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5レーンの配置例で再現する崩しの型

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5レーンの配置例で再現する崩しの型

「チームで同じ絵を見れること」が崩しの近道です。ピッチを5つのレーンに分け、誰がどこに立ち、どのタイミングで動くのかをそろえるだけで、パスの角度、サポートの距離、走るコースが一気に整理されます。本稿では、5レーンの配置例をテキストで再現しながら、崩しの“型”をライブラリ化。週末の試合ですぐに使える実行ルール、練習メニュー、評価のコツまで一気通貫でまとめます。

導入:なぜ今「5レーン」で崩すのか

現代戦術の潮流と個の強みの両立

5レーンは、幅(サイド)・ハーフスペース・中央の3種を左右で数えた考え方です。ボール保持の高度化が進む中でも、1対1で勝つ場面はなくせません。5レーンは「個が輝く場所」をチームで先に作り、その上で仕留める順番をはっきりさせられます。組織の秩序と、ドリブルやフィニッシュの爆発力を両立しやすいのが強みです。

5レーンがもたらす判断の単純化と再現性

配置が決まれば、ボール保持者の選択肢は「同レーンの前進」「隣接レーンの角度」「逆サイドの幅」に自動的に絞られます。選手は一瞬で状況を解釈でき、守備側は迷わされます。トレーニングでも「立ち位置」を合図にすれば、同じ崩しが何度でも再現できます。

カテゴリやレベルを問わず機能する理由

レーンはラインを引くだけ。難しい専門用語よりも、立ち位置とタイミングを共有できれば年齢やレベルに関係なく機能します。フィジカル差やテクニック差があっても、角度と距離を整えるだけでパスは通りやすく、ミスも減ります。

5レーンの基本と前提

5レーンとは何か(サイド・ハーフスペース・中央の区分)

タッチラインから中央までを、左右のサイド、左右のハーフスペース、真ん中の中央で5分割します。サイドは幅を取り、ハーフスペースは縦パスとシュートの脅威、中央は起点化とスイッチの軸になります。

幅・深さ・高さ:攻撃の三要素

  • 幅:ピッチの左右端を押さえて相手の横スライドを遅らせる
  • 深さ:最終ラインの背後を脅かす動きで重心を下げる
  • 高さ:ボールの位置に対する段差を作り、前進のパス角度を確保

オフサイドラインと縦5レーンの関係

ボールより高い位置に3人以上が5レーンを占有すると、最終ラインは踏み止まれません。背後脅威があると中盤は引き出され、ライン間に前向きの受け手が生まれます。

インサイド優先かアウトサイド優先かの判断軸

原則は「内で前進、外で仕留める」。中央とハーフスペースでライン間に差し込み、最後はサイドで数的優位か1対1を作ってゴール前へ。相手のCHが締めるなら外経由、SBが跳ね上がるなら内を突く、が簡単な分岐です。

配置の原則(実行ルール)

同一レーンの縦並び禁止と段差の作り方

  • 同レーンに2人が一直線はNG。必ず半レーンずらすか、高さを一段替える。
  • 受け手は「背中→足元→背後」の順に優先。最終ラインを縦に割る意識を持つ。

隣接レーンの三角形でパス角度を確保する

ボールサイドの3人で三角形を作ると、ワンツー、第三者、背後の3択が同時に生まれます。三角の底辺は10〜15m、頂点は相手の足が届かない角度に。

逆サイドの幅の保持とタイムラグの利用

逆サイドWGは「今すぐ」ではなく「3秒後」のために幅を固定。スイッチが出た瞬間に加速し、アタッキングサードで数的優位を作ります。

ボールサイドの枚数管理(3±1の原則)

ボールサイドは3枚を基本。相手が食いつくなら4枚、離れるなら2枚。密集しすぎると角度が死ぬので、逆サイドの生存を常に意識します。

最終ラインと中盤の段差設定(レイヤー化)

ライン間に1段、背後に1段。最低でも5段(最終ライン/アンカー/IH/WG/CF)を作ると、相手は誰を捕まえるか迷いやすくなります。

フェーズ別の5レーン配置

第1フェーズ:ビルドアップ(GK・CB・SB・アンカー)

GK+CB2+アンカーで菱形を作り、SBは内外可変。相手2トップには3対2、相手のCHには背中取りのIHで優位を確保します。

第2フェーズ:前進(IH・WG・CFの連動)

ボールサイドIHがライン間、WGが幅、CFは背中で固定。IHが受ける前の「準備の身振り(逆肩入れ・半身)」が前進成功率を左右します。

第3フェーズ:フィニッシュ(5レーン占有とPA侵入)

最前線は2-3の形で5レーンを埋める。ハーフスペースの侵入者がカットバック、ファーのWGが二次到達、IHがニアゾーンのリバウンドを回収します。

トランジション:攻守の切替での再配置ルール

  • 即時奪回はボールサイド3人が圧縮、逆サイドはセーフティ。
  • 奪い返したら「近く→遠く→背後」の順で前進。逆サイドWGは一足早く幅を取る。

5レーンの配置例を図で理解(テキストで再現)

基本形:4-3-3対4-4-2の5レーン占有例

L1(左サイド) | L2(左HS) | L3(中央) | L4(右HS) | L5(右サイド)---------------------------------------------------------------       WG(L)       IH(L)     CF        IH(R)        WG(R)         SB(L)                 A(アンカー)           SB(R)                CB(L)       GK       CB(R)

4-3-3の前線で5レーンを占有。アンカーは相手2トップのライン間、SBは外固定または内に絞ってIHの背中サポート。4-4-2のCH背中(L2・L4)にIHが立てば、縦パス→落とし→裏抜けの三択が整います。

偽SB/偽9を使った可変の占有例

L1      L2        L3        L4        L5---------------------------------------------WG(L)  IH(L)     偽9       IH(R)     WG(R)   偽SB(L)    A        SB(R外)        CB(L)     GK     CB(R)

偽SBが内に入り数的優位を作り、CFが中盤に落ちて最終ラインを引き出す。背後はWGの斜め走りで狙います。

三バック化の2-3-5と3-2-5の違い

2-3-5:CB2+Aで後方、SB高い位置CB(L)   CB(R)   A     SB(L内)  SB(R内)WG(L)  IH(L)  CF  IH(R)  WG(R)3-2-5:CB3で後方安定、アンカー+IHで中盤CB(L)  CB(C)  CB(R)     A       IH(落ちる)WG(L)  IH(L高) CF IH(R高) WG(R)

前線5枚の占有は同じでも、後方の安定度と縦パスの角度が変わります。相手のプレス強度で使い分けます。

3-2-5からリターンパスでテンポを変える

前進が詰まったら、IH→A→逆IHのリターンで一拍置き、SBまたはWGへ速いスイッチ。守備の重心が傾いた瞬間に反対側のハーフスペースへ差し込みます。

高さ5段(レイヤー5)の段差展開例

背後脅威:WG/CFが最終ライン背中ライン間:IHがCH背中中盤軸:Aが循環最終ライン:CB/SB起点:GK

常に5段を保つと、前進が止まりません。誰かが落ちたら別の誰かが同じ段に入る「入れ替わり」をルール化します。

崩しの型(パターンライブラリ)

1. オーバーロードからのアイソレーション

  1. ボールサイドにIH・SB・WG・CFを寄せて4対3を作る
  2. 相手が食いついたら、A経由で逆WGへ速いスイッチ
  3. 逆WGは1対1で仕掛け、ニア・ファーの二択でクロス

2. 第三の動き(ワンツー+背後抜け)

  1. IHがCH背中で受ける
  2. CFが落ちてワンツーの壁になる
  3. 受けた瞬間、WGが斜めに背後抜け→スルーパス

3. ハーフスペース侵入からのカットバック

  1. SBの内走りでIHの外側をガード
  2. IHがL2/L4をドリブル進入
  3. ゴールライン手前で折り返し→PA外のIH/アンカーがミドル

4. アンダーラップ/オーバーラップの二択を迫る

WGが幅、SBが内(アンダー)と外(オーバー)のどちらかで同時に脅かす。相手SBが絞れば外、外へ出れば内を使う。

5. ダイアゴナル・ランで最終ラインを割る

CFが外へ流れてCBを引き出し、逆IHが斜めにCBとSBの間へ。パサーは半身でボールの置き所を前に。

6. 逆サイドスイッチ+二列目到達

CB→A→CB(逆)→WGの大きなスイッチ。到達時にIHとSBがPAに同時侵入し、低いクロスのこぼれを拾います。

7. 壁パスで幅を取り直して再加速

サイドで詰まったら、WG→SB→WGの壁で角度を作り直し、ライン間へ斜め差し込み。テンポを一度緩めてから再加速がコツ。

8. セントラル固定→外解放(アンカー釣り出し)

CFが中盤に落ち、相手アンカーを前に引き出す。空いた中央背中にIHが入り、サイドへ展開→フリーのクロス。

9. カーテン(スクリーン)で受け直す

IHがマーカーの進路に軽く入って味方の受け直しを助ける。反則にならない接触と角度が重要。

10. セットプレー二次攻撃への5レーン応用

クリア後も5レーン占有を維持。ハーフスペースに二次回収役、逆サイドWGは幅固定でカウンターケアと再侵入を両立。

相手ブロック別の再現方法

ローブロック(5-4-1/4-5-1)攻略の型

  • 外→内→外の揺さぶりでCHのラインを割る
  • ハーフスペースからのカットバックの回数を増やす
  • ミドルシュートと二次回収で押し下げる

ミドルブロック(4-4-2)攻略の型

2トップの脇にアンカーを位置させ、縦パス→落とし→背後。IHの背中取りが鍵。

ハイプレス(4-3-3)対策の型

GK+CB+アンカーで+1を作り、SBの内絞りで中央に出口を作る。縦に急がず、空いた背後へ長いボールで一発も混ぜる。

マンツーマン傾向への対処(レーン跨ぎのローテーション)

受け手がレーンを跨ぎ、マーカーを連れて動かす。空いたレーンに第三者が遅れて侵入し、前向きで受ける。

役割別の立ち位置とスキャンのコツ

WG:外固定と内切りの判断基準

  • SBが出てくるなら内に切り、IHと縦関係で受ける
  • CBが釣られるなら外固定で背後を狙う
  • スキャンは「足元→背後→逆サイド」の順で2回

SB:内外可変と背後警戒の両立

内側で数的優位を作りつつ、ロスト時は最短で背後ケア。ボールが逆に動いたら素早く幅へ。

IH:体の向き・逆足利用・視野の確保

半身で受け、逆足のアウトで前向きのタッチ。背後ランのタイミングはパスが出る半歩前。

CF:落ちる/引き出す/釣るの使い分け

落ちて起点、外へ流れてCBを引き出し、PA内では釣ってスペースを空ける。3役の切替で最終ラインを混乱させます。

アンカー:縦パスとスイッチの舵取り

最初の前進パスを常に準備。詰まれば一拍置いて逆へ。視線で相手を固定してから逆を突くのがコツ。

GK:+1化とリスク管理(背後カバー)

ビルドアップで数的優位を作り、背後のロングボールには積極的にスイーパー対応。蹴る・繋ぐの配分を事前に共有します。

トリガーとシグナル(合図と言語化)

相手SBの前進/後退で生まれる隙

SBが前進=背後の斜め差し。SBが下がる=IHのライン間受けを増やす。WGは視線で味方に合図。

相手CHの背中が空く瞬間の活用

ボールに寄った瞬間の背中へ縦差し。受け手は半身でターンの準備。

最終ラインのスライド速度を読む

遅ければスイッチ、速ければニアゾーンからの早いクロス。テンポ選択の基準に。

ボール保持者の視線・タッチ・支持語

視線が外=内が空く、内=外が空く。支持語は短く「背中」「返せ」「スイッチ」など統一。

風・ピッチ・スコア状況による補正

向かい風は足元で前進、追い風は背後を増やす。リード時はリスク低め、ビハインド時は人数を前に。

トレーニングメニュー(ピッチで再現)

5レーン帯のマーカー設定と制約

ピッチに5本の仮想レーンをマーカーで引き、「同レーン2人縦並び禁止」「前進は3本以内」など制約を付けます。

3対2+サーバー:第三者関与の反復

レーンを跨ぐ三角形で、ワンツー→第三者→背後抜けを反復。タッチ制限でテンポを上げます。

6対6+2フリーマン:2-3-5の占有制約

攻撃側は常に5レーンを埋めるルール。フリーマンはアンカーとIHの役割で循環を作る。

スイッチ・ザ・ポイント(スイッチ後5秒ルール)

サイドチェンジ後5秒以内にPA侵入を義務化。到達速度と連動の質を上げます。

8対7のサイド超過ルールで幅を意識化

ボールサイドに4人以上入ったら反則。逆サイドの幅固定を習慣に。

宿題ドリル(個人):体の向き・スキャン・反転

  • 半身での初速ターン
  • 受ける前の2回スキャン(1秒前・0.3秒前)
  • アウトサイドでの方向づけタッチ

分析と評価(KPI設計)

5レーン占有率とレーン被り回数

攻撃時に5レーンのうち何本を占有できたか。被りは減点対象。

ハーフスペース侵入回数/カットバック数

L2/L4への侵入と、そこからの折り返し数を記録。得点との相関が高い指標です。

第三者関与からのシュート率

壁→第三者→シュートまでの成功率。崩しの再現性を測れます。

サイドチェンジ回数と成功率

スイッチの頻度と質を可視化。逆サイドの死に幅防止に効きます。

ボールロスト位置と即時奪回率

ロストが起きたレーンと、5秒以内の奪回率。リスク管理の改善材料です。

よくある失敗と修正ポイント

同一レーンの密集化と停滞

解決:一人は隣レーンへ、もう一人は高さを変える。話し合いの合図を短く統一。

逆サイドの死に幅問題

解決:逆WGに「残る」役割を付与。スイッチの準備のため、常にオープンボディを維持。

ボール保持者の孤立を防ぐ支点づくり

解決:近距離の壁役を即配置。次の角度を出す三角形の底辺を確保。

縦に急ぎすぎる/待ちすぎるのバランス

解決:スリーカウント(1:観る、2:引きつける、3:出す)で共通リズムを作る。

可変後の戻し遅れと背後露出

解決:ロスト時の役割を事前共有。「内SBが出たら逆SBは残る」などの片側制約を設定。

支持語・合図の不統一を解消する

解決:チーム語彙集を作成。「背中=裏」「返せ=落とし」「替えろ=スイッチ」など。

育成年代への落とし込み

練習時間が短い環境での導入順序

  1. レーン線を引く(視覚化)
  2. 同レーン縦並び禁止を徹底
  3. 三角形と第三者の反復
  4. 逆サイドの幅固定とスイッチ

学校グラウンドや用具の制約への適応

マーカーとコーンだけで十分。レーン幅は等分でOK、ライン間は想像で補い、ポイントで立ち止まって確認します。

ポジション固定の利点と可変の教育

最初は固定で役割理解を優先。慣れたら役割交代(WG⇔IH、SB⇔IH)で視点を増やし、可変の感覚を育てます。

保護者ができる観戦チェックリスト

  • 常に幅があるか
  • ライン間に誰かいるか
  • 逆サイドが生きているか
  • 奪われてもすぐ寄せられているか

試合前の準備とゲームプラン雛形

相手ブロック分析テンプレート

  • 前線の人数(2か3か)
  • CHのポジション(縦か横か)
  • SBの守り方(出るか待つか)
  • 最終ラインの高さ

先発と交代のレーン役割分担

交代選手には「埋めるレーン」と「最初のタスク(幅固定/背後脅威/落ち役)」を明確に伝える。

前半/後半でのゲームプラン切替

前半はパターンA(内優先)、後半はパターンB(外優先)など、相手の適応を上回る切替を準備。

終盤のパワープレーと5レーン維持

人数を前にかけても、5レーン占有は崩さない。二列目の拾い役と逆サイドの幅を残すことでセカンド回収率を高めます。

用語集と参照枠組み

レーン/ハーフスペース/ライン間

ピッチを5分割した考え方。ハーフスペースはサイドと中央の間、ライン間は最終ラインと中盤の間のエリア。

オーバーロード/アイソレーション

片側に数的優位を作る(オーバーロード)→逆で1対1を作る(アイソレーション)。

第三の動き/ダイアゴナル

二人のパス交換に、もう一人がタイミングよく関わるのが第三の動き。ダイアゴナルは斜めの走りでマーク間を割る動き。

可変システム(2-3-5/3-2-5/3-1-6)

攻撃時の並び替え。後方の安定と前線の枚数を相手に合わせて調整する枠組みです。

まとめと次の一歩

今日から使えるミニチェックリスト

  • 5レーンを常に埋める(被り禁止)
  • 三角形を作る(第三者の準備)
  • 逆サイドは生かす(スイッチの準備)
  • 背後→足元→前向きの順で狙う

映像分析で見るべきポイント

停止画でボール保持時の並びを確認。誰がどのレーンを埋め、どの段差が欠けているかをチェック。得点シーン以外も、崩し未遂を評価しましょう。

個人課題の立て方と進捗管理

ポジション別に「受ける前のスキャン回数」「半身の角度」「背後ランの回数」を数値化。週ごとに目標を更新し、練習と試合の両方で記録します。

あとがき

5レーンは魔法ではありませんが、崩しを「言語化」し、ピッチに「再現」するための共通土台になります。立ち位置がそろえば、プレーは勝手に速く、シンプルで、強くなります。まずは練習でレーン線を引き、三角形と第三者の動きを習慣化してください。明日の試合で、一度でいいので「逆サイドを生かしたスイッチ」まで到達すること。そこから、あなたのチームの崩しの型が始まります。

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