頭にキーワードを提示し、練習後に記録で振り返ります。
役割別の一言ルール(GK『縦見て外』など)
- GK:縦見て外。
- CB:運んで角度。
- IH:背中の矢印。
- WG:背後で脅かす。
年代・レベル別の負荷と進度
高校生〜社会人:セット数/強度の目安
技術系ロンドは3〜4分×4〜6本、位置的ゲームは5〜7分×3〜4本、ゲームは12〜15分×2本を目安に。
初級者:固定形→選択肢2つ→自由化の三段階
まずは型(縦→落ち→逆)、次に縦or外の2択、最後に自由化。段階を飛ばさないことで成功体験を積みます。
育成年代:過負荷を避ける配球と休息設計
1セットの間に高強度が連続しないよう、配球者を増やして休息を内在化。水分と簡易補食のタイミングも固定します。
身体準備とケガ予防を練習に組み込む
股関節・足首の可動域ルーティン
ヒップオープナー、足首の円運動、カーフロック。各30秒×2。向きの切替が軽くなります。
片脚バランスと着地コントロール
片脚で10秒静止→前後左右ジャンプ→静止。着地の音を小さくする意識で、減速能力を高めます。
疲労管理(睡眠・補食・強度波形)
睡眠は7〜9時間、練習後30分以内に補食。週内の強度は「中→高→回復」の波形で設計します。
自宅でできる補助練と親のサポート
壁当て×首振りの3分ルール
30秒ごとに方向を変え、受ける前2回・受けた後1回の首振りを必ず。3分×2セットでも効果的です。
動画の見方:パスが出る前の動きを止めて観る
「出る前の3歩」をスローで確認。角度30、距離10、向き矢印の3点でチェックします。
声かけテンプレ(意図・選択・次の案)
「何を狙った?」「他の選択は?」「次はどうする?」の順で対話。責めずに意図を引き出します。
用語集と練習テンプレート
主要用語の簡易定義集
- レーン:縦の通路。5分割で認識。
- 矢印:前向きの受け手や走りの方向。
- 引きつけ:相手を2歩寄せる運び。
- リセット:後方やGKへの一時退避。
記録用チェックシート雛形
- 首振り2前1後:実施率%
- 縦→落ち→逆 完遂回数
- 同レーン被り 回数
- ライン間前向き受け 成功/試行
週1〜3回の練習計画テンプレ
- 導入10分:可動域+片脚バランス
- 基礎20分:ロンド(角度30・距離10)
- 位置20分:5v4+GK(出口宣言)
- ゲーム25分:制約付き→自由
- 整理5分:数値とキーワード振り返り
まとめ:言葉でそろえ、テンポで勝つ
ビルドアップは図で理解しがちなテーマですが、共通言語と数値の目安を持つだけで、図が頭に浮かぶようになります。角度30〜60度、距離8〜15m、受ける前2回の首振り。「縦→落ち→逆」を基軸に、トリガーとコールで全員のテンポを揃える。これが、練習から試合へ橋渡しする最短ルートです。
今日の練習から、合図を短く、言葉を一定に。図が見える言語化で、前進の再現性をチームの当たり前にしていきましょう。
