サッカーを本気でプレーする皆さん、そしてサッカーをがんばるお子さんをサポートする保護者の方へ──「マウスピースはサッカーに本当に必要なの?」と悩んだ経験はありませんか?多くの方が一度はそう考えたことでしょう。この記事では、サッカーにおけるマウスピースの本当の役割や、実際のデータ、現役選手や指導者の声を交えつつ、メリットとデメリットの両面から『必要性』に迫ります。導入のヒントや選び方も具体的に紹介しますので、最後まで目を通して、あなた自身・ご家族にとっての最適な選択を考えていただけたら幸いです。
マウスピースはサッカーに必要か?──その疑問に答えます
「必要」の定義を再考する
スポーツ用マウスピースと聞けば、ラグビーやアメフト、ボクシングのイメージを持つ方が多いかもしれません。「サッカーでも本当に必要なの?」と率直に疑問を持つのは自然なことです。
そもそも「必要」とはどこまでを指すのでしょうか。
・ 怪我予防のために絶対必須である(義務性が高い)
・ 万が一の時の備え・安全性向上のために“しておくと良い”
・ 本人のプレースタイルやレベル次第で考えるべきもの
このように、「必要」と一言で言っても、人やシーンによって意味合いは大きく異なります。本記事では、さまざまな切り口から「本当に必要なのか?」という疑問を多角的に分析します。
この記事で得られること
- サッカー選手がマウスピースを使うメリット・デメリットがわかる
- 事故や怪我のデータ・リアルな現場の声がわかる
- どんな選手・子どもにマウスピースが適しているか判断できる
- 選び方・購入方法のポイントを知ることができる
サッカーにおけるマウスピースの役割とは
衝撃吸収・歯や顎の保護
サッカーはコンタクトスポーツであり、試合や練習中に頭部の衝突や、相手プレーヤーの手・肘・ボールが顔に当たるシーンも珍しくありません。マウスピースの主な役割は、歯や顎への直接的な衝撃を吸収・分散し、前歯の破折・脱落や口腔内の裂傷、顎関節の損傷などのリスクを軽減することです。
パフォーマンスの維持という観点
一部の研究では、正しくフィットしたマウスピースを装着しても、呼吸や発声、集中力に大きな支障はないと報告されています。さらに、事故への不安が軽減されることにより思いきったプレーをしやすくなる、という心理的側面も一定程度認められています。(ただし、これは個人差が大きく万人に当てはまるとは限りません)
サッカー選手に起こりうる口腔内トラブル
サッカー特有のケガの傾向
サッカーでは相手選手との接触、転倒、ヘディング時の予期せぬ衝突など、多様な状況で口腔内の怪我が発生します。
よく見られるものとしては
・ 前歯の折損・脱落
・ 舌や口唇の裂傷
・ 歯茎の損傷
・ 顎関節の打撲・脱臼
などが挙げられます。
過去の主な事故例
JFA(日本サッカー協会)の報告や整形外科・歯科医療のデータによると、高校生年代以上の公式戦・練習試合で、口腔内損傷の件数は他競技に比べると少ないながら、発生時の重症度は高いという特徴が見られます。
例えば、ボールのシュートが顔面に直撃して前歯2本が欠けた、DF同士のヘディング競り合いで奥歯が折れた、FWの選手がGKと接触し前歯と唇を裂傷、といったケースは現実に報告されています。
加えて、マウスピース未装着の場合には後遺症や治療費が膨らむ傾向もあります。
実際のデータ・事例でわかるマウスピースの効果
学術的な調査・論文の紹介
複数のスポーツ歯学専門誌などで、成人・高校生サッカー選手を対象にした調査が行われています。
平成後期に実施された日本の大学サッカー部員に対する調査では、プレー中に歯のケガを経験したことがある選手は約7%という結果でした。
また、2017年に発表された海外論文では、カスタムメイドのマウスピースを定期的に装着したグループは歯牙外傷の発生率が3分の1程度に低減したと報告されています。
ただし、野球やラグビーのような“マスト装着”義務のある競技と比べると効果のデータが少なく、今後さらなる研究が期待されています。
スポーツ現場の統計データ
プロサッカー選手の間でのマウスピース装着率は国やリーグによって差がありますが、日本のJリーグや高校インターハイレベルでは義務化されていません。一方、イングランドやオーストラリアの一部ユースカテゴリでは、練習時・試合時ともにマウスピース着用を強く推奨されている例もあります。
全体で見ると、普及率は数%〜15%ほどと考えられています。
注意すべき限界・盲点
マウスピースは全ての口腔内事故を100%防げるわけではありません。
・ 鼻骨骨折や目の周辺のケガには効果が無い
・ 不適切なサイズ・品質のものだと逆に怪我が悪化する例も
・ 呼吸や発声、コミュニケーションに一時的な違和感が生じる場合も
こうした限界を理解した上での選択が重要です。
マウスピースの種類とその特徴を知ろう
既製品・カスタム品の違い
一般に流通しているスポーツマウスピースは、大きく
・既製品(市販タイプ)
・セルフフィット型(お湯で軟化させて自分で成型)
・カスタムメイド型(歯科医院等で個別製作)
の3種類に分けられます。それぞれ適用範囲や価格が違います。
それぞれのメリット・デメリット
既製品・セルフフィット型
- 安価(1,000〜3,000円程度)
- 手軽に購入・使用できる
- フィット感や保護性能に個人差が大きい
- 慣れないと違和感や外れやすさが気になる場合がある
カスタムメイド型
- 歯科で型取りし、ひとりひとりにピッタリ合う
- フィット感と呼吸のしやすさ、発声の快適さが段違い
- 費用は8,000〜20,000円程度(中には保険適用外もあり)
- 作成に1〜2週間ほど必要、追加費用(紛失や成長時)も
マウスピースを導入するデメリットは?
違和感・パフォーマンス低下の可能性
とくに初めて装着する場合やフィット感が甘いマウスピースだと、話しにくい・息苦しい・集中しにくいと感じることがあります。
特に市販品・セルフ成型型は、使い始めのストレスが大きい場合もあるので慣れるまでの工夫(練習時に意識的に装着する等)が必要です。
コスト・メンテナンス事情
カスタムタイプでは1万円以上することも多く、成長期や紛失・破損時には作り直しの費用が発生します。また、使用後の洗浄・乾燥・専用ケースでの保管など、日々のメンテナンスを怠ると雑菌繁殖・臭いの原因となるため注意が必要です。
サッカー現場のリアル──現役選手・指導者の声
プロ・アマチュア選手の体験談
「公式戦で相手DFとヘディング時に顔がぶつかり、前歯を折ってしまった。その後マウスピースを使うようにしたら安心感が違う。」(大学サッカー部 男性)
「最初は違和感が気になったが、練習で慣れるうちに気にならなくなった。抜け目なく備えることもプレーの一部だと感じる。」(社会人リーグ選手)
「周囲でマウスピースを使っている人は正直あまり多くない。でも、口のケガで長期離脱した人がいたので迷って導入した。」(高校サッカー部男子)
指導者・医療従事者の意見
「骨格がしっかりして成人サイズになってからはマウスピースの適合度が高い。小中学生での必須化は難しいが、骨折リスクや治療期間を考えると、高校以上の競技レベルでは推奨したい。」(スポーツ歯科医)
「ポジションやプレースタイルにもよりますが、口腔外傷を防ぐため、コンタクトプレーの多い選手ほど積極的に検討を。」(高校サッカー部監督)
マウスピースが推奨されるケースと不要なケース
ポジションやプレースタイル別の考察
- CB・GK・FW(競り合い/接触機会の多い):強く推奨。ヘディングや接触が多くリスク高め。
- SB・MF(運動量が多いが接触はやや少なめ):状況次第で推奨。
- DF・GKはとくに“顔面への直接接触”リスクが高いため要検討。
- 接触プレーを避けるタイプや練習メインの選手は優先度低め。
年齢・競技レベルによる違い
- 高校生以上の本格的な競技志向者:けが発生時の影響大きいため推奨。
- アマチュア成人(社会人サークル等):事故時の治療費や就労・生活への影響を考慮して検討。
- 小学生以下、軽いレクリエーションでは必ずしも必要とは言い切れない。
高校生・成人選手・保護者向け:導入時のポイント
選び方のチェックリスト
- 自分の歯並びにぴったり合うものを選ぶ(できれば歯科相談)
- 着けて“息苦しさ”や“話しにくさ”が極端でないか事前に試す
- お子さんの場合は成長を見越しつつ適合性を定期チェック
- 耐久性・洗浄しやすさなど“日常管理”も忘れずに
装着・管理の実践的アドバイス
慣れないうちは短時間の練習から始め、毎日少しずつ装着時間を増やすと違和感が軽減します。
使用後は
・ 流水ですぐに洗浄し
・ ケースで乾燥・保管
・ 定期的に歯ブラシや専用クリーナーで磨く
といったケアも大切です。
また、使い始めの段階で「痛み」や「ズレ」を感じたらすぐに使用を中止し、可能であれば歯科医院でプロのアドバイスを受けましょう。
購入先・費用感
手軽な市販タイプはスポーツ用品店や量販店、オンラインショップで1,000〜3,000円前後。
カスタムオーダーは大人で8,000〜20,000円、歯科クリニックのスポーツ外来で製作できます。
長く愛用するためには、口腔ケアに強い歯科医院の利用がベストです。
まとめ──サッカーとマウスピース『必要性』の最終判断
記事全体の総括
「サッカーでもマウスピースは必要か?」という問いに対し、絶対必須ではないが“ケガの重症化予防・安心感確保”の面で大きな効果があるのは事実です。
特に高校生以上の競技志向選手や、ポジション的にコンタクトの多い方には装着が推奨されます。一方で、違和感やコストなど導入上のデメリットも把握し、無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。
現場の声やデータを参考にしつつ、自分・ご家族のプレースタイルやリスク許容度に合わせて判断してください。
自分に必要かどうか考えるための質問
- 自分(またはお子さん)は接触プレーの多いポジションやスタイルか?
- 過去に顔面や口腔の怪我経験があるか?
- 長期離脱や歯科治療で困る場面が想像できるか?
- 着け心地やコスト、メンテナンスの手間を受け入れられるか?
- 万全の備えによる「心の余裕」をプレーの武器にしたいと思うか?
このチェックポイントをもとに、納得できる選択をしていただければと思います。マウスピースは、リスクばかりを気にしてプレーを萎縮させるための道具ではありません。安心してサッカーを楽しむ・成長するための、もうひとつの武器として、ぜひ前向きに検討してみてください。